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保存版! 中学生の「心の地図を広げる」オススメ本11選

もう子どもじゃなく、まだ大人でない。中学生の皆さんに手にとってほしい本。

春の進級おめでとうございます! 新しいクラス、部活動などを前に心が落ち着かないですよね。とくに新しく中学生に仲間入りする子どもたちは、今までのように小学生が読む本は手にとりにくかったり物足りなかったり……モヤモヤした気持ちも芽生える時期かもしれません。中学生は一通り漢字も読めるようになり、興味があるならばどんな本でもだんだん食らいついて読めるようになる素敵な年齢です。子ども向けでも、大人向けでもない。みなさんにぴったりの本を11点紹介します。

【1】完全版 ピーナッツ全集(全25巻)

完全版 ピーナッツ全集(1)

記念すべき第1回から連載2年強分を収録した第1巻は、そのほとんどが単行本未収録。「シュルツ小伝」、シュルツのロングインタビュー付き。

まずは日英バイリンガル表記のコミック「ピーナッツ」。英語!?と思わなくても大丈夫。みんながよーく知っているビーグル犬・スヌーピーと、その飼い主チャーリー・ブラウンの周囲の何気ない日常を描いたおはなしです(80年代後半まではほぼ4コママンガ)。

昨年(2020年)アメリカの新聞に登場して70周年を迎えたことを記念し、『完全版 ピーナッツ全集』(全25巻)日本語訳が刊行。未訳を谷川俊太郎さんが訳し下ろし、シュルツ氏による17897話をすべて時系列で読めるようになりました。勉強やスポーツが苦手で恥ずかしがりで……という普遍的な悩みやユーモア、小さな幸せが伝わるシーンにほっこり。日本でなじみのあるのはスヌーピーとウッドストックが活躍する70年代~80年代の絵柄かも(※全集11巻~19巻周辺)。どれか1つ気になる巻を選び、英語表記と日本語を読み合わせるだけでもおもしろい。英語やマンガが好きな子にはおすすめです。

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【2】『メイドイン十四歳』

メイド イン 十四歳

主な登場人物は、ナチュラルボーン優等生とステルスくんと、サニーとパンダ、それから兎屋に来るちょっと変わった大人たち。
性格も良くて、なんでもほどほどにできてしまう主人公。秘密だって、釣り堀「兎屋」に毎週来ていることと、『フーアーユー?』という小説が好きすぎることくらいなものだ。そんなある日、透明人間の転校生の案内係を頼まれてから、クラス内で微妙な立場がくずれてしまい……!? 
ぐらつく日常を送るぼくらのためにYAの旗手が描く、あざやかな物語!

新学期……といえば、新しい出会い。新しい友だち。そして、転校生!?

『メイドイン十四歳』は“ナチュラルボーン優等生”(つまりあまり苦もなく自然に優等生をやってて、転校生のお世話係をたのまれちゃう)ぼくのおはなし。問題はその転校生が、実写版透明人間さながら包帯ぐるぐる巻きの男の子だったってこと。電話では声や話し方に好感を持っていたのに、いざ目の前にあらわれた、包帯で顔の表情も見えない男の子とどう仲良くすればいいのか、内心混乱するぼく。

作者は『密話』『わたしが少女型ロボットだったころ』『拝啓パンクスノットデッドさま』など、成長期の少年少女の世界を切り取り、彼らのサバイバルと他者との出会いを描いてきた石川宏千花さん。「そうきたか!」と驚いたり、「自分だったらどう振る舞うのか」と考え込んだり。楽しく読めて、ときどき「うーん」と考えたくなる作品。

【3】『ふるさとって呼んでもいいですか 6歳で「移民」になった私の物語』

ふるさとって呼んでもいいですか  6歳で「移民」になった私の物語

6歳で来日し、言葉や習慣、制度の壁など数々の逆境の下でも、周囲の援助と家族の絆に支えられ生きてきたイラン人少女ナディ。移民社会化する日本で、異文化ルーツの子どもたちが直面するリアルを等身大で語った貴重な手記。

