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絵本をもって出かけよう!旅する絵本

【旅に出よう】公園で考える「さようならとこんにちは」 vol.4

誰もいない公園。大好きなペットとのお別れと新しい出会い

絵本と一緒にお出かけ。

ちょっと重たい鞄を抱えながら、今回は公園に絵本とお出かけしてみました。選んだ絵本はすべて大好きなペットとの日々を描いたものばかり。誰もいない公園でじっくりと考えてみることにしました。普段だったら絶対に考えないようにしている大好きなペットとのさようならについて。

 

「絵本と旅にでる」をテーマに、絵本を持ってでかけてみる。いつもと違う場所で絵本をひらいてみたら・・・。いつもと違う気持ちで向き合えるかもしれない。必ず訪れる「さようなら」をきちんと受け止めて、新しい「こんにちは」ができるように。少しでも悲しい気持ちになっている人がいたなら、心が明るく少しでも軽くなってくれますように。

公園で遊ぶ。あの子が大好きだった場所。思い出をかみしめる。

私が飼っていた白いあの子は、お外が大好きな犬でした。少しでも外に出かけそうな気配を感じると、大げさに目の前で両足をバタバタしながらスキップします。外に行けば、まるで「疲れる」ことを知らないみたいにずっと走り続けます。生き生きとしたその表情は、本当に笑っているみたい。その姿を見るだけで微笑みがこぼれます。公園にいると、一瞬にしてたくさんの愛しい思い出がよみがえりました。ああ、私はあの子が本当に大好きでした。

誰もいない公園で、さようならしたペットとこんにちはをしたペットを思う

今回、公園に連れ出した4冊の絵本。最初の1冊目、松田奈那子さんの『わたしは ねこ』(リトルモア)をひらいてみます。

自分が生まれる前より先にペットがおうちにいたという人もいるかもしれない。自分の成長を見続けてくれたペット。何気ない小さな思い出が宝箱のようにつまった絵本は、読んでいるだけで懐かしい気持ちにさせてくれます。会話はできなかったけれど、きっとこんなことを思っていたのかもしれない。思い出すたびに少しほろ苦いような、せつない悲しい気持ちにもなります。でも、きちんと思い出に向き合ってみると、悲しいことよりも楽しい思い出のほうがたくさんあったことを思い出しました。

あなたのはじめてのペットはどんなペットでしたか。『わたしは ねこ』(リトルモア)
思い出すのはいつでもそばにいてくれたあの子のこと。『わたしは ねこ』(リトルモア)
わたしは ねこ

いつも いっしょだよ。
あそぶときも おふろにはいるときも ねむるときも。
でも ちかごろ かなこは いそがしそう……。

《おんなのこの成長を見守る ねこのほんとうの気持ち。》
わたしは、にんげんとくらすねこ。ある日、家に赤ちゃんがやってきた。名前はかなこ。わたしとかなこは、何をするときもいっしょ。しかし、かなこが成長するにつれ、外の世界に出かけるようになり……。

素朴な線描とカラフルな世界で描かれるのは、人間と暮らす猫と、その家に産まれた女の子の関係。月日が流れても、変わらずにあり続けるもの。猫と女の子の結びつきに、心がじんとあたたまる珠玉の一冊。猫のあんな仕草やこんなポーズは、猫好き共感間違いなしです!子どもにも大人にも、贈り物にもオススメです。

「さようなら」もできていないのに、新しい誰かに出会ってしまったら?

大好きなあの子のことがずっと忘れられない。

だって、私にとっては、今でもあの子が一番で、あの子のかわりはいないんですもの。誰かほかの子を迎え入れるなんてできない、そう考える人はきっと思いのほか多いのかもしれません。この絵本の主人公の男の子もそう。可愛くて茶目っ気たっぷりの新しい誰かに出会ってしまいます。一緒に遊んでいるうちに、閉じてしまっていた男の子の心が少しずつ開いていきます。『とびっきりのともだち』(BL出版)は、そんな新しい誰かさんを迎えることをためらっている人の気持ちを理解して、そして新しい道を提案してくれます。あの子のこと忘れたわけじゃない、新しい一歩を踏み出す、背中を後押ししてくれる絵本です。

新しい出会いにまだ迷いがある、そんな時に出会ってほしい絵本。『とびっきりのともだち』(BL出版)
どの子にとっても、それがあなたとの初めての出会いなんです。『とびっきりのともだち』(BL出版)
とびっきりのともだち

