「3.11 あの日のこと」
東日本大震災が発生した2011年3月11日のことは、決して忘れることはありません。
6年が経った今、それぞれの人が抱える思いはみんな違います。
共有できること、伝えられること、役に立つこと。
個人ができることは、そんなに多くはないかもしれません。
それでも、今抱えている問題のほんの一部を絵本を通して感じる事は、子どもたちにとっても大切な事。
絵本を通して、希望を感じるきっかけになることだって、あるかもしれません。
あの日を忘れない
6月のはじめ、
「おかの上の花だんに、ひまわりをうえようよ!」
そう言ったのは、愛ちゃんのお母さん。
愛ちゃんは2011年3月の東日本大震災による津波により命を落としてしまいました。
小学校6年生でした。
「ひまわりが咲いたら きっと喜ぶよ」
やがて、小石だらけの土から、小さな芽が顔をだして・・・
お母さんたちは、ひまわりの世話をしながら、子どもたちのことを話すのです。
宮城県石巻市立大川小学校は、74人の子どもたちと10人の先生の命が亡くなり行方不明となるという悲劇がおこりました。
ドキュメンタリーを撮るために現地へ行っていた作家・葉方丹さんは、新聞で大川小学校の児童のお母さんたちがひまわりを育てていることを知ります。そこでひまわりを丹念に世話をする姿を見ているうちに「絵本になればいいな」と思ったのだそうです。
葉方さんに託されたお母さんたちからの手紙には、子どもたちへの果てしない愛情が込められたメッセージが詰まっていました。松成真理子さんも現地へ赴き、お母さんがたの話に耳を傾け、絵本をつくりあげていったそうです。
もちろん涙で絵本が読めなくなることもあるけれど・・・
その愛らしい子どもたちは確かにそこで笑っています。優しいお母さんたちの心の中でずっと生きています。たくましく育ったひまわりの花はそんなお母さんたちの愛情を受けとった子どもたちのよう。
私たちはその子たち一人ひとりの事を想い、その子のお母さんのことを想います。
そうやって、みんながこの絵本を読みながら想うことで、子どもたちは絵本の中でずっと元気に遊んでいられるのかもしれません。
【この絵本の売り上げの一部は、被災地復興などのため寄付されるそうです。】
「ぼくは海になった 東日本大震災で消えた小さな命の物語」
東日本大震災では、多くの方のかけがえのない命と共に、多くの動物たちのかけがえのない命もまた、失われました。亡くなった動物たちの絵を描くことで、少しでも飼い主の心をなぐさめたいと考えた「震災で消えた小さな命展」代表の著者が、犬のチョビと飼い主のたえちゃんの絆を通して、命の大切さや平等さを伝える物語絵本です。
災害に立ち向かい、命をまもることの大切さ
はなちゃんがかよう保育園では、毎月、避難訓練があります。
園長先生の放送が流れたら、みんなでテーブルの下にかくれてから避難場所へ急ぎます。
でもすみれ組のはなちゃんは、ちょっとのんびりやさん。ニコニコちょうちょやお花を見て、おそ?い。
「はなちゃん、のんびりしてるとつなみにさらわれるぞ! がおがおがお?んって!」
先生にそういわれたはなちゃんは、そんなのやだ!と、それから「はやあるき」の練習です。
どんなときも、すっすっ さっさっ すっすっ さっさっ すっすっ さっさっ。
ある日、ほんとうに大きな地震がきて……。
東日本大震災で、岩手県の北にある野田村保育所の園児90名、職員14名は、全員、津波を逃れました。
その奇跡的な避難の背景には、毎月の地道な訓練があったといわれます。
あの日の、「だれも泣かず、だれもぐずらず、それはそれはりっぱだったんですよ」と職員(じつは作者の義妹)から聞いた園児たちの姿……。
それが作者の宇部京子さんの心にはずっと残っていて、震災から4年近くの時を経て絵本になりました。
宇部京子さんは岩手県久慈市在住の詩人。語りかけるようなやわらかな言葉と、イラストレーター菅野博子さんの絵から、園児さんたちの非常時の緊張感やいつもの笑顔がまっすぐつたわってきます。
子どもたちがなぜがんばれたのか。あるいてあるいて、あるきとおすことができたのか。不思議でたまりません。
でもこの絵本を読むと、そのわけがわかる気がします。
はなちゃんのはやあるき。それはじぶんをじぶんでまもる、はやあるき。
ちいさな笑顔と必死さが、わたしたちの胸に力強くやさしく迫ってくる絵本です。
「はしれ、上へ! つなみてんでんこ」
「語りつぎお話絵本 3月11日(2) にげろ! 津波だ! 」
2011年3月11日に発生した東日本大震災を題材とする、聞き取りをもとにしたノンフィクション絵本。体験者の実話と、地震に関する資料ページで構成している。被災体験を読者に伝え、その心情と教訓をわかりやすく伝える。
消えることのない傷
「なあ、『牛飼い』って、しってるか? 牧場で、牛のせわして、くらしてる。それが牛飼いだよ。かんたんだろ?
