【今週の今日の一冊】寒い季節のお守りに。 身も心もあたたまる絵本
先週から今週は寒波の影響で、全国的にとても寒い日が続いていますね。皆さんは寒さをどんな風に凌いでいますか? たくさん着こむ、あたたかい飲み物を飲む、 熱いお風呂に浸かる、こたつにもぐる、エアコンやヒーターなどの設定温度を高くする……いろいろな方法がある中で、絵本を読んで想像してあたたまってみる、というのもいかがでしょう。
今週は、身も心もあたたまるような絵本をご紹介します。
1月13日~1月19日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
1月13日 こんなマントがあったらいつだってあったかい!
月曜日は『わたしのマントはぼうしつき』
「ふちのところがふさふさの、わたしのマントはぼうしつき」
くまの子が嬉しそうに着ているのは、真っ赤な色をした素敵なマント。頭まですっぽりかぶれば、耳までしっかりおおい、顔のまわりにはふさふさ。これで、雨がふっても雪がふっても大丈夫。
おともだちと一緒にいる時も、もちろんマント。悲しい時や嬉しい時はぼうしをかぶって。秋が来たらぼうしをかぶって、冬はもちろんぼうしをかぶって。だけど夏は……?
「わたしのマントはぼうしつき」
お気に入りのマントが、彼女にとってどれだけ大切なものなのか。その姿と表情を見れば、すぐに伝わってきます。いつでも、どんなときでも、一緒。本当は一年中だってずっと着ていたい。ああ、その気持ちよくわかる。だって、こんなに似合っているんですものね。
この絵本が描いているのは、お気に入りのマントへの一途な気持ちのみ。美しい風景も、日常生活も出てきません。登場するのは主人公と、おともだちのねことうまとの4人だけ。時には全員が真正面にこちらを向き、時には3人が集まったり、2人で話したり、みんなで手をつないだり。なんだか小さな舞台を見ているような不思議な構成です。けれど、この愛らしさはなんでしょう。展開だって飽きることがありません。それは彼らの豊かな感情表現のせいでしょうか。
どのページを開いても、東直子さんと町田尚子さんの魅力がたっぷり味わえます。きっとこの絵本も、誰かのお気に入りになるのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
題名がたまらなくキュートです。
「わたしの」マントなのです。
ふちのところがふさふさ、しかも帽子付き。
そのお気に入り度といったら、どんな状況でも、と力説する様子に、思わず納得してしまいます。
でもね、やっぱり、夏には、ね。
それでも、その愛は変わらないですよね?
おともだちの存在感も、いい塩梅で寄り添ってくれて、嬉しいです。
ラストの光景は奥深い暗示ですが、お気に入りの世界、たっぷり楽しみたいです。
(レイラさん 50代・ママ)
1月14日 寒さで震えるものたちを、それっ、びろ~ん
火曜日は『まくらのせんにん さんぽみちの巻』
枕の姿をした、愛敬たっぷりの仙人さまが、ふたりのお供、敷き布団のしきさんと、掛け布団のかけさんと共に繰り広げる、アッと驚く、ほのぼの人情ばなしです。
シリーズ第1弾は、寒さにふるえ、こまっているものたちを、温めて元気づけてあげる、人助けのお話。布団にくるまれたときの、あの幸福感が読者を包みこむ、あったかーい絵本です。
読者レビューより
寒くなってきた頃、幼稚園年長さん~小学校低学年の子どもに読み聞かせました。
まずは、仙人さまと、かけさん、しきさんの紹介から。
子どもから「えっ? 枕? 掛け布団? 敷き布団?」と、驚きの声が上がりました。
そりゃあねぇ。毎日毎晩お世話になってるお布団たちが、こんなふうに絵本に登場するなんて。びっくりですよ。
そして、まるで水戸の黄門様のような仙人様。あちこちでいろんなものを助けます。
それは、寒さに震える木だったり、大根畑の大根だったり・・・。
お布団たちに暖められて、みんなほっこり。本当に暖かそう。
子どもたちは、
「そうだよね~。お布団、あったかいもんね~」
と、なんだか納得していました。
絵柄もかわいらしくて、子どもたちが気に入ること間違いなしの一冊です。
(ねこなさん 30代・その他の方)
1月15日 気がつけば、心もからだもぽっかぽか。
水曜日は『おふろおじゃまします』
大好きなおふろに入りながら、たろちゃんとかばちゃんはこんなことを言います。
「きょうも みんなの おふろに はいりにいこうか かばちゃん」
「そうだねえ たろちゃん」
早速ふたりはトロッコ列車に乗り込んで、がたんごとんと出発です。
「おふろ おじゃまします」
最初に着いたのは、うさぎちゃんのおふろ。ぷくぷく、もこもこ、あわのおふろ。次におじゃましたのは、ぶたちゃんのどろんこぶろ。がたんごとん、さらに進むと森の中。しかさんのおふろはほかほかサウナ。天井裏にはふくろうさんのおはなしおふろ。さらにさらに、たこさん、わにさん、ぞうさんのおふろまで。みんなのおふろ、楽しいねえ! トロッコ列車は岩山をのぼり、もうすぐ「やまのてっぺん駅」。そこで待っていたのは……!?
おふろと言っても、こんなに色々あるなんて。見てください、おじゃまする時のたろちゃんとかばちゃん。ワクワクしているのが全身から伝わってくるようです。人気絵本作家たしろちさとさんが最新作で手がけたのは、おふろの絵本。かわいいけれど、スケールは壮大です。なんてったって、最後は動物たちがみんな一緒に入れるんですからね。観音開きでバッシャーンと画面が大きく広がるシーンの爽快感といったら。
気がつけば、心もからだもぽっかぽか。たろちゃんとかばちゃんじゃなくたって、おふろが大好きになっちゃいますよね。最後はやっぱり自分のうちのおふろ。またみんなで入ろうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
ふんわりした絵で、読んでいるとお風呂に入っている時の様なほわほわした気持ちになります。
色んな動物たちのお家のお風呂をトロッコ列車で巡って行く、なんとも多幸感に溢れたお話です。
どのお風呂も魅力的だし、どんどん増える仲間や、お風呂の小物、読むたびに新しい発見があり全く飽きません。文字も少ないので読み聞かせやすいです。これを読むとお風呂に入りたくなるようなので、お風呂嫌いな子にもおすすめです!
(ムラマッチョさん 30代・ママ 女の子2歳)
1月16日 目で耳で…五感で感じる焚き火の絵本
木曜日は『ダーラナのひ』
長い道を、海を見ながらひとり歩いてきたダーラナ。押し寄せる波がささやく「ダーラナ ダーラナ なみうちぎわに きてごらん」という声に誘われて砂浜におりていきます。すると沈みそうな夕陽がささやくのです。「ダーラナ ダーラナ すこしやすんでごらん」と……。
夕陽はもう海に落ちそう。あたりが真っ暗闇になる寸前、ダーラナが集めた小枝に火がつきます。燃えあがったばかりのたよりない火、ゆらゆら揺れながらどんどん大きくなる火。そして、夜中、燃え尽きそうになる火……。
濃紺の闇の中、さまざまに表情を変えながら、赤・黄・白・ピンク色に燃え上がる焚き火は美しく、いつまでも眺めていたくなります。
作者は、『ぼくとたいようのふね』(BL出版)や植田真さんとコンビを組んだ『とおいまちのこと』『みなとまちから』(共に、佼成出版社)など、幻想的な絵本を次々と世に送り出しているnakabanさん。どちらかと言うと大勢で読むよりも、ひとりかふたりで大切に味わいたくなる絵本作品です。
焚き火のそばでしばし寛ぎ、また次の場所へ旅をするダーラナ。記憶の底から、懐かしいぬくもりが蘇ってくるような気がするのはなぜでしょう。
今、物事が複雑すぎてちょっぴり疲れてしまっている、子どもや大人たちにおすすめ。夜は、ぜひ部屋を暗くして、絵本を読む手元だけを照らしてみてください。……まるで「ダーラナの火」が手元で燃えているようです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
読者レビューより
表現も絵も美しくて、読んでいる間、ダーラナとともに静かな時間をすごせます。マッチのかわりに、夕日のさいごのひとかけを火種にする場面、心をつかまれました。焚火をみながら、自分もどこか懐かしいところへ連れて行ってくれるよう。夜、眠る前に読むのによい1冊となりました。
(あんじゅじゅさん 50代・その他の方・高知県)
1月17日 火が しずかに ゆらゆらと もえています。
読者レビューより
雪の山道に迷ってたどり着いた不思議な世界。
暖炉の前にウサギがじっと座っています。
暖炉の温もりがじっくりと心を温めてくれるような絵本です。
「つかれたら やすめばいいんだ、 むりしないでじっとしてればげんきになるさ。」
ウサギがぽつりとつぶやく言葉が素晴らしい。
この言葉がこの絵本をとても高尚な作品にしています。
気づけばいろいろな動物が寝ています。
吹雪の一夜の出来事でした。
少年は晴れ渡った雪の世界に出ていきます。
「みんなありがとう。ぼくいくね。」
少年の言葉にウサギが応えます。
「きみがすきだよ。」
少年はお日様に向かって走り出します。
暖色で包まれた絵本。
心の奥から温まりました。
(ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
1月18日 栄養たっぷりのスープで体の中からあったまろう
土曜日は『スープになりました』
美味しそうなにんじん。
オレンジの鮮やかな発色と表面の小さな白い筋が食欲をそそります。
ページをめくると…
「スープになりました。」
一瞬でみんなが大好きなスープに大変身です。
白いカップにとろーりにんじん色のスープがよく映えています。
ごくっ。
じゃがいもは、とろんとろんのスープに。ごくごく。
真っ赤なトマトは、さらさらスープに。さらさら。
ひんやりスープもふわふわスープもありますよ。
でもやっぱり大本命はとうもろこし!
とろっとろのスープに変身、そこに…ちゃぽん。
スープにつけて食べたいものといったら、やっぱり「あれ」ですよね。
次から次へと美味しそうな野菜とスープが登場するこの絵本を作っているのは、彦坂有紀さん、もりといずみさんによるユニット「彦坂木版工房」。そう、リアルすぎてお腹が空く!と話題になった『パン どうぞ』の作者です。パン、ケーキ、コロッケと続いて、最新作はスープ。もちろん全て木版画です。
一見するとわからないのですが、真っ赤に熟れたトマトも、深みのある緑が味わい深いほうれんそうも、つぶつぶとうもろこしも、よーく見ると木肌の模様がうっすらと見えてきて、確かに木版画だとわかるのです。特に圧巻なのは、スープにフランスパンが浸かっている場面。なんでも、スープの箇所は版木をしっとりとさせ、パンの箇所はカラッとさせて刷っているのだとか! 質感の違いもみどころのひとつです。
とはいえ、子どもたちには細かい説明は必要ありませんよね。
美しく変身した絵本のスープを一緒にごっくん。
実際に食卓でもごっくん。
親子で心からあたたまってくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
とても、おいしそうなスープが、たくさん登場してきます。
いろんなタイプのスープがありますね。
材料によって、色も違ってきれいです。
木版画が、温かみとともに、生きているもの、食べ物のエネルギーを感じさせてくれます。
(ピンピンさん 50代・その他の方)
1月19日 北国で友だちにあたたかく過ごしてもらうには?
日曜日は『キツネザルのあったかいセーター』
北国にくらすオオヤマネコのリーサとクマのニルスのところに、南の島からワオキツネザルのオットーがやってきました。
オットーは、さっそく外に出てオーロラの絵をかきはじめましたが、寒くてかぜをひいてしまいました。
そこで、しんぱいしたリーサとニルスは、オットーがあたたかく過ごせる方法を考えて…?
気鋭の北欧の絵本作家による、ほっこりするゆかいな絵本。
読者レビューより
おしゃれなイラストに惹かれ、手に取りました。
南の国から遊びにきたワオキツネザルのオットーのために、オオヤマネコのリーサとクマのニルスがセーターを編んであげるというおはなし。
寒い冬に読むと、ほっこり温かくなりそうです。
毛糸をどうするのかがわかるところも良いと思いました。
読み物くらいの文章量の多い絵本なので、じっくりお話が読める(聞ける)子におすすめ。部屋のインテリアなどもおしゃれなので、大人も楽しめます。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
さて、どの絵本が一番あたたまるように感じましたか? 私自身は、『だんろのまえで』の暖炉に憧れたり、『ダーラナのひ』のように焚火がしたくなりました。まだまだ続きそうなこの寒さ。あたたまる絵本も寒い時期のお守りにしてみてくださいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |