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【小学校読み聞かせ】戦争を、どう伝える? 学年別おすすめの絵本

絵本ナビユーザーの皆さんの中には、読み聞かせをされている方がたくさんいらっしゃるのではないかと思います。そんな皆さんに本記事では、読み聞かせで戦争を伝える時におすすめの絵本をご紹介させていただきます。

 

夏の季節に読まれることが多い「戦争」の絵本

6月の沖縄県慰霊の日、8月の広島・長崎の原爆の日、8月15日の終戦記念日。

テレビや新聞で「戦争」という言葉を子どもたちが目にする機会が増えるこの時期に、単なる歴史的出来事や記録としではなく、心にしっかり届く方法で伝えられたら良いですよね。

<小学校低学年に>「平和」のありがたさをつたえる絵本

小学校1、2年生には、まだ「戦争」を理解できていない子が多いように感じます。

ママ・パパである私たちが小学生だった頃は、夏になると、おじいちゃん・おばあちゃんに戦時中の体験を聞く機会もありました。

戦後70年を超え、今の子どもたちの祖父母の世代でさえ、戦争体験をされた方は数えるほどになってきています。

「せんそう?」「センソウ?」その言葉を聞いて、首をかしげる子がいるのも、仕方がないことかもしれません。

そんな子どもたちには、まずこんな本を読んでいます。

へいわってすてきだね

へいわってなにかな。ぼくは、かんがえたよ。

ねこがわらう。

おなかがいっぱい。

やぎがのんびりあるいてる。

ちょうめいそうがたくさんはえ、よなぐにうまが、ヒヒーンとなく。

へいわっていいね。へいわってうれしいね。

みんなのこころから、へいわがうまれるんだね。

ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。

これからも、ずっとへいわがつづくように、ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ。

「へいわってすてきだね」は、沖縄の小学校1年生の 安里 有生くんが書いた詩。

みんなと同じ年頃の子が書いたんだよ、とひとこと前置きするだけで、子どもたちはその言葉をかみしめるように耳を傾けてくれます。

日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?

へいわってどんなこと? きっとね、へいわってこんなこと 。

いろいろな事から平和を考えます。

日本の絵本作家が中国と韓国に呼びかけ、三か国12人の絵本作家の協力で実現した平和を訴える絵本シリーズ第一作。

ぼくがラーメンたべてるとき

ぼくがラーメンたべてるとき、地球の裏側ではなにがおこってる?

ぼくがおやつを食べてるとき、世界の子はなにしてる?

遊んでる、働いてる、倒れてる・・・

長谷川義史が世界の子たちへ平和への願いをこめました。

そもそも「平和」ってなんだろう?

いつもと同じように大好きなラーメンを食べているこの瞬間、地球のどこかで、ぼくと同じような子どもたちは……

特別ではない「今」が、偶然でも当たり前でもない奇跡的な時間であること。

その時間は、自分たちで守っていかなくては成り立たないのだということ。

この2冊の絵本を通して、子どもたちに変わらない「平和」のありがたさを感じとってもらえたらという気持ちを込めながら、一文一文をゆっくり、絵に合わせながら読んでいます。

<小学校中学年に>戦争の「痛み」を伝える絵本

小学校3、4年生の子どもたち、学校生活では後輩もできて、ちょっと背伸びしてカッコつけたり、周囲に強気な態度を見せてみたり

この年ごろから少しずつ、読み聞かせする本に興味を示さない子が出てくるのも、成長の過程と受け止めています。

読み聞かせに入るとき、大人に読んでもらう本のテーマが「戦争」だとわかった瞬間、衝動的に聞く気を失う子もいました。

 

この時期の子どもたちに選ぶ本は、ゆっくりじっくりと「戦争」を伝えられる本。

何気なく耳を傾けていったその先に、今、自分がおかれている日常では想像ができないような人々の苦しみや悲しみがあったことを、受け止めてほしいという思いで読んでいます。

8月6日のこと

絵本作家中川ひろたかが、広島の原爆で亡くなった自分の伯父、被爆者となった自分の母の体験を伝え、こどもたちへ問いかける。人気絵本作家コンビが挑む「核と平和」。

これは66年前、ほんとうにあったお話です。

瀬戸内海はその日も おだやかな海でした。

絵本作家・中川ひろたかが、
広島で亡くなった自分の伯父、
被爆者となった自分の母の体験を伝え、
子どもたちへ問いかける。

絵本界屈指の人気コンビが、初めて挑む「核と平和」。

日・中・韓平和絵本 ぼくのこえがきこえますか

戦場で砲弾にふきとばされた「ぼく」の体はとびちり、なくなりました。
でも、ぼくの心は弟の怒りを見、母さんの悲しみを見ます。
平和を願い、平和を考える絵本。

「戦争」の現場には、確かに「人」がいたこと。

その人たちはみんなと同じように、お母さんから生まれ、大切に育てられ愛され、仲良く暮らす家族がいたこと。

遠い昔の事実ではなく、自分と同じような境遇の人たちが、無意味に巻き込まれた戦争。

その理不尽、惨さを、体験した人々の身になって感じられるような作品を読んでいます。

ぼくは、チューズデー ~介助犬チューズデーのいちにち~

戦争による後遺症(PTSD)で、もとの生活ができなくなった元兵士のルイス。

彼といっしょにくらす介助犬チューズデーの一日をおいかけた写真絵本。

一見、健常者に見えるルイスに必要な助けとは?

