【9月に読みたい絵本と新刊】十五夜を迎える秋の季節のおはなし会におすすめ
絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本のおはなし会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに9月のおはなし会プログラムに取り入れたい絵本や、新刊絵本のおすすめを教えていただきました。
二十四節気(にじゅうしせっき)を感じる
二十四節気とは… 1年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。
9月では…
白露はくろ(9月7日)昼と夜の気温差が大きくなり、草花が朝露でぬれるようになる頃。
秋分の日しゅうぶんのひ(9月22日)昼夜の長さが同じになる秋分の日。この日を境に陽は短く弱くなっていく。
中秋の名月ちゅうしゅうのめいげつ(9月17日)旧暦の8月15日にお月見をする日本の風習。
9月のおはなし会
できれば外に出たくないほどの、あの暑い暑い夏をこえ、朝晩頬にあたる風は心地よく、実りに感謝し月を愛でと自然と近づく秋の始まり。
絵本を読んだらこうなります!なんてことはないけれど、そっと背中を押してくれたり、気づきのきっかけになったり、より深く興味を持つようになったり。そんな魔法を絵本は持っているなとやはり思うのです。
さぁ今月も季節を肌で感じ、楽しんでいきましょう。
今月のわらべうた
今月もまずはお歌からいきましょう。
こんなお月さまのわらべうたはご存じでしょうか。
おつきさま えらいの
かがみのようになったり
くしのようになったり
はるなつあきふゆ
にほんじゅうをてらす
お月さまは偉いんだよ。鏡のようにまんまるく大きくなったり、櫛のように細くなったりしながら、春夏秋冬日本中を照らしてくれているよ。
…という意味でしょうか。
昔電気のなかった時代、満月の月明かりは夜道を照らし人々を助けてくれたことでしょう。
そして月の満ち欠けを暦として使っていた旧暦の時代。
人々の暮らしになくてはならなかった月という存在を愛でた歌なのではないでしょうか。
時代が変わっても月は満ち欠けを繰り返し、私たちにとって身近でやはり少し不思議で大切な存在です。
子どもたちと一緒に月を愛でる。そんなお月見の季節の絵本の時間。
まずはこんなわらべうたからいかがでしょうか。
【はじまりの絵本】食欲の秋に
食欲の秋のはじまりです。
まずはみんな大好き!この歌を絵本と一緒に歌いましょう。
それはこんな始まり
これくらいの おべんとばこに
おにぎり おにぎり
ちょいとつめて
(p2-4 本文引用)
誰もが知るわらべうたはやがて手遊び歌に、そして絵本に。
耳で楽しんでいた歌に絵がつくことで、よりイメージしやすく楽しめます。
さいとうしのぶさんの絵がまたよくて。にっこにこのおにぎりやおかずたち。
見てて嬉しく楽しくなってしまう。
子どもたちと手遊びしながら楽しみたい一冊です。
手遊びでは大きなぞうさんへのおべんとう、小さなありさんへのおべんとうなどバリエーションを増やしても楽しいですよ。
読み聞かせ時間目安<1分15秒>
<歌って遊べるわらべうたの絵本>
これくらいの おべんとうばこに おにぎり おにぎり ちょいと つめて…
歌詞に合わせて、擬人化されたお弁当が登場。そこへ、おにぎりやきざみしょうが、ごましおが現れ、お弁当箱の中へ。にんじんさん、さくらんぼさん、しいたけさんたちもやってきて…、おいしそうなお弁当のできあがり!
ワンフレーズごとにページをめくりながら、見て聞いて、歌って楽しい絵本です。手遊びうたとしてもよく知られていますから、手振りをまじえて楽しむこともできますね。
お弁当や食べ物たちが、手遊び歌でおなじみの手振りをしながら、ユーモラスに登場してきます。
【新刊絵本】絵本に背中を押され
お次は、2024年8月に出たばかりの新刊です。
作は彦坂木版工房のもりといずみさん
絵はきくちちきさん。
初タッグの絵本はなんともかとも、心地よい言葉と絵の一冊になっていました。
それはこんな始まり
ねぇ かえるさん
おかお あらうの
みーせて
ぱしゃ
(p2-4本文引用)
かえるに、あらいぐま、ねずみに、ぞう!!
