全てを失って最後に残ったのは……? 大切な人と感動を分け合いたい絵本『ひだまり』
大切な誰かと出会う幸せ、失う悲しみ。誰もが体験する出来事です。
この時がずっと続いてほしいと思っても、一緒に過ごせる時間は有限です。それは、相手が家族やパートナー、恋人や友達でも……。
愛する人を亡くしたとき、人はその悲しみや喪失感にどう向きあって、そのあとも続く人生を進んでゆけばよいのでしょう。多くの人にとって、とても大きな問題だと思います。
そして一緒にいられる時間がどんなにかけがえのないものなのか。
そのことを静かに考えさせてくれる物語が新たに生まれました。胸にひだまりのあたたかさが広がるような感動を、大切な人と分け合いたくなる絵本です。
港町に住むノラネコのトラビスは、気ままな乱暴もの。ほかのネコの魚を奪ってしまうようなネコでした。
ある日、トラビスは他のネコに魚を分けてあげていた優しいミケネコ、ミケーレに出会います。
ミケーレと一緒に過ごすようになり、幸せを知ったトラビスは変わっていきます。
けれども、幸せな時間は長く続きませんでした。
ミケーレを失ったトラビスは、元の乱暴ものに戻ってしまいます。さらに自分より強いネコに、居場所も奪われて……。全てを失ったトラビスの胸に最後に残ったものは、何だったのでしょう。
『ひだまり』ってどんな絵本?
・人気作『あかり』の作家・画家コンビが贈る待望の最新作
少女とろうそくのおはなしを通して、「いのち」をテーマに生きることの意味と喜びを描いた感動作『あかり』は、発売後、大きな反響を呼びました。『ひだまり』は、同じく林木林さんと岡田千晶さんのタッグで綴られる待望の新作となります。
林 木林(はやしきりん)
山口県に生まれる。「詩のボクシング」全国大会で優勝。詩人、絵本作家、作詞家。ことば遊びの分野でも活躍中。詩集に『植星鉢(ぷらねたぷらんた)』(土曜美術社)、絵本に『おおきな けやき』(広野多珂子絵、鈴木出版)、『おちゃわんかぞく』(いぬんこ絵、白泉社)、『二番目の悪者』『せかいいちのいちご』(ともに庄野ナホコ絵、小さい書房)、翻訳に『でんごんでーす』(講談社)など作品多数。岡田千晶との絵本に『あかり』(光村教育図書)がある。
岡田 千晶(おかだちあき)
大阪府に生まれる。ボローニャ国際絵本原画展2010入選。子どもの世界の繊細な表情をていねいに描く。作品に『ゆめのとびらをひらくとき』(カール・ニューソン作、岩崎書店)、『ハンカチさがし』(森山京作、文溪堂)、『ざしき童のはなし』(宮沢賢治作、ミキハウス)、『しゃっくりくーちゃん』(竹下文子文、白泉社)、『ボタンちゃん』(小川洋子作、PHP研究所)など多数。林 木林との絵本に『あかり』(光村教育図書)がある。
・詩情あふれる文章と、美しい絵を隅々までじっくり味わえる
林木林さんによる美しい言葉で語られる文章は読みごたえがあり、大人はもちろん、小学校中学年からの子どもたちがじっくり向き合って読むのにおすすめです。
岡田千晶さんの手で繊細に描かれた2匹のネコの豊かな表情と柔らかな毛並みに惹きつけられます。そして、野原や街、ネコたちに落ちる、光と影の表現の美しいこと!
隅々まで味わいたい珠玉の絵本です。
・大切な人へのプレゼントに!
大切な人へ、言葉のかわりにそっと手渡したくなる絵本。大人の方は、パートナーへの贈り物にするのも良いですね。きっと、受け取った人も心があたたまるギフトになるはずです。
『あかり』と『ひだまり』、どちらも心の深いところに響く作品です。ぜひ、合わせて手に取ってみてください。
(絵本ナビ編集部 掛川晶子)
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