「世界はこんなに美しい」。道を切り開いてきた女性たちを描く絵本10選
「世界はこんなに美しい」。
自分の目で見て、自分で考え、自分で道を切り開いていく。
今ではあたりまえになっている常識でも、住んでいる国や性別のために制限されることの多かった時代がありました。それでもあきらめずに、強い意志を持って道を切り開いてきた女性たちがいたのです。3月8日は「国際女性デー」。そんな彼女たちの生き方を伝える絵本をご紹介します。
世界を変えていこうとするその姿に、女性も男性も関係なく、きっと大きな勇気をもらえるはずです。
道を切り開いてきた女性たちを描く絵本
バイクで単独世界一周をした、初めての女性ジャーナリスト
世界はこんなに美しい
「いろんな場所へ行ってみたい。世界じゅうを旅したい」
アンヌはそう思い、必要な荷物をまとめ、バイクにまたがりパリを出発したのです。身につけているのは必要なものだけ。ヘルメットにゴーグル、雨や寒さから守るための革のジャケット。ナイフにペンとメモ帳。おしゃれな白いドレスと水着、工具や寝袋、転んだ時のための救急セットも大切。
「ひとりで世界をまわるなんて危険だわ。」
頭の中で小さな声がします。それでも、道がアンヌにつげるのです。
「行きなさい。」
1973年、バイクで単独世界一周をした、初めての女性ジャーナリスト、アンヌ=フランス・ドートヴィルの出会った風景や人びととのほんとうのお話が美しい絵本になりました。アンヌはパリを離れるとカナダ、アラスカ、日本、インド、アフガニスタン……と心のおもむくままに走りました。不慣れな土地で何度もバイクが故障し、大変な思いをしながら、未知だった国の風景を味わい、人々と交流を続けていったのです。
「世界は美しい。世界はおもいやりにみちている」
前を向き、転倒を重ねながらも立ち上がり進み続ける彼女の姿は、ファッションブランド「クロエ」のデザイナーにも影響を与え、その写真を目にした作者が物語を書き、絵本が誕生しました。当時アンヌが魅せられた場所の中には、今では閉ざされてしまった国もあります。
旅をすること、他の場所を自分の目で確かめ、見知らぬ人々に出会うこと。絵本を読めば、その体験から得るものの大きさを感じずにはいられません。まぶしい姿と美しい景色は、きっと子どもたちに好奇心を、若い人たちに大きな勇気を与えることでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
今から約150年前、女性はズボンをはいてはいけないという常識に疑問を投げかけたのは…
せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子
女の子がズボンをはく。今では当たり前のことが、許されない時代があった。そんなことって、考えられる? それも、たった150年前の本当の話。
女の子が着ることができたのは、きゅうくつなドレスだけ。動きにくいし、息をするのも楽じゃない。だけど、それがおかしなことなんて、みんな思わない……でも、メアリーだけはちがった! 彼女はズボンをはいて、町へ出かけた。すると、とにかくもう大騒ぎ。
「とんでもない!」
「ズボンなんかはいて、後悔するぞ」
みんなの言葉には屈しないメアリーだったけれど、やっぱり胸にささる。どうして、みんなが文句をつけるのかわからない。そんな時、お父さんが言ったのは……。
この絵本の主人公のモデルとなったのは、後に女性初の軍医として活躍し、フェミニストとして知られたメアリー・E・ウォーカー。巻末には、その当時ズボンをはいて撮られた写真とともに、彼女の半生の解説も収められています。
常識だと思っていたことが、常識ではない時代があった。道を切り開いてくれた人がいた。それだけでも、子どもたちには大きなインパクトのあるお話のはず。そして印象的なのは、多くの大人たちが「かわってしまうのがこわい」と感じてしまうという事実。私たちは、いつだって変化していく時代のその「途中」にいるのです。とっても魅力的に描かれた、メアリーの姿に元気をもらいながら、自分たちにとっての当たり前を考えていかなくてはいけませんよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ぜったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン
数字はわたしのことば ぜったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン
ソフィーは、数学が大すきな女の子。
いつか、詩人がことばをつかうように、自分は数字をつかって