でもあのでっかい地震のあとは、かんたんじゃなくなった。うちの牧場は、原子力発電所の近くにあったからだ。」
大地震の約一時間後、原発施設を津波がおそい、事故がおこりました。
町にはだれもいなくなりました。事故によって放射能がひろがったからです。
花、ホトトギスの鳴き声、紅葉、雪模様、星空。うつくしい土地はかわらないのに、目に見えない放射能があるというだけで、意味がかわってしまいました。
「もうここに住まないでください」「牛たちの殺処分に同意してください」国の役人がなんどもいいにきます。
330頭の肉牛。放射能をあびて食えない、売れない牛たち。それでものどがかわき、おなかがすく牛たち。
「だれもいなくなった町の牧場に、オレはのこった。そりゃ放射能はこわいけど、しょうがない。だってオレ、牛飼いだからな。」
直木賞作家の森絵都さんが文章を書き、『パパのしごとはわるものです』などでいま注目のイラストレーターの一人、吉田尚令さんが絵を描いた絵本です。
福島第一原子力発電所からたった14キロ地点。警戒区域内にとりのこされた「希望の牧場・ふくしま」を森絵都さんと吉田尚令さんは訪れ、この絵本をつくりました。
「希望」ってなんだろう? そして「放射能」っていったいなに? 生き物が「生きる」ってなに?
いろんなことを考えるきっかけになると思います。
みじかい文章で場面は構成され、「牛飼い」の語りが一場面、一場面、まっすぐ読み手にとどいてきます。
言葉の意味がすべてはわからなくても、吉田尚令さんの絵と森絵都さんの文から伝わるなにかが、きっと子どもたちの糧となるでしょう。これからの時代、なおさらに。
いまもエサ不足が深刻な牧場。絵本売上げの一部が活動資金として寄付されるそうです。
牛も人もほかの動物もみな、いま生きている。意味があっても、なくても。それを受け止めたいですね。
「ほうれんそうは ないています」
ぼくらは生まれてきて、大きくなって、『いただきます!』を楽しみに待っていたんだ……。とつぜん断ち切られた、ほうれんそうたちの想いとは……。原子力発電所の事故でうまれてしまう、哀しみ痛みの深さは底しれない。今も未来もこどもたちを泣かせたくない、守りたい、医師・作家である鎌田實と、絵本作家である長谷川義史。がっちりタッグをくんで、ふたりいっしょに、今こそどうしても伝えたい届けたい、強く熱いメッセージ。
「おじいさんとヤマガラ」
3.11以降、福島の森では異変が続いています。本書は、原発事故が起きてから、森で鳥がすくなったという事実をもとに、構成しています。
おじいさんは鳥が大好きでした。毎年冬になると、おじいさんは巣箱を6個作って家の周りにつけます。春になると、ヤマガラが、巣箱にはいりヒナを育てるのです。おじいさんは、ヒナが育つのを楽しみにしていました。2011年、事故があった年、いつもと同じように、巣箱を取り付けました。でも、おじいさんは、心配で心配で仕方ありませんでした。今年もヤマガラはやってくるだろうか? ヒナは巣立つことができるだろうか? おじいさんの心配は、みんなの心配です。
人間だけではない、地球上にくらす小さな生き物たちに目を向けてほしいという作者の願いが込められています。
小さなひかり
えなはもう、海なんか見たくありません。
えなのうちも、おかあちゃんも連れていってしまった海。
なのに、懐かしくてたまらなくなる時があります。
そんな時、えなはばあちゃんちの裏山に登って空を見上げるのでした。
ある日、裏山で出会った不思議な少年がえなに「月の貝」を手渡します。
眠るときにそれをにぎっていると、手の中で細い光がきらめきます。
その光は毎日形を変えていき、どんどん丸くなって、とうとう満月に。
その晩、えなは不思議な夢を見たのです。そこにいたのは、残してきた大事な人を心配する、たくさんの人たち。
えなの前にも…。
東日本大震災発生から2年が経ちました。
失われた多くの命、そして残された遺族の方たち。
今も悲しみを前に、心の葛藤を繰り返しながら、懸命に生きているその人たちの心に少しでも寄り添うことができたら。
作者の名木田恵子さんの想いから生まれたのがこの作品です。
主人公のえなはまだ6歳の少女。そんな小さな心にも、自分が何もできなかったことを悔やんだり、生き残ったことを後悔したり、容赦ない胸の痛みが襲ってきます。でも、先にいってしまった母親も同じようにえなを思い、自分らしく前に歩んでいってほしいと願っているのでは…。思いを伝えるために託されたのが、強く握りしめた手の中から浮かんだ小さな希望の光「月の貝」。
こみねゆらさんの幻想的な世界は叙情的で美しく、何度読んでも心が落ち着いてきます。きっと、えなの心情やえなを取り囲む周りの人たちの心情を丁寧に繊細に描き出しているからなのでしょう。
「えなちゃん、もう悲しまないで。」
幸せだったゴンの言葉がたくさんの人の心に染み込んでいきますように…。
「かあさんのこもりうた」
いつも子守歌を歌ってくれる母さんぐま。外ではまねっこ鳥がまねして歌っていました。
ある日、嵐をよぶ黒雲を発見したまねっこ鳥はみんなに知らせますが、誰もその声を信用せず、でかけていた母さんぐまはついに戻りませんでした。
元気をなくした子ぐまたち。その耳に母さんの子守歌が聞こえてきます。
「あさになったので まどをあけますよ」
なにげない日々の繰り返しの中に幸せがある
新しい1日をむかえるために窓をあける子どもたち。なにげない日々の繰り返し、その中にこそある生きることの喜びを描いた絵本。
合わせてこちらもおすすめ
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |