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miku 47号 2016年冬号

おもてなしの心を知る茶道体験

日本の伝統文化に触れよう!

礼儀作法に厳しく、敷居が高いイメージのある茶道。でも、そこには日本人が昔から大切にしてきた「相手を思いやる心、おもてなしの心」が詰まっています。今回は、茶道を通じて、子どもたちにも知っておいてほしいマナーを教えてもらいながら、「おもてなしの心」を自然に感じられる体験をしてきました。お友だちや親戚の家にお邪魔するとき、実際に役立つ作法がたくさんあります。

 

秋山泰彦先生


両親が表千家の茶道教授だった影響で茶道をはじめる。2007年表千家同門会東京支部役員に就任、2010年同支部事務長に就任。東京で行われる表千家家元行事の支部責任者として現在に至る。企業茶道部はじめ大人のお茶の会だけでなく、学校茶道講師として、渋谷教育学園渋谷中学高等学校茶道部、東京農工大学茶道部、そのほか都立高校や市立中学校茶道部など、子どもたちへの教授にも熱心に活動している。

自分たちがたてたお茶を、ママに飲んでもらいました。

お箸を置くときも、丁寧に。

国際社会だからこそ、大切にしたい和の心

昔と比べ、子どもたちが和室で過ごす機会は減っています。それでも祖父母や親戚の家にお邪魔するときなど、和室で過ごす機会もあるでしょう。何より、日本の文化ですから、子どもたちにも和室のよさを知っておいてもらいたいものです。グローバル社会だからこそ、日本人として和文化に触れておきたいという声もあります。
 
今回は、日ごろお友だち同士、招き招かれ洋室でおうちパーティーをしている子どもたち4人に、和室でお茶に招かれる体験をしてもらいました。「抹茶初体験」が3人です。さて、どんな体験になるかな?
 
「みんなのおうちに和室はある?」と聞いてみると、案の定「おじいちゃんちにならある~!」という答え。リラックスモード全開です。「今日はね、みんなは秋山泰彦先生と髙安和子先生にお茶に招かれました。人のおうちにお呼ばれしたのだから、いつもよりちょっとお行儀よくしないとね」と、ママたちの方が緊張している様子。
 
「確かに茶道には作法があります。でもそれは、相手をもてなしたいという気持ちからうまれてきたものばかりです。子どもたちにとって作法を身に付けることは、相手の立場にたって考えたり、落ち着いた行動をとれるようになる基盤になるかもしれません。茶室で菓子と抹茶をいただく。シンプルなことですが、その動作ひとつひとつに理にかなった意味があるんですよ」と先生方。
 
さぁ、まずはお茶菓子をいただきましょう。「わあ、ペンギンだ!」「こっちはカニの形をしてる!」。その様が、まさに茶道の「菓銘を聞いて、形や色を楽しむ」作法そのものです。

 

この日のために遠方まで足を運び、用意くださった菓子。「子どもたちによろこんでもらいたい」というおもてなしの心と、教えを請わなくても素直によろこび、自然に作法を実行している子どもたち。双方の想いは、茶道の心そのものです。
 
はじめ、ママたちは「茶道なんてちょっと敷居が高い気が……」「子どもたちにちゃんとできるかしら」と心配していましたが、子どもたちにとってそこが洋室でも和室でも、ケーキでも和菓子でも、関係なさそうです。先入観のない子どもたちだからこそ、茶道を素直に心で楽しむことができるのでしょう。

 
 

和室でのマナー

ふすまの開け閉め。引手に近い方の手を使って開けるのが基本。写真の場合、まずは左手で自分の体の前まで開けて、次に右手で自分が通れる幅まで開けます。子どもたちも、見慣れぬふすまの開け閉め。真剣に話を聞いています。

お部屋に入ってからまた一礼。それから立って、畳の角をまたぎ、自分の座る位置までまっすぐ進みます。たたみのヘリには、昔は家紋が入っていたので踏まないように、とされています。

菓子をいただく

「お先にいただきます」と次の人に声をかけてから、お箸で一つずつ懐紙に取ります。お箸の丁寧な持ち替え方も教えてもらいました。

使い終わった懐紙は、着物の袖にしまうのよ。

抹茶をいただく

器は、丁寧に両手で持ちます。器の柄を自分の方に向けて楽しむのが基本ですが、今回、子どもたちはみんなに柄をみてもらいたいから、と自分たちなりに考えて持つ向きを選びました。

 
まずは先生の振る舞いをじーっくり見て覚えます。さすが先生、美しい所作です。

お茶をたてる

「たてる」と言うの? とさっそく「いれる」との違いに気付いた子どもたち。「茶筅をたたせて持ち、素早く泡立つように混ぜるとふわりとした口当たりのおいしいお茶ができるよ」と教えてもらいました。

うれしい&楽しいと自分たちもおもてなしをしたくなる!

