絵本ナビスタイル トップ  >  絵本ナビ便り   >   『暮しの手帖』5世紀9号刊行記念 きくちちきさんからの贈り物 ― 絵本「しろいみつばち」 絵本作家・きくちちき×『絵本ナビ』編集長・磯崎園子×『暮しの手帖』編集長・北川史織 オンライントークショーレポート!

『暮しの手帖』5世紀9号刊行記念 きくちちきさんからの贈り物 ― 絵本「しろいみつばち」 絵本作家・きくちちき×『絵本ナビ』編集長・磯崎園子×『暮しの手帖』編集長・北川史織 オンライントークショーレポート!

11月25日発売の『暮しの手帖』5世紀9号に、特別付録として絵本ナビでも人気の絵本作家きくちちきさんの絵本がつく?! さらに刊行記念トークイベントに、絵本ナビ編集長・磯崎がゲストとしてお招きいただくことに! 

 

『暮しの手帖』といえば、1948年に創刊され(創刊時は『美しい暮しの手帖』)、「生活総合誌」として70年以上続く人気雑誌です。

 

「絵本はどんな内容になっているのか」
「どうして『暮しの手帖』に絵本が付録としてつくことになったのか」

 

きくちちきさん、北川編集長にそんな気になる事を伺いながら、制作の話、雑誌の話、大人の絵本の楽しみ方など、話がどんどん広がっていき、とても充実した内容のトークイベントとなりました。その様子のほんの一部をご紹介したいと思います。

表紙の絵もきくちちきさん! 「贈り物」のような特大号

暮しの手帖 5世紀9号

孤独や不安、胸苦しさを味わいながら、この一年の日々を懸命に送ってきたあなたへ。

身体をいたわり、心が優しさで満たされる、「贈り物」のような特大号をお届けします。
特別付録としてつけたのは、絵本作家・きくちちきさん作の「しろいみつばち」。
愛情とせつなさが胸にしみいる、大人のための絵本です。

12/1(火)、銀座蔦谷書店の会場に、きくちちきさん、『暮しの手帖』編集長・北川史織さん、磯崎の3人が登壇し、当日はオンラインでたくさんの観客の方が参加されました。

左から、きくちちきさん、磯崎、北川史織さん

北川:ちきさんと磯崎さん、お二人の出会いは?

 

磯崎:実はちきさんとしっかりとお話するのは8年ぶりになるんですよね。ちきさんがまだ絵本作家としてデビューされたばかりの頃、『やまねこのおはなし』のインタビューを絵本ナビでさせていただいて。あの記事を読み返すと、ちきさんのことを女性だと思っていたとか、もっとご年配の方だと思っていたとか、私が結構失礼な事を言っていて…(笑)。そのくらい、まだ知られていない存在だったんですよね。でも、その後すぐに大活躍されていって、立派な髭も生やされて(笑)。お互いに「あの時の事を覚えているかな…」と探り合いながらの再会でしたよね。

 

北川:そうだったんですね。

 

磯崎:だから、今回声をかけていただいて、本当に嬉しかったんです。今日は、自ら『しろいみつばち』の朗読もしてくださるということで…

ここで、きくちちきさんによる『しろいみつばち』の朗読へ。画面を共有しながら、ちきさんのあたたかい声でゆっくりと絵本を味わう時間に…。

北川:ああ、やっぱり読んでいただくと、本当に贅沢な気持ちになりますよね。実はちきさん、先ほどのリハーサルではかなり照れていらして。ご自身で描いた絵本なのに(笑)。

 

きくち:普段、ひとまえで朗読をするなんて殆どしないから。みつばちとのばらのセリフがあるんだけど、のばらが「わたし じゅんぱくになりたい」って声に出して言っていたら急に恥ずかしくなっちゃって。でも、本番では、子どもに読み聞かせるような気持ちでちゃんと読むことができました。良かったんじゃないでしょうか(笑)。

 

磯崎:聞き入っちゃいました。みつばちが雪を運んでいるシーンやのばらがみつばちを待ちわびているシーンでは、本当に胸に迫ってくるもがあって。お話としては、鮮やかな緑の草原や青い空のシーンなど楽し気な景色から始まるけれど、季節はずれの雪が降ってくるシーンでは悲しい気持ちにもなってくる。だけど、確かに最後に凛と立つ純白の色をしたのばなの姿は美しく。この物語から何が見えてくるのか、一度読んだだけでは見えてこない。でも、それがすごくいいですよね。

 

ちょうど、この『暮しの手帖』最新刊の巻頭特集で登場されている編集者の小川悦子さんの「悲しくても胸に沁みる。それが幸福感」という印象的な言葉があって。ああ、まさにそんな物語だなあ、と。まさに今の時世に読むとまた響いてきますよね。でもこの絵本、随分前から考えていたアイデアだったのだとか。

きくち:そうなんです。絵本作家デビューをするもっと前で。お掃除の仕事をしながら制作をしていた頃なんですけど。仕事の帰り道に自転車に乗っていたら、急に目の前に”ゆきむし”がぱっと飛んできて。

 

磯崎:ゆきむし?

