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miku43号 2015年冬号

ダブルケアになったらどうする?

家族で事前にイメージしておくことが大切

子育て中の家族が、育児と介護を同時にしなければいけない「ダブルケア」。出産の高齢化に伴い、親に子育てのサポートを頼れないばかりか親が倒れてしまい、子育てしながら親の介護をしなくてはいけない家族も増えてきています。将来自分たちがそのような状態になった時、どのように向き合えばよいのでしょうか。また、どのようなサポートが得られるのでしょうか。ダブルケアの研究活動や家族支援に関わる相馬直子先生に伺いました。

相馬直子先生


横浜国立大学大学院国際社会科学研究員准教授。ダブルケアを研究課課題とし、実態調査やダブルケアサポーター養成など支援策の検討を行う。家族政策の国際比較研究、保育、幼児教育政策に関する比較研究なども行っている。1児の母。

http://double-care.com/

「育児」と「介護」を同時進行で行う「ダブルケア」

「ダブルケア」という言葉を、聞いたことがありますか? 「ダブルケア」とは、英国ブリストル大学・山下順子さんとの共同研究で作った言葉。文字通り、育児で子どものケア、介護で親のケア……と、育児と介護を「ダブル」で同時に「ケア」をする状態のことを言います。その担い手は、主に現役の親。かつては、育児がひと段落してから年老いた親の面倒をみていたのが、晩婚化や出産の高齢化などにより、育児と介護を“同時進行”せざるを得ない状況になってきているのです。
 
ひと言で「介護」と言っても、「病気の親と同居し通院や食事づくりなどの面倒を見ている」「近くの介護施設に入居している親の様子を時々見に行く」などいろいろなパターンがあります。「大きな病気を患ってはいないけれど、別居してひとり暮らし、または夫婦で住んでいる年老いた親の様子を定期的に見に行く」「離れて住んでいる高齢の親に定期的に電話して安否を確認する」なども、広い意味で考えれば「介護」ととらえることができます。このように考えると、「現在ダブルケアに直面している」ママは、年々増加傾向にあるといっても過言ではありません。少子高齢化、晩婚化、出産年齢の高齢化が進むなか、今後日本ではますますダブルケア人口が増えていくことが予想されます。

 

医療の発達により平均寿命がのびて高齢化が進んでいること、少子化により、介護を分担する兄弟や姉妹も減ってきていることなども重なり、ダブルケアラーの負担は精神的にも肉体的にもかなり大きいもの。さらに、共働き家庭のママやパパの場合は、育児、介護と仕事とのバランスも考えなくてはなりません。

「子どもとじっくり過ごす時間が持てない」という罪悪感

ダブルケアは、それぞれの家庭によって、実にさまざまな状況が浮かびあがってくるものです。そして、忙しい毎日の中で、育児、介護、仕事に奮闘し、悩むママたちの切なる思いも聞こえてきます。
 
中でも、「夫が家事や育児、介護に協力的でない」という状況がダブルケアの大変さを増加させています。「精神的にしんどい」「体力的にしんどい」と大きな負担を感じているママが多数存在しています。乳幼児の子育て真っ最中のママからは、「ダブルケアで忙しくて、地域の子育てひろばに連れていってあげられない」など、子どもを遊ばせる時間、子どもと落ち着いて向き合う時間を十分に持つことができないことを気にする声も上がっています。
 
「育児の悩みはママ友と共有できるけれど、ダブルケアの悩みはママ友にはなかなか話せない」「ママ友にダブルケアのことを話したら『大変ね』と同情されてランチなどに誘ってもらえなくなり、寂しい思いをした」といったケース、「親(義理の親)の緊急時に子どもを一時的に預ける場所が見つからず、子どもと一緒に役所や病院に足を運ばなければならず、てんてこまいだった」というケースもあります。ダブルケアに直面している多くのママは、母、妻、嫁、娘、労働者など、一人で何役もこなしながら“孤軍奮闘”していると言えるでしょう。

「もしダブルケアになったら」の将来をイメージしておこう

このような現状を受け、ダブルケアに直面する人たちを支援する取り組みが、全国的に少しずつ増えてきています。そのひとつが、「ダブルケアに直面する人たちを精神的に支える」というもの。神奈川県横浜市の子育て支援に取り組んでいるNPO などが、「ふだんはなかなか言えない愚痴や悩み、不安を語り合うことで精神的な孤立を防ごう」という目的で、ダブルケアの当事者を集めて座談会を開催しています。ダブルケア当時者に寄り添うサポーター養成講座などもあります。

 

また、介護のプロフェッショナルであるケアマネージャーやヘルパーの役割を拡大し、訪問介護の際に、お年寄りだけではなく介護に向き合うママをはじめとする家族の相談役としても活動できるような取り組みも始まっています。地域社会で子どもと高齢者との多世代交流ができる場をつくり、ネットッワークを作るなど、地域の取り組みをチェックしてみましょう。

 

今は関係なくても、親が倒れるなど、ある日突然ダブルケアに直面する日がやってくるかもしれません。育児と介護のダブルケアは経済的負担も大きく、今は共働きでも、どちらかが介護のために働き方を変える、仕事を辞めるなどという状況になれば、世帯年収が大きく減る可能性もあります。もしもそうなった時、介護の担い手や費用はどするか、どのような方法でダブルケアと向き合うのか、自分たちが住む地域の地域包括支援センターはどこにあるのか。家族で事前に相談し、情報収集しておくことも大切です。

ダブルケアケーススタディ

ケース1 Aさんの場合

(専業主婦/6歳・2歳の2児の母/近くに住む父の介護)

 

ダブルケアの状況
脳梗塞で倒れた後、半身麻痺と軽い認知症のある父親がいる。父親と同居している母親が主に介護をしているが、毎日のように様子を見に訪ね、日常生活を支えている。

 

Aさんの声
「朝8時半に長男を小学校に送り出した後、すぐに2歳の次男を連れて両親の家に行き、父が施設にリハビリに出かける準備を手伝っています。子どもは動き回るし、父の持ち物で両手はふさがっていて、全然気が抜けません。次男に手がかかり、父の介護が十分にできていないことに罪悪感を持っています」。

ケース2 Bさんの場合

(パート勤務/9歳、6歳、3歳の3児の母/遠くに住む父の介護)

 

ダブルケアの状況
父親が脳梗塞の後遺症で失語症、身体不自由に。施設入所をすすめられているが、「家で過ごしたい」という父親の意志を尊重し、訪問介護を受けながら一人暮らし。ケアマネージャーから父親の様子を聞いている。

 

Bさんの声
「現在3つのパートのかけもちをして働いています。父をもっと支えたいのですが、経済的に困難です。今後、父の介護にどのくらいのお金がかかるのか、正直なところ不安です。夫は家にあまりお金を入れてくれません。義理の両親が育児を助けてくれていますが、子どもにもっと手をかけてやりたいとも思っています。時間とお金の余裕が欲しいです」

ダブルケアになった時の相談先やサポート先

現在ダブルケアに直面していて不安や悩みを相談したい場合、将来に備えて知りたいことがある場合は、以下の場所に問い合わせてみましょう。


地域の子育て支援センター
保育所、一時預かり施設、ファミリーサポートなど地域の子育て 支援サービススポット
地域の男女共同参画センター
地域の介護施設やケアマネージャー

※「第一回ダブルケアサポーター養成講座研修資料(2015年10月16日 山下順子・相馬直子)より」

 

 


イラスト/サカモトアキコ 取材・文/長島ともこ

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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