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miku 48号 2017年春号

「ワンオペ育児」にさようなら

夫婦で話し合おう、遠慮なく周りに頼ろう

「ワンオペ育児」という言葉を聞いたり、共感したママも多いはず。ママ(パパ)が一人で育児家事を回す「ワンオペ育児」。背景と現状、そして「ワンオペ育児」から抜け出す方法について、ワンオペ育児についてのコラムを多数書かれている明治大学商学部教授の藤田結子先生に伺いました。

藤田結子先生


明治大学商学部教授。慶應義塾大学文学部人間関係学科卒業、ロンドン大学で博士号取得。専門は社会学、メディア・文化研究など。人々の生活の中に入り、その暮らしぶりを体験しながら観察や調査を行うエスノグラフィーの手法でさまざまな研究を行う。1児の母

男性の労働時間の増加により妻が家事や育児を担うことに

「ワンオペ育児」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。語源は、チェーン店などで、従業員ひとりがすべての業務をきりもりすることで問題になった「ワンオペ(ワンオペレーション=ひとり作業)」。これが、ママたちの家庭内労働=家事、育児と通じることから、ネット上を中心に広がりました。
 
多くのママが、この言葉に共感しました。その理由のひとつに考えられるのは、男性の労働時間の増加です。「日本人の働き方と労働時間に関する現状」の調査によると、平日に10時間以上働く男性の割合は、1981年の20%から、2011年には44%と増えています。労働時間の増加で帰宅時間が遅くなり、夫は家事や育児と向き合う時間がほとんど取れないと言う現状があります。
 
その結果、ママが“ワンオペ”で家事や育児の大半を担う家庭が増えているのです。夫の単身赴任によって、否応なしに「ワンオペ育児」にならざるを得ないというケースも聞かれます

 

地域とのつながりが弱く、ママが孤独や不安に

もう1つの理由は、女性の晩婚化、晩産化です。学校を卒業し、社会に出てある程度のキャリアを積んでから出産する女性は、地域やママ同士のつながりが希薄な状態からの“母親スタート”となることが少なくありません。ひと昔前は、祖父母はもちろん、近所の人が乳幼児を抱えている親をサポートしてくれるコミュニティがありました。それが今では核家族化が大半を占め、地域社会とのつながりが薄れているため、ママが孤独感を感じやすくなってきています。
 
共働き家庭も増え、自身の仕事をこなしながら家事や育児のほとんどを引き受けるママ。専業主婦で夫の帰宅時間が遅く、近所に知り合いも少ないため、相談相手もなく不安が大きくなるママ。共働きなのに夫の帰りが遅く、戦力や相談相手にならない、さらに夫が単身赴任……。ワンオペ育児にならざるを得ないママ、シングルマザー……。
 
さまざまなママたちが、それぞれの立場で「ワンオペ育児」になっている。これが「ワンオペ育児、私のことだ」という広まりになっているのでしょう。

6歳未満の子どもを持つ夫・妻の週全体の家事関連時間の変化 1996年~2011年

夫の家事関連時間は15年で週あたり約30分増えていますが、妻との差は顕著です。

※ 内閣府/「仕事と生活の調和レポート」2013より

 

専業主婦世帯と共働き世帯の数の変化

専業主婦世帯は減少、共働き夫婦は増加傾向にあり、その差が広まりつつあります。

※ 労働省「厚生労働白書」、内閣府「男女共同参画白書」(2014 年度版)、総務省「労働力調査」(2002 年以降)より

パパに積極的に相談し、夫婦でとことん話し合おう

これまで、「ワンオペ育児」と向き合う多くのママたちに話を聞いてきました。中には「この現状をどうにかしたい」と夫婦で話し合いを重ね、状況が改善したケースもあります。しかし、多くの夫婦が「夫と話し合っても平行線のまま」「現状を改善したいけれど、お互いの職場環境が変わらず働き方を変えることができない」など、努力はしているものの解決までには至っていないことがわかりました。
 
家族の構造や社会状況の変化に伴い、妻が、そして夫が、家事や育児と向き合う環境が変化していくのは自然なことといえますが、そもそも、育児は社会全体でするべきもの。一人で抱え込まず、誰かに頼っていいものなのです。
 
また、子育ては、しつけや健康管理はもちろんのこと、保育園や幼稚園はどこにいくか、習い事はどうするかなどの、“決断”の連続。ちょっとしたことをいつでも相談できる状況にあることが必要です。

