ブルーノ・ムナーリのアートな世界を楽しもう
自由な発想と好奇心を刺激するアートな絵本
芸術家、グラフィックデザイナー、絵本作家……さまざまな顔を持つ世界的なアーティスト、ブルーノ・ムナーリ。激動の20世紀を生きたブルーノが遺した、豊かな発想とユーモアがあふれる作品。そんなムナーリの魅力があふれる絵本作品をご紹介します。
わくわくするムナーリワールドを体験できる1冊
まずはこちら。
色や形、素材などを駆使して表現の可能性を探った、ムナーリの魅力がぎっしり詰まった作品です。トレーシングペーパーで霧を表現したり、カラフルな紙で型抜きをしてにぎやかなサーカスの様子を表現したり……本でここまで豊かに表現できるんだ!と驚くことでしょう。しかも、イタリアで初版が発刊されたのは、なんと1968年。50年の時が経っているとは思えないほど、今も時代にも驚きを与えてくれます。
谷川俊太郎氏によるリズミカルな翻訳もお楽しみください!
ブルーノ・ムナーリ(1907~1998)は、造形、デザイン、建築、評論、子どものための造形教育など幅広い分野で独創的な仕事を残したミラノのアーティストです。近年、日本での再評価が高まり、絵本や芸術評論、プロダクト製品などの復刻が相次いでいる、今、もっとも注目の作家です。
初版はイタリアで1968年刊行(原作『NELLA NEBBIA DIMILANO』)。1981年に邦訳が出版されましたが、現在稀少本となっており、復刊が強く望まれてきた名著です。ことばだけでなく、色や形、素材を駆使して表現の可能性を探ったこの絵本は、時を経てもなお、新鮮な驚きに満ちあふれ、これまで多くのデザイナーやクリエイターにも影響を与えてきました。
このたびの邦訳出版では、児童の創造教育に長く尽力してきたムナーリが、一番に届けたかったであろう子どもたちに響く美しいことばをたいせつに、詩人・谷川俊太郎氏を迎え、全編ひらがなのリズミカルな新訳でお届けいたします。
*本の構成*
<第1部>トレーシングペーパーのページで霧にけむるミラノの街を表現。めくるたびに霧の濃さがかわり、霧の街の中を歩みゆく臨場感が伝わります。
<第2部>カラフルな紙に型抜きを施したページ。ゆかいなサーカスの音楽や喧噪が聞こえるようです。
<第3部>再び現れた霧のページでは1部目と対照的に描かれた自然物が家路へつく静けさを伝えてくれます。
おもちゃのようなしかけ絵本シリーズ「ブルーノ・ムナーリの1945」
第二次大戦が終わった1945年、5歳の息子への絵本を探したところよいものが見つからず、それならばとムナーリ自らが手がけた絵本シリーズが、2011年に日本でも「ブルーノ・ムナーリの1945」として出版されました。
ムナーリが子どもたちのためにつくったこのシリーズには、ページを開くとワクワクが飛び出してくるよう。全9冊の中から特におすすめ作品をご紹介します。
動物が出てくるしかけ絵本
ムナーリが作ると、動物のしかけ絵本もこんなアートな作品になります! 子どものアートな発想を刺激するための第一歩として、ぜひ一度ご覧ください。
素晴らしいデザインを楽しめる絵本
グラフィックデザイナーとしても活躍していたムナーリならではの、デザイン的な魅力を特に楽しめるのがこちらの2作。
しかけに隠されたデザインの妙に、思わずうなってしまうことまちがいありません。
巨匠ブルーノ・ムナーリの世界へようこそ!
ブルーノ・ムナーリの1945シリーズ第9巻目にあたる本作の表紙には、3羽の小鳥の上に縦の線が何本も入っています。
そう、小鳥たちは鳥かごの中にいるのです。ページをひらくと、
「3わのことり、ティオ、ティア、チが どうして とりかごに いるのか しりたい?では その わけを はなしてもらおうか。」
ということで、3羽の小鳥たちがそれぞれ、身の上話を始めます。
まず黄色い小鳥、ティオの話。ティオは羽根に包帯をしています。どんなことがあったのでしょう。
続いて赤い小鳥、ティアの話。ティアは・・・どうやら大事なところで眠ってしまうクセがあるようです。
そして青い小鳥、チの話。これはなんとも・・・まいりました!
ひとつひとつのお話しが、ちょっとしたしかけの造作になっています。
余白を存分に使い、シンプルな線と形と色で、独特の世界観を作り上げているこの作品、訳は日本の巨匠、谷川俊太郎氏。
本作でシリーズ9巻が完結し、全て揃えると背表紙にムナーリのサインが現れるという素敵な演出が!
今の時代に、これらの作品が(この価格で)楽しめることを実に嬉しく思います。
感性を刺激してくれるこのシリーズ、ぜひご家庭でお楽しみください。
ムナーリのしかけ絵本シリーズ第2巻。ぼうやのプレゼントを抱え家路を急ぐお父さん。
あと10キロのところで車が故障して…。次々変わる乗りもの、家までの時間や距離の変化が巧みにしかけとマッチした名作。
奇想天外な発想が面白い絵本
ムナーリの最大の魅力は、やはりそのユニークな発想。「え、こんな風に!?」と驚いてしまう奇想天外な発想を楽しめる作品が、こちらです。
喜劇のようなマジックが絵本になった!
まるでおもちゃのようなしかけ絵本「ブルーノ・ムナーリの1945」。
第7作目となる『みどりの てじなし』は、緑の手品師アルフォンソがカーテンのかかったクローゼットに向かって唱える場面から始まります。一体中には何が入っているのでしょう?いち、にい・・・
さん。アルフォンソ!クローゼットのカーテンをめくると、いつの間にか赤と白の服を着たアルフォンソが立っています。どうやってこんなに素早く着替えたのでしょう。次をめくればわかるそうですよ。さあ、いち、にい・・・
さん。消えた!アルフォンソはどこへ?
めくればめくるほど、ヘンテコな奇術師の小道具ばかりが出てきます。何が起きているのか分からなくなってきた頃、気になる手品の結末へ・・・?アルフォンソの表情にも注目です。
イタリアのアーティスト、ブルーノ・ムナーリが5歳になる息子のためにと手がけた「ブルーノ・ムナーリの1945」シリーズは、どれもシンプルながらも「絵本」という作りの面白さを最大限に生かした、大胆でワクワクするしかけばかり。物語と美しい色彩と形とめくる楽しみがぴったりと重なった時の感動が味わえるのです。こんなセンスを子どもの頃から味わえる子たちがうらやましい!
5歳の子ども向けといっても、決して媚びる事のない軽快でちょっぴりスパイスの効いた文章は、日本語版では谷川俊太郎さんの翻訳で楽しむことができます。
一点困ることは、シリーズどれも魅力的な絵柄と内容ばかりなので、1冊と言わずシリーズ全巻揃えたくなってしまうこと。全巻揃うと背表紙にムナーリのサインが浮かびあがるみたいですしね、困った(笑)。
ムナーリと一緒に、描こう!
子どもたちと一緒に絵を描いたりもの作るワークショップを精力的に行っていたムナーリ。ムナーリはどんな風に絵を描いたのか? 描きながら何をどのように見ていたのか? そんなことがわかる「かこうシリーズ」の2冊。ぜひ、ムナーリと一緒に絵を描きませんか。
木をじっくり見たくなります
タイトル通り、木のかき方を教えてくれます。ほとんど黒一色でところどころに葉っぱの緑色があるだけのシンプルな内容ですが、とてもおもしろいです。木は自由気ままにのびのびと枝をのばしているものと思っていたのですが、この本によると木には規則があるそうなのです。子供と一緒に、木を見上げたのですが枝の細かさにめまいがしそうでした。けれど子供も私もいろいろな木をじっくり見るくせがつきました。かしわの木の説明は興味深くて、今度かしわをみつけたら、ちゃんと見てみようと思いました。子供は本を見ながら、紙をちぎって木を作って遊んでいました。子供から大人まで楽しめて、木を見る目が変わる素敵な本です。
(どくだみ茶さん 30代・ママ・秋田県秋田市 女6歳)
五感のすべてで楽しめるムナーリ絵本の決定版
ムナーリのアートな世界をもっと楽しみたい人は、ぜひこちらもどうぞ。生誕110年を記念して復刊された、全50ページにわたる豪華絵本です。
クリエイティブの魔術師と呼ばれるブルーノ・ムナーリの世界
「未来は、子どもたちの中にある」と語ったムナーリ。その作品の中には、子どもたちに届けたい知性とユーモア、そして、子どもの感性をより豊かにするための自由な発想が詰まっています。
大人も子どもも魅了されること間違いなしのムナーリの世界を、ぜひたっぷりとご堪能下さい。
編集協力・執筆:洪愛舜(ほんえすん/ライター・編集者・絵本作家)
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