「絵本ではじめるポジティブな性教育」産婦人科医・遠見才希子さん×絵本ナビ編集長・磯崎園子 トークイベントレポート
新シリーズ「性とからだの絵本」(童心社)刊行記念トークイベント
2022年3月20日(日)、下北沢の本屋B&Bにて、産婦人科医・遠見才希子さんと、絵本ナビ編集長・磯崎園子によるオンラインイベントが開催されました。
遠見 才希子(えんみ さきこ)
1984年、神奈川県生まれ。2005年、大学入学後「もっと気楽に楽しくまじめに性を伝える場をつくりたい」という想いから性教育活動を始め、全国1,000か所以上の学校で講演会を行う。正しい知識だけでなくコミュニケーションを大切にした等身大のメッセージを伝えている。著書に『ひとりじゃない~自分の心とからだを大切にするって?~』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『だいじ だいじ どーこだ?』(大泉書店)。2児の子育て中。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
1974年、愛知県生まれ。絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。
遠見才希子さんがおくる新シリーズ「性とからだの絵本」の刊行を記念したトークイベント。磯崎が聞き手となり、本シリーズの3冊、『うみとりくの からだのはなし』、『あかちゃんが うまれるまで』『おとなになるっていうこと』について、遠見さんにそれぞれの作品にこめられた思い、みどころや制作のエピソードを伺いました。
「えんみちゃん」のニックネームで、長年全国の中学生・高校生に向けた性教育活動に携わってきた遠見さん。話をした中高生から「もっと早く知りたかった」という声がたくさんあったそうです。
そこから、思春期よりもっと前の子どもたちへもアプローチができないかという思いと、ご自身の子育てを通じて「小さい子どもたちにどう性を伝えればよいか」と考える中で、この絵本シリーズが生まれたのだそうです。
(遠見)知識や大人の伝えたいことを一方的に押し付けるのではなく、どうしたら子どもたちが主体的に考えられるものになるかというところで、とても苦労しました。説明だけの本や図鑑のようなものではなく、子どもたちが自分を投影したり共感できるように、子どもを主人公にした「絵本」を作りたいと思いました。
おたがいの体を大切にすること、体をさわるときには「同意」が必要なこと、そして「プライベートパーツ」について知り、いっしょに考えよう。
うみとりくはふたご。ふたりはそっくり。そっくりだけど、全然ちがう。ふたごでも、りくのからだはりくのもの、うみのからだはうみのもの。同じからだの人なんてひとりもいない。
うみとりくは、ぎゅーっとするのが好き。だけど、いつもじゃない。その日の気分によって変わるのは、ふたりとも同じ。最初は楽しく遊んでいても、だんだん嫌な気持ちになる時だってある。家族や友だち、どんなに親しくても、好きなこと、嫌いなこと、感じることはみんなちがうよね。自分のからだに、誰がどんなふうにさわっていいかは、自分が決めること。それは、特別だいじなところ「プライベートパーツ」だって同じ。だから……。
子どもたちに性教育を伝える活動を続けられている、産婦人科医の遠見才希子さんが伝えてくれるのは、誰もがかけがえのない「自分だけのからだ」を持っているということ。からだに対して感じている「モヤモヤ」は、大人になってもみんな違うもの。だからこそ、家庭の中での「性教育」はとても難しく感じてしまうのです。この絵本では、その違いを認めあうところから始まり、デリケートな性の話にいたるまでを、とても丁寧にわかりやすく進めてくれます。
「いやだ」「やめて」って いっていいんだよ。
「いやだ」って いえなくても にげられなくても ぜんぜん わるくないんだよ。
選ばれた優しい言葉の一つ一つに込められているのは、切実な問題。そして、どれも本当のこと。だからこそ、読めばそのまま子どもたちに伝わるはずだと確信できるのです。大事な1冊になりそうです。
(絵本ナビ編集長 磯崎園子)
妊娠、性交と受精、そして出産を、読み聞かせやすい言葉で、やさしく丁寧に伝える絵本
思春期に起こる心と体の変化、ジェンダーと性の多様性について伝える一冊
「せいりようひん」ってなんだろう?
ぼくのぎもん、おねえちゃんの悩み、おかあさんの幼なじみのかおるさんの話…。
第二次性徴と、みんなそれぞれのからだの違い、性自認まで、性をめぐる変化と多様性を考えます。
「健康と幸せ」のための性教育
磯崎:性教育を、何歳くらいから、どうやって? というのは、多くのお父さん・お母さんたちが迷われているところだと思います。
遠見:自分の体について認識しはじめるのは、個人差もありますが2・3歳からの子もいるんじゃないかと思います。日々の関わりの中で、身近な大人が「そこは大事なところだね」と伝えられたら良いなと思います。
絵本で言うと、1冊目の『うみとりくの からだのはなし』は、4・5歳くらいから、2冊目・3冊目の『あかちゃんがうまれるまで』と『おとなになるっていうこと』は、小学校低学年くらいからの子どもたちを想定して作られています。絵本は繰り返し読めるものですし、他の絵本と同じように気軽に日常の中で読んでいただけたら。「性教育をしなければ」と身構えるのではなく、大人も子どもと一緒に絵本を読んで、同じ目線で考えたり、いろいろなアプローチのひとつとして活用してもらえたらうれしいです。
磯崎:性教育のベースにあるのは「人権」なのだと理解すると、伝え方に悩む大人も考え方が整理されるように感じます。
遠見:性教育は「健康と幸せ」に繋げるためにあるんです。自分の権利も相手の権利も大切にしながら、性的な決定をその人自身が決められるようにすることが目標です。ポジティブで肯定的なアプローチができたらいいですよね。
磯崎:シリーズを読んで、大人が子どもたちの声を聞くこと、子どもたちを受け止める存在であることの大切さを、改めて考えさせられました。
遠見:子どもが信頼できる大人でいること。身近にいる大人が体の権利を大切にすること。性や体のことを含めて、子どもが自分の悩みや困っていることを話していいんだと思えるように、日頃から何気ないコミュニケーションを大切にすることも大事なことかなと思います。
【アーカイブ動画視聴】チケット発売中!
2時間の対談の中では、3冊それぞれの具体的なエピソードがたっぷり、さらに遠見さんへの質問コーナーもあります。4月22日(金)までの期間限定で、以下のページからイベントの閲覧チケットがご購入いただけます。この機会をお見逃しなく!
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