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東日本大震災から11年。小学生が震災を知る助けになる本

震災を自分事としてとらえることの助けになる本を

2011年3月11日に起きた大震災と津波、原発事故から今年で11年。11年という月日を考えると、今小学生の子どもたちは生まれていないか、まだ0歳か1歳ぐらいで、実際の震災の記憶がない世代にきていますね。さらにこの先も震災を知らない子どもたちがどんどん増えていきます。そんな子どもたちにとって「あの日」の出来事は、教科書の中にある歴史上の出来事のような認識になっていくのかもしれません。今回は、今の小学生が震災を自分事としてとらえることの助けとなる本はどんな本なのかについてじっくり考えてみました。震災を学ぶことは、自分を守る方法を学ぶこと。震災に関する多くの本の中から、小学生に手渡したいおすすめの本をご紹介します。

体験者の声から震災を知る

『角川つばさ文庫 世界はとつぜん変わってしまう? もし、「あたりまえ」の毎日が、ある日とつぜんうしなわれたら?をかんがえる本。』

まず紹介したいのは、2022年2月に発売されたばかりの新刊です。こちらは、東日本大震災を体験していない小学生世代に向けて、2011年3月11日の「あの日」に何が起こったのかをあらためて伝える、インタビューに基づくノンフィクション作品。小学生のダイキとミサキが東日本大震災についての宿題を解くために、いろいろな人の話を聞きに行くという形で進んでいきます。

当時の小学生が体験したこと、感じたことを知ることから

角川つばさ文庫 世界はとつぜん変わってしまう? もし、「あたりまえ」の毎日が、ある日とつぜんうしなわれたら?をかんがえる本。

みどころ

「そうだったのか……」。

2011年3月11日に起きた東日本大震災。今になって知らなかったことがこんなにあったなんて。被災地ではなかったけれどあの揺れを実際に体験し、津波の映像をリアルタイムで見て、その後もさまざまなメディアや本で多少なりとも「あの日」について知った気でいたのに……。

この本は、東日本大震災を体験していない小学生世代に向けて、2011年3月11日の「あの日」に何が起こったのかをあらためて伝える、インタビューに基づくノンフィクション作品です。小学生のダイキとミサキが東日本大震災についての宿題を解くために、いろいろな人の話を聞きに行くという形で進んでいきます。

まず第一章「震災の日」で語ってくれるのは、小学5年生で被災した体験を話して伝える「語り部」という活動をしている雁部那由多(がんべなゆた)さんです。
地震のすぐ後は「生きている側」と「亡くなった側」と考えるようになったこと。学校が始まった後、被災したクラスメイトと被災していないクラスメイトの間には、見えない壁があったこと。さらに同じ被災組の中でならつらかったり悲しかったりする気持ちを分かち合えたかというと、そうでもなかったこと。中学二年生の時に「震災の体験を話す」ことが自分の心に変化を与え「語り部」の活動を始めたことなどが語られます。インタビューの中では次のような言葉がとくに印象に残りました。

「ぼくたちが被災したのと同じ場所で学んでいる今の小学生にとっても震災は教科書の中のできごとになっちゃってるみたいなんだ。(中略)そういうときは震災を知らない世代が増えてきたのだなあと、実感するよ」

「避難所では『小学生は手伝わなくていい』と言われていたけれど、高学年のぼくたちは何か役に立ちたかった。」

「ぼくたちが震災前に学校や地域で受けていた防災教育では『判断をしなさい』って言われてた。でも、実際に東日本大震災が起こったときに求められたのは『決断』だったんだ。」

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(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

『きみは「3.11」をしっていますか? 』

次に紹介するのは、震災から10年という節目の年である2021年に発売となったこちらの1冊。震災の日のこと、大切な人を失った悲しみ、命のとらえ方、若い人に向けたさまざまな立場の方からのメッセージ。一貫して伝わってくるのは、命の大切さとかけがえのなさ。子どもたちが震災のことだけでなく、自分の命について考える時に、大きな助けとなるだろう1冊です。

命の大切さを伝える「3.11」の物語集。第4章にあるさまざまなデータも大きな参考に。

きみは「3.11」をしっていますか? 東日本大震災から10年後の物語

みどころ

豊富なカラー記事とデータが満載。表紙を見て、一見、難しいのかな? 長いのかな? と思った子もいるかもしれませんが、本を開いてみると文章がひとりひとりに優しく語りかけるように紡がれていく、とても読みやすい1冊です。
「この本を手に取ってくれたきみへ」のメッセージの中に、「2011年の3月11日に大きな地震と津波が起こりました。その時きみは、何歳だったかな。」の語りかけがあり、この本が小学生や中学生に向けて書かれたことが分かります。ソフトカバーで軽く、難しい内容はほとんどありません。ひとりで読むとしたら、小学校4年生ぐらいからでしょうか。すべての漢字にルビも振られています。

本書は5章に分かれているのですが、第1章は、宮城県石巻市にある「石ノ森漫画館」での3.11からの5日間がまんがで描かれています。まんがを描かれているのは、漫画家の細野不二彦さん。最初がまんがから始まるので、本を読むのがちょっと苦手という子でも、無理なく読み進めていけそうです。
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(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

『ふるさとはフクシマ 子どもたちの3.11』

福島の子どもたちが被災の体験を作文にし、画家、絵本作家の方々が、子どもたちの作文から受けた想いを絵に表した1冊。小学二年生から六年生までの子どもたちの素直な気持ちや願いが胸に響きます。

子どもたちのたくさんの願いがここに

ふるさとはフクシマ 子どもたちの3.11

出版社からの内容紹介

福島の子どもたちが、被災した体験を見つめて作文にしました。そして画家、絵本作家の方々が、作文から受けた想いを、絵に表しました。福島の子どもたちの想いを感じてください。

読者の声より

涙がでました。
あの日の地震で小学生の子どもたちが感じた、たくさんの怖さ、悲しさ、やるせなさ、感謝が、子どもたちの作文を通して読む人に訴えかけてきます。
なんでもない毎日がひっくり返ったあの日を言葉にすることで、あの体験を乗り越えてくれれば…と切に願います。
この絵本を買うことで、子どもたちの未来の助けにつながることが嬉しいです。
(みっとーさん 30代・ママ  男の子9歳、女の子7歳)
 

絵本で震災を知る・感じる

長い本を読むのはちょっと大変。という小学生には、絵本からも十分伝わってくるものがあります。当時の状況がよく分かる絵本をこちらでは紹介しますが、テーマ「3.11 あの日のこと」ではたくさんの絵本を紹介していますので、興味を持ったものから読んでみて下さいね。

『はしれ、上へ! つなみてんでんこ』

2011年3月11日東日本大震災のあの日、大津波をみんなで生きのびた釜石の子どもたちのドキュメント。

「わたしには強い思いがありました。『日本はこれからもさまざまな自然災害がおこる可能性がある。もしものとき、また多くの人のいのちがうばわれないためにも、いのちを守るための心がまえや訓練=〈生きる力を育てること〉はぜったいにだいじだ。』という思い。それから『子どもたちのすなおな感受性・生きる力はすごい』という思い。それを、伝えたい……。」

(作者の指田和さんのあとがきより)

「じぶんのいのちはじぶんでまもる!」

はしれ、上へ! つなみてんでんこ

みどころ

2011年3月11日。岩手県の海岸から400~500メートル地点にある、鵜住居(うすのまい)小学校と釜石東中学校の子どもたちが、午後の授業を受けているとき、地震がおきました。
その直後、小中学生600人が山への坂道を2キロにわたり走って逃げました。
中学生は小学生と手をつなぎ、近くの園の園児たちをのせた台車をおしながら。
ほとんどの子どもが津波から逃げのびた、「釜石の奇跡」といわれた実話です。
これは、その実話をもとにした絵本です。

主人公の小学生、「ぼく」のじいちゃんは、漁師。
大槌(おおつち)湾の美しい海で魚をとって暮らしてきました。
絵本からはいろんなことがつたわってきます。
どこに逃げるか、一瞬判断に迷う先生。見つめる「ぼく」たちのまなざし。
窓の外で中学生が逃げはじめたときの、教室の空気。
「車に、気をつけろー!」「川がわは、はしるなー!」と中学生が叫ぶ声。
互いに励ましあいながら高台の“ございしょの里”へ、“やまざきデイサービス”へ、いや、もっと上の峠へ!
避難場所がどんどん高くなっていく緊迫感……。
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(大和田佳世  絵本ナビライター)

『希望の牧場』

2011年3月、東日本大震災のあと発生した原発事故によって「立ち入り禁止区域」になった牧場にとどまり、そこに取り残された牛たちを何が何でも守りつづけようと決めた、牛飼いのすがたを描きます。経済的には意味がないけれど、生きるということに意味がある牛たちの姿に、命の扱い方や、原発があるというのはどういうことかを考えるきっかけに。長く読み継ぎたい1冊です。

「放射能」っていったいなに? 生き物が「生きる」ってなに?

