スタイルトップ  >  育児情報誌miku   >   miku35号 2014年冬号   >   それぞれの子どもを尊重する!カナダの子育て
miku35号 2014年冬号

それぞれの子どもを尊重する!カナダの子育て

緊急現地取材

 

留学先などでも人気のカナダ。子育てしやすい国と名前があがることも多くあります。なぜ子育てしやすいのかを探るべく、miku編集部が、ブリティッシュ・コロンビア州の子育てを取材してきました。

取材してきました!

 

州都ビクトリア市の庁舎で、Ministry of Children and Family Development(児童家庭省)の皆さんと
 

子育てのサポートに特化した「子ども発育省」を設置

カナダBC(ブリティッシュ・コロンビア)州は、これから2020年までに、子どもの数が1割増えることが予想され、6歳までの子どもとその家族のサポートに特化した 「児童家庭省」という独立した省を設置。2012年にはTHE Families agenda For British Columbiaを発表、2013年にはBC Early Childhood Development Centreを設立しました。これから増える子どもの受け入れ先の拡大と情報提供・マッチングサポートに取り組むということでした。

 

BC州では、6歳以下の小さな子どもとその家族の子育て支援を担当する Ministry of Childand Family Development (児童家庭省)を中心に日本で厚生労働省・文部科学省に相当する3つの省が相互に連携を取りながら子育て家族の支援を進めています。

一人月約1万5千円の子ども手当

カナダの基本的な子育て支援は、6歳以下の子どもがいる家庭に対して、カナダ政府から、月100ドルとBC州から55ドル(※小切手)が支給されるということでしょう。
 
2020年までに子どもの数が1割増えると予想されているBC州では、それに対応するために保育施設の拡充が急務となっています。これから3年間で、2000カ所の認可保育施設の開設(ライセンスの付与)を目指しています。日本のように画一化した認可保育園ではなく、大型の保育園から個人宅での預かり(child day care)、依頼者の家で子どもの世話をするナニーなど、様々なライセンスを設定しています。

 

また、13歳以上になると、一定のプログラムを終了すれば子どもの世話をすることができるというのが日本には無い制度です。中学生にもなれば家の手伝いは当たり前。そのお手伝いを制度として認め、保育プログラムに組み入れています。2人以下の子どもであればライセンスは必要無く、この13歳以上の学生が、お小遣い稼ぎに子どもの面倒をみることもできます。

 

もちろん有資格者や経験者の保育費用は高く設定されています。ライセンスは数年ごとに更新が必要で、個人に与えられるライセンスの場合は数日間の更新プログラムを受講しないと更新できないということです。施設の充実度や規模、自分の価値観と懐具合などを考えながら、親は多様な選択肢から子どもの預け先を選んでいます。

 

年内には、BC Early Childhood Development Centre(幼児発育センター)が発足するということでした。組織でもありますが、施設も展開していきます。

 

※取材当日のレートは 1カナダドル=95円 実際の両替レートでは約100円

子育てのコントロールタワー  チャイルドケアリソースセンター

子育て中の親に対して、保育園や保育ママの情報提供を行ったり、子育ての悩みに応じたり、また、子育てに関する手当の申請書など行政書類について、書き方をアドバイスしたり申請の手助けなども行っています。子育て支援者に対しては、情報提供や講座を開いたり、子育て支援の本の販売や、教材・絵本やおもちゃなどの貸し出しも行っています。この団体は25年前にスタートしたNPO。BC州からの援助と、親支援プログラムについては児童家庭省からの援助、他の予算についてはバンクーバー市から出ているとのこと。さまざまな行政の支援を受けて、活動しています。

 

1) 教材の開発も行っています。教材には指導法のレターがついていて、子育て支援者に貸し出されます。 2)センター内には、子ども部屋作りの提案もありました。

 

3) 貸し出し用の絵本がいっぱい。 4)体を使ったお遊戯や運動用具の貸し出し用セット。 5)先生に貸し出される教材セット。指人形やパペットなどの道具と台本やマニュアルが1セットになっている。