両親がイランから日本へ働きに来たため、日本で育つことになったナディ。両親は夜遅くまで外で働くため、アパートや近隣の住人たち、学校の先生や友だちと交流し助けられながら育っていきます。苦労しつつもだんだん言葉を覚え、学校生活をおくるナディ。見た目は「ガイジン」ですが、日本育ちでお笑いやポップスが好きな女の子。そんなナディがイスラム教徒を自覚して豚肉を残していいか先生に相談したり、在留許可が取れるのかハラハラしながら高校受験したり……。はじめてのアルバイト、就職活動と、大人になる過程でぶつかっていく出来事が書かれています。

のびやかな言葉、漢字はすべてふりがな付きで、読みやすい! ナディがいじめられたときは、いじめっ子のところに日本語が不自由でもどなりこんでいくナディのお母さん。謝った男の子と、すごい剣幕で叱ってくれたその子のお父さん。その後いい関係を築いたエピソードも素敵です。多文化共生社会。同時代をどこかで生きる友だちの体験記として読んでみてくださいね。

【4】『天動説の絵本』

天動説の絵本

地球が全宇宙の中心だと信じていたころの人びとが考えていた世界とは、いったいどんな世界だったのでしょう? 中世然とした作りの、ユニークな科学絵本。

思い込みを知る……という意味でぜひ一度読んでほしい『天動説の絵本』。昨年、2020年に亡くなった安野光雅さんはもともと学校の先生で、遊び心のある精緻なだまし絵の絵本、数の絵本、名作「旅の絵本」シリーズなど、戦後の日本の絵本界に大きな功績を残した作家です。

『天動説の絵本』は、かつて人々が地球は丸いと知らず、どこまでも歩いていけば地上から落っこちてしまうと信じていた頃から話がはじまります。さまざまな悪いことは魔女のせいだとか、金を作る方法(錬金術)があるはずだと信じられたり。「地球は丸い」「動いているのは天ではなく地球だ」と言いはじめた科学者を、人々は弾圧し処刑さえします。

わが家の小学生は本書を読んで「これって本当にあったことなの?」とびっくりしていました。いつの間にか現代では、地球が丸いことなんか小学生でも知っているけれど……。「天が動くのが当たり前だ、常識だ」とみんなが思っていた時代を私たちは笑えない。これからだってこういうことは起こりうる。この美しい絵本を読むと、あらためて人間の“常識”の思考をたどることができるのです。

【5】『恐竜博士のめまぐるしくも愉快な日常』

恐竜博士のめまぐるしくも愉快な日常

旅好きの少年がいつしかたどり着いたのは、ワクワクするような「恐竜学」の世界だった――。

日本を代表する人気恐竜博士が、幼少期からの自身のヒストリーをなぞりながら、あまり知ることのない“恐竜博士の舞台裏"を綴ったエッセイ。 

研究、発掘、論文、講演、展示から本の執筆、監修などなど、毎日めまぐるしく過ぎていく恐竜博士としての日々と、恐竜学の最前線を描く。
「恐竜博士になるにはどうしたらいいの?」「恐竜博士ってどんな仕事をしているの?」恐竜博士を夢見る子供たちへのアドバイスも!

恐竜や古代生物に興味がある中学生におすすめのエッセイがこちら。作者の真鍋真さんは国立科学博物館の人気恐竜博士。本書は「恐竜博2019」開催前夜に書かれたものです。名作絵本『せいめいのれきし 改訂版』の監修者をつとめ、テレビでもわかりやすい解説で人気を博す真鍋真さんの心のうちを知ることができるおもしろいエッセイです。ふりがなもたくさん振られていて、小学校高学年以上なら十分読めます! 近年に起こった恐竜にまつわる新発見や、世界の研究の潮流についても触れられ、将来恐竜博士になりたい諸君には必読の書。ときどき1ページ4コマ程度のマンガが入り、拾い読みでもさらっと読めます。地球という天体や生物の歴史に興味がわくかもしれませんよ。

【6】「妖怪の子預かります」シリーズ

【児童書版】妖怪の子預かります(1)

弥助は十二歳。親がわりの千弥と貧しいながらも平和に暮らしていたが、ある夜、いきなり妖怪にさらわれ、妖怪奉行所につれていかれる。いやな夢を見た弥助が思わず割ってしまった石が、子どもを預かる妖怪うぶめの住まいだったというのだ。「罰として、うぶめに代わって妖怪子預かり屋になれ」と命ぜられる弥助。それからというもの、毎晩子どもを預けにやってくる子妖怪に振り回される……。トラブルだらけの妖怪ファンタジイ!

古の生き物に目を向けたあとは……、昔から人々の間で存在がささやかれる“妖怪”の物語はいかがでしょう。

作者は「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズで大人気の廣嶋玲子さん。千弥という盲目で美男の按摩師と、その養い子である弥助。2人の長屋住まいから物語ははじまります。幼い頃の記憶がない弥助は、千弥といたわり合いながら暮らしていたのですが、ある日森で白い石を割ってしまったことから、妖怪たちの子どもを預かる「預かり屋」を請け負うことになります。新しい子妖怪が預けられるたびに、何かしらの騒動が起こるのですが……。

1巻をとおして2人の素性が明らかになっていき、弥助に懐く子妖怪たちの姿も可愛くおもしろく描かれます。2巻以降も妖怪はますます増え、おまけに弥助に「預かり屋」を命じた妖怪奉行所の「月夜公(つくよぎみ)」と千弥には何かしらの因縁があったようで……。魅力的なキャラクター、テンポのよい会話、ドキッとする不気味さ。廣嶋玲子さんの筆力が存分にふるわれたシリーズです。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=157463

【7】『南米妖怪図鑑』

南米妖怪図鑑

世界初(!?)の妖怪図鑑。妖怪40種の情報を大公開!
オドロキの生態から出会った時の対処法まで、イラスト付きで詳しく解説します。
合間には現地の文化を解説するコラムも収録。

【「怖い」だけじゃない】
妖怪は人間の暮らしの中に根付いている存在。
妖怪を知ることは、その土地の人たちのことを学ぶことに繋がります。
本書は妖怪に触れると同時に、中南米の自然・文化・歴史・風習も紹介。
現地の知識が自然と身につく画期的な図鑑です。
巻末には、各国の要覧を掲載。

妖怪は日本だけじゃない。南米にだっているんです。それも奇想天外な妖怪が……! 作者はアルゼンチン生まれのホセ・サナルディさん。ラテンアメリカ文化圏の妖怪を民俗学の観点から研究しています。意表をつくパワフルな妖怪の絵や解説は、眺めるだけでも楽しい。難しい漢字にはふりがなが付いています。ワールドワイドな妖怪は友だちとの会話でもちょっとしたネタになりそう。

吸血生物「ピウチェーン」、人骨コレクター「シルボーン」、寝込みを襲う「ピサデイラ」……。妖怪をおそれ、妖怪に想像をめぐらせ、物語をつくりあげて語りつぐ。国は違っても人間はみな同じだなあと思っちゃいます。中南米の地理や文化、歴史、風習にも自然に触れることができます。

【8】『虹いろ図書館のへびおとこ』

虹いろ図書館のへびおとこ

ささいなことから学校に通えなくなった小学六年生のほのか。居場所を探してたどりついた古い図書館で出会ったのは――。第1回氷室冴子青春文学賞大賞を受賞した傑作小説!

中学生になると記憶のはるか彼方かもしれませんが、幼い頃読んだ絵本に救われる……そんなことがこの先あるかもしれません。

『虹いろ図書館のへびおとこ』はいじめで不登校になった小6の女の子の話。親に心配かけないよう、学校に行ったふりをして日がな一日、おんぼろ図書館で過ごしています。そんな彼女を、図書館のひとは決して学校や警察に言いつけたりしません。図書館で働く、顔に目立つあざがある男性がいるのですが、さりげなく居場所を提供してくれるあたたかくも不思議な存在になっていきます。

第1回氷室冴子青春文学賞・大賞に輝いた、櫻井とりおさんの作家デビュー作。『かがみの孤城』などの作者・辻村深月さんも絶賛した作品だそうです。

こっそりお伝えしたいのは、私たちがかつて読んだ絵本や物語がきら星のようにちりばめられているところ。孤独で行き場がないと思うときでも、図書館はあり本はある。やさしい幼い記憶がまたたく、10代の子どもたちに出会ってほしい物語です。

【9】『ものがたりの家』

ものがたりの家

物語に出てくるようなユニークな家とその設定を描き、人気を博した吉田誠治の同人誌『ものがたりの家』の決定版が登場!! 既刊『ものがたりの家 I・II』に掲載された全作品に加え、新作15作品、コマ割り絵本、線画、作品解説、メイキングなど、本書初公開となる内容も収録しています。ページをめくる度に新しい物語が始まるような、見て、読んで楽しい美術設定集です。

「グラフィッカー」と呼ばれるゲームの背景を描く職業があるそうです。その職人、吉田誠治さんが物語設定の設計図として描いたたくさんの建築物を一気に見ることができる美術設定集です。悪戯好きな橋塔守の家、厭世的な天文学者の住処、ツリーハウス、国境近くの塔、発明家の風車小屋、竜と暮らす家……。ページをめくるごとに、異世界があり、空想の家があり、建物の細部まで飽きることなく眺められます。想像をふくらませて物語の中で遊ぶひとときにぴったり! RPGなどのゲームやファンタジーが好きな人にもおすすめです。

【10】『くさい! だれでもなんでも、においパワーがばくはつだ!』

くさい! だれでもなんでも、においパワーがばくはつだ!

においは生きるためやコミュニケーションにとっても役立つ。気絶するほど息のくさい王様の話や宇宙のにおいについて、くさーい発明品の話など「におい」のおもしろくてためになる話が満載!

サイケデリックな色使い、奇天烈でドキッとするネタがたっぷり詰め込まれた大型翻訳絵本。図鑑や『ざんねんないきもの事典』などのシリーズが好きな子にもおすすめ。かつて「世界一くさいシューズ」の大会があったこと、中世ヨーロッパでは「くさい」ことが武器になって、戦争の勝敗を決したこともある。「くさい」香水もあるし、今は匂いをコンピューターで送ることもできる……?! 「それって本当!?」と言いたくなるエピソードがいっぱいです。読んだら家族や友だちに披露したくなること間違いなし。でも食事中は具体的な話題にしないように気をつけてね!

【11】『みどりのゆび』

岩波少年文庫 みどりのゆび

裕福に暮らすチト少年。お父さんが兵器を作る人だったことを知り、驚きます。じぶんが不思議な〈みどりのゆび〉をもっていることに気づいた少年は、町じゅうに花を咲かせます。チトってだれ?

最後にご紹介したいのが『みどりのゆび』。恵まれた家庭に生まれた、容姿にも恵まれたチト少年。両親に愛され、素直ないい子に育ちます。でも学校で「この子はふつうではない」と言われ、家に返されてしまいます。大きな武器工場を経営する、町の名士であるお父さまは、息子に教育を授けようと、ふたりの人間に教育をたのみます。ひとりは庭師。そしてもうひとりは、武器工場の監督者。

刑務所や貧民街など、町の恥部のように扱われている場所を知ったチト少年は、工場監督の先生とはちがった意見を持ちます。そしてこっそりと、自分にそなわる能力を生かすことを試みます……。

フランスの寓話的な物語。『星の王子さま』を思わせ、哲学的で、儚さや幸福を感じる種をいくつも心に落としてくれます。もう子どもじゃなく、まだ大人でないみなさんにぜひ手にとってほしい本です。

大人の本も手が届くようになりつつある中学生へ向けて、心の地図を広げ、自身の違和感や幸福感とむきあい、心を耕していけることを祈って、11の作品を選んでみました。どの本からでも手にとってもらえたら嬉しいです。

みなさんのありのままの感情や疑問にこたえてくれる1冊に出会えますように!

大和田佳世(絵本ナビライター)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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