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miku23号 2011年冬号

ひとりで悩まないで!私って「産後うつ?」

ひとりで悩まないで! 自分を責めないで!

「産後うつ」という言葉を聞くようになりました。そもそも産後うつとは、どのような症状を言うのでしょう? どのくらいの人がかかるものでしょう?
予防策や改善策も含めて、産婦人科医の宗田聡先生にアドバイスをいただきました。

宗田聡先生


パークサイド広尾レディスクリニック院長。身近なかかりつけ医として、妊娠中はもちろんのこと、妊娠前や出産後も女性の健康のために、ていねいでやさしい診療を行っている。著書は『産後うつ病ガイドブック』(南山堂、共訳)ほか。

約8割がマタニティ・ブルーズ 約1割が、産後うつに

産後、気持ちが落ち込んだり、体が重く感じたり、夜眠れなかったり……。そんな症状を感じたママも少なくないのではないでしょうか。出産直後、約8割の女性が、情緒が不安定になったり、「いつもの自分ではない気分」を経験していると言われています。
  
これは、「マタニティ・ブルーズ」と呼ばれ、心の病気というより、分娩によるホルモンの変動などによって一時的に気分の落ち込みがあわられること。治療は不要で、自然に回復するものです。
  
「産後うつ」は、産後1カ月以降で、気分が落ち込んだ状態が2週間以上続いた場合に疑われます。マタニティ・ブルーズと産後うつは、きっぱりと区別できるものではありません。産後、多くの人が体験するマタニティ・ブルーズの症状が重くなり、継続的になって産後うつになるケースもあります。また、産後1カ月くらいまでは明るく過ごしていたのに、産後1カ月以上過ぎてから急に気持ちの落ち込みがひどくなる場合もあります。

一人でがんばり過ぎるママは、要注意

産後は赤ちゃんを生み出した体を元に戻している期間。また、ホルモンバランスも大きく変動していますから、体も心も不安定な時期です。産後すぐの時期にマタニティ・ブルーズになっていないからといって、産後1カ月になる前に動きすぎたり頑張りすぎると、その後、体や心の大きな落ち込みがくる場合もあります。産後1カ月程度は、体と心を休める時期と割り切って、ゆったりと過ごしましょう。
  
産後うつになりやすいのは、几帳面で、何でもきちんと自分でこなしたいタイプが多いよう。でも産後うつは、誰にでもなる可能性があるのです。思い通りの出産でなかった、早産だった、赤ちゃんが低出生体重児だった、妊娠・出産のできごとが要因になっている場合や、赤ちゃんのために仕事を断念した、パパや親族との育児などに関する意見の相違など、精神的なストレスが大きく起因している場合もあります。そのストレスは、自分で気づいている場合もありますが、無意識に感じている場合もあります。
  
育児の悩みや、思い通りにならないことを、自分で抱え込んでしまったり、自分を責める→悩んでいて、いろいろなことがはかどらない→心が不安定でイライラ→赤ちゃんにもやさしくできない→赤ちゃんがぐずる→自分の時間が持てない……と、悪循環に陥ってしまいます。
  
小さな赤ちゃんの慣れない世話をしながら、ママが一人で何でもこなすのは大変です。育児や家事に完璧を求めず、早めに周囲の助けを求めましょう。

早めの見立てと対応が早期回復につながる

妊娠前からうつ病などの既往症がある場合は、妊娠をきっかけに、症状としてあらわれることもありますが、これは出産による産後うつではなく、うつ病です。

うつ病の場合は、治療が長引くケースもありますが、出産をきっかけにしている産後うつの場合は、産後のセルフケアや周囲の対応、専門医の治療によって、よくなっていくことがほとんどです。このあたりの見立てを間違わないためにも、産後うつが疑われたら、早めに専門医に受診しましょう。

 
産後うつは精神的なものですから、専門医は、心療内科や精神科です。しかし、まだまだ「産後うつ」を専門にした治療を行ってくれる専門医が少ないのが現状。乳児を抱え、遠くの専門医に診てもらいに行くのは大変ですから、まずは、出産した産婦人科やかかりつけの内科で相談しましょう。症状によっては、専門医に紹介状を書いてくれる場合もあります。地域の助産師さんも産後うつの相談に乗ってくれますから、気軽に相談してみましょう。

パパはもちろん周囲のサポートが大切

産後うつになった場合、体がだるかったり、家事がはかどらなかったり……。そんな様子に、パパが「昼間、子どもとのんびり過ごしてるのに、何で疲れてるの?」と言ったり、実母から「昔は家事も育児も、もっと大変だったわよ」などの言葉を浴びせられてしまうことも。周囲の不理解と、何気ない言葉がプレッシャーとなって、さらにママを追いつめてしまうこともあります。
  
まずは、パパがママの一番の味方になること。ママの症状や気持ちを、聞き、受け止めてあげましょう。信頼できる相手(パパ)がきちんとママの話を聞いてあげることが、産後うつ改善の第一ステップにもなります。

 
早めに医師に診てもらうことを促したり、できれば一緒に病院に行って医師に話を聞いたり育児や家事は、可能なら一緒に行いましょう。
  
ただし、パパ一人で、何でも請け負わないこと。パパが家事も育児も仕事も引き受けては、今度はパパがバーンアウトしてしまい、うつになってしまう可能性もあります。産後うつは、急激に回復するものではありません。上手に気分転換しながら、ママの産後うつの回復につき合っていきましょう。

マタニティ・ブルーズと産後うつとの違い・見られる症状

マタニティ・ブルーズ

出現率:60~80%
時期:分娩後3日間以内に生じ、数日間から数週間

 

● 涙もろい
● いらいら感
● 神経質になる
● 傷つきやすい感じ
● 睡眠の問題
● 食欲低下
● 落ち着かない
● 自信を失う
● どうしてよいかわからない困惑
 

産後うつ病

出現率:10~15%
時期:産後1カ月頃から最低2週間以上、症状が継続

● 気分がずっと沈みこむ(時に泣けてくる)
● 日常生活の活動における興味の喪失
● 罪業感(自分が悪いと感じる)
● 以前に比べて、動作や話し方が遅い
● 毎日のように疲労感が続き、気力がわかない
● 自分を価値のない人間(母親失格)と思う
● 家事や育児に集中ができないか、物忘れが多い
● 赤ちゃんのことが心配でたまらない、または無関心になる
● うまく対処することができない
● 取り越し苦労が多く、悲観的にしか物事を考えられない
● この世から消えてしまいたいと自殺を考えるときがある

 

 

(日本周産期メンタルヘルス研究会の資料および、宗田先生のアドバイスにより作成)

パパや周囲の人からの NGワード& Good ワード

産後うつで苦しむママの場合は特に、言葉がけによって、さらにママが心を閉ざしてしまったり、症状が悪化させる場合もあります。
NGワードやGoodワードは、ママの性格や症状によっても異なります。日頃のこまやかなコミュニケーションが一番大切です。

NGワード

「がんばれ」

「もっとがんばらなくては」と、心が追いつめられます。ママは十分がんばっています。

 

「母親なんだから」

母親だから何でもできるわけではありません。ママだって、赤ちゃんのお世話は、少しずつ経験して上手になっていくものです。

 

「赤ちゃんがかわいいのは当たり前」

ママの心に余裕がないと、赤ちゃんをかわいいと思えなかったり、赤ちゃんのお世話をする気力がわかなくなります。

 

「家にばっかりこもってないで、友だちと会ってきたら?」

ママが友人と会いたいならOKですが、ママが人と会うのもおっくうになっている場合は、配慮の言葉も、負担になります。

 

Good ワード

「ありがとう」

ママへの感謝は口に出しましょう。ママの自己肯定感が高まります。

 

「今日は○○しよう!」

ママと約束したことは守ること。ママの想いとのギャップが大きくなると、心が不安定になります。

 

「今日のおかずは、○○が食べたいな」

ささいなことを、自分で決めるのが難しいこともあります。判断をママにゆだねず、聞かれたら、はっきり答えましょう。

 

「何をして欲しい?」

ママがして欲しいことを、まず聞いてみましょう。ママが「して欲しい」と言ったことは、「じゃあお義母さんに頼んだら?」などと人に任せず、できるだけ一緒にやったり、一緒に考えましょう。

産後、心の病気になりやすいママは?

以下に当てはまるママは、産後うつなど心の病気になりやすい傾向があるようです。心の状態をセルフチェックしておきましょう。

 

□人に頼りたくない、自分でやりたい性格。几帳面
□望まない妊娠(赤ちゃんを欲しくなかった、仕事をかんばりたかったなど)
□経済的に困難な状態にある
□周囲からのサポートがない
□人間関係の悩み(パパや、義父母、実父母、親戚との不仲、近所つき合いなど)
□思い通りに出産できなかった・赤ちゃんが小さい・成長が遅い
□引越しをする・した、周囲の環境が大きく変わった
□身近な愛した人を最近失う

産後うつなどの電話相談

◎日本助産師会「子育て・女性健康支援センター」
http://www.midwife.or.jp/general/supportcenter.html
◎「精神保健福祉センター」
全国各地にありますので、「精神保健福祉センター」で検索を

産後うつの情報がキャッチできる

◎産後うつとマタニティブルーの情報サイト「ママブルーネットワーク」
http://www.mama-blue.net/
◎ファザーリング・ジャパン
「ペンギンパパ・プロジェクト~産後うつのママをサポートしよう!」
http://www.fathering.jp/sangoutu/
◎日本周産期メンタルヘルス研究会
http://pmh.jp/

 

(日本周産期メンタルヘルス研究会の資料を参考に、編集部で加筆)

 

 

 

 

取材・文/高祖常子

掲載されている情報は公開当時のものです。
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