「だれにも いっちゃいけないよ。」…なんて言われたら…。 『たぬきのひみつ』
「だれにも いっちゃいけないよ」そんなことをこっそりと耳打ちされたら、
思わず身を乗り出して「うん、うん、絶対言わない! ……で?」って聞き返してしまいますよね。
しかも教えてくれる相手がタヌキだなんて、がぜん知りたくなってしまいます。
おなかに手をあてて、なんだか不自然なポーズでこちらを見ているのは、たぬきです。どうやら、ずっと隠していた自分の秘密を言いたくなったみたいで。
「だれにも いっちゃいけないよ。
ぼくの おへそってね……」
え、え!?
そんなことになってるの?
そ、それ食べれるの?
読んでいるこちらがあまりの驚きに戸惑っていると、絵本の中では話が進んでいきます。聞いていたリスさんや、あひるさん、コアラさん、ぺんぎん兄弟たちが次々に自分の秘密を暴露していくのです。
うんうん、秘密ってつられてしゃべりたくなるものだよね。でも、そんな大事なこと本当にしゃべっちゃって大丈夫? そもそも思い切って最初に話し始めたのはたぬきさんですし。
……ところが、たぬきさんの秘密はそれだけじゃあ終わらなかったのです!
クレヨン画家としても注目を浴びている絵本作家、加藤休ミさんの最新作のテーマは「秘密」。動物たちが自分の秘密を告白していく可愛いお話なのだけれど、なぜか可愛いだけじゃ終わらせてくれないのは休ミさんの絵のせい? 資質のせい? だって、みんなの告白のインパクトが大きすぎます。その、決してあっさりしているとは言えないみんなの表情もクセがあります。こんな秘密、私だったら抱えきれないし、ちょっと困る。だけど、でも……すごく美味しそう!!
ああ、これにはまいった。読み終わる頃には、ちょっとうらやましい気持ちになっていたりして。ポンとたたけば、なんて楽しすぎます。あ、皆さんも言っちゃダメですよ。これは秘密ですからね。
(絵本ナビ編集長 磯崎園子)
『たぬきのひみつ』ってどんな絵本?
難しいことは一切ぬき! 絵本の世界を楽しむユーモア絵本
「何でたぬきのおへそが●●なの…?」大人ならどうしても理由を知りたくなるところ。
でも、ユーモア絵本は難しい理屈は一切抜きにして、「えーー うそ~~!」「ワハハハ! 変なの~~」とおはなしの世界を楽しむのが鉄則です。
だって子どもは、おかしな展開であるほど喜んで絵本の世界をまるごと楽しんでいるはずなのですから。
子どもと一緒に「おっかし~~」「次はどうなるんだろう??」と大笑いしながら楽しんでみてください。
クレヨンで美味しいものを描かせたら随一の絵本作家、加藤休ミさんがはじめて手がけた動物絵本
加藤休ミさんといえば、『きょうのごはん』(偕成社)や『りきしのほし』(イースト・プレス)など、美味しいものをとにかく美味しく描くスペシャリストです。しかも使っているのは、よく小さい子が使っているクレヨンなのですから、「どうやったらクレヨンでこんなに美味しそうに描けるの?」と不思議に思うのも無理はありません。
今回は加藤休ミさん初の動物絵本とのことですが、美味しい食べ物もちゃんと健在なのでご安心ください。
1976年、北海道釧路市出身。クレヨン 画家、絵本作家。
クレヨンとクレパスを用いた独特の画法と迫力あるタッチで、ノスタルジックな情景や滑稽味のある人物画や、なかでも食べ物を描いた作品は定評がある。
2010年から築地、西荻窪、北海道立釧路芸術館にて展覧会「魚展」開催。
絵本に『ともだちやま』(ビリケン出版)、『きょうのごはん』(偕成社)、『りきしのほし』(イースト・プレス)、『おさかないちば』(講談社)、『かんなじじおどり』(BL出版)、『いっすんこじろう』(文・内田麟太郎/WAEV出版)、『ながしまのまんげつ』(原作 林家彦いち/小学館)など。
秘密を共有する楽しみがクセになる絵本
絵本を読んだ後、お子さんに「実はママの●●はね……」とこっそり秘密を打ち明けてみてはいかがでしょう。
きっと、「なになに?」と目をキラキラさせて近づいてきてくれるのではないでしょうか。
もしかしたら「実は私もね……」ととっておきの秘密を教えてくれるかも。
秘密を共有する楽しみを、読んだ後も味わえる作品です。
絵本「たぬきのひみつ 」に興味が湧く66秒プロモーションビデオ公開中!
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