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夏休みは名作に挑戦! エンデの『モモ』読書案内と感想文の書き方

夏休みに、読み応えのある名作を読んでみませんか? 心に深く残る物語として、また子どもに読んでもらいたい本として、多くの人が頭に浮かべる名作のひとつである『モモ』。けれども実はまだちゃんと読んだことがない、手を出せていないという小学生や中高生、大人の方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
 

というのもいざ手に取ってみると、ずっしりとボリュームたっぷりで、何か特別なきっかけがないと読み始めるのが難しかったり、取りかかるのにちょっと尻込みしてしまうのではないかと思うのです。しかし、いつもより時間がたっぷり取れる夏休みこそ、いつか読んでみたいと思っていた名作に挑戦してみるチャンスでは?

 

今回は、まだ『モモ』を読んだことのない子や大人の方に向けて、『モモ』の魅力を分かりやすく解説していきたいと思います。また合わせて『モモ』で読書感想文を書いてみようという子に向けて、書く時のポイントも考えていきます。

今年の夏は、親子で一緒に『モモ』を読んでみませんか?

どこよりも分かりやすい『モモ』読書案内

『モモ』の種類は現在3種類。どの版で読む?

箱入りが嬉しい、基本のハードカバー版

モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語 時間に追われ,人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に,風変りな少女モモが時間の真の意味を気づかせます.

いろんな場所で読みたい方に、持ち運び便利な文庫版

贈り物にもおすすめ! 贅沢な愛蔵版で楽しむなら

ミヒャエル・エンデの本 愛蔵版 モモ

「時間」の真の意味を問う、ドイツの作家ミヒャエル・エンデ(1929-95)の人気ファンタジー『モモ』。しゃれた造本で、やや大人向きの美しいスペシャル・エディションをお届けします。

対象年齢は?

文庫本のカバー表記に、小学5・6年以上とありますので、下は小学5年生ぐらいから、上は何歳まででもおすすめの1冊です。個人的には、やや小学生には難しいかな? と思うところもあるので、読んでみて難しいと思ったら、中学生、高校生になってからもう1度チャレンジしてみるというのでも良いでしょう。
また、『モモ』は大人の方にこそ読んでほしい物語ということもよく言われています。一昨年刊行の『教養は児童書で学べ』(出口治明/著、光文社新書)でも、大人に読んでほしい児童書として紹介され、大きな話題となりました。
 

個人的には、何歳の時に出会ってもその年齢それぞれの面白さや気づきがある作品だと感じるので、いつ出会っても遅くないと思っています。けれども、子どもの頃にはその時だけしか感じられない面白さがあったり、より物語に没頭できる楽しさがあるので、挑戦できそうな子は、ぜひ子ども時代に出会ってみてほしいと思います。そして、年齢を経てからもたびたび読み返して、自分の感じ方の変化を楽しんでみてほしい、そんな1冊です。

どんなお話?

赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?

どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。

ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなってしまうのでしょう?
(みどころ紹介より)

ここが面白い!

『モモ』にはさまざまな面白さがあるのですが、そのいくつかをご紹介します。ここに書いている以外にも面白いところがいっぱいありますので、いろいろ見つけてみて下さいね(以下は少しネタバレを含みますので、何も知らないで物語を楽しみたいという方は読まずにお進み下さい)。

  • 主人公のモモの存在の不思議さ
    ある日突然、ある円形劇場の廃墟に現れたモモ。背が低くやせっぽっちで、年は八つぐらいなのか十二ぐらいなのか検討もつきません。けれども次第に人々の間でなにかあると「モモのところに行ってごらん!」というのが合言葉になるほど親しまれ、必要とされていきます。そんなにも人々を惹きつけるモモの存在が不思議でもあり、魅力的です。
     
  • 「灰色の男たち」や「時間貯蓄銀行」って何?
    ある晩から町に現れた灰色の男たち。頭のてっぺんから足の先まで、灰色をした服に身を固め、顔まで灰色、口には灰色の葉巻をゆらし、灰色の書類かばんを抱えています。彼らは言葉たくみに町の人たちに時間を時間貯蓄銀行に預けるよう持ちかけます。彼らの望みとはいったい何なのでしょう。また灰色の男たちが通ると、味わったことのないさむけに襲われるというところもなんだか面白いですよ。
     
