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絵本ナビニュース2023

「出久根育展 チェコからの風」武蔵野市立吉祥寺美術館で2024年1月20日~3月3日開催!

出久根育さんが魅せる、新しい季節……静寂のあと、光のあさ

武蔵野市立吉祥寺美術館にて、2024年1月20日(土)~3月3日(日)の期間、「出久根育展 チェコからの風」が開催されます。本記事では、その気になる内容を詳しくお伝えします。

展覧会概要

【会期】2024年1月20日(土)~3月3日(日)
【休館日】1月31日(水)/ 2月21日(水)・28日(水)
【開館時間】10時00分~19時30分
【入館料】300円(中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
【主催】武蔵野市立吉祥寺美術館<(公財)武蔵野文化生涯学習事業団>
【協力】ちひろ美術館・岩波書店・偕成社・Gakken・西村書店・のら書店・福音館書店・フレーベル館・ブロンズ新社・理論社
【後援】チェコセンター東京

《わたしはしっているの》 2023 年 ⓒIku Dekune

本展のために描かれたメインビジュアル《わたしはしっているの》は、現在、出久根育さんが展覧会に合わせて制作中の絵本『もりのあさ』(偕成社2024年刊行予定)につながる世界。画面手前のベリーの実の“赤”は……出久根育さんを象徴する今までの“赤”とはまた異なる美しさを見せています。まさに、本展のサブタイトル「静寂のあと、光のあさ」を具現化したような、チェコの自然の静謐な空気や匂いまでもが伝わって来る作品です。
本展では、約200点の作品を通して、デビューから30年間、真摯に描き続けた出久根育さんの新しい“現在”に至るその魅力を辿ります。

新たな季節を迎えて / 絵本作家としての出発点

国際的に権威ある賞として知られる、ブラチスラバ世界絵本原画展にて、グリム童話『あめふらし』のイラストが、グランプリを受賞してから20年。2002年にプラハに移住してからも20年以上が経ち、出久根育さんは、現在、絵本作家としての新しい季節を迎えています。『あめふらし』はもちろん、チェコの伝統行事を独特の美しい文章で表現したエッセイ『チェコの十二ヵ月 -おどぎの国に暮らす-』の挿絵原画や、愛猫サビンカが登場する、チェコ語を出久根育さん自身が訳した絵本『ぼくのサビンカ』を含め、デビュー作『おふろ』の原画、初期の銅版画、児童文学作家の高楼方子さん、作家の梨木香歩さんの物語のために描かれた挿絵原画も多数展示。恩師と慕う、スロバキアを代表する絵本画家、ドゥシャン・カーライさん(1948-)との出会いを経て、チェコのプリミティヴな要素が、自身の内面とも共鳴するかのように、出久根育さんを中東欧の民話の世界へと誘う過程を追っていきます。

『ワニ -ジャングルの憂鬱 草原の無関心-』(作:梨木香歩 理論社 2004年)

中東欧の民話の世界

「この本が生まれたときから私の分身のような存在です」という自身の言葉通り、出久根育さんの代名詞ともいえる『マーシャと白い鳥』。特徴的なのは、テンペラと油彩を用いて描かれた画面を彩る印象的な“赤”であり、大自然が持つ生命の“赤”。チェコの国民的画家・デイジー・ムラースコヴァーさん(1923-2016)との出会いから生まれた『かえでの葉っぱ』でもまぎれもなくチェコの自然が画面に息づいています。2011年には『Živá voda』(日本語版『命の水 チェコの民話集』は2017年刊行)において、チェコのグリムと評される、カレル・ヤロミール・エルベンさん(1811-1870)が収集した民話の挿絵を担当。エルベンさんの世界が日本人である出久根育さんの手にゆだねられた意味は大きいものでした。

『マーシャと白い鳥』(再話:ミハイル・ブラートフ 文:出久根育 偕成社 2005年)ちひろ美術館蔵
『かえでの葉っぱ』(作:デイジー・ムラースコヴァー 訳:関沢明子 理論社 2012年)
『十二の月たち』(再話:ボジェナ・ニェムツォヴァー 文:出久根育 偕成社 2008年)
『命の水 チェコの民話集』(編:カレル・ヤロミール・エルベン 訳:阿部賢一 西村書店 2017年)

チェコと日本がつながるとき

児童文学作家・わたりむつこさんと組んだ「こうさぎ」シリーズには、チェコの文化や、季節ごとに姿を変える自然の美しさがギュッとつまっており、幼年向けの絵本を描きたいと願っていた出久根育さんにとってのひとつの転機となりました。

『こうさぎと4ほんのマフラー』(作:わたりむつこ のら書店 2013年)

「こうさぎ」シリーズは、春夏秋冬を舞台に4冊を刊行。1作目の『もりのおとぶくろ』は、2011年に第58回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞しています。最終作『こうさぎとおちばおくりのうた』では、いつのまにか彼らを自身 の子どものように愛おしく感じるようになったという出久根育さんが、「金色に輝くような本にしたい」という、作者・わたりむつこさんのリクエスト通りの世界を、豊かな色彩とあふれる愛情で形にしました。

『わたしのおにんぎょうさん』(作:でくねいく 偕成社 2023年)

そして2023年、出久根育さんが約30年ぶりに手掛けた創作絵本は、子どもの頃の自分自身を投影した物語。今回が原画初公開となる、『わたしのおにんぎょうさん』と『こどもべやのよる』(文:出久根育 岩波書店 2024年2月刊行予定)からは、日本とチェコ、ふたつの国に育まれて辿り着いた、絵本作家・出久根育さんの現在の魅力が伝わって来ます。チェコでの生活が長くなり、離れて暮らす両親に喜んでもらいたい、という思いから生まれた『わたしのおにんぎょうさん』は、実話を元にしています。主人公のおかっぱの少女は本人がモデル。チェコと日本、どちらでもない不思議な空気感をまとう世界が絵本のなかに静かに広がっています。

関連イベント

(1) 出久根育さんワークショップ「親子でチェコの紙遊び」

1月27日(土)14:00~16:00

対象:小学生以下 ※必ず保護者同伴
参加費:300円
定員・対象:10組(20名) ※申し込み多数の場合は抽選
※1月12日(金)までに「➀ワークショップ名 ②参加者氏名(親子とも)➂年齢 ④電話番号」

を明記の上、メール(museum-ws@musashino.or.jp)でお申し込みください。

(2)出久根育さんトークショー 「絵本画家としての現在」

1月28日(日)14:00~16:00
参加費:無料
※ただし、美術館入館チケットが必要

定員・対象:70名(申込先着順)

※1月7日(日)10:00より、電話(0422⁻22⁻0385)のみで受付開始。

ただし、1回の電話につき、2名まで受付可。

出久根育さんプロフィール

東京生まれ。1992年、武蔵野美術大学卒業。1994年、最初の絵本『おふろ』を発表。1998年、東京で開催されたドゥシャン・カーライ氏のワークショップに参加。同年、ボローニャ国際絵本原画展入選。2003年、グリム童話『あめふらし』(パロル舎 2001年/偕成社再刊行 2013年)でブラチスラバ世界絵本原画展グランプリ受賞。2006年、ロシア民話『マーシャと白い鳥』(再話:ミハイル・ブラートフ作 偕成社 2005年)が日本絵本賞大賞受賞。2011年、『もりのおとぶくろ』(作:わたりむつこ のら書店 2010年)が産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞。2005年にブラチスラバ世界絵本原画展で特別展示。2002年よりプラハ在住。
 

絵本作家・出久根育さんの表現の根底にあるのは、幼いころの“かぞえきれないほどの絵本との出会い”だといいます。
そんな出久根さんの作品世界を堪能できる贅沢な展覧会にぜひ足を運んでみませんか。
 

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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