盲導犬とのちがいについてもわかります。

戦争がもたらす悲劇は、一時期で終わるものではありません。

子どもたちはやはり「死」に意識が向かいがちですが、戦争は、その後を生きる人たちの心にも、大きな爪痕を残します。

その爪痕を抱えながら、人は前を向いて生きていかなくてはいけない。

戦争の生む悲劇、苦しみと向き合う人々がいることにも、思いを巡らせてほしいと願います。

<小学校高学年に>二度と戦争を起こさない。何ができる?を投げかける絵本

小学校5、6年生になると、ほとんどの子どもたちが日本は数少ない「戦争」経験国であることを知っています。

「アメリカと戦って、負けてしまった」「原子爆弾が落とされて、たくさんの人々が死んでしまった」

「戦争は絶対に起こしてはいけないと思う」……

そんな声を聞いてふと思いが巡るのは、子どもたちが、どこまで自分の身に置き換えて「戦争」を捉えられているか、ということ。

もちろん自戒も含めて、ですが、「戦争」の痛みを苦しいほどに感じ取る経験をしないと「二度と戦争を起こさない」という決意を、実現へと変えていく力はわかないようにも思うのです。

ただその痛み・苦しさは、本という語り部を通すことで、受け継いでいくことができるのではないでしょうか。

 

この一冊では、ひもじさのあまり、大切な弟のミルクを盗み飲みしてしまった小学4年生の「ぼく」に、自分を重ねて読むことでしょう。

おとなになれなかった弟たちに…

戦争中、10才の少年は赤ん坊だった弟のミルクをぬすみ飲みし、弟は栄養失調で死んだ。子供の目で戦争と飢えを淡々と描きます。

広島・長崎への原子爆弾投下で何十万人もの多くの命が失われた、という事実は、子どもたちも分かっています。でもその一人ひとりの命の重さへの実感は、教科書や参考書だけで感じ取るのは難しいことですよね。だからこそ被爆者の方々の突き刺さるような強いまなざしが、子どもたちに訴えかけます。

被爆者 60年目のことば

ヒロシマ・ナガサキで被爆してから60年目。

6人の被爆者を描いた写真絵本。

戦争、平和、生きることの意味を静かに語ります。

広島の「原爆ドーム」。原爆のシンボルとして、現在は世界遺産としても、ほとんどの子がその名前を知っています。

実はその本当の名前は「広島県物産陳列館」っていうんだよ。

そんな投げかけをすると、知らなかった、一体どんな建物だったの?と興味を示す子どもたち。

原爆ドームが見た、8月6日の物語。

それは決して終わったことではなく、原子力発電所として今、私たちと隣り合わせに存在していること。ドームは、現在につながる問題をまっすぐに投げかけてくれます。

ドームがたり

「どうも、はじめまして。ぼくの名前は「ドーム」。あいにきてくれて、ありがとう」──1915年にできた「広島物産陳列館」は、100年以上も広島を、世界を見てきた。

ドームとは何なのか、何を語りかけているのか。

原爆ドームの声をきけ! 

アーサー・ビナードによるドームの語りと、スズキコージの絵が、未来へ記憶をつなぐ。

意見の食い違い、けんかは、子どもにだってある。

だけどなぜ、人と人とが殺しあう必要があるの?

こんな当たり前の人々の疑問を、強引に押しつぶして起きる戦争。

これからの子どもたちには絶対に「戦争を起こさない」強さと知恵を持って、世に渡り出てほしい。

そのために、必要なものは?

子どもたちの心の芯となるヒントを撒けるような作品を選びました。

そらいろ男爵

お手製の青い複葉機にのり、バードウォッチングを楽しんでいた「そらいろ男爵」ですが、戦争が起こり、お気に入りの飛行機を迷彩色にぬりかえて、戦いに参加せざるをえなくなります。

最初は、爆弾のかわりに打撃力のある12巻の百科事典を使い、一個大隊を撃破。でも、戦争はつづきます。旅行記や料理書、哲学書、天文書に歴史小説、男爵は大好きな『本』をどんどん投下します。

本を拾った将軍や兵士たちは、それぞれ本に夢中になり、戦いへの意欲がなくなってしまいます。そして、男爵が戦争を終わらせるために最後に投下したものは……。

2014年に第1次大戦開始100年を記念して刊行され、フランスで児童書に贈られるサンテグジュペリ賞を受賞した良質の絵本。日本でも終戦後70年になる2015年に、平和をもたらす『本の力』『ことばの力』をわかりやすく伝える貴重な一冊。

小学生から大人まで、幅広い年齢のかたに楽しんでいただける内容です。

もっとおおきな たいほうを

王様は川で魚をとっていた狐を、大砲をうって追い払いました。
ところが狐はもっと大きな大砲をもってきました。

こうして王様と狐の大砲くらべはエスカレートしていきますが……。

私が小学生だった頃、夏には必ず「戦争」がテーマの本が課題図書になっていました。

図書の授業では、必ず「戦争」の本を先生が読んでくれました。

夏休みには家族で戦争の特集テレビ番組を観ることもありましたし、母に連れられて戦争の教育映画を観に行くこともありました。

 

思えば当時の大人たちにとって戦争は、戦争を体験した人々は、今よりずっと身近であり、その悲惨な体験を未来を築く子どもたちに伝えていかなくてはいけないという強い使命を感じていたのでは、と振り返ります。

 

じゃあ、戦争を知らない大人は、どのように戦争を伝えていけばいいのか。

二度と繰り返さないという強さを、どう育んでいけるのか。

これから子どもたちを世に送り出していく私たちの、大きな課題なのではないでしょうか。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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