  • 生きる時間が秒で示される
    灰色の男たちは、人々の生きる時間を秒で表現して町の人たちを言いくるめていきます。一分は六十秒、一時間は六十分、そうすると六十かける六十で一時間は三千六百秒……十年ですと、三億一千五百三十六万秒……。こうして膨大な数字を提示されると正常な判断能力が揺らいでしまうのも分かる気がしませんか? また自分がこの時間を少なく感じるか多く感じるかというところも面白いところではないでしょうか。
     
  • 町の人々の変化
    時間貯蓄銀行に自分の時間を預けて時間をなくしてしまった町の人たち。時間がたっぷりあった時と時間がなくなった時の変化が大きなみどころです。考え方や行動、大切なものなどはどのように変わっていったでしょうか。
     
  • 「カシオペイア」と「マイスター・ホラ」
    モモが出会う、甲羅に光る文字が浮かび上がって会話ができるカメのカシオペイアや、銀髪の老人はいったい何者なのでしょう。
     
  • マイスター・ホラがモモに出したなぞなぞが面白い(文庫版227、228ページ)
    このなぞなぞ、マイスター・ホラは「解ける人はほとんどいない」と言います。さてあなたには解けるでしょうか。(私はすぐに分かった! なんて思ってしまいましたが、答えを見たらはずれで、けれども答えにとても納得しなるほどと思わせられたところが面白かったです)
     
  • <さかさま小路>や<どこにもない家>
    モモがたどり着いた不思議な名前の道や場所。それはいったいどんなところだったでしょう。ネーミングがとても気になりますね。

そして物語の醍醐味は、なんといってもモモと灰色の男たちとの対決とモモが出会う冒険です。ものすごい数の灰色の男たちと、ひとりぼっちの小さなモモはどんな風に戦っていくのかをドキドキワクワクしながら読んでみて下さい。

名言紹介

『モモ』にはたくさんの名言、名セリフが登場します。その一部をご紹介します。他にも本の中でいろいろな言葉やメッセージと出会えるので、自分だけのお気に入りの名言を探してみて下さい。

「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」(道路掃除夫ベッポの言葉、文庫版52ページ)
 

「時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。」(文庫版83ページ)
 

「時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気づいていないようでした」(文庫版106ページ)
 

「子どもに時間を節約させるのは、ほかの人間の場合よりはるかにむずかしい。」(文庫版173ページ)
 

「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。」(文庫版236ページ)

『モモ』で読書感想文を書いてみよう!

ちょっと難しそうなイメージがあったかもしれない『モモ』ですが、ここまで読んで面白そうと興味が沸いた子は、読書感想文に挑戦してみませんか? 『モモ』は小学校高学年だけでなく、中学生、高校生の読書感想文としてもおすすめしたい1冊です。どんなところに注目して書くと書きやすいか、ポイントを紹介していきます。

書く時のポイント

『モモ』で読書感想文を書く時のポイント

読みながらテーマを絞って、そのテーマに対していろいろな「問いかけ」と「答え」を作って書き出してみましょう。もし親子で一緒に読んだ場合には、親御さんがお子さんに「問いかけ」、その答えを「メモ」して、メモを意味が通じるように順番に並べ、組み立てていく方法もおすすめです。

 

 

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

「テーマ」と「問いかけ」の例をいくつかご紹介します。

テーマ:「時間」

『モモ』に描かれている大きなテーマは「時間」です。この時間について書くのが、『モモ』で感想文を書く時に一番書きやすいのではないかと思います。
ただ「時間」と考えても漠然としてしまうので、次のような「問いかけ」を考えてみましょう。
 

問いかけ例

「モモを読む前と読んだ後で、時間に対する考え方がどんな風に変わった?」
この問いの答えは、読書感想文の出だしにも締めにもなるので、じっくり考えてみると良いでしょう。