子どもたちはもてなされているばかりではありませんでした。お茶をいただくとき、先生が「器の柄を自分の方に向けて」と説明をすると「私はみんなに見えるように柄を向う側にしたい」と言い出しました。「おいしかったから、お母さんにも食べてもらいたい」という子まで。これはまさに「おもてなしの心」の芽生えです。

 

「それでは、みんなにもお茶をふるまってもらいましょうか」と、予定にはなかったお茶をたてる体験にまで発展しました。

 

ちょっとした変化にも敏感で、手にしたお箸が濡れていることにもすぐに気付きます。「お箸が濡れてるよ!」。すると先生が「これはね、招かれている人に気持ちよく過ごしてもらうように、きちんと洗っていますよ、とさり気なく伝えるために、わざとほんの少しだけ濡らしてあるのよ」と教えてくれました。作法をただの型として覚えようとすると敷居が高く感じられますが、子どもたちは体験の中で、自然に「なぜそうするのか」を知り、その作法の必要性を理解していくのですね。

 

日常生活でもきっと同じです。子どもたちは生活の中でも「これはどうしてこうなっているんだろう?」と、頭をフル回転。その問いに大人はつい「いいからこうしなさい」と見えることにばかり気を取られ、形ばかりを教え、「なぜなのか?」の理由まで子どもたちに伝えてあげられていないかもしれません。でも、「なぜ」の理由がわかると、子どもはすっとそれを習得できることもあるようです。親子時間を過ごすとき、頭の片隅に少しでもそのことをとめておくと、子どもとのコミュニケーションも変わってきそうです。
 
茶道をはじめとする和文化に触れることで、日本人が元来持っている相手を思いやり、自分で考える心を育む体験ができるかもしれません。今回の記事をヒントに、日常生活の中でのおもてなしの心について考えてみませんか。

子どもたちがいただいたおもてなしの心

靴をそろえる

昔から日本では「靴をそろえると心もそろう」と考えられています。ひとつひとつの行動にけじめを付けることを重んじ、そうした習慣が身に付くと、心の乱れも整うということからです。椅子から立ったら椅子をそろえ、服を脱いだら片付ける。こうしたけじめの付け方が、生活のいたるところにあふれています。ささやかな行動ですが、これらを積み重ねていくと、成長して大きなことを成すときも、ひとつひとつけじめを付けながら自分の行動について考えられる癖が付きます。靴をそろえることは、簡単なようでいて、人間性までみられるような大切なこと。小さなうちからそうしたことを、生活の中でそっと教えてあげられるといいですね。

参加しました!

形ばかりにとらわれない子ども目線の発想にびっくり!

 

高橋愛香(あいか)ちゃん(5歳)&康代ママ


「茶器の柄をみんなに向けて飲んだらみんなに見えていいんじゃない?」など、子ども目線での発想が飛び出してきてとても驚きました。慣れない襖の開け閉めから教えてもらい、とてもよい体験でした。

相手がよろこんでくれると自分もうれしい!

 

田中麻莉菜ちゃん(5歳)&尚美ママ


初めての抹茶は苦くて一口しか飲めませんでしたが、自分がたてたお茶をおいしく飲んでもらえた事がうれしくてたまらなかった様子です。日本文化や相手を思うおもてなしの心の大切さを学ぶいい機会となりました。

立ち振る舞いや作法が身についてくれるといいなぁ

 

小林咲絢(さあや)ちゃん(6歳)&友里ママ


数日経ってからもおもてなしの気持ちを思い出し、食器棚からグラスを取り、お水を入れて、どうぞ!と出してくれます。今回の体験から、おもてなし=よろこばれることと感じたようです。またしたいな~と言っています。

女の子のお稽古だと思ってたけれど、男の子にもおすすめ!

 

山下翼くん(6歳)&こずえママ


日本の春夏秋冬。相手を思いやり、謙遜するということ。五感を刺激するお菓子。ちょっと苦いお抹茶。すべてがすばらしい体験でした。これからを生きる子どもたちに是非とも身に付けてもらいたいお稽古事だと感じました。

 

撮影/長尾浩之 取材・文/山田治奈

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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