子どもも大人も夢中になる「守り人」シリーズの魅力とは? 新刊『風と行く者』は、ファン待望の大長編!
皆さん、「守り人」シリーズはもう読まれましたか?
このたび、「守り人」シリーズの外伝『風と行く者』が発売となりました。シリーズ本編完結から11年、そしてシリーズ最大の長編ということで、「守り人」シリーズファンの方からは歓喜の声があがっています。「守り人」シリーズは、NHKの大河ファンタジー「精霊の守り人」でも近年大きな話題となりましたよね。けれども、ドラマでストーリーは知ったものの原作は読んだことのないという方、また気になってはいたけれど実は詳しく知らないという方も多いのでは?
今回、新刊『風と行く者』の発売を記念して、いつか読みたいと思っていた大人の方に、またこれから出会う子どもたちに向けて、「守り人」シリーズの魅力を分かりやすく紐解いてみたいと思います。
まずは、新刊の『風と行く者』のご紹介です
作者の上橋菜穂子さんはこちらの『風と行く者』について次のように述べています。
「『風と行く者』は、どんぶらこ、と流れてきたわけではなくて、実は、かなり以前に書き始めたものの、途中で書けなくなっていた物語なのですが、それがなぜ、守り人シリーズ完結してから何年も経って! 短編集ではなく長編で、しかも、バルサのその後も書いてあるような物語が、今頃、ぽこっと世に生まれ出ることになったのか。
それは、ですね、いくつかの巡りあわせがありまして、その「巡りあわせ」が書かせてくれた、というのが正直な実感なのです。」
(偕成社HP『風と行く者』作品ページより抜粋)
いくつかの「巡りあわせ」によって生まれた大長編・・・いったいどんな物語なのでしょうか。
シリーズ最大の大長編『風と行く者』。バルサの今と20年前が交錯します
【初回限定特典付】 風と行く者
つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。
シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。
ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。
草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。
つれあいのタンダとともに、久しぶりに草市を訪れたバルサは、若い頃に護衛をつとめ、忘れ得ぬ旅をしたサダン・タラム〈風の楽人〉たちと再会、その危機を救ったことで、再び、旅の護衛を頼まれる。
シャタ〈流水琴〉を奏で、異界への道を開くことができるサダン・タラム〈風の楽人〉の頭は、しかし、ある事情から、密かに狙われていたのだった。
ジグロの娘かもしれぬ、この若き頭を守って、ロタへと旅立つバルサ。
草原に響く〈風の楽人〉の歌に誘われて、バルサの心に過去と今とが交叉するとき、ロタ北部の歴史の闇に隠されていた秘密が、危険な刃となってよみがえる。
ハードカバー版『風と行く者』には、初回限定特典として、佐竹美保さんと上橋菜穂子さんによる2枚の複製画がついてきます。
佐竹美保さんには、特典のための描きおろしカラーイラストを、上橋菜穂子さんにはNHKドラマ「精霊の守り人」の出演者のイメージで、バルサとジグロを描いていただいたそうです。
「守り人」シリーズの魅力とは?
12巻+今回の新刊からなる「守り人」シリーズは、読む人によっても巻によってもさまざまな魅力が感じられる物語なのですが、こちらでは、はじめて読む方やはじめて読む子に、できるだけ分かりやすく魅力をまとめてみました。
魅力その1 子どもも大人も、女性も男性も夢中になれる!
「守り人」シリーズの大きな魅力は、まず登場人物たちにあります。主人公は、女用心棒で短槍の達人のバルサ(30代の女性)ですが、ほかにも新ヨゴ皇国の第二皇子でのちに皇太子となったチャグム(10代の少年)、バルサの幼なじみで薬草師のタンダ(バルサより2つ年下の男性)、バルサの養父で百年にひとりといわれた天才的な短槍使いのジグロ、年齢不詳の呪術師トロガイをはじめとし、年齢も性別もさまざまな登場人物が活躍します。読者の年齢や立場によって、共感したり思い入れが強くなる登場人物がさまざま現れることでしょう。長い物語を読み進めながら、自分だけのお気に入りの登場人物を見つけてみて下さい。
魅力その2 運命に翻弄されながらも、他者を想い、他者を守りながら強く生きる姿に打たれる
先ほどご紹介した登場人物は、みな望む望まないに関わらず、与えられた過酷な運命に翻弄されながらも、他者を想い、他者を守りながら、強く生きています。その姿にはたびたび打たれるものがあり、読んでいると力をもらえます。
幼い頃から父の親友ジグロとの逃亡生活を続け、用心棒としての道を歩まざるを得なくなったバルサ、異界の精霊の卵を体に宿したため、父の帝に暗殺されそうになりながらもやがて皇太子の道を歩むことになったチャグム、また、国王暗殺の陰謀に巻き込まれた親友(バルサの父)の頼みを受け、地位や名誉といった全てを捨てバルサとともに逃亡し、やがてはかつての友と戦うことになったジグロなど、その運命は過酷ですが、それをどう自分の中で受け入れ消化して進んでいくのか、そこには読者の人生にも影響を与えるヒントが隠されています。また戦いにおいては強い登場人物たちでも、内面ではさまざま葛藤し、迷い、生きていく様に共感する読者も多いのではないでしょうか。
魅力その3 ファンタジーといえど、書かれている世界は私たちが住んでいる世界そのもの
物語に主に登場する国は、新ヨゴ皇国、カンバル王国、サンガル王国、ロタ王国の 4国で、後半になると海の向こうの大国であるタルシュ帝国や、それに征服された枝国(属国)も登場します。国によって言語も異なれば宗教も異なり、その中でさまざまな戦いの歴史があり、あらゆる事件が起きていきます。さまざまな風土、文化、社会を持つ国々とそこに暮らす人々が懸命に生きる姿は、まるで私たちが住んでいる世界のよう。物語を通して学ぶことや受け取れるものが豊かに内含されているシリーズです。
魅力その4 目に見える世界だけでなく、見えない世界が描かれている
この作品の世界には、目に見える人間の世界(サグ)と目に見えない精霊の世界(ナユグ)が登場し、この二つの世界が同じ時、同じ場所に重なって存在するところに面白さがあります。呪術師が呪術によってナユグを見たりそこの生き物と話したりできる場面もみどころ。見えない世界からのメッセージが事件を解決することも。
作者の上橋菜穂子さんも、次のようなメッセージを書かれています。
「もうひとつ、この物語を書くときに、心のなかにあった大切なイメージは、異界が、人の生きる世界に近々と重なって存在している世界のイメージでした。ふつうの人々には、確かには感じられない ── しかし、そこに確かに在る異界。 人にとっては、<精霊>や<神>に思える存在がうごめく異界と、人の世界がふれあうときに生じる不思議……そういう物語を書いてみたい、と思ったのです。」
(偕成社「守り人」特設ページより)
5分で分かる「守り人」シリーズ案内!
「守り人」シリーズとは?
「守り人」シリーズとは、1996年に刊行された『精霊の守り人』から始まる日本を代表するファンタジー。女用心棒バルサの活躍と、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムの成長を描く長編シリーズと、バルサの少女時代を描いた中・短編集、また今回発売となった『風と行く者』を合わせて13巻となるシリーズです。
<シリーズラインナップ紹介>
第1巻『精霊の守り人』
第2巻『闇の守り人』
第3巻『夢の守り人』
第4巻『虚空の旅人』
第5巻『神の守り人 来訪編』
第6巻『神の守り人 帰還編』
第7巻『蒼路の旅人』
第8巻『天と地の守り人 第一部 ロタ王国編』
第9巻『天と地の守り人 第二部 カンバル王国編』
第10巻『天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編』
作者は?
