『おしいれのぼうけん』『ロボット・カミイ』の古田足日さんの創作活動の集大成がここに!
『おしいれのぼうけん』や『ロボット・カミイ』をはじめとした古田足日さんの35年にわたる創作活動をおさめた「全集 古田足日子どもの本」が、1993年に刊行されました。その作品の数々は、2014年に古田足日さんがご逝去された後もなお、子どもから大人までたくさんの人々に愛され続けています。このたび、2015年夏に、その全集『古田足日子どもの本(全13巻・別巻)』が童心社より限定復刻されたという嬉しいお知らせが届きました。
14冊から成るこちらの画期的な全集!そのおすすめポイントをお知らせします。
◆まずは、全巻のご紹介から(各収録作品をご紹介)
「全集 古田足日子どもの本 限定復刻(1) 古田足日子どもの本」
<収録作品>
ロボット・カミイ/れいぞうこロボット/くいしんぼうのロボット/ロボット・ロボののぼりぼう/ぽんこつロボット
「全集 古田足日子どもの本 限定復刻(2) 古田足日子どもの本」
<収録作品>
大きい1年生と小さな2年生/まぬけな犬・クロ/ダンプえんちょうやっつけた/さくらんぼクラブのおばけ大会
「全集 古田足日子どもの本 限定復刻(3) 古田足日子どもの本」
<収録作品>
モグラ原っぱのなかまたち/夏子先生とゴイサギ・ボーイズ/犬散歩めんきょしょう/サクラ団地の夏まつり
4巻から13巻、別巻はこちら(詳細は各表紙をクリックしてご覧下さい)
◆著者のことば
児童文学という表現の魅力をはじめて知ったのは、一九四五年の敗戦の後、心がうつろになっていたときだった。相手が子どもだからこそ人間にとって一番大切なものが児童文学にはこめられている、とぼくは思ったのだった。その「一番大切なもの」とは、人間が人間として生きるとはどういうことか、ということだった。それを求めて書いているうち、子どもとはどういう存在なのかということを、ひしひしと感じるようになった。ともに一生続く問いであり、今まで書いたものはすべてそれについての模索であり、答えである。
その答えの数かずはぼく自身を力づけるとともに、子どもたちにおくるメッセージでもあった。それらが今まとまって刊行される。このメッセージを今の大人が、ことに子どもがどう受け取ってくれるか、どきどきしている。
(童心社定期刊行物『母のひろば』1993年10月15日号より)
童心社HP「全集 古田足日子どもの本」特集ページより
◆ここがおすすめ!
●35年にわたる創作活動の中で生まれた約40編を収録
・本書には、単行本未収録作品や雑誌掲載作品なども含め、古田足日さんご自身が全作品を再読し、精選された力作が収録されています。その数、約40編!はじめて出合う古田作品もたくさんありそうですね。新たな発見の多い、ファンの方にはたまらない全集です。
・各巻は、読者の年齢のグレード別・作品内容のジャンル別に構成されており、読んであげたい対象の子どもたちに合った巻や、大人の方は、よりご興味のある巻からなど、どの巻から読んでもたっぷり楽しめるのが魅力です。
●各巻は二部構成。Ⅱ部の古田足日らんどは、読み応えたっぷり!
各巻は、古田作品をたっぷりと収録したⅠ部と、古田文学をさまざまな角度から分析したⅡ部の古田足日らんどから構成されています。Ⅱ部の古田足日らんどは、「作品エッセイ」(著名な作家陣によるエッセイ)、「実践記録」(保育士や教員の方が綴った、古田作品と子どもたちとの関わりの記録)、「人物エッセイ」(著名な作家陣が書く“人間”古田足日)、「創作秘話」(作品ができるまでのエピソードが満載)、「古田足日の児童文学評論」、「子どもからの手紙」「古田足日のエッセイ」など古田文学を堪能できる贅沢な内容です。
このうち、古田さんのエッセイを一部ご紹介します。
「感性は教えられるのか、ということから」(全集2巻、368ページより)
●1冊1冊、違う画家さんによる装丁が豪華です!
本文のイラストとカバー(表紙)は、古田足日さんの本の挿絵を描かれてきた13名の画家さんによるもの。
田畑精一さん、西巻茅子さん、太田大八さん、滝平二郎さん、梶山俊夫さん、和歌山静子さん…
豪華な画家さんによる、味のある子どもたちの表情(かお)が描かれたカバーと背表紙を並べて見てみると
今にも元気な子どもたちが飛び出してきそうです!
●物語の舞台が分かる!
古田足日さんの作品には、サクラ市、サクラ小学校、サクラ保育園などの名称がよく出てきますが、そこは古田さんが当時住まれていた東久留米市の自然や環境の変化と密接に結びついていました。とくに1955年から70年までの人口増加に伴う、村から町へ、そして市へと変わる急激な宅地化で“子どもの遊び場が足りない”などさまざまな問題が起こっていく中で、子どもと子どもを取りまく状況をまるごと見据えた古田作品が次々と生まれていったのです。(全集2巻、350ページ、「作品舞台・サクラ市案内」参照)
「古田足日と作品舞台 童心社編集部・編」(全集2巻、354ページより)
●古田足日さんが目指した児童文学とは・・・
全集2巻のⅡ部の古田足日らんどの中で、1981年に開かれたという“古田足日児童文学塾”の紹介があり、その中で古田足日さんの児童文学にかける思いが垣間見れることばがありましたので、最後に少しご紹介したいと思います。
・児童文学には、いろいろ様々ありますが、大別すると(簡単に分離できるものではありませんが)大人にも子どもにも共通のなにかに訴える児童文学と、子どもだからこそ、その作品の内容・表現を大人よりもはるかに強く受け取ることのできる児童文学と、二つあると僕は考えます。この二つのうち、一方にだけ価値があるということはありませんが、僕が目指してきたのは、そのうちの後者の方です。
・また、現在という時点にあまり左右されない作品がある一方、現在の子どもと社会の状況に深くかかわろうとする作品があります。僕の目指してきたのはそのうちの後者の方です。
・そして僕の目指してきた児童文学の内容は、戦争を二度と起こすな、起こさせるな、人間の自由を守り、人間の自由を拡げ深めるということにつきるでしょう。
(全集2巻、348ページ、「古田足日児童文学塾を開きます」より抜粋)
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何よりも子どもたちの成長と、子どもたちを取り巻く環境を注意深く見つめながら、創作活動を続けられた古田足日さん。だからこそ、子どもたちは古田さんの本が大好きなこと、そして大人は子どもの頃に読んだ記憶がいつまでも強く心に残っている・・・その理由を強く実感しました。
こちらの貴重な全集を通して古田さんの思いを知ると、あらためて作品を読み返してみたい気持ちに駆られます。
古田さんが残してくれたたくさんの作品とそこに込められた思いを引き継ぎ、子どもたちの健やかな成長を願う力とするために、この充実の全集を、保育園、幼稚園、学校、図書館・・・など子どもたちのいる現場で、またご家庭でぜひお役立ていただければと思います。
古田足日さん代表作
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