【今週の今日の一冊】「国際音楽の日」によせて。絵本で音楽に親しむ一週間
10月1日に定められている「国際音楽の日」。その理念は、“世界のすべての人々が自分の敵や反対者をも助け合い、 憎しみを兄弟の愛に変えるよう努める日にしよう。そして、あらゆる国や地域の人々がさまざまな音楽表現を通して、 暮らしの中の音楽のすばらしさを認識する機会を与えられるようにしよう。”(文化庁「国際音楽の日」パンフレットより) という意味を持つとのことで、日本では1994年に定められました。
絵本の中にも音楽の素晴らしさと楽しさ、音楽を通してだれかと繋がる喜びが伝わってくるものがたくさんあります。今週は、音楽をテーマとした絵本をご紹介します。
2022年9月26日から10月2日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
9月26日 ねずみくんが音楽会で演奏した楽器は……?
月曜日は『ねずみくんとおんがくかい』
○あらすじ
ペンギンさんが、「ぼくのおんがくかいでトランペットをふいて」と、ねずみくんにたのみました。でも、ねずみくんが、がんばってもトランペットがふけません。
そこでねずみくんは、ねこくんのシンバルと、とりかえてもらおうとたのみましたが、「きにいっているからだめ」とことわられてしまいます。
たぬきさんのたいこも、ライオンさんのバイオリンも、くまさんのハープも、みんなねずみくんにはできません。ぞうさんの、おおきなグランドピアノも・・・。ところが・・・!
だいじょうぶ、ねずみくんは、ちゃんとおんがくかいにさんかできましたよ。
○編集部より
どうぶつたちの個性を生かした展開はおなじみですが、ちいさいねずみくんが、おおきなグランドピアノをひけるなんて、思っただけでうれしくなってしまいます。
音楽が聞こえてきそうな楽しい作品です。
読者の声より
絵本に登場する楽器の中でも、特にラッパに興味を持った娘。
お友達に借りたおもちゃのラッパが上手く吹けなくて、ちょっと悔しい思いをしたこともあり、ねずみくんに感情移入しながらお話の展開を楽しんでいます。
最後にねずみくんが活躍するシーンでは思わずにっこり。演奏の仕方も、ねずみくんならでは。読んだ後、ほっと温かい気持ちになれる一冊です。
最後のページには演奏している様子が文字なしで描かれているので、どんな曲を演奏しているのか想像する楽しみもあり、その時の気分で曲を口ずさんでは、娘と2人で音楽会の雰囲気を味わっています。
(まどかめさん 30代・ママ 女の子2歳)
9月27日 切り株を弾くと、紅葉の森がコンサートホールに
読者の声より
ピアノにそっくりな形をしたきりかぶ。
女の子が弾き始めると、いろんな動物たちが聴きに来ました。
聴いてるだけじゃいられなくなって、楽器を持ってきて一緒に演奏を始め、森の音楽会になりました。
見開きいっぱいに大きく描かれた色合いも美しい絵から本当に音楽が聴こえてきそうです。
これを読んだ子どもたちはきっと自分もぽかぽか気持ちの良い森の中をきりかぶピアノを探してお散歩したくなるでしょう。
(soyosoyowindさん 40代・ママ 女の子2歳)
9月28日 5つのやさしいしらべをおやすみタイムに♪
水曜日は『クラシックおんがくのおやすみえほん』
森のふくろうたちは夕暮れが近づくと、どうぶつの赤ちゃんたちのためにおやすみの音楽を演奏します。ブラームス、ショパン、フォーレ、シューベルト、モーツァルトの5つのやさしいしらべを聞くことができます。
9月29日 世界一すてきなバンドのドラマーのようになりたい!
木曜日は『チュウチュウ通りのゆかいななかまたち 6番地 クイックと魔法のスティック』
チュウチュウ通り6番地に住むのは、ドラマーのクイック。チーチーチックスという女の子だけのバンドのメンバーです。ある日森に出かけたクイックは・・・。
9月30日 重なり広がり響きあい、音は喜びに満ちていく
金曜日は『ぼくがふえをふいたら』
絵本の中に広がるのは、夕陽に照らされ赤く染まる、ただただ広い空と大地。いるのは「ぼく」と犬のふたりだけ。
フルーーフルーー……
ぼくが笛をふいたら、その音は風に乗り、彼方にこだまして、眠る誰かを呼びおこし。
すっかり暗くなった遠くの地平線からやって来たのは、サル。「タタ タタ」、丸太をたたく音が画面いっぱいにはじけ散る。まるで雨のおちる音。「ビーン ビーン」「カチャ ケチャ」ガゼルがつるをはじき、木の実をつけてクマが踊る。たまらず犬は駆けだし、「オーーーーン」響く遠吠えの音がさらに重なり、音は広がり、ひとつになって……。
ページを開き、目の前で繰り広げられるのは、音が鳴り、重なり、そして音楽の生まれる喜びの瞬間。それは光を放ち、多くの美しい景色を見せ、融合し、やがてはじけとび。その高揚感と静寂を、読者は見て、同時に体感することができるのです。なんて絵本なのでしょう!
