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子どもと考えるSDGs|ジェンダーと多様性を知ろう

SDGs 2020-12-29 連載

「ジェンダー」ってどういう意味?

「ジェンダー(Gender)」という言葉を聞く機会が増えてきていますが、どういう意味か知っていますか?

「生物学的性別(Sex)」に対して、「社会的性別」のことを表しています。社会的性別とは“男の子だから電車が好き”“女の子だからお人形が好き”など、社会的につくられた性別による役割や嗜好などの概念です。

 

社会的な性差からキャリアや家庭内、教育にまで不平等が生まれています。このような事態に問題意識を持ち、近年は性別に関わらず個人の考え方や個性を大切にする傾向になってきました。

「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」にはどんな課題があるの?

SDGsにおけるジェンダーの課題は「男女平等の実現」に重きを置いています。

世界ではいまだに、女性だからという理由で学校へ通えず、暴力や人身売買の対象になる悪習が絶えません。

 

日本国内ではそのような問題は少なくても、社会的性差による差別は残っています。

ジェンダーがキャリアにおいて障がいとなったり、家庭での男女の役割分担がまだまだ固定的だったりと他人事ではありません。

 

国連ではこのような性差別をなくし、あらゆる面で男女平等の社会が実現するように目標を定めています。

世界で起きているジェンダー格差の問題

世界ではジェンダーの問題に立ち向かう女性がいます。マララ・ユスフザイさんを知っていますか?「女の子にも教育を」と女子教育の大切さを訴える活動家です。

 

彼女は母国パキスタンで武装組織タリバンにより女子教育が禁じられたことをインターネットで告発します。すると、タリバンに狙われるようになり、学校からの帰宅途中に銃で撃たれてしまいました。生死の淵を彷徨ったマララは無事生還し、今も女の子の権利について世界に訴え続けています。

 

マララのお話は、世界で起きているジェンダー格差について知ることができるので、ぜひ親子で読んでみてください。

性別に関わらず教育を受けられる日本で育った子どもたちはこのお話を聞いてどのように感じるのでしょうか。

「ジェンダー」について幅広い視点で考えてみよう

ジェンダーについて考える上でよく目にする言葉があります。

ジェンダーギャップ:男女間の性差で生まれる格差や不平等のこと

ジェンダーレス:男女間での区別をなくしたものや考え(ex:ジェンダーレスファッション)

ジェンダーフリー:社会的性別による役割分担や固定概念から解放されること

 

このように男女という2つのカテゴリーで語られることが多いですが、忘れてはいけないのが「LGBT」と呼ばれる方たちです。ジェンダーについて考えると、性別の枠組みではなくもっと多様な視点を持つことの重要性に気づきます。

 

「自分らしさ」や多様性について絵本を通して子どもたちに伝えている「Drag Queen Story Hour 東京 読み聞かせの会」(以下、DQSH東京)という団体があります。今回はDQSH東京を運営されている長谷川博史さんとマダム ボンジュール・ジャンジさんにお話を伺いました。

読み聞かせ団体「Drag Queen Story Hour 東京 読み聞かせの会」って?

http://dragqueenstoryhour.tokyo/

Drag Queen Story HourはアメリカのLGBTコミュニティーから生まれた文化・教育プログラムです。3歳から8歳の子どもたちを対象にし、読み聞かせの活動をしています。

自分らしさに対して自信を持つこと、ジェンダーや個性のダイバーシティーを伝え「自分と他人のちがいを理由にした差別のない環境づくり」を目指す団体です。

お話を伺ったのは…

長谷川 博史さん

マダム ボンジュール・ジャンジさん

インタビューの一部をご紹介します。

ーードラァグクイーンについて教えてください。

ドラァグクイーンは女性性を過剰に表現するなどしてジェンダーを軽々飛び越える存在です。

性自認は男性の方が多いですが、フィーメールドラァグクイーンもいます。抗議的な意味を込めた活動や、夜の舞台がメインなので本来は毒を仕込ませた表現が多いです。

 

しかし、DQSH東京では子どもたちがお客さんなので、言葉遣いから衣装まで柔らかい表現をするよう心がけています。事前にしっかりと研修を行っているんですよ。子どもたちには「おはなしクイーン」として紹介しています。

ーージェンダーの課題についてどのようにお考えですか?

近頃は「LGBT」という言葉も広まってきたり、メディアでもジェンダーについて取り上げたり理解が少しずつ深まっているように感じます。しかし、言葉だけが先回っている感覚もあるのが実情です。

「LGBT」という言葉から、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの4種類に分けられると思われがちですが、そんなに単純なことではありません。

 

性の悩みは、自認と対象によっても異なります。自分が男性か女性か、そうでないか。好きになる相手が男性か女性か、どんな性なのか誰でもないのか。

様々な要素が絡み合っているので、もっともっと多様なものです。

性のラベリングで考えることよりも、その人自身がどうなのかと考えることが多様な性への理解に繋がるのではないでしょうか。

ーー子どもたちに「ドラァグクイーン」についてどのような説明をしていますか?

