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miku39号 2014年冬号

ノルウェーの子育て

緊急現地取材 子どもの権利を最優先する国ノルウェーの子育て

ベビーカーを押していると、おじいさんでさえも道をあけてくれたり、階段ではさっと手を貸してくれるという国。ママも当たり前のように、出産後に仕事に戻れるノルウェーの首都オスロの子育てを、miku編集部が取材してきました。
 

男女平等を貫き個人を大事にする国

ノルウェーは、徹底した平等と個人主義の国。移民や難民も多く受け入れており、男女、民族、肌の色、言葉、宗教などによる差別や不平等をできるかぎり排除しています。大人はそれぞれが経済的に独立し、妻は夫に依存せず(納税義務も別)、子も親からできるだけ早く独立しようとする考え方があります。

 

こども・平等・社会省(Ministry of Children, Equality and Social Inclusion)と「平等」という名称が省名に入っているところからも、国としての意志の強さが伺えます。

パパの育休が義務づけられたのは20年前

ノルウェーも、20年前は父親緊急現地取材!の育休取得率は今の日本とほとんど変わりませんでした。1978年にノルウェーの男女平等法が制定され、「公的機関の委員会、執行委員会、審議会、評議員会などでは、それぞれの性が4割以上を占めなくてはならない」(数値は1988年に改正)とされました。現在、女性閣僚は全体の約半数。大企業の取締役の約4割が女性です。
 
1977年から父親の育児休暇制度がありましたが利用率が低く、1993年にクオータ制( 父母合わせて最大54週の育児休暇のうち、4週間は父親が取らなくてはならない)が導入されました。

 

現在では、出産前3週間も含め育休期間49週を選ぶと期間中は給与の100%が支給され、59週を選択すると80%が支給されます。2014年は父親が10週以上育休を取得することが条件(クオータ制)となっています。この条件は、2003年は4週、2012年は12週、2013年は14週と政権交代などで議論され、毎年改訂されています。クオータ制がスタートした1993年には2~3%しかなかった男性の育休取得率ですが、現在では約90%の取得率になっています。

保育園

希望すれば必ず保育園に入れる

妊娠出産で仕事を辞めるという人はほぼ皆無で、育休後は男性女性に限らず、同じ職場の同じポジションに戻ることができます。そのために、「子どもを保育園に必ず入れられる」「職場の働き方の柔軟性」「子どもが病気の時などに仕事を離れられる」という3つのことが保障されています。
 
保育園は就学前幼児教育の場という位置づけで、barnehager(英語ではKindergarten)と言われます。ノルウェーでは1年間は育児休暇が取れるので、0歳児を預かる公立の保育園はありません。社会全体が出産後の約1年間は育児休暇を取得する前提で動いています。自治体は親が保育園への入園を希望した場合、必ず用意しなくてはならないと規定されています。日本のような待機児童問題はノルウェーにはありません。

 

1歳~5歳児の約9割が保育園への入園を希望し、希望はすべてクリアされています。乳幼児の母親には母乳を与える権利もあります。ママが働いてパパが育休を取っている場合、ママの職場にパパが赤ちゃんを連れてきて、母乳を与えるサポートを行うことも認められています。2014年に新しい法律ができ、働くママが1歳未満の子に母乳をあげる時間が有給扱いになりました。
 
保育園での昼食を用意するのは親の役目で、基本的に弁当を持参します。
 
小規模保育ファミリエ バーネハーゲ(familiebarnehager)もあります。保育園に代わり3歳未満の幼児を小規模の人数(5名程度まで)預かるシステムで、日本にもあるような保育ママ的なものです。 自治体のレベルで認可、指導が行なわれています。

保育園

小学校

ファミリーホーム シェトレアンドレさん

オスロでは、約500 人の子どもたちが175 施設で暮らしています。何らかの家庭問題を抱えて親元に居られない子どもたちはほとんどが里親の元で暮らしていますが、約1割が施設で暮らしています。

 

一軒家のようなこの施設には、12~18 歳の6人の子どもたちが暮らしており、1人1部屋が与えられています。友人を呼ぶのも自由です。ここにいるのは、虐待などで家にいるリスクを抱えている子どもたち。平均1年半から4年くらいを過ごします。普通の家と同じ環境
作りを心がけ、子どもたちに愛情を注いでいるスタッフは、全員がセラピスト。生活の中にルールはありますが、厳格な規則はありません。罰則も一切設けていません。良いこと悪いことは、その都度教えています。

 

隣にファミリーセラピストの家があります。子どもたちの親ともコミュニケーションを取りながら、親自身の心の回復を図っています。

自然を愛し子どもを大切にする国

ママが働いている家庭がほとんどのノルウェー。パパに話を聞くと、家事や育児を担うのは当たり前。妻だけに家事をさせているのが友だちに伝わると、パートナーを召し使いのように使っているようで、恥ずかしいと言います。

 

仕事は職種にもよりますが、15時か16時には終了する場合がほとんど。16時前後、保育園や小学校の周囲は、お迎えのパパやママの車でいっぱいになります。早く帰って、子どもの迎えをし、17時頃には家族が家に揃い、パートナーと夕食を作ったり、子どもと遊んだり。家族で過ごす時間を大切にするために、朝は7時頃からオフィスで働く姿も見られます。自然が多い国ですが、週末は森に散歩に行ったり、山小屋で過ごす家族もとても多くいます。
 

「子どもオンブット」という国王直轄の団体があり、子どもも1人の人として尊重されています。子どもを怒鳴りつけたり、「こうすべき」という接し方がありません。大人の声にかき消されないようにと、子どもの声を心がけて聞こうとしている印象があります。

 

 

時間の流れはゆるやかですが、決して怠惰ではなく、自分も相手も家族も子どもも尊重している国。ピシッと背筋が伸びているような印象を受けました。そんな文化が、住んでいる人たちに心地よい、住みやすい空気を作りだしているように思います。

ノルウェー人パパに聞きました!