一度読めばきっと忘れない、身体のどこかで記憶し、また思い返すことができる。そんな印象的な1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
音やリズムを、絵にして表現している絵本です。
どのページも色合いが美しく、吸い込まれるような感覚になりました。添えられている短い文章も、シンプルに心に響きます。
感想を書くのが難しいのですが、いろんな人に「読んでみて」と言いたくなる1冊です。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子15歳、男の子12歳)
10月1日 なんて素敵な音だろう
土曜日は『クマと森のピアノ』
ある日、森の中で、こぐまのブラウンは、へんてこなものを見つけます。
「なんだろう?」
ブラウンが気になって触ってみると…タン!
きいたことのない音がします。
その日から、ブラウンはこの「へんてこなもの」に夢中。
ちょっとずつ触っているうちに、どんどん沢山の音を出せるようになり、やがて、気が付くとブラウンの奏でる美しいメロディに仲間のクマたちが集まってくるようになっていたのです。仲良しのグレイもうっとりしています。
ある晩、偶然通りかかった人間の女の子とお父さんが、ブラウンの演奏を聴き、立ち止まります。そしてブラウンに言います。
「いっしょに街へいきましょうよ。街には音楽があふれているの。」
仲間のことを思い、迷いながらもブラウンは遠い街へ行くことにします。そこでブラウンは…?
森の中で美しい音楽を奏でていたブラウンが、やがて大きな街で夢を叶える瞬間。その心の高揚は、読者にもダイレクトに伝わってきます。大観衆の拍手だって聞こえてきます。何もかもがキラキラして眩しいような日々。憧れます。でも、その先に見えてきたのは、ブラウンにとって本当に大切にしたいもの。その道を通ってきた人にしかわからない答えなのかもしれませんね。読者はそれを温かく見守るのです。
このスケールの大きな設定、それでいて心にじんわり響く物語を描いたのはイギリスで話題となっている新人作家デイビッド・リッチフィールド。俵万智さんの翻訳で日本の読者に届くことになりました。シンプルな言葉の中から色々な種類の音が聞こえてくるようで、静かにじっくりと味わいたくなる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
『クマと森のピアノ』続きのお話。こちらも合わせてどうぞ
10月2日 ひとりじゃなく、みんなと一緒に音楽を楽しみたい
日曜日は『オーケストラをつくろう』
サイモンは、音楽が大好き。ひとりじゃなく、みんなといっしょに音楽を楽しみたい。それが指揮者をしている理由。さあ、指揮者サイモンといっしょに、オーケストラの世界をのぞいてみましょう。
弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器……さまざまな楽器とたくさんの演奏者で構成されているオーケストラ。この絵本では、それら楽器の特徴、演奏の仕方を紹介するとともに、その楽器がどのように曲を奏でるのか、実際の演奏を付属のCDで聴くことができます。演奏はすべてロンドン交響楽団。世界的指揮者であるサー・サイモン・ラトルが序文を寄せ、DISCにはラヴェルの『ボレロ』と、ベートーヴェンの『田園』のフル演奏も収録。巻末には、楽曲の説明と用語解説も記載され、音楽の知識が深まります。
読者の声より
ロンドン交響楽団の協力を得て、CD付きでオーケストラ解説を試みた作品。
実在の指揮者、サイモン・ラトルが企画からオーケストラのコンサート本番までに行うことを追ったストーリー。
指揮者の役割はもちろんのこと、オーディションを行うことで、
各楽器の特性なども浮かび上がらせます。
指示されたCDトラックを聞くことで、楽器のイメージが湧くと思います。
用意されたCDは二枚組!
1枚目はいろんな曲からの採取なので、かなりのボリューム、読者がついていくのが難しいかもしれません。
2枚目は本番バージョンで、じっくりとボレロと田園を聴かせてくれます。
オーケストラを丸ごと聴いて感じる、でしょうか。
小学校高学年くらいから、じっくりと時間をかけて読んでほしいです。
(レイラさん 50代・ママ )
いかがでしたか。
音楽をテーマとした絵本は、「芸術の秋」にもぴったりですね。秋の夜長にゆっくりとご堪能ください。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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