 

すべてを自分で決めようとするのでなく、まずは、パパにどんどん相談しましょう。これまで「パパに「ワンオペ育児」の悩みや不満をぶつけても、状況はあまり変わっていない」という人も、「これ以上話してもわかってくれないから」「忙しそうだから」などとあきらめないで。週末に2人の時間を取ってしっかり話をしたり、これまでと違った角度から相談をもちかけるなどしてみましょう。
 
日本では今、これまでの長時間労働を見直し、仕事と生活の調和のとれた働き方を実現する「働き方改革」の機運が高まってきています。どのように家族の時間を持ちたいのか、そのためにどんな働き方をしたらいいのかを夫婦で共有し、乳児期にはパパも短時間勤務を取り入れる、週に1度でも定時に帰るなど、会社に提案・交渉することも大切です。家族の時間を夫婦でデザインし、かち取っていく勇気も必要です。

夫は、家庭内での自分の役割は「仕事をがんばること」と思っているようで、家事や育児に協力的ではありません。ゴミ捨てだけはやってくれますが、他にも頼もうとすると「俺はこんなに仕事を頑張っているのになぜそんなことを頼んでくるんだ!」と怒ります。何も言い返せず、私がほとんどの家事をこなしています。(A さん)

 

夫はフルタイム、私はパート勤務でほぼ「ワンオペ育児」。夫はずいぶん家事や育児を手伝ってくれるようになったけど、仕事が毎日忙しいのであまり強要できません。つらいのは、子どもが体調を崩した時。熱を出して機嫌が悪い子を看病しながら自分も体調を崩してしまった時は、夫にも頼れず泣きたくなります。(Y さん)

 

共働きで、夫のほうが朝の出勤時間が遅いのにもかかわらず、子どもを保育園に送ってくれません。送ってもらえるよう何度が相談をもちかけましたが夫の態度は変わらないのであきらめました。夫を変えるには、時間もパワーもかかります。自分でやったほうが早いしラク、というのが実感です。(S さん)

3人目が生まれる前に、夫が単身赴任を命じられ、「ワンオペ育児」&出産。頼れる親族が近くにいなかったので、公園や児童館で出会い仲良くなった近所のママ友に助けてもらいました。夫はいなくても、ママ友がいる心強さを実感しました。(T さん)

 

共働きです。夫には育児にたくさん参加してほしかったので、妊娠中から、出産後の夫婦の働き方についていろいろ話したり、地域のプレパパ、プレママ講座などにも一緒に参加していました。そのせいか、育休復帰後は保育園の見送りなどに積極的に向き合ってくれます。夫も、朝子どもと過ごせる時間を楽しんでいるようです。(K さん)

 

夫も両親も頼れず、「ワンオペ育児」に疲れきってしまい、地域の広報紙で見つけた家事代行サービスを頼んだら、精神的にも肉体的にもとてもラクに。頼めるのは月に数回ですが、気持ちに余裕ができました。支出は増えるけど、長い目で考えるとよい選択ができたと思います。(A さん)

 

※藤田先生が集めたコメントおよび編集部取材のコメントを編集しました。

近所のママ友、地域のサービスを積極的に頼ろう

パパはもちろんですが、困った時に助け合える近所のママ友は、とても心強い存在です。仕事で保育園へのお迎えが遅れそうな時に子どものお迎えを頼んだり、帰宅まで預かり合うなど、ママ友同士で助け合っている方も少なくありません。お互いに助け合うことにより、わが子はもちろんのこと、相手の子どもの成長も喜びあえるママ友が一人でもいることは、「ワンオペ育児」のつらさや心細さを軽減させてくれるはずです。
 
ファミリーサポートなど地域の子育て支援サービスや家事代行サービスを調べ、利用するのも一案です。

地域の子育てサービスに携わっている方々は、地域の先輩ママやパパ、地域のおじいちゃんおばあちゃんも少なくありませんから、地域の方とつながるチャンスになることもあります。困ったときに頼れる場を、複数見つけておきましょう。
 
「ワンオペ育児」の環境を変えるのは大変なのですが、まず自分自身が「ワンオペ育児から抜け出そう」という意志を持って、一つずつ悩みをクリアしていって欲しいと思います。

 

イラスト/犬塚円香 取材・文/長島ともこ

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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