子どもと考えるSDGs|健康と福祉について考えよう
SDGsの目標3【すべての人に健康と福祉を】はこのような内容です。
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
地球に生きるすべての人々が、置かれている環境に関わらず、健康的な生活ができること。また、それが実現するための福祉を促進することが目標です。
【すべての人に健康と福祉を】にはどんな課題があるの?
目標3では、
- 妊産婦や乳幼児の死亡率の削減、根絶
- 伝染病や感染症への対処
- アルコールの過剰摂取や薬物の乱用防止・治療の強化
- 交通事故による死傷者の削減
- すべての人に適正な価格で、予防や治療、医療保険サービスを受けられる体制の整備
このように、健康と福祉に関わるさまざまな課題が設定されています。今回は、「妊産婦や乳幼児の健康」「感染症」にスポットを当てていきます。
3.1 2030 年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生 10 万人当たり 70 人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 12 件以下まで減らし、5 歳以
下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 25 件以下まで減らすことを目指し、2030 年ま
でに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根
絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
(参考文献:持続可能な開発のための2030アジェンダ)
福祉ってなんだろう?
目標3にある「福祉」とはどのような意味かご存知ですか?“福”も“祉”も、「幸せ」という意味があります。「社会福祉」「福祉活動」のように使われていますよね。
この場合は「すべての人々が幸せになれるように取り組むこと」という意味となります。SDGs目標3の達成のために、みんながよく生きられるためにはどんなことができるかな?と考えることから始めましょう。
日本は一番安全に赤ちゃんが生まれる国!世界の実情は?
2018年にユニセフが発表した『Every Child ALIVE』で、世界における新生児死亡率について報告されています。22人に1人の新生児が死亡しているのはパキスタン。その他多くの発展途上国で、新生児の死亡率が深刻化しています。
悪質な環境や助産ケアの不整備などが原因とされていますが、予防できるはずの問題です。この悲しい状況が改善されるように、世界中に呼びかけています。
この報告書で、赤ちゃんが一番安全に生まれる国として日本が挙げられました。日本は、出産環境や医療制度、妊娠中から乳幼児期まで母子のケアが整っています。世界中で妊娠・出産期の環境に格差が生じないためには、何ができるのでしょうか。
日本初の“母子健康手帳”が世界50カ国へ
妊娠が確定すると、国から配られる母子健康手帳。実は日本独自の制度だと知っていますか?世界での出産時母子死亡の原因は、妊娠期の過ごし方や、出産方法、赤ちゃんの育て方について正しい知識がないことが挙げられています。
母子の健康や育児に必要な情報が載っていて、乳幼児の発達や予防接種の記録が残せる母子健康手帳は命を守るひとつの鍵です。JICAでは年間約2,000万冊の母子手帳を世界約50カ国に導入する活動を行なっています。
日本も含め、災害や紛争などで紙の母子健康手帳を失っても記録が残るように、電子化の推進に力を入れている最中です。
正しい助産ケアと予防接種の普及が母子死亡率の低下に繋がる
発展途上国や紛争地域では、劣悪な環境で出産を迎える母親が多くいます。安全で質の高い助産ケアも整っていないため、生まれる前に亡くなる赤ちゃんや、深刻な合併症にかかる母親も少なくありません。
また悲しいことに、無事生まれても感染症などが原因で5歳前までに亡くなってしまうケースも多いです。必要な予防接種を受けられるようになると、死亡率改善に繋がっていくでしょう。
〈参考〉
JICA保健医療タスクニュースレター「保健だより」第49号「人間的なお産」
4月24日~30日は世界予防接種週間 ユニセフ、世界の子ども半数にワクチン提供 未だ毎年150万人が、予防可能な病気で死亡|日本ユニセフ協会
出産や妊娠について考える絵本
子どもと一緒に、出産や妊娠について考えるときにおすすめの絵本はこちらの3冊です。
「生まれることってこんなに素敵なんだね」と気づかせてくれる絵本ばかりです。
産まれてくるって素敵なこと
赤ちゃんの誕生は、家族だけでなく太陽や月や地球など自然界すべてから祝福されています。赤ちゃん誕生の喜びを謳いあげたこの本を子どもといっしょに読んでください。
赤ちゃんはどうやって産まれてくるのかな?
<けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞受賞>
お母さんのおなかの中で、赤ちゃんが大きくなっていく9ヵ月を楽しいしかけで描かれています。親子で楽しめるコミュニティー絵本。
感染症対策を自分ごととして考えよう
今、世界は新型コロナウイルスという脅威にさらされています。たくさんの人が亡くなり、感染者の後遺症や、コロナ禍による経済的な打撃などいくつもの困難に直面しています。
人間をおびやかす伝染病や感染症
人々はこれまで幾度となく、伝染病や感染症におびやかされてきました。
SDGs目標3では三大感染症と呼ばれる、
- エイズ
- マラリア
- 結核
を2030年までに根絶することを課題に挙げています。また、インフルエンザや新型コロナウイルスへの対処法もしっかりと考える必要があります。課題解決には、医療格差をなくすことやワクチンの普及、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(※注)が鍵となりそうです。
(※注:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは、すべての人に適正な価格で、予防や治療、医療保険サービスを受けられる体制のこと)
感染症に負けない!私たちにできること
今、私たちができることは感染症対策を徹底することです。日頃の手洗い・うがい・除菌、咳エチケット、マスク着用など、子供にとっても日常化していることですね。
ひとりひとりの力は小さく思えても、みんなで心がければ大きな力となります。子どもも大人も地球に暮らす一員という意識を持ち、今ある問題を自分ごととして考えることが大切ですね。
感染症について考える絵本
感染症やウイルスについて考える時におすすめの絵本がこちらの3冊です。ウイルスは人の身体にどんな影響を与えるのか、感染症はなぜ防がなくてはいけないのか、ぜひ話し合ってみてくださいね。
難しそうな内容ですが、しかけ付きの絵本なら興味をひきやすいです。人体への関心のきっかけにもつながりますよ。
大人顔負けの内容で感染症についてしっかり学べる
感染症の仕組みを知って流行を防ごう!
