【展覧会】1/31まで!開館40周年記念「ちひろの歩み」と企画展「日本の絵本100年の歩み」@ちひろ美術館・東京
2018年、いわさきちひろは 生誕100年を迎えます。
ちひろ美術館では、今年2018年に生誕100年を迎えることを記念して、現在活躍中のさまざまな分野のアーティストといわさきちひろがコラボレーションする展覧会を企画しています。現在、開館40周年を記念して開催中の「ちひろの歩み」と企画展「日本の絵本100年の歩み」は、2018年1月31日(水)まで開催中です。お見逃しなく!
絵本作品100点が一挙公開!あの絵本の貴重な原画が見れる企画展
「日本の絵本」の100年の歴史が一望できるこの企画展「日本の絵本100年の歩み」。なんと、各時代を代表する作品がずらりと約120点展示されています。どの作品もとても貴重なものばかりです。ここではその一部を少しだけご紹介いたします。まだ、ご来場されていない方は、是非この機会に足を運んでくださいね。
日本では、1910年代に子ども向けの雑誌「子供之友」や「赤い鳥」が相次いで創刊され、大正デモクラシーの機運を背景に、童話、童謡、童画の運動から芸術性の高い絵雑誌や絵本が生まれました。第二次世界大戦を経て、再び子どもたちに希望を与えるべく、個性的な画家たちや出版社が子どもの本に心血を注ぎ、1960年代になると絵本は再び隆盛期を迎えます。 さらに1970年代以降は画家たちがそれぞれの表現を深化させ、物語表現の幅が広がっていきました。1990年代以降には自由な発想による絵を主体とした数々の絵本も生まれ、その表現はさらに多様な広がりを見せます。今日までの100年におよぶ日本の絵本の歩みを、ちひろ美術館コレク ションも含め、貴重な資料と原画でたどり、豊かな日本の絵本表現の軌跡を検証します。
絵雑誌の黄金期 童画の誕生
子ども向けの絵雑誌「コドモノクニ」を 始めとする芸術性の高い絵雑誌から、「童画」が誕生し、日本独自の絵本文化の礎が築かれました。岡本帰一、清水良雄、武井武雄、初山滋等、代表的な画家たちの作品を展示します。
第二次世界大戦後に花開いた絵本
いない、いない、ばあ。にゃあにゃが、くまちゃんが、ほらね、いない、いない……。
発売から50年、600万部をこえる、日本で一番売れている絵本です。(トーハンミリオンぶっく2015年版調べ)
「赤ちゃんと、どんな風にコミュニケーションとったらいいでしょうか?」こんなお問い合わせをいただくことがよくあります。この絵本はそんな赤ちゃんとご家族にぴったりの絵本です。「いない いない ばあ」と語りかけて一緒に楽しむことで、大人もあかちゃんも笑顔になり、心の交流を通じて親子の信頼を深めるきっかけになります。そんな読者の皆さんの体験や信頼が口コミで広がり、支持され続けてきた絵本です。
第二次世界大戦が終わり、未来を築いていく子どもたちに手わたされた絵本には希望が託されていました。1960年代には、今日に至るまで、世代を超えて親しまれている数々のミリオンセラー絵本も誕生します。
「絵本ブーム」の到来
1970年代に入ると「絵本ブーム」と呼ばれる時代が到来します。本格的に絵本出版に取り組む出版社が増え、絵で展開する絵本やことばのない絵本、読者を子どもに限定しない絵本など、従来の物語絵本の枠組みを超えたさまざまな表現が生まれました。続く80年代は絵本における停滞期とも言われますが、絵本画家たちがそれぞれの表現を深化させていった時期にもあたります。そのなかから、子どもに人気を博す絵本シリーズも誕生しました。
絵本ブームの時代に入ると、みなさん、子どもの頃に読んだ懐かしい絵本や今、お子様と一緒に読んでいる絵本が登場するのではないでしょうか。絵本が歩んできた歴史の中で、これだけ挑戦的で自由な表現が生まれ始めたのもこの時代の特色なのかもしれません。実際に身近にあった絵本の原画が目の前にある感動を是非味わっていただきたいです。