きみはだあれ? ひとりなの?
ぼくといっしょにいたいんだね
でもだめなんだ 
ぼくにはとびっきりのともだちがいるから……

忘れられない思い出をかかえた少年が、小さな子犬とふれあううちに次第に心を開いていきます。自身も多くの犬たちとの思い出を持つ落合恵子氏がていねいに思いをつづっています。

一緒に思い出をわかちあうことが「さようなら」を「こんにちは」に変える

新しい誰かを受け入れることで、悲しみの「さようなら」を乗り越えた人はたくさんいます。

そう、自らの体験を語るのは、ミロコマチコさんの絵本『てつぞうはね』(ブロンズ新社)。どれだけ、てつぞうくんのことが大好きだったのか、そしてどれだけ今、一緒に暮らしている子たちを大切にしているのか、あふれ出る愛情が絵本から伝わってきます。罪悪感に悩まされることも、後ろめたく感じることもない、そこには正しく生きているものに向き合っている姿があります。人によって時間はかかるかもしれません。でも、この絵本を読むことで救われる人がたくさんいると思うのです。私もその一人。白いあの子のことを今一緒に住んでいる2匹のネコによく話します。きっと一緒にいたら、喧嘩してネコパンチをくらっただろうなぁ。でも、構わずちょっかいだしていただろうなぁとか。考えるだけで悲しい気持ちはだいぶおさまりました。悲しいよりも楽しい、嬉しいがたくさん増えたような気がします。

そうか!あの子のことを考えながら、新しい子たちと暮らすことは幸せなことなんだと気づかせてくれた絵本。『てつぞうはね』(ブロンズ新社)
ミロコさんも大好きなてつぞうくんのことをたくさん話していたんですね。『てつぞうはね』(ブロンズ新社)
てつぞうはね

てつぞうはね、わたしのねこ
しろくて ふかふかのねこ
すわると おにぎりみたい
すっごく でっかいおにぎり

愛猫・てつぞうとの大切な日々をつづった、
ミロコマチコ、魂のこもった絵本!

大切なのは、過去でも未来でもない「イマ」!

何気ない今を一番に大切に過ごすことが、喪失感を味方につける何よりの方法です。

宝箱に大切に保管した、小さなかけがえのない思い出たちが、遠い将来、あなたを助けてくれることがあるかもしれません。楽しい思い出はきっと多ければ多いほどいいにきまってる!『おやすみ、アンニパンニ!』(風濤社)を読むと、大好きな人と過ごすふつうの日が一番だと改めて感じます。絵本は、必ずしもドラマチックな冒険へと誘うガイド役ばかりではないのです。普段、見逃しがちな日々の暮らしがいかに素敵なことなのか、私たちが発見するのを手伝ってくれるのもまた、絵本なのです。こんな風に今、一緒に暮らしている子たちとも、未来に出会う子たちとも暮らせていけたら理想だなぁと思います。

ねこの様子がとても可愛らしい、何気ない日常が光る絵本。『おやすみ、アンニパンニ!』(風濤社)
ないているねこを連れ帰ったアンニパンニ。『おやすみ、アンニパンニ!』(風濤社)
おやすみ、アンニパンニ!

些細な日常のひとこまだけれど
なにげない愛情があふれています。よむとほんわかにっこりできる本です。
特別おもしろい冒険やストーリーがあるわけではないのになぜでしょう。このシリーズ、子供もとても好きなようです。純粋にかわいらしい絵にも惹かれるのかもしれません。
(ひつじとひるねさん 30代・奈良県橿原市  女4歳)

いかがでしたか?

家の中にいたら、こんな風に考えることもできなかったかもしれません。

自分の気持ちと向き合うことは、覚悟もいるし、正直疲れます。思ったより大変です。自分の心がうそをついたり、言うことを聞いてくれないこともあります。自分だから他人より厄介です。でも、そんな自分を心の旅へと連れ出してくれるのが絵本。身に付けた心の鎧をいとも簡単に脱がせてしまうのです。子どものだって、大人のだって。

 

それが外だと、絵本の世界を楽しむ以上に効果てきめん。なんだかものすごく素直になってしまう自分がいます。さぁ、絵本をもって旅にでてみましょう。いつもと違う場所でひらく絵本の可能性は未知数です。絵本の数だけ、場所の数だけ、時間の数だけ表情が変わります。一人で悲しみにくれるよりも、ずっとたくさんのヒントをもらえるかもしれません。是非、挑戦してみてくださいね。

【ココロの旅に出よう】公園で考える大好きなペットとの「さよならとこんちは」 vol.4コスモスが綺麗な秋です。

富田直美(絵本ナビ編集部)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部

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