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miku 52号 2018年夏号

「助けて」と言える力 受援力を高めよう!

受援力とは、周りの人に「助けて」と言える力のこと

「受援力」(じゅえんりょく)とは、「助けて」と言える力。

「人に迷惑をかけない子に育てたい」と思う親の多くが、子育てにおいて「助けはなるべく求めず、自分で何とかしなければならない」と思っている傾向があります。
「助けて」と言える力はなぜ必要なのか、どうしたら言えるようになるのでしょうか。目白大学の黒沢幸子先生に伺いました。

黒沢幸子先生 Sachiko Kurosawa

 

目白大学人間学部心理カウンセリング学科、同大学院心理学研究科特任教授、臨床心理士。上智大学心理学科卒業、同大学院修了。スクールカウンセリングやブリーフセラピーも行う。KIDSカウンセリング・システム研究会のチーフもつとめる。
 

「受援力(じゅえんりょく)」。

聞き慣れない言葉ですが、ひと言でいうと、周りの人に「助けて」と言える力のこと。受援力は、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに注目されるようになりました。被災地の復興を早めるためには、被災地側のほうから「自分たちの地域が今どのような状況なのか」をボランティアの人たちに積極的に伝え、助けを求め、支援を受ける力(=受援力)を高めることが必要。このことが広く知られるようになり、受援力という表現も徐々に広まりました。


臨床心理学の分野でも、受援力は「被援助志向性」「援助希求能力」「援助要請能力」などと呼ばれ、研究されています。


日々の暮らしの中で、周りに頼らず、なんでも「自分でやらなくては!」と背負いこみ、小さながまんをため続けてしまうと、知らず知らずのうちにエネルギーが奪われ、苦しくなってしまうもの。周りの人に「助けて」と言える力=受援力は、すべての人にとても大切なものであり、中でも特に、育児、家事、仕事と忙しい毎日を送る親こそが、最も備えたい力です。

人に助けを求めることは生きる力

最近は、社会人として働き、仕事を通じて“自分で判断し、対処する”経験を重ねてから出産する女性も多いもの。そのようにしてママになった方の中には、初めての子育てで不安や心配がたくさんあるのに、「“自分はできない人間”と思いたくないし、周りからもそう思われたくない」という気持ちが強く、人に聞いたり助けを求めたりすることが苦手な方が多いように感じます。


インターネットやSNSなど、情報過多ともいえる環境のなか、知りあいのママが発信するSNSを見て、「○○さんはこんなにしっかり子育てしているんだ」「△△さんは、毎日子育て大変なのに、こんなにきれいな服を着てお出かけしてるんだ」……など、周りと自分を比較して落ち込んでしまうママも。

 

SNSでは“困っていて助けを求めたい自分”よりも“元気で充実している自分”を見せたい傾向があることを知っていながらも、これらの情報に振り回され、本当は困っているのに「今の悩みを口にしたら恥ずかしい」

「こんなことで『助けて』なんて言えない」などと殻に閉じこもってしまい、“平気”を装ってしまうことも少なくないでしょう。


まじめで頑張り屋のママほど、自分を追い込んでしまいがち。忙しい毎日を送っているとつい日常に流されてしまいがちですが、自分が困った時、周りの人に「助けて」と言えているかどうか、これを機に振り返ってみましょう。

自分が最も望むこと=ベストホープを考える

受援力を高めるには、どうしたらいいのでしょうか。大切なことは3つあります。


ひとつめは、「人に頼ったり、助けを求めたりするのは恥ずかしいことではなく、皆が健全に生きていくために必要なことである」ということを、ママ自身が認識すること。まずは一緒に子育てを担うパパに、助けて欲しいことがあったら具体的な言葉で伝えるようにしましょう。「パパは帰りが遅くて疲れてそうだから、今こんなこと頼んだら悪いかな……」などと考えすぎず、フラットな気持ちで伝えることが大切です。助けてもらったら、必ず「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。

 

2つめに大切なことは、子どもが夜寝たあとや週末などに自分自身を振り返る時間をもち、「今の自分が最も望むこと=“ベストホープ”は何か」ということを、じっくり考えてみること。今の自分のベストホープが浮かんできたら、それを軸に、ベストホープを実現させるためにはどうしたら良いか、何をどのように改善したら、ベストホープに近づくことができるのかを考えていきましょう。そうすることで、悩みや不安がある程度整理でき、どこに(だれに)どんな助けを求めたらいいかという道筋がみえてくることもあります。

 

3つめは、日々の生活の中で、“うまくいかなかったこと”に注目するのではなく、「夫が子どもをお風呂に入れてくれた」「買い物の時、欲しいものがあるといつもダダをこねる子どもが、今日はダダをこねなかった」など、ささいなことでも “うまくいったこと”に注目すること。「なぜうまくいったのか」を考え、「どうしたらそれが続くのか」のほうに意識を向けてみることで、物の見方がポジティブになり、「今度はこんな風に頼んでみようかな」「こんな風に声をかけてみようかな」など、これまで以上に上手に助けを求めたり、伝えたりすることができるようになるでしょう。

 

困った時や苦しい時は、遠慮せず、自分自身から「助けてほしい」と声をあげましょう。助けてもらうと、ホッとしたり、嬉しくなったり、心が温かくなったりしますよね。ママやパパ自身がそんな気持ちを常日頃から感じ、笑顔を増やしていく。そのようなやりとりを見ることが、子ども自身にも、受援力を伝えていくことにつながっていくのです。
 

受援力についてのQ&A

Q: 園に知りあいのママはたくさんいますが、「助けて」と言える人がほとんどいません。


A:  子どもが同じ園に通うママ同士というのは、子どもを通しての付き合いが主になります。ある意味表面的な関係でもあるため、本当に困ったときに自分をさらけ出し、助けを求めることができる人が限られるのは当たり前のこと。ママ友でなくても、「助けて」と言える相手がたった一人か二人いるだけでも心強いものです。

Q専業主婦なので、小さな子どもをどこかに預けて自分の時間をもつことに罪悪感を感じます。

 

A:  ママが誰かの助けを借りて一人の時間をもち、リフレッシュすることは、ママの心身の健康のためにもとても大切ですし、元気な心で対応することは子どもにとってもプラスになるでしょう。子どもを預けることに罪悪感を持つ必要はありません。
 


Q:  家事代行サービスなどを頼むことも、受援力を高めることにつながりますか?

 

A:  知っている人に頼ることが苦手な場合は、お金はかかりますが、家事代行サービスなどを利用して家事を助けてもらうのもいいですね。時にはラクをしたり、手を抜いたりすることも、生きていく上では必要なこと。時と場合に応じて、自分に合う頼み方や頼む相手を夫婦で考えてみましょう。

Q 子どもの受援力を高めるにはどうしたら良いですか?

 

A:  「ママ、今○○に困っているの。△△を手伝ってもらえたら助かるんだけど」など、子どもができる範囲内で具体的にお手伝いを頼みましょう。手伝ってくれたらその都度「ありがとう、助かったわ」と感謝を伝えましょう。親子や家族でこのようなやり取りを繰り返すことで、助けたり、助けられたりすることは気持ちのよいことだとわかり、子ども自身も上手に助けを求められようになるでしょう。

 

 

イラスト:サカモトアキコ

取材・文:長島ともこ

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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