小さな子どもでも1人の人間として尊重する

世界中からの移民を受け入れているカナダ。肌の色も言葉も多様であることが当たり前で、学校のクラスでは障がいのある子も同じように区別無く一緒に学んでいるそうです。
 
プリスクールで印象的だったのが「子どもたちが何を伝えたいのか、全てのことに耳を傾けるようにしています。子どもたちそれぞれによって、必要なものが違う。だから、何が必要なのかをちゃんと見てあげることが大切。トラブルがあっても、子ども同士で解決できるように心がけています」という先生の言葉です。
 
保育の場面では、一斉に活動する場合もありますが、基本的には、外で遊びたい子ども、室内で遊びたい子どもなど、それぞれの子どもたちの意思が尊重されます。

 

さらに先生は、「この園には、いろいろな国のいろいろな文化を持った子どもたちが入ってきます。英語を話せない子が入ってくることもあります。でも、子ども同士だと、そのようなこだわりもなく、すぐに仲良くなれますね。私たちは、母国語とそれぞれの国の文化を大切にしてくださいと、伝えています。子どもにも親に対しても、これは同じです」と続けました。

 

「この国で暮らすから、この園で過ごすから、合わせてください」ということは全くありません。それぞれの文化や子どもたちの個性が尊重されています。

人種や肌の色が違うことを学ぶ

 

 

 

 

 

 

 

園児たちの教材に、いろいろな肌の色を学ぶツールがありました。色紙と、写真を見ながら、「私はどの色だろう」と、自分の肌に合わせて選んでみたり、ほかの子どもたちとの違いを知るそうです。違いを知ること、違っていてもいいし、それが当たり前ということを学びます。

就学前教育サービスの一例 バンクーバーの保育園や幼稚園など

毎日、終日通わせる親もいますが、午前中や午後だけ、または週に数回と、親の希望によって通わせている日数や時間はさまざまです。同じ系列の園であっても、一律に同じ保育を行っているところはほとんどなく、自由度が高い保育が行われているのが特徴です。

プリスクール

このプリスクールには、3~5歳児が通っています。年齢を分けずにミックスして保育を行っています。午前のみ来る子、午後のみ来る子、月水金だけ来る子など、親の都合に合わせて保育を行っています。

 

1)先生が魚の名前を言って、子どもたちが手をあげ、魚の絵をボードに貼っていきます。 2) おやつを自宅から持参して食べます。中身はフルーツやクッキーなどでした。 3)子どもたちから見えるところに、「園のルール」が貼ってありました。「叩かない」「きれいにしよう」「いい言葉を使おう」などが書かれています。

チャイルドデイケア

少人数の子どもを自宅で預かります。資格を持っていなくても、チャイルドデイケアはできますが、有資格者の方が料金が高く設定されています。親はいくつものチャイルドデイケアをチェックし、希望にあった場所を見つけます。お昼は自宅から持ってきたランチボックスを食べ、部屋や庭で遊んだり、ときどき公園に行くそうです。

 

1)広い庭でも遊びます。 2)子どもを預かるデイケアのお宅には、外に看板が。 3)インド系カナダ人のマーシャさんと遊ぶ子どもたち(1歳半、1歳11カ月、2歳)。
 

ファミリードロップイン

日本の子育てひろばのような場所。それぞれの場所で、提供しているメニューは異なり、子どもの預かりなどをしているところもあります。親支援のプログラムが無料や有料で豊富にあり、親はその中から、自分にあったプログラムを受けます。スタッフは、さまざまな言語に対応できるようにしているということでした。

 

1)遊びのスペースがいくつかに仕切られています。 2)この日はノーバディーズパーフェクトの講座が行われていました。

グループデイケア

YMCAが行っている幼保園のような施設です。BCフットボールのマネージャーの寄付で作られたそうです。この地域は、貧しい家庭が多いと言うことで、親の仕事も不安定で、食事もろくに食べられない、発達が遅い子どもたちも多く通っているそうです。3歳までの子どもたちを積極的に保育し、その延長線上で、家族の問題も解決したいとアプローチしているということでした。家庭の状況によっては、園から個別の家庭に食材を提供することもあるそうです。水曜日の夜は、園に通っている家族を一堂に集めて、食事会を行うそうです。取材時はちょうど感謝祭の時期だったので、七面鳥を焼いてパーティを行うということでした。家族を集めることで、横のつながりを作り、また家族プログラムを実施することもあるそうです。
 

 

