ヨシタケシンスケさん人気絵本!子どもの不満、大人の理屈。勝つのはどっち!?
「わたしは いま おこっている。
なぜなら、おとなは いろいろと ズルいからだ。」
女の子は意を決して、パパの部屋のドアをバーンと開けます。
「パパ!! わたしは ふまんが あります!」
さあさあ、くるよ。ふまんがくるよ。
「どうして おとなは よるおそくまで おきているのに、
こどもだけ はやく ねなくちゃいけないの?」
何の話かと言えば、ヨシタケシンスケさんの話題の絵本『ふまんがあります』のはじまりの場面です。見てください、表紙の女の子のこの顔。ふまんがあるのです。
さあさあパパ、ピンチです。
「それはねえ…」
…すると!? 思いもよらない場面が繰り広げられます。
パパ、予想に反してとっても口が滑らか。『りゆうがあります』の男の子のひねり出す「りゆう」に引けをとっていません。そんな展開だったとは?
あとは、ひたすら笑っちゃってください。
「ふまん」VS「りくつ」の白熱する戦い、それはそれは見ごたえあるのです。
さて、最後に笑うのはどっち?
読み終わった感想は、さすが大人です。そして、さすが子どもです。
親子の関係の中には、「どちらが正しい」ということ以外にも必要なものがあるのかもしれませんね。
この絵本みたいに、親子で日頃思っていることを楽しく話し合えたら、きっと楽しいはずです。
ただ…この戦いだけでは終わりませんよ。第2ラウンドは「注意」VS「理由」!?
「あ!また ハナ ほじってる! ダメよ!!」
……しまった。今、ぼくはハナをほじっている。
当然、おかあさんにはいつも怒られる。
りゆうは、「おぎょうぎが わるいから」。
確かにその通り。だけど、ちゃんとしたりゆうがあれば、ハナをほじってもいいんじゃないだろうか。
こちらの男の子には、どうやら自分のクセを正当化する立派な「りゆう」があるようです。
ハナをほじったり、ツメをかんだり、貧乏ゆすりをしたり。
人には、ついついやってしまう色んなクセがあります。
子どもがそれをやっているのを見かけたら、注意しない訳にはいきません。
だけど、この絵本では、子どもたちに「そのクセをやめなさい!」なんて言うつもりは、さらさらないようです。主人公の「ぼく」に言わせると、どの行動にもちゃんとした「りゆう」があるんだと。
ハナをほじるのは、ハナの奥にあるスイッチを押して「ウキウキビーム」を出すためだし、ツメをかむのは、大人には聞こえない音を出してゴミすてばのカラスを追い払っているから。
では「貧乏ゆすりをするのは・・・」「ごはんをボロボロこぼすのは・・・」「高いところを見つけると必ずのぼっちゃうのは・・・」?
「へー・・・そうなんだ」
思わず納得しちゃうほど、そのりゆう(いいわけ?)がとにかく面白い。奇想天外、だけど確かに「正当」。何なら、もっと他のりゆうが聞きたいくらい。
この絵本のおかあさんみたいに、クセを見つけた時には、叱る前にちょっと聞いてみようかという気にもなってくる。大人だって、自分じゃ気がつかないクセがあるしね。りゆうを考えなくっちゃ。
こんな風に、思わぬ方向から日常の一コマを切り取ってユーモアを生み出してしまうヨシタケさんの作品。
子どもたちが、絵本を読んで笑って、それから心が少し軽くなってくれたら、こんな嬉しいことはないですよね。
ヨシタケシンスケさんの作品
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