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miku 52号 2018年夏号

子どものイメージ力を育てよう

様々な遊びを通して”想像のタネ”が増える

人の気持ちを思いやる、相手の立場に立つなど、イメージする力は、大人になっても何かと必要とされるもの。
創造力や社会性にもつながるイメージ力を育むために、親としてどのような関わり方を心がけたらいいのでしょうか?幼児期の育ちに詳しい渡辺弥生先生に教えていただきました。

渡辺弥生先生 Yayoi Watanabe


法政大学文学部教授、教育学博士。発達心理学の立場から、子どもの成長段階に沿った基本的なソーシャルスキルを育てる関わり方などについて研究、育児相談にも応じている。

著書に『ウチの子、最近、手に負えない!-イライラと不安がなくなるハッピーな子育ての秘訣』(すばる舎)他がある。

見立てや真似っこで芽生える。イメージ力に注目を!

子どもは一人遊びをする頃から、イメージを持つようになります。例えば、お人形のお世話をしたり、細長い箱を電車に見立てて動かしたり、砂をご飯に見立てて「もぐもぐと食べるフリをするのは、自分なりのイメージがあるからできることです。

 

それまでに見聞きしたこと、経験したことと結びつけて見立てるわけですが、生後まだ2年足らずの子どもがこのような行動をします。なぜできるかは人間の脳や心の発達のメカニズムという部分でまだ解明されていないのですが、すごいことですね。

 

さらに月齢が上がると、目の前にいない人の言動を真似したり、テレビで見た動きを真似てヒーローになりきったりします。ママやパパを相手に遊ぶ時期を経て、4歳ごろになると友だちとイメージを共有して“ごっこ遊び” を楽しむようになり、遊びの広がりと共にイメージ力が豊かに育まれていきます。

 

イメージが持てることは、子どもの能力や知力、精神性の成長という意味で大事な一歩です。歩いたり言葉が出た時と同様に、もっと注目してほしいと思います。

 

大人になって、仕事で創造性を求められたり、人の気持ちを察して上手にコミュニケーションを図る上でも、イメージする力が必要とされます。人との会話は言葉によるイメージの共有で豊かになり芸術や本の内容もイメージ力があればさらに楽しさが膨らむでしょう。

“想像のタネ”をシェアする幼児期のごっこ遊び

ごっこ遊びは、他の人とのイメージの共有によって成り立つもの。例えば、一人の子どもが「これは○○電車だよ」と提示したら、他の子どもが「ぼくは運転手だよ」などと、誰かが出してきた“想像のタネ”を他の子もシェアしてイメージの世界が展開していきます。

 

また、年中・年長になると、ごっこ遊びで友だちとの役割分担ができるようになります。お互いの“想像のタネ”をシェアいあいながら、さらに遊びが盛り上がっていきます。

 

子どもは遊びを通して経験し、人間関係や気持ち、社会性などを体得していきます。幼児期のごっこ遊びの経験が、学童期の仲間づくりや、「これはなぜだろう?」など、疑問を持ち解決していく学びにもつながっていきます。

 

ごっこ遊びは想像力を育みますが、想像力があるからこそ相手の気持ちを考えて行動できる思いやりの心が育まれていきます。いろいろなものを作り出す創造力や、人と関わる社会性を伸ばしていくことにもつながります。

親自身が毎日を心豊かに生活していますか?

日常生活の様々な場面で、当然ですが、ごっこ遊びは、一番身近なママやパパの行動が無意識にベースになっていることが多くあります。そして子ども自らがイメージしたもの、つまり“想像のタネ”を表現した時にキャッチし、応答することがそのイメージをさらに膨らませることにつながります。

 

例えば、子どもが見立て遊びをしていて「ママ、ケーキを作ったよ!」と声をかけてきたら、「まあ、おいしそう!これは何ケーキかな?」と声をかけると、「うん、イチゴのケーキだよ」などと、想像が広がっていきます。子どものイメージの世界にのっかって一緒にやり取りを楽しみましょう。

 

親がいっぱいいっぱいだと、子どもが「パパ、郵便屋さんだよ!」と言ってきても、優しく応答できませんね。「忙しいから自分で遊んでなさい」なんて言われたら、そこから発想が広がりませんし、子どもは受け止めてもらえずにとても寂しい気持ちになるでしょう。さらに子どものイメージ表現を「そうは見えなよ」などと、否定するのはNG。せっかく差し出された“想像のタネ”を潰してしまうことになりますから、イライラしている時は要注意。言葉を発しなくても無意識のうちに出してしまうノンバーバル(非言語コミュニケーション)な表情や態度から、ネガティブな感情が子どに伝わってしまいます。