 

「人は時間がたっぷりある時とない時では、行動や考え方がどう変わっていくだろう?」
『モモ』には、時間があった時となくなった時で、行動や考え方が大きく変わってしまった登場人物が何人も登場します。
たとえば、床屋のフージー氏、道路掃除夫ベッポ、観光ガイドのジジ、酒屋のニノ、町の子どもたちはどんな風に変わっていったでしょうか。このうち誰かひとりに注目して考察してみるのでも、それぞれについて考察してみるのでも、おすすめです。また、この人たちの変化を見て、自分がどう感じたかを書いてみることが大切です。

 

同じように、
「時間がある時とない時では、その人が大切にしているものがどんな風に変わっていった? またそれについてどう感じた?」
人は時間に余裕がなくなると、それまで大切にしていたものまでが大きく変わってしまうようです。そのことについてどう感じたか書いてみましょう。
 

「時間について不思議な経験をしたことはある?」
これまで「時間」について不思議に感じたことがあれば、それについて具体的な経験を書いてみましょう。(例えば、楽しいことをしている時間は短く感じ、つらいことをしている時間は長く感じたなど)

テーマ:「登場人物」

「時間」以外、または「時間」に加えてテーマを考えるならば、登場人物に注目してみるのはいかがでしょうか?『モモ』には個性的な登場人物がいろいろ登場します。その中で気になった登場人物について、書いてみましょう。ここでもまたいろいろな「問いかけ」を考えてみて下さいね。

問いかけ例

「なぜ、登場人物の○○が気になったのか?」
この問いは、出だしにも使え、その後にも文章を続けやすいのでおすすめです。

出だし例「私は『モモ』に出てくる登場人物の中で、○○が気になりました。それは○○という理由だからです~」

 

主人公のモモ、モモの親友の道路掃除夫ベッポと観光ガイドのジジ、灰色の男たち、カメのカシオペイア、マイスター・ホラ……、どの登場人物のどんな言葉や行動が気になったか、具体的に書いてみましょう。また道路掃除夫ベッポと観光ガイドのジジ、床屋のフージー、酒屋のニノなどはその変化がみどころなので、そこも注目ポイントです。

 

〇〇のここが好き、この考え方に共感する、ここが嫌だと思った、どうしてこういうことをするんだろう、なども立派な感想なので、登場人物に対して感じた思いをどんどん感想文にぶつけてみましょう。

テーマ:「モモ」と「灰色の男たち」の戦い

このテーマも書き甲斐のある大きなテーマです。「問いかけ例」を挙げると物語の一番面白いところを書いてしまうことになるので、キーワードだけ挙げておくことにします。

「灰色の男たち」の仕組み、作戦、仲間割れ、「モモ」の勇気、友情、「マイスター・ホラ」の秘密、「時間の花」etc……

読者の声をご紹介

最後に、実際に読んだ方がどんな感想を持ったのか、絵本ナビに届いているレビューから素敵な投稿をいくつかご紹介します。

エンデは天才!
小学生だったでしょうか、最初に読んだのは。
モモと時間泥棒との攻防のドキドキハラハラ、息もつかせぬストーリーの面白さに夢中になりました。
それから何度も読み返し、中学生くらいになると「時間とは?」「本当の豊かさとは?」
ここにこめられた哲学のような深い問いに気づき、また深く夢中になりました。
それからずーっと大人になり、本棚の片隅にモモは黙って居ました。

そして8歳の息子の誕生日の夜から一ヶ月以上かけて一緒に読みました。1章が長いので、喉を枯らしながら。
そしてこのスピード感を味わってもらうためには、自分で黙読させて
一気に夜更かししてもらったほうがいいのかな・・と迷いもありつつ。