1)家にいるような、あたたかさを感じるプレイコーナーがいっぱいあります。 2)園内にコックさんがいて、食事を作っています。 3)園の入り口には、フルーツと、市民から提供された古着がありました。希望者は持ち帰れるそうです。 4)YMCAの施設は寄付で建てられ、運営されています。

ノーバディーズパーフェクト~完璧な親はいない

日本でも注目されている、カナダ生まれの親支援プログラム“Nobody’s Perfect”。「完璧な親はいない」という前提で、可能な限りのことをすれば良い、できなければみんなで助け合いましょうというプログラム。日本でもNobody’s Perfect JAPANがスタートし、普及活動をしており、日本語に翻訳したテキストも出版しています。

 

プログラムは0歳から5歳くらいの子の親を対象に、1回2時間で6週間のプログラムを実施します。6週間のプログラムを終了すると、完了証が渡されます。参加費は無料(政府が負担)で、参加するのにバス代などの交通費も払えないような家庭には、バスの切符を支給することもあります。
 

プログラムのテーマは、「BODY/からだ、SAFETY/安全、MIND/こころ、BEHAVIOUR/行動、PARENTS/親」の5つです。

プログラムには決まったカリキュラムはなく、初回集まった時に、参加者がトピックを出し合い、ワークショップ形式でみんなで話し合いながら進めます。ファシリテーター(トレーナー)は先生ではなくガイドに徹します。育児の専門家としてではなく、参加者全員でいっしょに問題を解決するためにサポートする役割を担っています。

 

プログラムの参加者は、母親だけでなく祖父母や父親もいます。父親向けのプログラムもあります。バンクーバーは多国籍・多言語の人が暮らしているので、言葉も英語だけでなくフランス語、スペイン語、中国語、パンジャビ語(インド地方の言葉)、日本語……多くの言葉に対応しています。
 

写真中央オレンジ色の服の女性がファシリテーターで、参加者は、Facebookやスーパーの掲示板などで今回のプログラムを知り、申し込んだと言うことでした。

ベビーマッサージクラスで出会ったという、カナダで出産&育児しているママたちにお話を伺いました。お子さんは1歳4カ月から1歳6カ月です。

 

まずママたちが口々に言っていたのが、日本の妊婦健診での体重管理が厳しいと言うこと。 「8カ月の時に、18kg 増えてたんですが、助産師さんにビューティフル!って言われました」とのこと。妊娠から出産までは、助産師さんか、産婦人科医にかかるのか、どちらかを自分で選ぶそうです。また、家族は基本的にファミリードクターにかかるということですが、お産を取れるファミリードクターなら、出産もする」とのこと。何か重い病気などの場合は、スペシャリスト(専門家)にかかるということでした。

 

日本で言う母親学級は、両親学級3回+母乳クラス。平日の夜や週末にも開催され、パパも一緒に行くのが、基本だそうです。妊婦健診も、基本的にパパも同行するとのことでした。両親学級では、薬を使って無痛分娩するのか自然出産するのかなど、出産方法の希望を伝え合い、ママとパパで希望が違う場合には、話し合いをうながされるとのことでした。
 
出産は無料で、無痛分娩はもちろん水中出産なども希望することができるそうです。 出産後は翌日(早い人はその日)に退院し、ミッドワイフ(担当助産師)が産後1カ月くらい、何度か家に来てくれて、産後の体調を見てくれるとのこと。赤ちゃんのお風呂の入れ方などは、地域の看護師さんが指導してくれるとのことでした。

日本でも最近活動が始まりましたが、ドゥーラという役割の人がいて、ママが頼むと、陣痛が始まったときに病院に一緒に行ってくれるなど、ママに寄り添うサポートを行ってくれます。
 
そして誰もが言っていたのが、カナダの人たちが優しいということ。ベビーカーを押して電車に乗ると、優先してくれて、さっとスペースをあけてくれるそうです。笑顔で話しかけてくれたり、子どもがぐずった時に、歌をうたってあやしてくれた人がいたというお話しもありました。「こうすべき」という考え方がなく、それぞれの子育て方法が尊重されること、他の子との違いを楽しめることが、カナダで子育てしやすいところだということでした。

 

取材協力/ブリティッシュ・コロンビア州政府 取材・文/高祖常子

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
この記事の関連キーワード
人気連載
JavaScriptをOnにしてください