【今週の今日の一冊】こんな風に歳をとりたい! 9月19日の「敬老の日」によせて
今週は「敬老の日」からはじまる一週間。「敬老の日」というのは、家族や身近な年長者を敬い、長寿を祝い、感謝を伝える日ですね。また、9月15日は「老人の日」、9月15日から9月21日までの1週間は「老人週間」でもあるそうです(2001年の老人福祉法の改正により)。そんな今週は、日々の暮らし方が素敵だったり、年齢に関係なく挑戦するパワフルさに励まされたり、お孫さんとの関係にほっこりしたり、「こんな風に歳を重ねていけたらいいな」と思わせてくれるような人生の先輩が登場する本をご紹介します。
2022年9月19日から9月25日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
9月19日 順番通りにいかなくたって、何とかなるもの
月曜日は『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんの いそがしい毎日』
小さな家に仲良く暮らす、えんどうまめばあさんとそらまめじいさん。二人ともとっても働きもの。今日もおばあさんは思い出します。
「庭のえんどうまめのつるに、ぼうを立ててあげなきゃ」
すると庭の草がぼうぼう。抜きおわった草を見て、うさぎたちに食べさせてやろうと思いつきます。ところが、うさぎ小屋の金網が壊れています。修理をしなくっちゃ。おじいさんに頼み、二人で作業小屋に行くと、目の前には穴のあいた作業着がぶらさがっていて……。
そうなのです。困ったことに、二人は何かをやっている最中でも、他にやりたいことが見つかると、すぐに始めないと気が済まないのです。だから大忙し。一日の終わりになると、二人はへとへとです。でも、なんだかとっても楽しそう。そうそう、暮らすってこういうことなんですよね。
松岡享子さんが、降矢ななさんと一緒に最後に残してくれた物語。えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのドタバタする姿は、ユーモラスで可笑しくて可愛らしくて。「順番通りにいかなくたって、何とかなるもの」……そんな言葉が聞こえてくるようです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
9月20日 読めば元気になれちゃう田村セツコさんのエッセイ本
火曜日は『白髪の国のアリス』
女性イラストレーターの草分け、80歳を超えてますます元気な田村セツコさんによる、読者参加型エッセイ本。紙とえんぴつがあれば幸せ、という心の健康法を伝授します。
【おすすめポイント】
1. 見て楽しい
元祖「かわいい」著者の描き下ろしカラーイラストと手描き文字がいっぱい
2.読んで楽しい
元気になるエッセイは、シニア世代にも読みやすい大きな文字を使用
3.書いて楽しい
読者が書いて参加できる、ハッピーになる魔法10講座入り(書きやすい特別な紙使用)
【絵本作家・荒井良二先生(著者の師匠)推薦のことば】
セツコ語録はいつも普段着でいつもよそ行きのお茶目ゴージャス!!
【本文より】
いわゆるひとつの認知症ですってね。わたし。おほほ。(中略)さんざん、力いっぱい生きてきて、あちこちネジがゆるんで、ちょっとだけのどかなうららかな世界に入ってきただけ。
そう、ふしぎの国のアリスみたいに。
ふふ……あなたも年をとればわかるわキット。
(中略)年老いた親が、何か思い出話とか気になる考えをつぶやいた時は、ぜひ、小さな声でやさしく耳もとで「さすが」とささやいてください。
これは、とても短い言葉ですが、「しっかりして」などより、キキメのある、あたたかく甘い、お薬みたいです。
【もくじ(抜粋)】
●アリスのポエム オリジナルカラーイラスト+自筆ポエム 全12本
●アリスのエッセイ 全16本
さすが/大好きな屋根裏部屋/愛する仕事/ある日、バスの中で/野菜のちから/心配性 他
●アリスの魔法練習帳 直接書き込める読者参加ページ
絵日記教室/コラージュ人形を作る/しあわせを呼ぶ言葉100/大人のぬりえ/メモ 他
【著者プロフィール】
田村セツコ(たむら・せつこ)
イラストレーター、エッセイスト。1938年東京生まれ。1960年代に『少女ブック』『りぼん』(集英社)『なかよし』(講談社)の表紙や“おしゃれページ"で活躍。その後、“セツコグッズ"で一世を風靡。サンリオの『いちご新聞』、ポプラ社の名作童話挿絵など。現在は絵日記教室の講師、個展、講演会他、手帳はスケジュールでいつもパンパン。19歳で銀行勤めを辞めてから、画業65年、好きで入った道を貫いています。
【著者からメッセージ】
この世は、すてきなワンダーランドね。ボケるのなんて、怖くないわ。
生きてる友だち、亡くなった友だち、みんな心強い応援団!!