新型コロナウイルスによって、わたしたちの生活は一変してしまいました。
外出を制限されたり、医療崩壊という状況にまで追い込まれているところもあります。
昔から、人間は病気の集団感染に苦しめられてきました。
現在、それは3種類の病原微生物による感染症だと分かり、予防接種や抗生物質を用いて対処・治療できるようになりましたが、科学がすすんでも、全ての病気を撲滅することはできません。
今また我々は、未知の病原微生物「新型コロナウイルス」に苦しめられ、手をこまねいている状態です。
こんな時だからこそ、感染症について正しい知識を持たねばなりません。
本書は、子どもたちに感染症について詳しく知ってもらいたいという目的で編集されています。
手洗いが感染症を防ぐのはなぜか、ネズミなどの媒体が感染症が広げていくのはなぜか。
感染症の原因である病原微生物とはどんなものかなど、イラストを用いて解説していますので、楽しみながら無理なく学べます。
絵本の装丁なので低学年向けのようですが、内容的には細菌学など高度なものも含まれ、大人でも充分に楽しめます。
この時代だからこそおすすめしたい1冊です。
子どもも大人もひとりひとりができる感染対策って?
ウイルスからの病気であるインフルエンザや水ぼうそうを例に出し、新型コロナウイルスCOVID-19について知ることで、「自分とまわりの人にうつさないことが大切」というメッセージを伝えています。手洗いは「ハッピーバースデイ」の歌を二回歌って20秒。最後には簡単なクイズで、具体的にいまどのような行動をすればよいのかがよくわかります。子どもたちが毎日の生活を過剰に怖がりすぎることなく、安心してたのしく過ごし、自ら対策できるように導く絵本です。
【目標3 すべての人に健康と福祉を】親子でできること
健康や福祉は、私たちの生活に密接な関わりのある課題です。世界という視野で考えるとできることは少ないように思えますが、意識を持つだけでも前進です。
身近な部分から健康と福祉について知ることから始めましょう。
母子健康手帳を見てみよう
母子の健康状態や赤ちゃんの成長の様子を記録する母子健康手帳。そこには、赤ちゃんが生まれてくるまで、生まれてからのことが細かく書かれています。
母子の健康について考えるときは、子どもと一緒に母子手帳を見てみましょう。生まれてくるまでにお母さんがどんな検査をしたのか、生まれた時の状況、何回予防接種を受けたのか、いつ笑顔を見せてくれたのか…たくさんの話ができます。
世界では、生まれてくることができなかった赤ちゃんがいること、辛い環境の中で生きている親子がいることも考えてみましょう。その理由や改善のための活動について、一緒に調べると関心も深まります。
自分のことを知った上で、世界の状況を見てみると気づきがあるはずです。「生まれてきてくれてありがとう」とぎゅっと抱きしめて、「あなたは大切な存在だよ」と伝えるきっかけにもなりますね。
ワクチンや清潔な水を届ける寄付をしよう
私たちは希望すれば、必要な時期に必要なワクチンを接種することが可能です。しかし、世界では年間約2,000万人の子どもたちが必要なワクチンを接種できない状況にいます。2015年の統計では、そのうち13万4,000人の子どもたちがはしかで命を落としたという結果が出ています。
予防できる病気で命を失う子どもを一人でも減らすために、できることはあるのでしょうか。日本ユニセフ協会や国境なき医師団などの団体が寄付を募り、子どもたちにワクチンを届けています。学校や園にも募金の案内がある場合や、授業の一環として慈善活動に取り組む場合も。
まずは、支援が必要な背景、活動内容、ワクチンが届くまでの過程を調べると良いでしょう。その上で子どもが望んだら、お小遣いやお年玉の中から自分で金額を決めて寄付をすると主体的に考えられます。
〈参考〉
感染症について話し合ってみよう
withコロナの時代、連日新型コロナウイルスのニュースが流れ、感染症対策がベースにある生活が日常となりました。当たり前になったマスク着用や除菌はなぜ必要なのか、病気と戦う身体の仕組み、ウイルスと細菌の違いについて…。
感染症にまつわるお話はたくさんあります。絵本や図鑑、映像コンテンツも使いながら、さまざまな側面から感染症について考えてみましょう。「感染者数を減らすにはなにが必要かな?」「学校でできる対策はなんだろう」など対話の中でできることを見つけてみましょう。
福祉の面でも「誰も取り残さない」社会を目指そう!
すべての人が健康で幸せに生きられるためには、必要なことがたくさんあります。2020年以降、私たちは新型コロナウイルスと戦う日々が始まりました。
未だ先が見えない状況ではありますが、困難を乗り越える強さを人々は持っているはずです。
すべての赤ちゃんが安心して生まれて、母子ともに健康に過ごせる世界。予防できる病気から子どもたちの命を守れる世界。
誰一人取り残すことなくよく生きるために、何ができるかを考えることが課題解決への第一歩となるでしょう。
秋音 ゆう
東京都在住。
3人の男の子(6歳と2歳と0歳)を育てるWEBライター。
「絵本」「幼児教育」「子どもの発達」「多様性」を得意とし、子育てメディアで執筆。
自身も絵本育児で育ち、母になってからは子どもたちと絵本のある時間を大切に過ごしている。
「生きる力の育み」をモットーに、国語講師の夫と幅広い視野で子育て・教育に奮闘中!
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |