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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

絵本で学ぼう! 子どものための「サードプレイス」

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

サードプレイス=第三の居場所

今回は、「サードプレイス=第三の居場所」をテーマに絵本をご紹介したいと思います。サードプレイスとは、第一の場所を自宅・家庭、第二の場所を学校・職場とすると、その二つを行き来するだけではなく人には“第三の場所(サードプレイス)=自分が自分らしくいられる場所”が必要だと、近年提唱されている言葉です。

これまでは大人に向けて言われてきた言葉でしたが、最近は、子どもたちにこそサードプレイスは大きな意味を持つといわれています。子どもとしての役割を求められる家庭、生徒としての役割を求められる学校、などから解放されて過ごせる場所、自分を追求できる場所で過ごすことは、子どもたちにとって重要な時間だということがわかってきました。そうした場所で培ったその子らしさの土台が、自己肯定感や社会性を培い、その子の持つ様々な力を発揮することにつながるからです。

子どもの本でも、そうした第三の居場所について描いた物語が数多くあります。今回は、そうした絵本から、サードプレイスとはどんな場所なのか、そこで過ごす意義はなんなのかを学んでいきたいと思います。

ここちよい距離感

安心して過ごせる場所、自分に向き合える場所こそがサードプレイスであり、そうした場を与えてくれる大人は本当に大事な存在だ、ということが実感できる絵本をご紹介します。

絵描きさんと過ごした夏の日

海のアトリエ

おばあちゃんの部屋には、女の子の絵がかざってある。「この子はだれ?」って聞いてみたら、「この子は、あたしよ」って教えてくれた。
びっくりするわたしに、おばあちゃんが話してくれたのは、海辺のアトリエに暮らす絵描きさんと過ごした夏の日のこと、おばあちゃんにとって、いつまでも色あせない、特別な思い出だった。
少女がのびのびと心を開放することができた宝物のような日々を、まるで映画のシーンのように見応えのある絵で描いた魅力的な絵本。

ある日おばあさんが、自分の孫に向かって思い出を語ります。それは、おばあさんが女の子だった頃の特別な思い出です。夏休みのある日、女の子は、お母さんの友だちの絵描きさんの家に行きます。そこは、海の見えるアトリエでした。絵描きさんと女の子はそこで、それぞれの時間を自由に、時には一緒にゆっくり過ごしていくのです。

物語に登場する絵描きさんのすばらしさは、女の子との距離感です。物語の冒頭で、女の子には「ちょっといろいろ、いやなことがあって」とあるのですが、絵描きさんはそこにはまったく触れず、近づきすぎず、女の子に一人前の大人のように接してくれます。女の子もそれがとてもうれしかったのでしょう。表紙で絵のモデルをしている姿や大人が飲むような大きなグラスを傾けている姿からは、女の子のうれしさがあふれています。

自分を一人前のように扱ってくれて、大人のように気遣ってくれることは、子どもにとって得難い体験ですよね。絵描きさんの、女の子を見守りつつ互いの自由も尊重する態度に、ぶれはありません。穏やかで揺らがない絵描きさんのもとで、女の子も、自分のしたいこと、自分の気持ち良いことを感じ、そして、「自分」について考えるようになっていきます。

また、堀川理万子さんは、このような作品も描いています。

おじさんと過ごすちょっとワイルドなお留守番

くまちゃんとおじさん、かわをゆく

くまちゃんはおじさんがだいすき。ぱぱとままがでかけたある日、おじさんのカヌーにのせてもらいます。くまちゃんの心の成長を描いて、子どもたちの冒険心をくすぐる1冊です。さまざまなメディアに取り上げられ、全国各地の図書館でブックスタートの本に選ばれた『ぼくのシチュー、ままのシチュー』に続く「くまちゃん」絵本の2冊目です。