えっ年齢? 忘れちゃった!!
たぶん20~200歳の間ね。
9月21日 史上最年長でフルマラソンを完走!
水曜日は『100歳ランナーの物語 夢をあきらめなかったファウジャ』
史上最年長でフルマラソンを完走!
生まれつき足が弱く、5歳まで歩けなかったファウジャ。
周りから「無理だよ」と言われたことも決してあきらめず、挑戦しつづけた。
時は流れ、81歳で初めて故郷を離れて、イギリスで子どもたちと暮らし始める。
だが家族は忙しく、言葉も通じない。
鬱々としていたが、ある日、テレビで走る人たちを目撃する。
その様子にすっかり引きつけられ、ターバンをまいた姿で公園を走るようになったファウジャ。
やがてフルマラソンを走るという目標を立て、ロンドンマラソンを88歳で完走する。
不屈の精神を貫き、100歳で最高齢のフルマラソンランナーとして完走するまでを描く。
ファウジャ・シン自身による「はじめに」を収録。
ファウジャは周りに何を言われてもけっしてあきらめず、挑戦しつづけた。
「あなたのことはあなたがよく知っている。あなたにできることもね。
今日は自分の力を出しきれるかしら?」――母の言葉
読者の声より
5歳まで自分の足で歩けず、ひ弱だったファウジャ。歳をとってからマラソンをはじめ、100歳になってもフルマラソンを見事に走り切ります。
できると信じた事に懸命に取り組み、成し遂げていく姿は感動もの。「ファウジャは挑戦し続けます」というセリフに勇気づけられます。
ラストにご本人の写真が載っていました。とても若々しく良い表情をされていて、なんて素敵だろうと思いました。いつまでも前向きな気持ちでいたいものです。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子14歳、男の子12歳)
9月22日 たね育てに悩むぼくにおじいさんが教えてくれたのは…
木曜日は『そだててみたら・・・』
学校の宿題で、見たこともないような不思議な形のたねをそだてることになったぼく。大きく立派にそだつように、いろいろ調べたり気をつかったり。でもなんだかうまくいかなくて…。育てるワクワクやドキドキ、そしてモヤモヤなど、あらゆる「そだてるもの」と「そだつもの」に心からのエールを込めた絵本。
9月23日 温かな絵手紙交換。新聞ちぎり絵にも注目です♪
金曜日は『おてがみで あいましょう』
生まれた時からずっと一緒に暮らしていたマルちゃんとおばあちゃん。けれど、引っ越しして今ははなればなれ。そんなマルちゃんの家に届いたのは、おばあちゃんが送ってくれたまっ赤なりんご。おかあさんは、さっそくマルちゃんの大好物のりんごパイをつくってくれます。
「おばあちゃんといっしょに、おしゃべりしながら たべたかったな」
そこでマルちゃんは、おばあちゃんにお手紙を書くことにしました。一緒に食べているところを想像しながら描いたのは、おおきなりんごパイの絵。すると今度は、おばあちゃんからの素敵なお返事。ちぎり絵で描いたりんごパイのひと切れが描かれていたのです! こうして、マルちゃんとおばあちゃんの絵手紙の交換がはじまります。次にマルちゃんが描いたのは……?
大好きなおばあちゃんに会いたい一心で出すお手紙。そんなマルちゃんの気持ちを、おばあちゃんはどんな気持ちで受け取っていたのでしょう。それは、マルちゃんを思って描く優しいちぎり絵を見れば伝わってきますよね。
距離はあっても、しっかりと関係を深めていく二人のあたたかいやり取り。この絵本の作者は、木村いこさんと木村セツさん。なんと実の祖母と孫なのだそう。89歳から始めたというセツさんの新聞ちぎり絵。その魅力もじっくりと味わいながら、なんだか読者の方まで元気がもらえるような一冊になっています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
引っ越しをして、おばあちゃんと離れてしまったくまのマルちゃん。
おばあちゃんが送ってくれた、りんごのお礼を言いたくて、手紙を書くことにしたマルちゃん。
それから、マルちゃんとおばあちゃんの文通が始まります。
郵便配達のおじさんが来てくれるのを、まだかまだかと待っていた時間。郵便の束の中に、自分宛の手紙を見つけた時の喜び。
子どもの頃のそんな情景を思い出し、私もマルちゃんと一緒に、ワクワクしながら、おばあちゃんからの返事を待ちました。
そのおばあちゃんからの返事のちぎり絵の素敵なことといったら!