作者は上橋菜穂子さん。
2014年に、「小さなノーベル賞」とも呼ばれる「国際アンデルセン賞作家賞」を受賞されました。この賞をとったのは日本人ではまどみちおさんに続く二人目。2018年3月には角野栄子さんが三番目に受賞されたということで大きな話題となった賞です。
立教大学博士課程単位取得(文学博士)。専攻は文化人類学。オーストラリアの先住民であるアボリジニを研究。現在は川村学園女子大学特任教授。
代表作は「守り人」シリーズ(『精霊の守り人』(野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞、アメリカ図書館協会バチェルダー賞)『闇の守り人』(日本児童文学者協会賞)『夢の守り人』(前2作とあわせ路傍の石文学賞)『神の守り人<来訪編><帰還編>』(小学館児童出版文化賞))そのほかの著書に『精霊の木』『月の森に、カミよ眠れ』(日本児童文学者協会新人賞)『狐笛のかなた』(野間児童文芸賞)『獣の奏者』『鹿の王』(本屋大賞、日本医療小説大賞)などがあり、それぞれの作品において、国内外から高い評価を得ている作家さんです。
読み方案内
出版元の偕成社さんのHPに、とても親切な「読み方案内」が紹介されていましたので、こちらをご案内します。
『精霊の守り人』にはじまる、10巻+外伝2巻の「守り人シリーズ」。長いな、読んでみようか、どうしようかな、と迷っている方は、まずは、『精霊の守り人』か『闇の守り人』のどちらかを手にとってみてください。物語のはじまりであるシリーズ第1作の『精霊の守り人』、その深い心理描写から、大人がしびれる『闇の守り人』。この2冊を気に入った方なら、きっと、あっという間に読破してしまうはず。いや、読破してしまうのが惜しくなるはずです。
チャグムを主人公とした『虚空の旅人』からは、物語は大きく舵を切って、壮大な歴史絵巻となっていきます。ここからは、ぜひ、刊行した順番に読み進めてみてください。10巻以上なんて読めるかな、と思っている方、読まないなんてもったいない! ぜひ、ページをめくってみてください。物語の旅がはじまります。
『精霊の守り人』と『闇の守り人』どちらから読む?
それでは、最初の1冊としてまず読んでみてほしいという『精霊の守り人』と『闇の守り人』。こちらを読んだ小学生と大人の感想をちょっとご紹介します。読む年齢によって物語から受け取るものが変化するところにも「守り人」シリーズの大きな魅力があるようです。
【子どもレビュー】
運めいの輪が回る中で
私は、バルサは、強いなと思います。バルサは、運めいを苦にせず、むしろおもしろがっているように感じたからです。自分の子どもを殺そうとするチャグムの親の帝の気持ちは、私には、信じられません。けれど、帝も考えをせまられて、しかたがなかったんじゃないかなと思います。チャグムは、自分のうんめいがあまり変わらず、たいくつな日を帝になったら、すごすと思います。けれども、バルサやタンダ、トロガイとすごしていて、強くなったから、だいじょうぶだと思いました。(天使のケーキちゃん 10代以下)
【大人レビュー】
守り人シリーズ 第1作
人の命を助けることを生業としているバルサが、橋から落ちた皇子を
偶然助けたことから始まった、奇妙な運命のお話。
あることが理由で、実父である帝から命を狙われることになった皇子。
その用心棒として雇われたバルサは、皇子と共に命を守るための
逃亡生活を送ることになります。
なぜ皇子は実父に命を狙われることとなったのか?
皇子の中に宿ったものとは?
バルサの幼なじみのタンダ、呪術師のトロガイの存在も欠かせません。
バルサと旅を続けるうちに、「皇子」という殻を破り、1人の人間として
成長していくチャグム(皇子の本名)の姿が心理的描写と共に力強く
描かれており、精神的に成長していく様子が上手く表現されていると思います。
チャグムの中に宿ったものが生まれてはならぬと、ラルンガが襲ってくるのですが、
後半数十ページは、あまりにもめまぐるしいストーリー展開に目が離せなくなり、
一気に読んでしまいました。描写が細かく書かれていますので、すごくリアルに、
楽しく読み切ることが出来ました。
個人的に、かなりオススメなシリーズです。
(どんぐりぼうやさん 30代・ママ・男の子10歳)
【大人レビュー】
どんどん引き込まれました!!!
