嫌われることを、受け入れる。 2018年7月25日
涙がとまらない。
私は今、何に対して泣いているのだろう。
膝の故障はもう限界。それでも必殺技「フライハイ」を飛ぼうとしている、その必死な形相に?
勝ち目のないその試合。息子の前で本気で勝とうとする、その真っすぐな闘志に?
それとも、かつての輝きが見え隠れするその奇跡の復活劇に?
いや。
本当にすごいのは…。
突然何の話かと言えば、絵本が原作となった映画「パパはわるものチャンピオン」の試写会。
公開前、一足お先に呼んでいただいたのです。
観ているのは、クライマックスであるプロレスの試合シーン。
心の底からこみ上げるものがあるのは、そこに様々な思いが錯綜しているのが伝わってくるから。
映画の中で動き回るプロレスラーは本当にかっこいい。
エースだろうが、ヒールだろうが、関係なく。
大人の私は、ただただ、しびれてしまう。
だけど。
「嫌われることを受け入れる。」
子どもにとって、これがどんなに酷なことだろうか。
仕事に対して本気であればあるほど、嫌われる。
パパが頑張れば、頑張るほど、嫌われる。
到底理解なんて…できないはず。
ところが、パパはリングの上で、全てを語るのです。
身一つで全てを息子に伝えるのです。
「仕事を全うする」ということを。
…ああ、だめだ。
祥太くん。
私はもう、完全にヒールレスラーのファンになってしまったよ。
ゴキブリマスク、最高の悪者だよ。
「卑怯だぞーー!ひっこめーーーーー!!」
パパのしごとはわるものです
きんにくモリモリのぼくのパパ。だけどパパがどんな仕事をしているか知らない。
そっとパパの車にのりこんで後をついていくと、大きな体育館に入っていった。
そこでぼくが見たのは、かっこいい男の人ドラゴン・ジョージとマスクをかぶったゴキブリマスクとのにらみあい。
カーン!
ゴングが鳴った!ぼくはドラゴンを応援することに決めた。だって、どう見たってゴキブリマスクは悪者だから。だけどその時…。
怖い姿で、ずるいことばかりをして。正義の味方にやっつけられている悪役レスラーが、まさか!?
一生懸命仕事しているパパの仕事が、「正義の味方のヒーロー」だとは限らない。
パパだって、ぼくに本当の姿を見せたくなかったのかもしれない。
色々な気持ちが一度にやってきて、混乱するぼくだけど、パパはぼくに言う。
「パパは がんばって わるいことを しているんだ。わかるか?」
小さい頃、ふとテレビで見た事のある悪役レスラー。それはただただ恐ろしくて、憎たらしくて。
大人になってから改めてプロレスを見ると、そのひたむきな悪役の姿の素顔が気になったりして。
そんな大人ごころも、まるごとひっくるめて楽しませてくれるこの絵本。かっこいいのです!!
自分の仕事に誇りを持って、息子に対して堂々としてみせるパパも。
切ない思いをしながらも、パパの仕事への誇りを受け入れる息子も。
そして、透明感のある美しい色彩で、迫力のプロレスシーンやぼくの心情を印象的に描き出している絵が、この作品を魅力ある1冊に仕上げています。
パパと息子、男同士の約束にはちょっとしびれちゃいますよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
パパはわるものチャンピオン
「きょうは パパの しごとを みせたいんだ」
そういってパパと一緒にやってきたのは、大きな体育館。
ぼくは見たいような、見たくないような。
だって、ぼくのパパは悪者プロレスラー。正義の味方と戦わなくてはならないんだ。
いよいよチャンピオンドラゴン・ジョージとの試合が始まった!
覆面をかぶっているぼくのパパは、どう見たってみんなの嫌われ者。ずるい攻撃や反則を繰り返す。おまけに隣の席にはともだちのマナちゃんがいる。でも…パパは強かった!!
前作『パパのしごとはわるものです』で、初めてパパが悪役レスラーだったという事実を知ったぼく。「パパは がんばって わるいことを しているんだ。わかるか?」というパパの言葉を理解し、男同士の約束を交わした二人にはちょっとしびれちゃったものです。
今作では、そんな約束を果たすべくパパが本気でがんばります。だけど、パパが張り切るほど、観客もマナちゃんも怒り出し…複雑な気持ちになりながら、今回もぼくはふんばります。
最後にマナちゃんに対して、親子ふたりでおどけてみせる姿は本当にかっこいい!!
迫力とスピード感の増した魅力的な絵が、さらに物語を盛り上げてくれます。パパが必殺技を繰り出す場面なんて…子どもも大人も関係なく、思わず拳をふりあげたくなるほど熱くなってしまうはず。
もし、自分のパパが悪役プロレスラーだったら。
そんな想像すらしたこともなかった子どもたちの心に、大きなパンチと勇気をくれる絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
映画では泣きっぱなしだったけれど、改めて絵本を読んでみる。
そうすると、ぼくとパパの葛藤と切なさと誇らしさがぎゅんっと伝わってくる。
映画と同じ力でちゃんと迫ってくる。
やっぱり絵本ってすごいな、と思ったのでした。
というわけで、映画も絵本も。
どちらもじっくり堪能することをおすすめします。
磯崎 園子 (絵本ナビ編集長)
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