「ドラァグクイーン」についての説明はせず、その日に読み聞かせをする「おはなしクイーン」がそれぞれ自己紹介をしています。

「ドラァグクイーン」としてというより、「ひとりの人」として見てほしいと思っているからです。

ーードラァグクイーンが子どもたちに読み聞かせをする理由はなんですか?

ドラァグクイーンは子どもたちの世界において異質な存在。DQSH東京の場所にくると、そこは非日常の世界になります。

非日常の世界では聞いたこと・見たことが心に留まりやすいですよね。

 

「なんであの人はプリンセスのドレスなのに、男の人の声だったんだろう」

「どうしてキラキラなカッコをしているんだろう」

と疑問に思ってもらえるだけでも、いいんです。

 

日頃なかなか出会わない人と時間を過ごすことで心が動いたり何かを考えたり、そういった意味で子どもたちのきっかけ作りになってほしいと思っています。

ーー初めてドラァグクイーンに出会った子どもたちはどんな反応をしますか?

様々ですが、子どもたちの心はとても柔軟で目の前にあるものを素直に受け止めてくれる印象があります。初めて見るドラァグクイーンに対して、様々な疑問が浮かぶのかぐいぐい近づいてきてくれる子もいますよ。

お母さんたちは時間が経つにつれ近づいてきてくれるけど、お父さんはなかなか慣れないようで最後まで緊張している方が多いですね。

 

おはなしクイーンを務めるドラァグクイーンたちは、プロフェッショナルなエンターテイナーとしての経験を元に、大人に対しても子どもに対しても(予測不可能な子どものあつかいはオトナよりずっと難しいけど)同じような真剣さで接しています。なので子どもたちも心を開きやすいのかもしれません。

ーー読み聞かせを通して、どんな想いを伝えたいですか?

私たちが伝えたいことは「自分らしくいることの大切さ」  「世の中にはいろんな人がいて、それぞれが大事な存在」の二つ。

日本にいるとどうしても多様性について理解する機会が少ないと感じます。そして皆同じであることを重要視する傾向があるので、自分とは違うものを排除しがちですよね。

 

ジェンダーだけでなく、文化や障がいの有無など多様性について理解するには幼少期からの体験が大切だと思っています。

頭の片隅にでもドラァグクイーンの存在があれば、将来「自分らしさ」に悩んだときに「そういえばあんな人もいたな」と思い出せます。その記憶が「自分の思うように進もう」という気持ちの後押しになるかもしれないと思い活動しています。

ーー親子で取り組めそうな多様性理解に繋がるアクションはありますか?

普段の会話から、「◯◯らしくしなさい」「◯◯みたいでおかしい」など決めつけるような言葉を使わないことは大切だと思っています。

その子自身がどう思っているかをよく聞いてあげると、子ども自身も幅広い視野が広がりますよ。

 

もう一つはいろんな体験をさせてあげること。いろんな人に会うこと。日常で多様性について感じる機会が少ないので、積極的に自分の世界外の体験をさせてあげてほしいです。遠い外国に行って多様性を知るのは大変ですが、DQSH東京のイベントに参加するのはお手軽ですよ!

ーー「自分らしさ」に悩む子どもに伝えたいことはありますか?

ジャンジさん:たくさんハグして、「あなたのしたいようにしていい、そのままでOK!」と伝えたいですね。

 

長谷川さん:自分が相手を嫌いにならなければ、いつか受け入れてくれるときがきます。そんな気持ちを持っていてほしいです。

DQSH東京が教えてくれた!ジェンダーの多様性がわかる絵本

違っていても大丈夫!が明るく伝わる魔法の絵本

It’s Okay To Be Different

「歯が抜けていても大丈夫!」から始まり、様々な「違い」が登場します。「It's OKAY」という魔法の言葉で、自分のことを大切にできる一冊です。

マーメイドになりたいジュリアンを待つ素敵なできごとは?

みんな違うことの素晴らしさに気づける絵本

見た目で決めつけない!その人自身を見つめることの大切さ

Red あかくてあおいクレヨンのはなし

レッドは、赤いクレヨン。でも赤く塗るのが得意ではなくて…。誰もが本当の自分の色を探している。ありのままで輝くために、子どもにも大人にも読んで欲しい絵本。〈受賞情報〉グッドリーズチョイス賞(2015年)

違い・個性・想いへの理解がジェンダー格差を縮める一歩

「男の子だってお人形が好きかもしれない」「女の子でもかっこいい色が好き」

 

「女の子だからという理由で教育を諦めない!」「男の子をを好きな男の子だっているよね」

 

性別がどうであれ、個性や想いは様々。ジェンダー格差を縮めるには多様性への理解が必要です。性別という括りにとらわれず、その人自身を見つめることが誰も取り残されない社会の実現に繋がるのではないでしょうか。

 

次回は「目標15 陸の豊かさも守ろう」について考えます。

秋音 ゆう

東京都在住。

3人の男の子(6歳と2歳と0歳)を育てるWEBライター。

「絵本」「幼児教育」「子どもの発達」「多様性」を得意とし、子育てメディアで執筆。

自身も絵本育児で育ち、母になってからは子どもたちと絵本のある時間を大切に過ごしている。

「生きる力の育み」をモットーに、国語講師の夫と幅広い視野で子育て・教育に奮闘中!

掲載されている情報は公開当時のものです。
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