「すっぱりめがね」ですっぱり切る!
例えば、毎日なにげなく使っているテレビやゲームを見て。
ふと見上げた空に飛んでいた飛行機を見て。
初めて演奏会で聞いたグランドピアノの生の音を聞いて。
「どういう仕組みになっているの?」
そんな風に考える子って、すごい。
小さな頃から、今だって、目に見えるものは何となく受け入れてしまう自分にとって、何でも当たり前として捉えることなく、「どうしてそうなるの?」と少しでも立ち止まる思考回路の持ち主に出会えば、無条件に尊敬してしまうのです。何かを生み出していく人は、何にだって好奇心を持つところから始まるんでしょうね、きっと。
でも、そんな私にだって受け流せないものがあります。
例えば、いつも怒っている人を見て。
遊んでいるのに、全然楽しそうじゃない子を見て。
笑っているのに、なんだか泣いてるみたいな人に会って。
「どういう気持ちでいるの?」
これは優しさではなく、好奇心です。
そんな時思うのです。すっぱりと切って、中身をのぞくことができたらな。
きっと仕組みが気になって仕方がない子と同じ衝動です。
…え!?
そんな願いが叶う「めがね」があるって本当?
すっぱりめがね
すっぱりめがね。
とても気になる語感です。すっぱり? めがね?
ぼくの持っている不思議なめがねは「すっぱりめがね」。
このめがねをかけてのぞくと、なんでもすっぱり。
「すっぱり」とは?
……なんと、中身が見えてしまうのです。
のぞいた物は、みんな断面図として見えてしまうのです!!
この絵本では、その「すっぱりめがね」でのぞいた身の回りの中身を見せてくれます。おにぎり、ラーメン、腕時計からピアノ、車まで。次々に登場する断面の絵、それはそれは緻密です。なにしろ「すっぱり」切られている訳ですから、その切れ味の鋭さも見事なのです。ラーメンの断面図なんて考えた事もなかったですし、サッカーボールと野球ボールの違いも面白い。でもやっぱり、圧倒されるのはピアノと車。子どもの頃に読んでいたら、何時間でも眺めていたことでしょう。
そうなってくると、なんでも「すっぱり」したくなるのが読者の心情です。サービス満点なぼくは、自分の住んでいるおうちだってすっぱりと見せてくれますよ。のぞき見している様な気分になってきちゃいますね。
ありそうでなかった「すっぱり絵本」。小さな子もページをめくるだけで、その意味は伝わるはず。大人だって…すでに好奇心が止まりません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
この絵本の何が面白いって、「すっぱり」という語感。
「すっぱり」切ってしまう気持ちよさ。
「すっぱり」見えてしまう爽快感!
この快感はクセになります。何だってのぞいてみたくなります。
仕組みが気になって仕方のない子にとってはたまらない1冊ですよね。
…あれ?
でも、どうやら人の心までは「すっぱり」切ってくれませんでした。
まあ、確かに「すっぱり」切られた方はたまりませんよね。
そちらは想像するに留めることにしましょう。
もっと見たい!もっと知りたい!断面・分解絵本
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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