『イエロー バタフライ』少女の目を通して戦争を描く「言葉」のない絵本
ウクライナ国旗の青と黄色、絶望と恐怖を表す黒、「命」の象徴である蝶によって戦争を描く
ボローニャ国際ブックフェアで話題になり、世界的に注目を集めているウクライナの絵本『イエロー バタフライ』が9月27日に発売されました。
アメリカ版も各書評で激賞されています。
「挑発的で力強く、息をのむほどに美しい」Kirkus Reviews
(アメリカ版の書評より)
日本版『イエロー バタフライ』は9月26日の読売新聞文化面で紹介され、早くも関心が集まっています。
イエロー バタフライ
ボローニャ国際ブックフェアで話題を集め、アメリカ版も各書評で激賞されている、ウクライナの絵本です。
作者のオレクサンドル・シャトヒンは、ウクライナ在住のイラストレーター。彼の家はロシアとの国境近くにあり、現在も家族とともに避難生活を送っています。本書は、女の子の目を通した「戦争」を、言葉を使わずに描いています。
ウクライナの国旗の色である青と黄色、さらには絶望と恐怖を表す黒、そして「命」の象徴である蝶によって、絶望の果てにも希望を見いだそうとする人間の姿を、どんな言葉にもまして胸を圧する力で表現しています。
文字がないことによって、読者は絵からこの絵本の物語を自分で紡いでいきます。
ウクライナで起きている悲劇の報に慣れてしまってきている私たちに、「戦争」を情報ではなく、自分の身にも起こりうるものとして感じさせる力をもっています。
【アメリカ版の書評】
「挑発的で力強く、息をのむほどに美しい」Kirkus Reviews
少女の目を通して戦争を描いた言葉のない絵本。青い空を背景にした黄色い蝶を象徴として、そこに希望を見いだしていきます。彼らの国旗の色を使って、オレクサンドル・シャトヒンは、ウクライナで起きている戦争への感情を深くゆすぶります。そして戦争の悲惨な現実から、平和と未来の希望の場所へと旅する際に考えるべき、強力な視覚的メタファーに満ちた物語をわたしたちに託してくれました。
少女の目を通して戦争を描く「言葉」のない絵本
この絵本には「言葉」がありません。泣き叫ぶ声も、嘆きや怒りの言葉も。
でも、だからこそ伝わってくるのです。嘆き、怒り、絶望――――その果ての希望、平和への祈りが。
今、ウクライナの戦争の現実を伝える、たくさんの「言葉」が溢れかえっています。わたしたちは「言葉」によって現実を捉えますが、ときにその言葉に惑わされます。どうしようもないと無力感に囚われ、無関心にさえなってしまいます。
戦争によって、突如、妻と幼い子とともに故郷を追われた絵本作家のオレクサンドル・シャトヒンさんは、このあまりに理不尽で、胸を押しつぶすような現実を、まったく言葉を用いずに、ウクライナの国旗の色である青と黄色、さらには絶望と恐怖を表す黒、「命」の象徴である蝶によって描きだしました。そこには、絶望の果てにも希望を見いだそうとする人間の姿があります。
言葉がないことによって、読者は生の感情を受け取ります。ウクライナで起きていることに慣れてしまっている私たちに、「戦争」を自分自身のこととして感じさせる力を持っています。
そして、この絵本の「言葉」を紡ぎだすのは、私たち自身なのです。
本書の売り上げの2%は、ウクライナの子どもたちに本を贈る“Universal Reading Foundation”に寄付されます。
書籍紹介
『イエロー バタフライ』
著者:オレクサンドル・シャトヒン
定価:2530円(税込)
判型・ページ数:A4判・63p
読者対象:子どもから大人まで
発売日:9月27日
発行:講談社
著者プロフィール
ウクライナ在住のアーティスト、イラストレーター、絵本作家。ウクライナ東部の街サミーに暮らしていたが、2022年のロシアによる侵攻のため、故郷を離れ、妻や子とともに西部の街リビウで避難生活を送っている。ほかの絵本に『The Happiest Lion Club』がある。
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