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ほるぷ出版創業50周年記念講演会&パーティーにお邪魔しました!

2019年10月18日、御茶ノ水にあるソラシティカンファレンスセンターにて、ほるぷ出版創業50周年のお祝いの会が開催されました!

 

ほるぷ出版は1969年創業、近代文学の復刻事業を軸としてスタートしました。1975年より海外翻訳絵本の出版を開始。『ちびゴリラのちびちび』や『ルピナスさん』など、たくさんの名作を日本の子どもたちへ届けてきました。「翻訳絵本といえば ほるぷ出版」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。一方で、「イメージの森」シリーズや「声に出すことば絵本」シリーズなど、日本の作家の作品も数多く刊行。最近では、『Wonderワンダー』(作:R・J・パラシオ/訳:中井はるの)や、「あかちゃんがよろこぶ しかけえほん」シリーズ(作:ひらぎみつえ)が、大きな話題になるなど、たくさんの読者の支持を得る児童書を刊行し続けています。

会場に集まったのは、翻訳家さん、作家さん、編集者さん、書店員さん…と、そうそうたる顔ぶれ。120名ほどの方々が参加されました。 

ほるぷ出版取締役の中村宏平さん

ほるぷ出版取締役の中村宏平さんの挨拶でスタート。「皆さんが自分にとっての絵本の50年を振り返れるような時間になったらと思います。」と話されました。

 

続いて今回のスペシャルイベント、記念講演会の登壇者が紹介されます。「絵本の作り手であり、素敵な絵本の読者代表でもある」フリーの編集者で装幀家の小野明さん、tupera tuperaの亀山達矢さん・中川敦子さんが登場!

tupera tupera×小野明「絵本の50年を語るnight」

記念講演会は、「絵本の50年を語るnight」と題し、ほるぷ出版の50年の歴史を彩る翻訳絵本について語るトークイベント。

ほるぷの50年の歴史の中から小野さんがセレクトした翻訳絵本15冊について、小野さんとtupera tuperaさん3人が作品への思いを語ります。

セレクトされた絵本が並びます。名作がずらり…! スクリーンに映っている50周年記念ロゴは、tupera tuperaさんのデザイン!

「50年の歴史の中から15冊の絵本を選ぶのは、とても大変でした…」と語る小野さん。ほるぷ出版の歴史を語るうえで重要な作品という基準で選ばれた作品たちが年代別に紹介されました。中川さんと亀山さんは、セレクトされた15冊全部を事前にお子さんと一緒に読まれたそうです。小野さん、亀山さん、中川さん、3人のどんな言葉が交わされたのか、いくつかの作品についてピックアップしてご紹介します!

なんにかわるかな?

ページをめくるたびに積木がいろいろな形に変わっていきます。家から消防自動車に、つぎに船に……。スムーズな場面展開が子どもたちをひきつけます。想像することの楽しさを豊かに語っている絵本です。

小野:ほるぷ出版が刊行した第1号の絵本です。積木がいろんな形に変身していくだけじゃなくて、それが物語になっているんですよね。

亀山:表情が数パターンで描かれているのも積木らしさが出ていますね。積木ならではの色の絞り方も良いなあと思います。

 

中川:自分でも実際に積木で形を作りたくなります。「遊びを提案する絵本」なのかなというところに共感しますね。

tupera tupera 中川敦子さん・亀山達矢さん
ちいさな1

ひとりぼっちの「ちいさな1」は、仲間をさがしに出かけます。しかし、だれも仲間に入れてくれません。そこへ「わっか」がやってきて……。

日本版の『ちいさな1』は、小野明(装幀家名 羽鳥一希)さんが装幀を手掛けた一冊です。

亀山:原書を見たのは絵本を描き始める前でした。ポール・ランドの絵にすごく影響を受けました。こういう絵本もあるのかと衝撃を受けた、今の自分たちからしても「かっこいい絵本」。絵本を作ろうかなと思ったきっかけのひとつです。

 

中川:出版された当初から今でも衝撃を受ける人が多いのではと思います。

小野:世界的なデザイナー、ポール・ランド。当時のグラフィックの先頭を走っている絵本です。日本版では、もともと本のなかにあるかわいいユーモアを表現するのに、テキストのなかの「1」のフォントを、他の数字と比べて少し小さいサイズにしているんですよ。

小野明さん

50年を語る最後に紹介されたのは、新刊『ほら、ここにいるよ』。ほるぷ出版創業50周年記念出版として刊行されたこちらの絵本は、tupera tuperaさんが翻訳を手掛けた一冊です。

ほるぷ出版創業50周年記念出版

ほら、ここにいるよ このちきゅうで くらすためのメモ

世界的絵本作家オリヴァー・ジェファーズが、誕生した息子にむけて、この世界のすばらしさや不思議さ、生きていくために大切なことを伝える、心を揺さぶるメッセージ絵本。地球の説明からはじまり、世界の人々のこと、言葉のこと、すぎていく時間のこと……。ページをめくるたび、世界は、彩りに満ち、深い優しさもったものとして描かれていきます。
子どもから大人まで、今この地球でとほうにくれているすべての人たちに、きっと何かの案内になる絵本です。

軽やかに この世界を一周し

最後に そっと寄り添ってくれる 美しくて優しい絵本

親としても オリヴァーがこめた想いに深く共感しました

――tupera tupera

亀山:この本を読んだとき、とてもいい本だと思いました。それを僕たちに任せてもらえたのが何より嬉しかったです。ただ、とても難しい作業だったので悩んだ部分も多かったですね。