希望の牧場

みどころ

「なあ、『牛飼い』って、しってるか? 牧場で、牛のせわして、くらしてる。それが牛飼いだよ。かんたんだろ?
でもあのでっかい地震のあとは、かんたんじゃなくなった。うちの牧場は、原子力発電所の近くにあったからだ。」
大地震の約一時間後、原発施設を津波がおそい、事故がおこりました。
町にはだれもいなくなりました。事故によって放射能がひろがったからです。
花、ホトトギスの鳴き声、紅葉、雪模様、星空。うつくしい土地はかわらないのに、目に見えない放射能があるというだけで、意味がかわってしまいました。
「もうここに住まないでください」「牛たちの殺処分に同意してください」国の役人がなんどもいいにきます。
330頭の肉牛。放射能をあびて食えない、売れない牛たち。それでものどがかわき、おなかがすく牛たち。
「だれもいなくなった町の牧場に、オレはのこった。そりゃ放射能はこわいけど、しょうがない。だってオレ、牛飼いだからな。」
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(大和田佳世  絵本ナビライター)

最後に、原発災害について、臨場感あふれる写真と文で当時の状況からこれまでを分かりやすく伝える「それでも「ふるさと」シリーズ」と「それでも「ふるさと」あの日から10年」シリーズをおすすめします。

第66回産経児童出版文化賞大賞を受賞した「それでも「ふるさと」シリーズ(3巻での受賞)」とは……

東日本大震災・原発災害から7年近くが経った2018年に刊行されたシリーズ。放射能汚染によって村や家族に何が起こったのか、村を追われた人たちの日々の暮らしや想い、ふるさとの再生を探る取り組みなどをいくつかの家族や仲間に着目して臨場感ある写真と文で伝えます。自分自身の再生と村の再生を一体のものとして仲間と取り組む元酪農家、日本一の山菜栽培をめざす農家、第二のふるさと「仮設」に暮らすおばあちゃんなどを主人公に物語られます。

「それでも「ふるさと」」の続編「それでも「ふるさと」あの日から10年」シリーズとは……

原発事故から10年たった2021年に刊行されたシリーズ。放射能に故郷を追われた人々の暮らしや想い、現実や願いを豊富な写真と文で伝えます。原発災害をどう記憶し、どう生きるかを問いかけます。

『それでも「ふるさと」あの日から10年 福島に生きる凛ちゃんの10年』

幼稚園の時に震災とその影響による原発事故に遭い、それまで住んでいた福島県飯館村の比曽集落から避難した凛ちゃん。突然に村を、家を、追われたこと。避難所や親戚の家を転々とした日々。仮設住宅からプレハブの幼稚園や小学校へ通ったこと。2011年のあの日幼稚園生だった凛ちゃんが、2021年に小学校を卒業するまでが描かれます。

原発災害で避難を余儀なくされた子どもたちのその後を伝えるドキュメンタリー絵本

それでも「ふるさと」あの日から10年 福島に生きる凛ちゃんの10年

出版社からの内容紹介

幼い時に生まれ育った飯舘村を追われた凜ちゃんは、小学校は避難先の仮設住宅から隣町のプレハブ仮設校舎へ通い始め、その後も転居・転校を重ねて卒業…、今なお続く原発災害の現実を子どもたちたちを通して伝える。

これからの子どもたちに、東日本大震災をさまざまな形で伝えてくれるたくさんの本。そこには、体験された方々と、体験者から話を聞いて伝える作り手の方々の熱い想いが込められています。共通しているのは、「命の大切さ」と「自分を守る」というメッセージ。3.11を風化させないために、震災を知らない子どもたちにどう伝えていくか、言葉で伝えきれない時にはどんな本を手渡していくか、大人がしっかりと考え続けることがこの先ますます必要になってくるのではないかと思います。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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