多様化する絵本表現
1990年以降、既成概念にとらわれない絵本シリーズが刊行される など、個性豊かな画家たちが絵本を舞台に活躍します。自由な発想のもと、さまざまな素材や表現方法で描かれた絵本が生まれました。
絵本の現在
2001年の同時多発テロに端を発し、先の見えない不毛な戦いが今も世界中で続いています。また、2011年の東日本大震災をはじめとする未曾有の大災害に直面し、平和や命の問題、人間の絆や心が絵本のなかにも切実に求められています。
ぼくがラーメンたべてるとき、地球の裏側ではなにがおこってる?ぼくがおやつを食べてるとき、世界の子はなにしてる?遊んでる、働いてる、倒れてる・・・長谷川義史が世界の子たちへ平和への願いをこめました。
夕暮れの公園で、乳母車の中から赤ちゃんが空を見ています。東の空から、まんまるい月がのぼってきました。
バレエの練習から帰る女の子や、新しい運動靴を買った男の子、仕事が終わった洋裁店の親子や、ギターの練習をしている人、夕食のかたづけをするおじいさんとおばあさん。町に暮らす人たちも、ふと見あげた空にまるい月をみつけます。公園にあつまった猫たち、山にいる熊の親子、海でジャンプするクジラの上にも、まるい月が輝いています。それぞれの人が暮らす、それぞれの場所に、やさしい光がふりそそぐ夜。町の公園では、にぎやかなお祭りがはじまりました。
私たちの記憶に新しい現在の絵本。想像以上の出来事が世界で起きている今、絵本でのメッセージもまた私たちの生きる現代の問題を深くとりあげているものも多くあります。たくさんの大切な事を子どもたちに伝えていきたい、そう考える一方で、どのように子どもたちに言葉で伝えていくのかとても難しい。そんな時にも現代の絵本はたくさんのことを子どもたちに伝えてくれる役割を果たしてくれています。企画展を通して、絵本の歴史を一緒に歩みふりかえることで、私たちが生きている時代を考えるきっかけにもなってくれそうです。
開館40周年記念IV「ちひろの歩み」
1918年に誕生した「いわさきちひろ」さん。一体どのような人生を経て数々の有名な表題作が生まれたのでしょう。企画展とは別に開催されている、開館40周年記念「ちひろの歩み」では、ちひろさんの人生を追っていきます。
昭和初期の日本で、14歳から洋画界の重鎮へ師事しながらも、戦争や当時の日本の時代背景に翻弄されたいわさきちひろさん。画家への道を模索するなかで、童画家として活躍していきます。いわさきちひろさんの人生の画業の歩みを作品と資料から丁寧に解説していきます。
さざ波のような画風の流行に左右されず、何年も読み続けられる絵本をせつにかきたいと思う。 最も個性的であることが、最も本当のものであるといわれるように、わたしは、すべて自分で考えたような絵本をつくりたいと思う。
いわさきちひろ 1964年
画家としての出発
疎開先の長野県で終戦を迎えたちひろは戦時中の己の無知を痛感し、武者小路実篤や宮沢賢治の作品からヒューマニズムや社会主義的思想に共感して、自らの視野を広げていきます。松本市で日本共産党の演説会に参加し、二度と戦争をしてはならないとの思いから入党、党宣伝部の芸術学校で絵を学ぶために上京したのは1946年春、ちひろが27歳のときでした。人民新聞の記者として働きながら絵の勉強に励み、絵描きとして歩み始めたちひろのもとに、アンデルセンの物語「お母さんの話」を描く紙芝居の仕事が舞い込みます。 当時としては高額な画料の依頼であったこの仕事を契機に、ちひろは画家として立つことを決意します。
童画家として
私は私の絵本のなかで、今の日本から失われたいろいろなやさしさや、美しさを描こうと思っています。 それをこどもたちに送るのが私のいきがいです。
いわさきちひろ 1972年
1950年代半ばころから、ちひろは絵雑誌や教科書などの仕事を多数手がけます。1956年、創刊間もない月刊絵本「こどものとも」(福音館書店)で初めての絵本『ひとりでできるよ』の依頼を受けたちひろは、当時5歳だった我が子をモデルに子どもの暮らしを生き生きと描きました。
若い人の絵本
1950年代から1960年代半ばにかけて、ちひろはアンデルセンの作品を毎年のように繰り返し描きました。1966年、アンデルセンの物語の舞台を訪れたいとの思いから、ちひろはヨーロッパ旅行を決行します。そのスケッチをもとに『絵のない絵本』が制作されました。鉛筆と墨の濃淡によるモノトーンで描き出された作品には、登場人物の心の機微や情感が細やかに表現されています。以来、童心社の「若い人の絵本」はシリーズ化され、樋口一葉、小川未明など若い世代に届けたい絵本として、毎年1冊ずつ意欲的に取り組んでいきます。
絵で展開する絵本
「絵本でなければできないことをしよう」と呼びかけた至光社の編集者・武市八十雄氏とともに、ちひろは実験的な絵本づくりをはじめます。1968年の『あめのひのおるすばん』を皮切りに年1冊のペースで、 計6作品が制作されました。説明的な描写をそぎ落とし、余白を生かした絵と、つぶやきのような短いことばで、子どものナイーブな心をテーマに描いたこのシリーズは「感じる絵本」とも称され、当時主流だった物語絵本とは異なる、新しい絵本の可能性を開きました。
平和への祈り
平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます。
いわさきちひろ 1972年
ベトナム戦争が激しく戦われていた1972年から73年にかけて、 戦火にさらされたベトナムの子どもたちに想いを馳せて、ちひろは優れない体調をおしながら、絵本『戦火のなかの子どもたち』の制作にあたります。自らも戦争体験を持つちひろにとって、未来の象徴ともいえる子どもの命を奪う戦争は、決して許すことのできないものでした。
ベトナムで死んでいった子どもたち,生きぬいてきた子どもたちへの熱い思いをこめた異色の反戦絵本。いわさきちひろ最後の絵本。★ライプチヒ国際書籍展銅賞
1974年6月、ちひろは入院中の病室で最後の絵筆を手にしていました。自宅から持ってきてもらった描きかけのあかちゃんの絵に瞳を描き入れたのです。 それから間もない8月8日、いわさきちひろは55年の生涯を閉じました。ちひろの描いた子どもたちは、 今も私たちに語りかけてきます。「世界中のこども みんなに 平和としあわせを」
いかがでしたか。情報だけでは決して得ることのできない体験が待っています。1月31日までです。身近な絵本がより深く心に刻まれる展覧会です。
展覧会概要
●展示会期…2017年11月8日(水)~2018年1月31日(水)
●開館時間…10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
●休館日……月曜日 (祝休日は開館、翌平日休館)、年末年始(12/28~1/1)、冬期休館(2/1~2/28)
●入館料……大人800円/高校生以下無料
団体(有料入館者10名以上)、65歳以上の方、学生証をご提示の方、公式WEBサイト割引
特典提示の方は700円/障害者手帳ご提示の方は400円、介添えの方は1名まで無料
/視覚障害のある方は無料/年間パスポート2500円
●交通……… 西武新宿線上井草駅下車徒歩7分
JR中央線荻窪駅より西武バス石神井公園駅行き(荻14)上井草駅入口下車徒歩5分
西武池袋線石神井公園駅より西武バス荻窪駅行き(荻14)上井草駅入口下車徒歩5分
駐車場あり(乗用車3台・身障者用1台)
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