上橋先生がアンデルセン賞を受賞されたと聞き、「読んでみようかな」と手に取りました。
読み始めると、物語の中へ引き込まれる、引き込まれる!!!我を忘れて、一気に読んでしまいました。ハリーポッターシリーズと同等、またはそれ以上かな?
登場人物がそれぞれ魅力的です。バルサは女性でありながら、バッタバッタと敵をなぎ倒し、皇子を守る。それを見守るタンダの優しさもいい。
俗世間から離れて、冒険をしたいときに読むと抜群です!!
(すっこさん・40代・ママ)
【子どもレビュー】
心のおくにしまったひみつは
<闇の守り人>は、山の王の家来ではなく、この世を去った人達なんだと知って、<槍舞い>は、おたがいが思いをぶつけあって、はじめてとむらえるんだなと思いました。愛している人だったとしても、心のおくのおくのほうでは、にくんでたかもしれないなと感じました。ジグロとバルサのように。心の中では、うすうす気付いてたのだと思ってもバルサにはショックだったと思います。自分もそんな相手がいるのかなと不思議になりました。
(天使のケーキちゃん 10代以下)
【大人レビュー】
面白すぎてすぐ読んでしまう!
精霊の守り人の続編(2作目)。
中年女性が主人公という面白い設定ながら、内容も面白くて仕方ないです。
主人公バルサは、今度は養父ジグロの名誉のために、親戚を訪ねに故郷へおもむきます。でもそこにあったのは、今回もまた、人間の汚い欲望と、それを手中に権力を握った人たち。今回はカッサという少年を守りながら、ジグロの魂をなぐさめます。
続編が早く読みたくなります。
バルサにはそろそろ結婚もして幸せになってほしい、、、。
(えみりん12歳・30代・女の子3歳)
読み始めると、とにかくひきこまれて一気に読んでしまったという感想がたくさんありましたね。でもやっぱりファンタジーは設定が複雑でちょっと苦手だなあという方には、物語に入る前に舞台設定や登場人物など全体の世界観が掴めるガイドブックがおすすめです。
これから読もうと思っている人にも、すでにハマっている人にも!
日本を代表するファンタジー作品「守り人」シリーズ、
その物語世界を案内するガイドブックの増補改訂版を刊行します。
バルサとタンダの日常を描く、書き下ろし短編「春の光」、
「守り人」シリーズの登場人物事典や百科事典から、
作家・佐藤多佳子さんや、翻訳者・平野キャシーさんとの対談、
上橋菜穂子著作紹介まで、一挙収録!
増補版では、さらに
旅の日々のバルサを描いた書き下ろし短編「天への振舞い」、
NHKドラマ「精霊の守り人」の美術をつとめる山口類児さんとの対談も
収録しています!!!
これから読もうと思っている人も、すでにハマっている人も必読です。
最後に、続きが気になったらすぐに読める全巻セットをご紹介します。
クリスマスやお誕生日の贈り物にもいかがでしょうか。
さし絵も魅力的なハードカバー版のセット、持ち運びに便利な軽装版のセット、お好みでどうぞ
文化人類学者でもある著者が紡ぐ、人の世界と精霊の世界。物語の面白さはもとより、登場人物たちの魅力で圧倒的な人気をほこります。アニメ化、さらには英語圏への刊行と児童文学の枠をこえて、読者層は大人の世界へと広がっています。
文化人類学者でもある著者の描く、人と精霊が交錯する世界の物語が、ハンディな判型のソフトカバーになりました。巻末に著者の創作こぼれ話や豪華執筆陣による解説を収録しています。アニメ化され、海外でも翻訳刊行されたおもしろさはおりがみ付きです。
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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