読みながら、記憶に残っていた以上にエンデの描くイメージの豊かさ、
その描写力に驚きました。
立ち上ってくるイメージのなんて豊かなこと・・!!
息子には少々抽象的で難しかったであろうマイスター・ホラの話・・
時間の花が咲いていくところなんて本当に哲学的で宗教的ですらあります。
でも息子も面白くワクワクしながら楽しめました。
頭の中できっと灰色の男達やベッポやモモをたくさん描いたでしょう。
挿絵は少しあるものの、モモの顔は分からないし、ちゃんと描かれているのは亀のカシオペイアだけですものね。

最近何かで読んだことですが、エンデがこの物語にこめたのは
本当は「時間」ではなく「お金でまわる世の中への警鐘」とのこと。
そうなのかな・・。

最後のページを読み終わった晩、私自身が時間の花の夢を見ました。
幸せな、カラフルな夢でした。
モモに時間の花を貰ったのかもしれません。
ミヒャエル・エンデは天才だ・・!とあらためて強く思いました。
(10月さん 30代・ママ 男の子8歳)

エンデ好きになるきっかけの本です
この本と出逢ったのは、まだ学生の頃。
オレンジ色の紙製ケースに入ったこの本を、
ドキドキしながら引き出して読んだ事を覚えています。

灰色の男たちが音もなく増えていく様や、
時間を奪われて心の余裕をなくしていく人々を、
心底怖いなぁと思って読んでいたはずなのに、
大人になった私は、
時間に追われるように生活したり、
娘を「早くしなさい!」と急かしたり・・・

もう1回読み直さなければ!

この“モモ”にちなんで名付けたワケではありませんが、
我が家の“もも”にも、将来読んで欲しいなぁと思っています。
(ももうさ♪さん 20代・ママ 女の子2歳、女の子0歳)

あそびは無限
小さなころ映画になっているのを見に行ったのですが
灰色の男たちがとても怖かったことしか覚えてなくて
ずっと敬遠してました。

今になって読んでみるとなんと見事な物語であることか

無限の想像力で遊ぶ子供たち
そこに目の前にいる人を何より大切にするモモ

時間は切り詰めて消費するものではなく
瞬間瞬間を心から楽しんで愛しんでいくことこそが
ほんとに生きていくということで

いつでもそういう生き方をしていきたいと思えます。

子供たちも決まった遊び方しかできないおもちゃではなく
どうやってでも遊べるもので遊び
毎日毎日を自分たちの物語でいっぱいにしていってほしいと思いました。

いまさらだけど私もモモになりたい。
いっぱい力が湧いてくる大事な一冊になりました。
(ミルキーミルキーさん 20代・ママ 女の子2歳、女の子0歳)

大人になってから読んで感動
小学生のとき、一度読んだのですが、途中で挫折した本。
気になって気になって、大人になってからですが読んでみました。

毎日時間に追われている現代。
時間を気にしている毎日の中、何か大切なものを失っているのかもしれません。

時間を気にせずゆっくりゆっくり読みたくて、
続きが気になりながらも、少しずつ読み進めることにしました。

出てくる言葉がとても胸に刺さりました。

ぜひ時間をわすれて読んでほしい一冊です。
(ミギハルさん 20代・ママ 女の子1歳)

いかがでしたか?

私自身はこれまで『モモ』を3、4回読んでいるのですが、読むたびにこのお話が刊行されたのが、1973年だということに驚いてしまいます。それはいつ読んでも、今目の前で同じようなことが起きているのでは!? と感じるから。今から10年ほど前に読んだ時もそう感じたのですが、今回記事を書くにあたり読み直してみても、10年前に読んだ時と同じように感じたばかりか、さらにエンデが『モモ』で投げかけている警告がますます加速しているように思えました。
エンデが警告している「時間」へのメッセージは、この先何十年、何百年たっても変わらず、人間が持ち続ける永遠のテーマなのでしょう。だからこそ、『モモ』を読むことで、時間の大切さや、真に豊かに暮らすとはどういうことなのか? について読者である私たちは何度でも考えさせられ、気づかされるのではと思うのです。どんなに時がたっても変わらない普遍的なテーマに言及している『モモ』。『モモ』を読むたびに名作ってすごい! と思わせてくれるのも、読む醍醐味です。

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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