くまちゃんのパパとママは夜までお出かけ、代わりにおじさんとお留守番をします。おじさんとのお留守番は結構ワイルドで、カヌーにのって川を下りおひるごはんは魚をとって現地調達です。くまちゃんも、初めて魚を取ってごきげんです。一日思いっきり遊んでもらい、帰ってきたパパママからも「いちにちで ずいぶん たくましく なったわね」と言われます。親子だと心配しすぎて世話を焼いてしまったり指図してしまったりしますが、このおじさんは「やってみろよ」と少し突き放しつつ見守ります。くまちゃんはそんなおじさんが大好きです。

この作品でも、「おじさん」という親子でもない友達でもない、ちょうどいい距離感の大人が登場します。こうした関係は「ナナメの関係」と言うそうです。親子や先生生徒だとタテの関係、友だち同志だとフラットな横の関係、そして、こうした子どもと利害関係のない大人・第三者との関係がナナメの関係です。親や先生からの言葉は、なんだか指図的に感じて素直に受け取れなくても、そうではない人から言われると「あ、そういうこと?」と受け取れることもよくあると思います。学校現場でも「ナナメの関係」を重要視していて、学校と地域社会ができるだけ近い関係となるよう様々な企画が催されています。

 

『海のアトリエ』では最後に「このことをずっとおぼえていたいって、そんな日が、きっとあなたをまってるわ」というおばあちゃんの言葉があります。絵描きさんとのかけがえのない記憶が財産となっておばあちゃんを勇気づけていったのでしょう。これらの絵本は、一瞬であってもそうした人と出会うことが、子どもたちにとってどんなに大切かということを伝えてくれます。

おじいちゃんおばあちゃんとの気楽な関係

我が家も同じくですが、おじいちゃんおばあちゃんに久々に会うと、孫ははしゃぎ、おじいちゃんおばあちゃんは甘やかしまくります。ふだん一緒にいない分、ヴァカンス気分なのだと思います。そうした気楽な関係を描いた絵本をご紹介したいと思います。

やりたい放題の孫と、孫のためなら……「そこまでする?!」な、おばあちゃん

あらまっ!

寝ない少年と元気なおばあちゃんの痛快絵本
おばあさんの家に泊まりにきたパトリック。早く寝なさいと言われても「ベッドがないから寝られないよ」と抵抗。
そこでおばあさんは、森の木でベッドを作った。するとパトリックはさらに…!?愉快なナンセンス絵本。
 

この絵本は、お泊りにきた孫のパトリックのために、おばあちゃんが、いちから木を切り倒してベッドを作るは、羊の毛を刈って染めて織ってまでして毛布を作るは、「そこまでする?!」という猪突猛進のおばあちゃんの姿を楽しむユーモア絵本です。ただ、その傍らに描かれているパトリックの超リラックス、やりたい放題ムードがまた「おばあちゃんちってパパママに何にも言われなくって気楽だよねえ」とほのぼのするのです。

おばあちゃんがパトリックのために奮闘している傍らで、パトリックは夜中までおもちゃ遊び放題、お菓子食べ放題、テレビ見放題で朝まで起きちゃっている気楽さです。うちの子も、祖父母の家に連れて行った際ふと気が付くと、夜も遅いのに上の子が見当たりません(当時2歳)。探してみると、おじいちゃんと一緒に「気を付けたい加齢による病気」などというテレビを見ていて「ちょっとー!」となりました。ですが、それ以降「塩分を取りすぎたら高血圧になっちゃう」、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)には注意しなくちゃ」と口にするなど、いろいろ刺激は受けたようで、まあこういう経験もありかなーと感じたできごとです。

 

また、田舎のおばあちゃんのうちに行く絵本には、こんな絵本もあります。

田舎で過ごす、ぼくと弟のまほうの夏の想い出

まほうの夏

夏休みに入っても退屈していた僕と弟。ある日おじさんから一枚のはがきをもらった。“あそびにおいで”と書いてある。ぼくたちは大喜びでおかあさんのいなかに行った。虫取り、海水浴、木のぼり…圧巻は海釣り! 大自然のなかで思いっきり遊んだ、ぼくと弟のまほうの夏の想い出で描く絵本。

“いなか”という普段とは違う世界を体験する子どもたちの物語です。

夏休み、おとうさんおかあさんは昼間働いていて、ぼくと弟は学校のプールとゲーム以外はやることがありません。退屈しきっていた時に、おかあさんの田舎に行くことになります。最初は、木登りしてもすりむくし、川に落ちて靴の中は気持ち悪いしヤブカにたくさん刺されるし、さんざんです。でも、たくさん遊んでくたくたになる毎日が、なんだか気持ち良くなります。それからは何をしても楽しくて、いろんなことができるようになって、ぐんぐん成長して日常へ帰っていくのです。

この絵本は、子どもたちが最初、田舎生活にとまどうところもとてもリアルです。私も小さい頃は、この子たちのように一年に一回田舎に行く生活をしていました。ですが、やっぱり最初は慣れません。ふだん離れているからおばあちゃんとは何を話していいかわからないし、ヤブカに全身を刺されて満身創痍だった覚えがあります。ですが、それらをひっくるめて子どもたちは適応していくんですよね。自分の子を見ていても、ちょっとした経験でもぐんぐん吸収して、「この子こんなにたくましかったっけ?」と思わされることもあります。どんな経験も糧にしていく姿がとてもまぶしく感じます。

これらの絵本からは、子どもたちはいろんな関係の大人と関わって、たくさんの経験をしていくべきだ、ということを教えられます。

ひとりぼっちだけど、そうじゃない

次にご紹介するのは、自分はひとりぼっちだと思っているけれど、実はたくさんの人に見守られているよというおはなしです。

ひとりぼっちのぼくがみつけた、たいせつな時間

すてきなひとりぼっち

ぼくがみつけた、たいせつな時間 一平くんの小さな発見をあたたかく描いたものがたり。
一平くんは、絵を描くのが好きな男の子。クラスでもひとりぼっちになりがちですが、ある日、とってもすてきな発見をするのです・・・。
『天使のかいかた』「おたすけこびと」シリーズなどで人気の作家なかがわちひろさんが描く、心にじんわりひびく絵童話です。

一平くんは、ひとりぼっちに慣れている男の子。ある雨の日、学校からひとりぼっちでとぼとぼ帰ってきたら、おかあさんはいなくて玄関には鍵が掛かっています。家からも締め出され、ひとりぼっち気分がクライマックスになりますが、そこで一歩踏み出します。おかあさんを探しに出かけるのです。とちゅう迷子にもなりますが、そこからたくさんの大人たちが集まってきてくれます。いつのまにか、誰かがおかあさんも連れてきてくれて、さっきまでどん底気分だった男の子は、この雨の日が楽しい一日と変わっているのでした。

この物語は、子どもへももちろんですが、大人にも、「人はみんなひとりぼっちだけれど、ひとりぼっち同士が集まって助け合っているんだよね」ということを伝えてくれます。子どもたちは、この物語から「ひとりぼっちのときも、そんなあなたを見守って助けてくれる人や場所があるんだよ」、ということを感じると思います。

夢中になれる場所

サードプレイスをテーマにここまで絵本をご紹介してきましたが、子どもたちは、どうやって自分のサードプレイスを見つけていくのでしょう。次は、「自分で自分の居場所を見つける」絵本です。

夢中で過ごして生まれた絆と出会い。

きんぎょすくいめいじん

縁日で、金魚すくいの名人にであったぼく。ぜんぜんすくえなかったけど、名人に教えてもらいながら、ついに金魚すくい大会の日をむかえます。さあ、深呼吸をして……。ひと夏の体験をみずみずしく描きだした絵本。

夏祭りの日、はるくんは、金魚すくいの屋台で年上のおにいちゃん・たろうくんと出会います。たろうくんは金魚屋さんのおじいちゃんのところで、金魚すくい1等賞を目指している男の子。はるくんも、たろうくんと一緒に金魚すくいの特訓をすることになりました。

はるくんは、たろうくんとの特訓で、金魚すくいのことだけでなく、とても多くのことを学んでいきます。そして、気づけば、“金魚すくい”という夢中になれるものと、たろうくんとの絆が生まれていたのです。