 

きくち:そう、小さくてフワフワっとした虫。故郷の北海道では寒くなる頃になると沢山飛んでいたんです。それが今(その頃住んでいた埼玉県)目の前にふっと現れて。何とも言えないあたたかい気持ちになって。ああ、この小さな虫を主人公にした絵本を描いてみたいなあ、この気持ちを膨らませてみたいなあと。

 

磯崎:そんな風に絵本が生まれるきっかけに出会うこともあるんですね!ふわあっと……。

 

きくち: それから色々と考えていくうちに、主人公がみつばちになって、のばらや雪のシーンが出てきて。最初は絵も全然違ったんですよ。

色鉛筆で描かれた、今作とは全く違う画風の絵! ギザギザしている模様は机のでこぼこを利用して描いているのだそう。

北川:その絵本を、弊社の編集担当がちきさんの2年前の展覧会で拝見して一目惚れしまして。その後、雑誌『暮しの手帖』の中できくちちきさんのアトリエを取材する機会があったんですよね。その時にお願いをしたんです。ぜひこの絵本をうちで出してもらいたい、と。

 

磯崎:そうだったんですね! この絵本の形もとっても素敵。でも、完成版は全く違う形になって。私も最初に見てとても驚いたのですが、この『しろいみつばち』っていうのが、雑誌の中で本当に突然始まるんですよね。前のページは生活の記事がずっとあって、急に前触れも説明もなく最初に1ページが目に飛び込んでくる。なんだかそれがとても新鮮で。

 

北川:付録としての入れ方は色々考えました。

 

でも最終的にはこの形にしました。雑誌『暮しの手帖』というのは、もともと「家庭に一冊」という時代があり、子どもも一緒になって読む形というのがあったんですね。今でも色々な世代に読んでもらえる雑誌だと思っていまして、例えばリビングのテーブルに置いてあると、家族みんなでまわし読みをしているという声をいただいたり。その中で、子どもにも、大人にも、もちろんお子さんがいらっしゃらない方にも、この絵本と自然に出会ってもらいたいという思いもあり、敢えて説明も何も入れなかったんです。

磯崎:ああ、それはある意味理想的な絵本の存在の仕方でもありますよね。納得です。でもよく見ると、雑誌は右開きなのに、元となっているこの絵本は反対開き。この時点でも違っていますし、増してや雑誌の中で始まる絵本っていうのはなかなかない依頼ですよね。大変だとか、どうしよう、とかなかったですか?

 

きくち:もちろん好きな絵本の形というのは色々あります。でも、今回このお話をいただいてすごく面白いなあと思いましたし、大好きな『暮しの手帖』の中に僕の作品が載るというのは、とても嬉しいことでもありました。ですので、色々考えた結果、全部描き直すことにしました。素材も全て変えて、和紙に水彩で。

 

北川:雪のシーンもとても美しくて。この柔らかな表現にぴったりきていますよね。ちきさんの作品には「雪」というテーマも繰り返し登場します。「雪」のどんな部分を描きたい、と思っていらっしゃるのでしょうか。

 

きくち:やっぱり「美しさ」ですね。その白い美しさ。一方で、その雪の持つ厳しさというのもいつも同時に描いています。僕は北海道で生まれ育ったので、冬の厳しい寒さの中で凍えている動物達の姿も当たり前に見てきましたから。

ちきさんの故郷のお話から、そのまま過去の絵本のお話や、コロナ禍での絵本の読み方などお話はどんどん広がっていきました。イベントでは、普段はあまり絵本と接する機会のなかった北川編集長が、このコロナ禍で手に取ったのが「絵本」と「詩集」だったというお話や、ちきさんがコロナ禍に胸を痛めているのは私たちと変わらないけれど、制作の時は作品と本気で向かい合っているから、そういう理屈的な部分が制作に影響されることはないというお話など、とても印象的なエピソードもたくさん登場しました。

 

『暮しの手帖』5世紀9号を手に、記念撮影!

今はお子さんがまだ小さなちきさん。その経験がそのまま絵本の反映されている事も多いのだそう。そういった視点で他の作品を読んでみると、また味わい深いかもしれませんよね。また、読む人が自分が意図しない反応をしたり、感想を持つこともとても面白いと感じられるのだそう。皆さんもぜひ『しろいみつばち』を、自分の思うように、自由に、味わってみてくださいね。

 

今後は展覧会も予定されているのだそうです。絵本とはまた違った魅力のある絵画を見られるチャンスでもあります。機会があったら訪れてみてはいかがでしょうか。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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