 

中川:原題”Here We Are”をどう訳すかもとても悩みました。世界と宇宙の壮大な冒険から、最後はそっとお父さんの手の中へとおさまる…。その場面の言葉から日本版のタイトルを決めています。

原書をイメージした描き文字は、亀山さんによるもの。ふたりで描いてみて、この絵本がお父さんが息子に向けて描いた絵本ということで、最終的に亀山さんの文字になったのだそうです。

小野:私たちが生きる「世界」について語る絵本。科学的なことも含んでいるのに、この絵本には「説明」ではなく「伝える」という気持ちに満ち溢れていると感じました。

トークイベントのラストは、tupera tuperaさんによる『ほら、ここにいるよ』の読み聞かせ。

絵本の語りの部分を中川さん、描き文字の説明の部分を亀山さんが担当し、掛け合いは息ぴったり! 優しい物語が広がる、なんとも贅沢な時間でした。

トークイベント後、tupera tuperaさんに感想を伺いました!

――たくさんの翻訳絵本の名作が紹介されました。今回、tupera tuperaさんが改めて読んで驚いた作品などはありましたか?

 

亀山:『ぼく にげちゃうよ』ですね。『おやすみなさいおつきさま』が大好きなのですが、『ぼく にげちゃうよ』では、クレメント・ハードの絵がさらにぶっ飛んでいて衝撃がありますね。母と息子の関係の描かれ方にもぐっときます。

 

中川:『うさぎの島』は、びっくりしました。大事なメッセージを含めて、怖いけど惹かれる、読み終わってもじわじわずっと気になる絵本ですね。社会問題を扱う絵本は日本ではめずらしいので、翻訳絵本を出版する意義があることだと思いました。

 

 

――読み聞かせもとても素敵でした。 

 

亀山:役割分担して読むことは、事前に決めていました。50周年のお祝いという豪華な顔ぶれの前で、緊張よりどうしたらいいやらという感じでしたが(笑)、楽しかったです。

 

――ありがとうございました!

祝50周年! 会場の皆さんからコメントいただきました。

トークイベント後はお祝いのパーティーが催され、絵本ナビスタッフも、参加されていた翻訳者さん、作家さんたちにご挨拶させていただきました! 皆さんにいただいた、ほるぷ出版50周年のお祝いコメントをご紹介します。

 

ひらぎみつえさん

「50周年おめでとうございます! 今日の講演会はとても勉強になりました。これからますます面白い作品を作れたらいいなと思います。ほるぷさんのこれからの歴史のなかにも参加させていただけたら嬉しいなと思っています。」

 

飯野和好さん

「おめでたいですね。ほるぷ出版がいい絵本をしっかりと作ってきていることに、改めて感心しました。『イメージの森』シリーズなど冒険も出版できるというのはすごいことだと思う。そこに参加させてもらったことを嬉しく思っています。」

 

武田美穂さん

「おめでとうございます。スタッフのみなさんの、本に対する熱意と愛情がすごい、とてもいい出版社です。お互い切磋琢磨して喧嘩なんかしながら磨きあえる。そういうことができる会社だと思うので、長い歴史のなかで培ってきた子どもに対する姿勢をこれからも貫いてずっと輝く本を送り出してほしいなと思います。」

 

なかがわちひろさん

「ほるぷ出版の翻訳絵本がかっこいいと学生のときから思っていました。志が高くてかっこいい絵本、私もその末端に関わらせていただけていることに鼻高々です。」

 

中井はるのさん

「おめでとうございます! ほるぷ出版から『Wonderワンダー』が出版できて幸せでした。いい編集者といいチームが組める、とてもいい会社です。いい距離でいてくれること、信頼関係が大事ですよね。」

 

ほりかわりまこさん

「おめでとうございます。20数年前、絵本の仕事をしていない頃に挿絵のお仕事をさせていただいて、挿絵の香りをかがせていただいたことを思い出します。不慣れで何もわからないときに使っていただいて。とてもお世話になった出版社さんです。若いときに面倒見ていただいた記憶って残っているものですね。今日はその頃のヴィヴィッドな気持ちを思い出しました。」

 

池田あきこさん

「50周年おめでとう! 長くつきあっているけど、こうしてパーティーをやるのはじめてでとてもうれしいの。感慨深いです。喜びの気持ちでいっぱい。私はずっとほるぷ出版で本を出版しているので、ほるぷが元気だと私もうれしい。そしてやっぱりいい編集者がいるから、わかってもらえる人がいる安心感があります。」

 

福本友美子さん

今日50周年で紹介された絵本は、どれも日本で出版されたときの印象をおぼえているものばかり。日本の翻訳絵本の歴史を振り返ったときに重要な作品が並んでいると感じました。私とほるぷ出版さんは、渡辺茂男先生と共訳で「ウィスコンシン物語」シリーズを出版してから30年来のおつきあい。マクリントックの絵本も続けて翻訳させていただいているので、今日も『ないしょのおともだち』が講演のラインナップに入っていてうれしかったです。

 

ふしみみさをさん

おめでとうございます! 私は、大学を卒業して絵本の仕事をしたいなと思ったときに、まず本屋さんの棚に並んだ絵本を見てみたんです。そのときにもう、ほるぷ出版さんは「いい出版社さん」だと感じました。それくらいたくさんのいい絵本を出版している。当時からそう思ってましたし、今もそう思っています。

取材:磯崎園子(絵本ナビ編集長)

文・構成:掛川晶子(絵本ナビ編集部)

撮影:所靖子(絵本ナビ編集部)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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