 

親自身がストレスを抱え過ぎずに過ごすこと、子どもが声をかけてきたときにおおらかな気持ちで対応することによって、子どもは受け止められたことを感じ、安心感のなかで発想をより豊かに広げていきます。

子どもがリラックスできるゆったり時間を大切に

最近はストレスを抱えた子どもが急増しています。人間が本来、一番幸せを感じるのは、心穏やかにリラックスしている時です。ところが、スポーツや習い事など毎日びっしりと詰まったスケジュールの中で過ごしている子どもたちが少なくありません。子どもがたまにゴロゴロしていると、「なに怠けてるの」と親のイライラを招いてしまうのが現実です。でも、一日中スケジュールが決まっている集団生活の中で過ごしていたら、大人でも心が休まることなく疲れてしまいます。


ボーッとしていて、何もしていないかに見える時にこそ、心身を休め、脳がリラックスして“想像のタネ”が自然と膨らんでいくものです。アクティブに遊ぶ時間と同じくらい、ゆったり時間は子どもに必要です。幼児期は習い事よりも、のびのびと自由な遊びの時間をたっぷり与えましょう。ママやパパも家事や仕事を一旦横に置いて、子どもと一緒にゆったり時間を楽しんでみてはいかがでしょう。


少し大きくなったら、友だちと自由に思い切り遊びこむ体験は、他では得られない多くの学びがあります。遊びを通して、自分で考える力、友だちと協力して問題解決する力、困難を乗り越える力など、総合的な生きる力が培われていきます。

想像のタネを咲かせよう

イメージ力を伸ばす関わり方

見立て遊びやマネっこ遊びは子どもの問いかけに応答しよう


カップに入れた砂をご飯に見立てて差されたら、「ご飯ありがとう。美味しいなぁ。もぐもぐ」「ママはデザートのプリンを作ったよ。どうぞ。」などとやり取りして、子どものイメージの世界に入って一緒に楽しみましょう。

子どものおしゃべりや行動を否定するのはやめよう!

 

「それは電車に見えないよ」と否定したり、「なにおかしなこと言っているの?」と子どもを馬鹿にするような対応はやめましょう。子どもはイメージすることをやめてしまいます。

子どもが見つけたものを一緒に見てみよう

 

子どもが道端にしゃがみこんでいたら、子どもが見つけたものを一緒に見てみましょう。

お話を作ってみよう


「公園に○○(子どもの名前)君がいました」とお話を子どもと作ってみましょう。「○○君は、何をして遊んだかな?」など、やり取りし、想像力を働かせながらお話をつないでいきます。

ちょっと時間を持て余したときにおすすめ。

日常の中のあらゆる体験が想像のタネになる!

カップに入れた砂をご飯に見立てて差し出されたら、「ご飯、ありがとう。美味しいなぁ。もぐもぐ」「ママはデザートのプリンを作ったよ。どうぞ」などとやり取りして、子どものイメージの世界に入って一緒に楽しみましょう。

子どもが道端にしゃがみこんでいたら、子どもが見つけたものを一緒に見てみましょう。

親「何を見つけたの?」

子「ありさんが歩いてるよ」

親「ありさん、どこに行くのかな?」

などと、会話を楽しんでみましょう。

 

年中・年長さんごろになると、子どもなりに周りを観察して、ごっこ遊びに取り入れるようになっていきます。「ママ役」「パパ役」「子ども役」「ペット役」「お医者さん役」「患者さん役」など、役割分担してお互いのイメージを共有して遊びます。

子ども自身が体験したり、印象に残った出来事がベースとなり、イメージが広がっていきます。体験は大事ですが、わざわざ遊園地や観光地に連れて行かなくても大丈夫。お手伝いをする、一緒に買い物に行くなど、親子で、子ども同士で関わること、日常生活のすべてが学びある体験になります。幼児期はいろいろな感覚が育つ時期です。

体験を通して、見て、聞いて、感じ……五感をフルに使うことが、想像のタネを獲得することになります。

イラスト:サカモトアキコ

取材・文:中野 洋子

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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