返事を書いている時の、おばあちゃんの幸せそうな笑顔を思い浮かべて、こちらまで幸せな気持ちになりました。
心のこもったお手紙をいただくと、ほんとうに、温かく幸せな気持ちになります。
今はメールやラインでのやりとりが主流ですが、やっぱり手紙には、独特の良さがありますね。
時間をかけて紡がれた絵や言葉にのせて、幸せを運んできてくれるお手紙。
寂しかったマルちゃんも笑顔を取り戻し、友達もできました。
これからもずっと、おばあちゃんとの、楽しいお手紙のやりとりが続くことでしょう。
今度はどんな返事が届くのかな?
マルちゃんと一緒に、楽しみに待っています!
(あさみーこさん 50代・その他の方)
9月24日 運動会で目撃したジィちゃんのすごい秘密とは!?
土曜日は『ぼくのジィちゃん』
田舎からやってきたぼくのジィちゃん。
変なTシャツ着て、にこにこ笑ってるだけのジィちゃん。
なんだかかっこわるい。
でも、ジィちゃんには、ぼくが知らないすごい秘密があって・・・。
明日は運動会。とうさんは、走るのが早いから「PTAクラスたいこうリレー」の選手。
だけど、ぼくはクラスで一番走るのがおそい。
「ぼくは、また ビリに きまってる。いやだなぁ・・・。」
その夜家にやってきたのが、ジィちゃん。
ジィちゃんは子どもの頃走るのが早かったって言うけど、信用できない。
だって、コツを聞いたら「右足を前に出したら、次は左足を前に出す」って。
あたりまえのことを言うんだもの。
当日、ぼくはやっぱりビリだった。
がっかりしていたぼくに、追い打ちをかけるように、とうさんが仕事でリレーに出れなくなった。
相手チームのアンカーは、元陸上選手のハヤトくんのおとうさんなのだ。
急にアンカーをやってくれる人なんていないよ。
その時、ピンチヒッターとして立候補してきたのは、思いもかけない人だった!?
読み終わって出る感想はとにかく1つ。
「ジィちゃん、かっこいい!!」
年なんて関係ない、かっこいいものはかっこいい。
輝いている人は輝いているのです。
吉田尚令さんが描く、スピード感あふれる運動会シーンは最高。
ぼくの中のジィちゃん像が変わっていく瞬間を迫力たっぷりに魅せてくれます。
読後感が気持ちいい、ドラマチックな一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
9月25日 きのこの里に大事件! ほしじいたけは体を張って…
日曜日は『ほしじいたけ ほしばあたけ』
きのこむらのほだぎのさとに住む、ほしじいたけとほしばあたけ。
きのこ暦123年生まれのふたりは、きのこむらのきのこたちに慕われる長老きのこです。
ある日のこと、ほしじいたけが裏山にたきぎひろいをしていると、
むらのこどもたちのひとり、タマゴタケが
崖下に落っこちてしまったというのです。
「こりゃ たいへんじゃ!」
からからに乾いた体を使って、ふうわりと崖を飛び下りるほしじいさま。
無事にタマゴタケの元に到着です。
でも、ほしじいさまの軽さでは、タマゴタケと一緒に崖を上がることはできません。
「いたしかたあるまい。」そうつぶやいたほしじいさまが、
崖のわきに流れる湧水にそろりとつかると……。
実は意外と多い「きのこの絵本」の中でも、
世にも珍しい「ほししいたけ」が主人公の本作。
生のしいたけにはない、特性を十二分に発揮して、
ほのぼのしているのに、どこか脱力してしまう、
何とも不思議な“味のある”ほししいたけ絵本です。
作者の石川基子さんは、第36回講談社絵本新人賞を受賞した、
期待の新人作家さん。
講談社絵本新人賞のHPでは、受賞から絵本出版までの
制作秘話が連載されています。
http://ehon.kodansha.co.jp/award/journal/ishikawa/1.html
いかがでしたか。こうして本を並べてみると、どの人生の先輩も表情が生き生きとしていて笑顔で、それを見ているだけでも元気をもらえそうですね。今週は、大切なおじいちゃんおばあちゃんはじめ周りの年長者に感謝を伝えながら、いろいろなことを教えてもらえる良い機会となりますように。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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