「北田卓史展 想い出の空飛ぶタクシー」武蔵野市立吉祥寺美術館で2025年9月20日~11月3日開催!
1992年に亡くなった童画家・北田卓史のアトリエの扉を開けて、初公開の“月刊保育絵本”の原画を中心に約200点を展示!

武蔵野市立吉祥寺美術館にて、2025年9月20日(土)~11月3日(月・祝)の期間、「北田卓史展 想い出の空飛ぶタクシー展」が開催されます。本記事では、その気になる内容を詳しくお伝えします。
展覧会概要
【会期】2025年9月20日(土)~11月3日(月・祝)
【休館日】9月24日(水)/10月29日(水)
【開館時間】10時00分~19時30分
【入館料】300円(中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
【主催】武蔵野市立吉祥寺美術館<(公財)武蔵野文化生涯学習事業団>
【協力】ポプラ社・Gakken SEED・小峰書店・至光社・世界文化ワンダーグループ・チャイルド本社・ひかりのくに・フレーベル館・理論社・EHONS(丸善ジュンク堂書店)
美術館からのごあいさつ
童画家・北田卓史(1921‐1992)で想い出すのは、小学校の教科書にも掲載された短編童話『白いぼうし』が収載された「車のいろは空のいろ」シリーズでしょう。 “タクシー運転手の松井さん”と不思議な乗客たちの物語は、1968年刊行以降、世代を超えて広く親しまれています。童話作家・あまんきみこ(1931‐)の傑作であり、児童書の挿絵画家・北田卓史の名をも決定付けました。また、『チョコレート戦争』(1965年)、『さとるのじてんしゃ』(1968年)などの挿絵も手掛けています。
しかし、北田卓史の魅力は、実は児童書にとどまりません。特に、1950年代末~70年代にかけて、月刊保育絵本の仕事を数多く担当。その鮮やかな色彩と卓越したデザイン力、ダイナミックな構図は、従来のイメージを覆すような驚きに満ちています。幼児教育のために保育の現場で求められ、毎月刊行される月刊保育絵本は、発達段階に合わせたテーマが多く、北田も “おはなし”のみならず、“四季の行事”や“生活習慣”、“動物”、“童謡”に至るまで、さまざまな求めに応じて描いています。特に、「東京工業専修学校」を卒業後、機械技術者として働いた経験も活かし、車や潜水艦、飛行機やロケットなど、細部描写にこだわった “乗りもの”は、当時の子どもたちの心を掴みました。
本展では、北田の没後、アトリエに遺され、長年遺族が管理していた原画のなかから、約200点を展示。初公開となる、各出版社刊行の月刊保育絵本に掲載された、“幻の原画”を中心に紹介します。北田が描く、日に焼けた肌と黒目だけで魅せる豊かな表情の子どもたちに、私たちはどうしてこんなにも惹きつけられるのか…。さぁ、北田卓史の世界を心ゆくまでお楽しみください。
展覧会のみどころ紹介
01 空飛ぶタクシーと乗り物たち / 02~03 月刊保育絵本での活躍(1960年代~1970年代を中心に)
空色のタクシーと、運転手の制服を着た四角く優しい顔の“松井さん”。
会場では、読者にとって懐かしい、北田卓史の世界へと、児童文学作家・あまんきみこ氏(1931-)の代表作「車のいろは空のいろ」シリーズの挿絵から誘います。
そして、舞台は北田が、「童画家」として30代後半から本格的に活動を始めた「月刊保育絵本」の一枚絵の挿絵の仕事へ。月刊保育絵本とは、「園における教科書」のような存在といわれ、発達段階に沿って作られ、毎月、全国の幼稚園や保育園、認定こども園に配布されるのが特徴。特に総合絵本は、1冊にさまざまな要素がつまっています。

本展では、「こどものせかい」(至光社)・「チャイルドブック」(チャイルド本社)・「よいこのくに」(学習研究社)・「あそびASOBI」(静岡福祉事業協会※1982年に廃刊)・「キンダーブック」(フレーベル館)・「ワンダーブック」(世界文化社)・「ひかりのくに」(ひかりのくに)という、現在も続く代表的な月刊保育絵本を中心に、今までアトリエの外に出たことのない“幻の原画”の数々を紹介。月毎に刊行されるが故の季節や学びというテーマや童謡、読み切りの“おはなし”を北田は遊び心いっぱいに描きました。油彩を用いた鮮やかな色彩と、ダイナミックな構図、おしゃれな幾何学模様の洋服やデザイン性の高い乗り物は、私たちを惹きつけてやみません。





04 子どもたちに届ける心ときめく絵本/ 05 児童文学の挿絵・わたしたちの空色のタクシー
北田卓史の画風は、50歳を超えて1970年代後半を迎えると、さらに軽やかに幼年期の子どもたちに愛されるタッチへと変化していきました。絶妙なユーモアに溢れる絵本の挿絵を数多く手がける一方、北田は至光社の武市八十雄(1927-2017)のもと抒情的で重厚な絵本も描いています。
そして、北田卓史の代名詞ともいえるのが、『チョコレート戦争』(作 大石真/理論社 1965年)、『さとるのじてんしゃ』(作 大石真/小峰書店 1968年)、そして、「車のいろは空のいろ」シリーズから誕生した『山ねこおことわり』(文 あまんきみこ/ポプラ社 1977 年)。
読書に夢中になった少年少女時代の懐かしさとあわせて、月刊保育絵本の原画を通して発見するであろう、童画家・北田卓史への新しい発見に対する喜びを感じていただけますように。


*「北田卓史展 想い出の空飛ぶタクシー」展紹介記事内の画像について 無断転載および複写を禁じます。 © 2025 Nobuya Kitada, 武蔵野市立吉祥寺美術館
北田卓史さん作品紹介
空いろのタクシーの心優しい運転手、松井さんとふしぎなお客さんたちとの出会いがあたたかく描かれる名作ファンタジーを特装版で。
1968年に刊行以来、子どもから大人まで幅広い層の読者に世代をこえて愛読され続けてきたロングセラー「車のいろは空のいろ」シリーズの第1、2巻を豪華な特装版のセットでお届けします。
空いろのタクシーの心やさしい運転手、松井さんとふしぎなお客さんたちの織りなす物語は、いつの時代もかわらず読む人の心に寄り添い、安らぎとときめきをおくります。
【セット内容】
・書籍2冊(クロス装・箔押し・化粧箱入り)
『特装版 車のいろは空のいろ 白いぼうし』
『特装版 車のいろは空のいろ 春のお客さん』
・特製アートカード…北田卓史が描いた「車のいろは空のいろ」の名シーンの中から4場面を特製のカードにしました。
・特製リーフレット「思い出すままに」…各巻の収録作について、作者・あまんきみこが思い出すままに綴ったとっておきのお話です。
北田卓史さんさし絵の「車のいろは空のいろ」シリーズ、通常版はこちら
金泉堂VS子どもたちの名誉をかけた戦いの行方は…?
すずらん通りにある町いちばんの洋菓子屋さん、金泉堂。
特に、ショートケーキ、シュー・ア・ラ・クレーム、エクレールなどは舌もとろけそうなうまさで、金泉堂の洋菓子をいくつたべたかが、子どもたちのじまんの種にもなっているという憧れのお店です。その金泉堂と子どもたちの間で何やらトラブルが?!
それは、光一と明が学校の帰り道に金泉堂に立ち寄った時のこと。2人がショーウインドーに飾ってあるチョコレートのお城をのぞいていると、いきなり目の前のガラスが割れて、出てきたお店の人に犯人扱いされてしまうのです。支配人、そして社長の谷川金兵衛氏の前に連れていかれる2人。「やっていない」といくら言っても信じてもらえず、ただひとり信じてくれたのは、桜井先生という若い女の先生だけでした。
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(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
その他、北田卓史さんの魅力が詰まった絵本と読み物、紙芝居
北田卓史さんプロフィール
東京生まれ。1940年、東京工業専修学校機械科卒業。その後、日立工事株式会社で機械技術者として2年勤務。退職後、画家を志し、戦時中は通信兵としてラバウルに従軍、戦後、赤本マンガ作家、探偵小説や偉人伝の挿絵などの仕事を経て、児童書の仕事に専念する。1946年に結成された、日本童画会に参加。1958年度(第12回)および、1959年度(第13回)の日本童画会賞を受賞。1962年、「こどものせかい」(至光社)の表紙ほかで第11回小学館絵画佳作賞を受賞。月刊保育絵本や絵本に多数の挿絵を提供した。日本児童出版美術家連盟会員。
代表作に「車のいろは空のいろ」シリーズ、『チョコレート戦争』(理論社)、『さとるのじてんしゃ』(小峰書店)などがある。1992年8月没。享年71歳。
大人にとっては懐かしく、子どもたちにとっては新たな出会いにもなるであろう北田卓史さんの展覧会。北田さんの作品を一堂に見ることのできる貴重な機会です。どうぞお見逃しなくお出かけください。
また、期間中には関連イベントも開催されるようです。詳細は、武蔵野市立吉祥寺美術館のHPでチェックしてみてくださいね。
*「北田卓史展 想い出の空飛ぶタクシー」展紹介記事内の画像について 無断転載および複写を禁じます。 © 2025 Nobuya Kitada, 武蔵野市立吉祥寺美術館
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