次々と動物たちが気持ちよさそうに、上手に顔を洗います。
さぁ、お次は…。
きっと何度も声に出して作られたんだろうなという言葉は読んでいて、リズムよく楽しい。
そしてそこに添えられる余白たっぷりに描かれる絵は静と動。躍動感があり言葉さえも水しぶきと一緒に跳ね上がる。
これを読むと顔を洗えるようになる絵本です。とは言いたくありません。でもドキドキも一緒に、やって見たくなる。そんな絵本です。
そして、顔を洗った後の誇らしい顔もご一緒に、もう一回読んで!となることでしょう。
顔を洗う。
これは子どもたちにとって、身辺自立の第一歩。
でも顔が濡れるのを嫌がるお子さんも多い。
子育て中のお二人だからこそ生まれた絵本なのかもしれません。
読み聞かせ時間目安<2分30秒>
かえる、あらいぐま、ねずみ、ぞう、みーんな「ぱしゃ」と顔をあらうのが上手です。さあ、顔をあらって、きもちよくなれるかな? 子育てを楽しむ人気絵本作家、もりといずみ・きくちちきによる初のコラボ絵本。読み聞かせ1歳から、ひとり読み2歳から。
【お話絵本】大好きなおばあちゃんに会いたくて
9月には「敬老の日」がありますね。
お年寄りを敬い、さらなる長寿を願う日。
さぁ、そんな敬老の日にちなんでこんな絵本はいかがでしょうか。
それはこんな始まり
丘の上の赤い屋根がよおちゃんのうちです。
よおちゃんのおばあちゃんは山の上に住んでます。
オレンジ色の屋根の家です。
(p2−3本文引用)
ある日、おばあちゃんに会いたくなったようちゃん。
ちょうどその頃、おばあちゃんもようちゃんに会いたくなって…。
すれ違うふたり。
絵本を見ながら、あー!と思わず声が出る。
ようちゃんそこに!おばあちゃん!!ああっ!!!
読者も巻き込んで絵本は進みます。会いたい気持ちはもう最高潮に!
さぁ、ようちゃんは無事おばあちゃんに会えるのでしょうか。
俯瞰で見る読者。絵本だからこその面白さ。ぜひ絵本で体感してほしい。
読み聞かせ時間目安<2分15秒>
【昔話絵本】読み比べも楽しい
お次は昔話の絵本を。
この夏はお米がスーパーから消え、改めてお米のありがたさを知る夏となりました。
そろそろ新米の季節が近づき、おいしいお米を心置きなくいただくのを楽しみにしています。
握りたてのおにぎりはにぎってくれる人の愛情も加味してそれは格別。
そんなおむすびの昔話はいかがでしょう。
それはこんな始まり
むかし。
あるところに、はたらきものの おじいさんと
やさしい おばあさんが おりました。
その となりには、よくばりな おじいさんと いじわるな おばあさんが すんでいました。
ある日。
はたらきものの おじいさんは
山へ たきぎを とりに でかけました。
(p2-3 本文引用)
お昼になっておじいさん、おばあさんが作ってくれたおいしいおむすびを食べようと、きりかぶにすわったところ、おむすびはころころころ…と転がって穴の中。
するとその穴の中から小さな歌が聞こえます。
「おむすび ころりん すっとんとん」
しっかりとした文章量ですが、「おむすび ころりん すっとんとん」のネズミたちのうたがリズム良くはさまり、さいとうしのぶさんの絵の楽しさも相まって子どもたちは夢中に。
後半、となりのおじいさんとおばあさんが出てくると、お話はスピードアップ!
子どもたちもぐっと話に引き込まれていきます。
小学校一年生の教科書にも出てくる昔話。絵本でもたくさんあります。
絵や言葉が違うと、雰囲気もちがったり。お話会に持っていって読み比べてみるのも面白いですね。
読み聞かせ時間目安<6分45秒>
【季節の絵本】おつきさまの満ち欠けが絵本に
私ごとで恐縮ですが、今月初めに絵本を出版しました。
新月から満月へ、そしてまた新月へ。
お月見の頃の月の満ち欠けの特徴をひとつひとつ言葉にしました。
その言葉を絵本作家でイラストレーターのカワチ・レンさんがうさぎさんたちと共にまあるく繋げてくださいました。
それはこんな始まり
おつきさまが かくれんぼ
もういいかい まあだだよ
(本文p2本文引用)
最初の3ページはきらきら星のメロディーにのせて歌えるようにもなっています。
あえて、上弦の月や下弦の月、十五夜などの言葉もいれました。
わかるとかわからないとかの前に、子守唄のように大好きな人の声に乗せて心に届くといいなと思っています。
空を見上げて、今日のお月さまと出会うのが楽しみになるような絵本です。
遊び心溢れるカワチ・レンさんのうさぎさんたちの世界と一緒にお楽しみください。
読み聞かせ時間目安<3分30秒>
【今日はどんなお月さま?】
【日本語・英語が併記されたバイリンガル絵本】
おつきさまが かくれんぼ
もういいかい まあだだよ
知っているようで知らない、月のかたちのうつり変わり。
この絵本といっしょに、空を見上げて答え合わせをしてみましょう。
表情豊かなお月さまといっしょに描かれる、うさぎたちのストーリーも見逃せません。仲間たちと乗る汽車で空を駆け、船で海をこえて、十五夜を音楽でお祝いをするうさぎたち。それを優しく見守り続けるお月さま。
作者のふわはねさんによるリズミカルな文と、カワチ・レンさんの遊び心が散りばめられた絵は、読み聞かせにもぴったりです。
【その他 9月の読み聞かせにおすすめの絵本】
絵本の読み聞かせについて思っていること
絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。
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【連載】絵本講師ふわはねによる季節の絵本とお話では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。
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ふわはねプロフィール
ふわはね(内田 祐子)
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、
絵本のつなぎてとして、絵本の作り手と読み手を。親と子を。人と人を繋いでいる。
子育てアドバイザー・JPIC読書アドバイザー
大学1年生と4年生の娘をもつ。インスタグラム @fuwahane
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