「金魚すくいがやりたい」ということをきっかけに、はるくんのまわりには、たろうくんや金魚屋さんのおじいちゃんおばあちゃんなど、たくさんの応援してくれる人が集まっていました。金魚すくい大会の経験からはるくんは大きく成長し、「たろうくんと一緒に来年も金魚すくい名人を目指す」という約束と目標もできて、これからの毎日も変わっていくことでしょう。子どもたちにとって、家や学校だけではない、「夢中になれる場所」「かがやける場所」が絶対に必要だということを伝えてくれる絵本です。

「夢中になれる場所」が居場所として描かれている絵本を、もう一冊。

むしたちと友だちになりたい人集まれ!

むしのもり

月刊「おひさま」で子どもたちに大人気の「むしのもり」シリーズが絵本になりました。作者タダサトシさんの分身である主人公の「さっちん」と「オオクワくん」をはじめとする森の虫たちの交流を描いた作品です。

さっちんという男の子が、オオクワガタのオオクワくんや、むしのもりに住む様々な虫たちと友達になって遊ぶおはなしです。

虫たちが優しくさっちんを迎え入れているところからも、「さっちんにとって“むしのもり”はユートピアなんだなあ」ということが伝わります。そして、大好きで夢中になれる場所があることが、子どもたちをこんなにのびのびとさせるのだということが、この絵本からも伝わってきます。

さいごに

今回は、「サードプレイス」をテーマに絵本をご紹介しました。子どもの成長には、さまざまな大人が関わって、たくさんの場所があるべきことを改めて実感しています。ちょっとした経験でもがらりと変わる瞬間が子どもたちにはあって、そういった機会を得るためには親が関わらない場所での体験が必要だと思うのです。

ですが、現代では、子どもたちが親の目から離れた居場所を作るのは難しいことだと感じます。親の責任や安全面などもあり、親の知らないところへ子どもだけで行くのはなかなか難しく、親子の距離もかなり近くなってしまっています。私はかなり心配性なので、過干渉にならないよう気を付けてはいますが、子どもたちは早くも暑苦しく思っているのか下の子にすら最近は「もう、あっちいって!」と言われショックを受ける日々です。何をするにもおかあさんが一緒だし、鬱陶しいよね、ごめん……と思います。

そんなとき、我が家では習い事に大変助けてもらっています。習い事にもいろいろ考えはあると思いますが、私は、子どもがやりたければ基本的にやらせてしまっております。子どもたちも大きくなるにつれてそれぞれの場所で見せる姿が違い、そうして姿を使い分けて社会性を培っているのかなと思うのです。上の子は異年齢の子が交流できる私塾のようなところに通っています。私が小学校のことを聞いても「よゆー、ふつー」としかかえってきませんが、そこのお兄さんお姉さんには「小学校つまんねー」とグチを言っては、「そんなもんだよー」と慰めてもらっているそうです。恰好をつけたい年頃にもう差し掛かっているようで、「そっかー、おかあさんにはもう言えないのか……」と思いましたが、そういったことも受け止めてもらえてありがたいかぎりです。

習い事も、教え教えられる関係で考えると“タテの関係”になりがちですが、本人はそこまでガチガチには思っておらず、サッカー教室でも「年上のかっこいいお兄さんにほめられるとチョーやる気出る」という感じですし、私も、技術の習得はあまり気にせず、「この子がいつもとは違った場所で楽しくいろんな人と関わりを持ってくれればいいなー」くらいに考えています。親子とも日常とはちがう場として活用させてもらっています。

今回ご紹介した絵本からみても、子どもたちにとって“サードプレイス”はさまざまな場所を意味し、役割から抜け出して“自分”でいられる大事な場所なのだと思います。これからの子どもたちが、その中で夢中になる経験や、自分に向き合う時間を持って、羽ばたく準備をしていければよいなと思います。親の立場からも、これらの絵本から学んで、子どもたちのサードプレイスを尊重していきたいと思います。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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