「一番上の子は日本で生まれましたが、下の2人はノルウェー生まれです。日本との違いは、出産方法も、働き方も選択できるというところだと思います。たとえば出産時にも、無痛分娩か自然分娩かを選ぶことができます。妻は働いていませんが、職場のルールの中で2週間の育休を取りました。朝は6時過ぎには電車に乗って会社に向かい7時から仕事開始。15時に仕事を終えて16時には帰宅しています」という2歳、4歳、7歳児のパパ。家では料理を作ったり、帰宅後に親会(保護者会)に出席したり。パートナーとは「お互いの違いを認め、尊敬し合うことが大事」と思っているということです。

子どもの権利を守る子どもオンブット

子どもオンブッドは、子どもを養護し、子どもの権利を守る活動をしている団体です。団体は1971年にスタート。簡単に言うと、子どもの声の広報担当者です。子どもがおかれている状況をキャッチするために、子どもとの対話が欠かせません。暴力や虐待、いじめなどにさらされている子どもから直接話を聞いています。個別のテーマに合わせた子どもたちのエキスパートグループを作り、議論を重ねて提案を作り、それを政治家に提案しています。国王直轄の部門ですから、政治家や関係省庁に提案することが可能です。内容によっては政治家が子どもたちに直接会って内容を吸い上げ、政策決定につなげていく場合もあります。子どもが健やかに育つことは、国の将来の利益にもなります。

漁業省副大臣もイクメン

「要職にあっても、育休でも有休でも取るべきであり、トップが不在でも組織に停滞はあり得ません。私のプライオリティは、子どもです!」と4歳と6歳の男の子のパパ。通常は朝8時から仕事をスタートして16時に終了。副大臣になりイベントなどの出張も多いが制限し、週2~3回は子どものお迎えに行っているとのこと。日によっては14時に帰宅するなど、子どもの時間を確保するためにフレキシブルな働き方をしていらっしゃいます。

 

ノルウェー在住のママたちにお話を伺いました

渥美裕子さん(2歳男の子)、リボアル菜巳乃さん(3歳女の子)、大坪なつ恵さん(2歳女の子、4歳男の子、7歳女の子)、峯俊直美さん(5歳女の子)、吉田素子さん(4歳男の子、1歳双子の女の子)、山本圭子さん(5歳男の子、1歳男の子)、オルセン奈都紀さん(2歳女の子、5歳女の子)

Q: 出産はどうでしたか?子どもにかかるお金は?

 妊娠出産は全て無料です。ノルウェーでは、国が国民番号を配布していますが、主治医も決められます。子どもはパパかママの主治医が担当することになります。妊娠中は基本的に月1回の健診。保健婦さん(日本で言う助産師さん的な人)を選ぶことができます。でも双子などでなければ、妊娠18 週にエコーを撮るくらい。38 歳以上だと12 週にもエコーを撮ってもらえます。
 
産後は3時間くらいしたら、隣の「ホテル」と呼ばれるところに自力で歩いて行きます。家族で泊まれますが、2日くらいで退院です。働いていない人の場合は、出産一時金として3万5000クローネ(日本円で約59万5000円※)もらえます。入院するときのタクシーも無料でした。

 

集まってくれたのは、仕事をしているママ、大学生のママ、専業主婦のママたち。

 

 

※1クローネ=日本円17円で換算

Q: 子育ての環境はいかがですか?

  子どもをメインに考える国ですね。離婚する人も少なくありませんが、離婚後も子どもにとってパパとママであることは変わりませんから、送り迎えを継続するのは珍しいことではありません。
 
子連れでカフェやレストランにも行きますが、日本では「すみません」と謝ってばかりでしたが、こちらでは周囲の目が優しいので「ありがとう」と言う言葉が自然と出てきます。
 
ノルウェーでは、「しつけ」と言う考え方がないようにも思います。怒鳴りつけたり、もちろん叩くこともありません。静かに語りかけて教えます。「それぞれの子が、そのままでいい」という考え方が基本です。大人になって自立していかれるかということが重要。教育は、落ちこぼれを作らない、ゆっくりな子どもに合わせるという考え方です。

Q: 保育園や学校はいかがですか?

 保育園は有料ですが、小学校、中学校、高校、大学は全て無料。ノルウェー語ができない子には、アシスタントの先生がつきます。
 
小学校では成績表がありません。高校では約半数が職業高校へ通います。大学入学は高校の成績を出すだけで、受験などはありません。入りやすいけれど、ちゃんと勉強しないと卒業できません。
 

Q: 医療費やワクチン接種料はいかがですか?

 子どもの医療費は16 歳まで無料。ワクチン接種も国で定め
ているものは全て無料で受けられます。ワクチンの種類が多い
ので、同時接種も当たり前に行われていますね。
 ノルウェーでは基本的に子どもに薬を使わないんですよ。風邪を引
いても熱が出ていても、診察して「様子を見ましょう」というだけなの
で、ちょっとした風邪や熱では病院に行かなくなりました。

 

取材・文/高祖常子
 

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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