宇宙のなぞをときあかしたい、と思っていました。
ところがその時代、女の子が大学に行って数学を勉強するなんて、
とんでもないことだったのです――。
実在した数学者をモデルに、人気絵本作家バーバラ・マクリントックが想像力ゆたかな絵をえがきました。
この世界を少しでも良い場所に変えるために
チェンジ・ザ・ワールド! ~世界を変えた14人の女性たち
この本におさめられているのは、14人の女性たちの驚くべき物語です。
女性にこんなことできるはずがない。
女性がやるべきことではない。
この仕事は女性に向かないー―。
そんな世間の「常識」を強い意志と努力でひっくり返してきた人たちなのです。
そんなすごい人は、自分とは関係ないって思いますか? 実は、この本の中に登場する女性たちの中には幼い少女もいるのです。
お父さんが亡くなって、家計をささえなくてはならないという逆境から、自分の天職を見つけた人がいます。化石ハンターのメアリー・アニングは、恐竜の全身化石を初めて発掘することに成功し、チャールズ・ダーウィンの進化論に影響を与えました。
国境を越え、世界を舞台に活躍した人もいます。調査報道記者のネリー・ブライは、なんと身分を隠して刑務所や劇場、動物園や病院に入り込み、恐れることなく記事を書き、不正を暴きつづけました。
これまで女性がなれなかった職業の壁を打ちくだいた人たちもいます。
プーラ・ベルプレは、たくさんの子どもたちに「お話の種をいたるところにまきたいの」と、ニューヨークの公共図書館ではじめてのラテン系アメリカ人の司書となり、子どもの本の作家にもなりました。女性初のアフリカ系アメリカ人宇宙飛行士のメイ・ジェミソン、アメリカ初の女性消防士となったモリー・ウィリアムズの姿からは、なりたいと強く思えば何にだってなれるという勇気をもらいます。
学びたいという気持ちで、世界を変えた少女がいます。
人種分離政策の中、白人だけの小学校にはじめて入学したルビー・ブリッジズは、6歳の黒人の女の子。彼女は差別的な視線や怒りに負けることなく、先生とふたりきりで授業を受け続けました。小さなルビーの勇気は、人種差別に終止符をうつ公民権運動の始まりとなっていきます。
11歳のマララ・ユスフザイは、女性から教育の機会を奪ったタリバン政権を批判して命を狙われました。しかし、その暴力と恐怖に屈することなく「武器ではなくペンを、銃弾ではなく本を」とマララは世界に向けて訴えます。2014年、彼女は世界最年少でノーベル平和賞を受賞しました。
この世界を少しでも良い場所に変えるために。
自分の夢を、住んでいる国や性別のためにあきらめないために。
差別や暴力に屈せず、まっすぐに生きることで、自分の意志を伝え、世界を変えていく彼女たちの姿に、大きな勇気と感動をもらいます。
大人が読んでも驚きと感動に打ち震える、素晴らしい1冊です。
女性のアメリカ最高裁判事として、反対意見を貫き通したルーズ・ベーダー・ギンズバーグ
わたしは反対! 社会をかえたアメリカ最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ
アメリカ最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)は、差別されている人たちを一貫して支え、納得できないことに反対の声をあげつづけ、社会を変えていきました。RBGを幼少期から活き活きと描いた伝記絵本!
19世期のイギリスの女性古生物学者メアリー・アニング
きょうりゅうレディ さいしょの女性古生物学者 メアリー・アニング
19世期のイギリスの古生物学者メアリー・アニング の数奇な人生と功績を、細密な絵とわかりやすいストーリーで面白く綴る伝記絵本。
女性が仕事をすることが認められない時代から、メアリーは化石ハンターとしで目覚ましい成果を上げ、ジュラ紀の首長竜や魚竜などの全身化石などを発見します。47歳で乳がんで亡くなるまで、世界中を驚かせる発見を続けながら、女性故に、その功績を認められることがなかったメアリー。しかし、現在、その功績を再評価され、「メアリー・アニングは、世界がかつて知っていた最も偉大な化石学者である」と言われています。
子供に人気があるジャンル「化石・恐竜」、また女性の活躍促進という点でも注目が期待できるテーマを持った絵本です。
アポロ11号月着陸成功に尽力した女性プログラマー、マーガレット・ハミルトン
アポロ11号月着陸成功に尽力した女性プログラマーがいました! 幼い頃から、自分のやりたいことをあきらめず、何にでもチャレンジしたマーガレット・ハミルトンの半生をつづる絵本です。アポロ11号月着陸放送の同時通訳をつとめた鳥飼玖美子さんの翻訳でお届けします!
「子どもの本」が、世界を変えると信じた女性
子どもの本で平和をつくる イェラ・レップマンの目ざしたこと
子どもの本を通して希望の種をまく
戦後、混乱した街中で大きな建物の前に人びとの列を見つけ、少女は、弟の手を引いて建物に入りました。すると、そこにはたくさんの本が並べてありました。そして、ステキな女性と出会います。その人こそ、イエラ・レップマンでした。
イエラ・レップマンは、国際児童図書評議会(IBBY)、世界で初めての国際児童図書館(ミュンヘン国際児童図書館)を創設した人です。
どのようにして、子どもの図書展をスタートしたのかを語ることで、子ども本の大切さを伝えています。巻末に、イエラ・レップマンや、図書展についての解説もあります。
【編集担当からのおすすめ情報】
子どもの本に関わる人なら、だれもが耳にしたことのあるIBBY、また、ミュンヘン国際児童図書館を創設したイエラ・レップマンの物語です。
ユダヤ人であるイエラは、第二次世界大戦後、混乱したドイツに戻り、子どもたちに希望を与えることこそ大切であると痛感します。
「本」の力を信じ、「本」を通して世界平和を目ざしたのです。
IBBYの支部として活動しているJBBYの会長のさくまゆみこさんが翻訳しています。
人とはちょっと違う人生をおくった14人の女性たち
すてきで偉大な女性たちが歴史をつくった
世界のあちこちで、人とはちょっと違う人生をおくった14人の女性たちの物語。宇宙飛行士のワレンチナ・テレシコワといっしょに地球を飛び出し、アメリカ先住民のポカホンタスといっしょに平和と友情をもたらし、奴隷に生まれたハリエット・タブマンといっしょに自由をめざそう!
強くて、勇敢で、とってもパワフル!
歴史を変えた50人の女性アスリートたち
強くて、勇敢で、とってもパワフル!
「女は弱い!」としめ出されていた近代スポーツ界に飛びこみ、圧倒的な能力と粘り強さで記録と歴史をぬりかえてきた女性アスリート50人にスポットをあて、その驚くべき成績やバイタリティあふれる人生をチャーミングなイラストとともに紹介します。
女性には不可能だと言われてきたことの誤りを、鍛えぬいた身体と不屈の精神で堂々と証明したヒロインたちの姿は、若きアスリートのみならず、自分の限界をこえたいと願うすべての人を励ましてくれます。
<本書の見どころ>
●近代スポーツの歴史を切り拓いてきた、パワフルな女性アスリート50人(+α)を紹介
●競技成績からプライベートな一面まで、エネルギーに満ちた女性アスリートたちの人生の物語を簡潔に学べます
●若手女性イラストレーターによるおしゃれなイラストが満載。ビジュアルブックとしても楽しめます
●歴史年表や筋肉解剖学、男女間の報酬とメディア格差統計など、図解コラムも充実
●本文のおもな漢字にルビつき。未来のアスリートを応援します
●日本版だけの描きおろしイラストも多数収録!
<こんな人が載っています>
ガートルード・エダール(長距離水泳選手)、福田敬子 (柔道家)、トニ・ストーン(野球選手)、田部井淳子 (登山家)、ジョディ・コンラッド (バスケットボール監督)、ビリー・ジーン・キング (テニス選手)、フロー・ハイマン (バレーボール選手)、スーザン・ブッチャー (犬ぞり操縦者)、ナディア・コマネチ (体操選手)、アンジャリ・バグワット (射撃選手)、シャンタル・プチクレール (車いす陸上競技選手) 、キム・スニョン (アーチェリー選手) 、クリスティ・ヤマグチ (フィギュアスケート選手)、ミア・ハム (サッカー選手)、セリーナ・ウィリアムズ (テニス選手)、ニコラ・アダムズ (ボクサー)、マリアナ・パホン (BMX自転車選手)、シモーネ・バイルズ (体操選手)など…
合わせておすすすめ!「道を切り開く女性たち」の絵本
自分で道を切り開く。なにもそれは歴史を動かすほどの大きな事じゃなくたっていいのです。誰にもさえぎられることなく、自分の意志を表明する。これが世界を変えていく第一歩になっていくのではないでしょうか。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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