「方言」で癒される! N田流”方言絵本”の楽しみ方
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
心の癒しに、旅のモチベーションアップに! 方言絵本を楽しもう
最近は、コロナウイルスの影響もあり、なかなか旅行にも行きづらい状況もあり、方言に接する機会も減っているのではございませんでしょうか。
旅先の方言に癒されるのも、旅の楽しみのひとつでございます。
そこで今回は、今後、感染拡大がないことを願いつつ、最近注目の「方言絵本」をご紹介させて頂きます。年末年始、田舎に帰省する際、国内旅行する際の予習、モチベーションアップにもご利用いただけること間違いナッシングでございます。
「方言絵本」といえば、まず思い浮かぶのが、こちらの大ヒット作。
「給食番長」シリーズでございます。ただ、こちら、他の方言絵本とは少々スタイル(仕組み)が異なっております。下の画面を見て頂けるとおわかりの通り、標準語のテキストと方言(博多弁)のテキストが併記されております。(通常は方言のみでございます)
どかん! ばしゃん!
「おいしいシチューは、オイラによこせー!」
「きゃあ、番長やめてよ!」
どかん! ばしゃん!
「こげんうまかシチューは、オイラにやりやーい!」
「きゃあ、番長せんどってよ」
併記のスタイルにしたのは、絵本を読み聞かせする際に、博多弁に馴染みのない親御さまでも読みやすいようにという配慮からではないかと。
その一方で、『給食番長』の作者のよしながこうたくさまが、東京など他の県で『給食番長』を博多弁で読み聞かせすると、子どもたちは大喜びで聞いてくれるそうでございます。そう、方言絵本は子どもたちが言葉に関心を持つきっかけ作りにも最適なのでございます。
また、関西の作家さんが関西弁で絵本を出されることも多く、関西弁の方言絵本は数多く出版されております。
それどころか、昨今は、関西弁で翻訳された絵本も存在感を増してございます。話題作が続々出版されているのでございます。
たとえば、こちら。人気絵本作家の長谷川義史さまが関西弁で翻訳された翻訳絵本でございます。
作者のジョン・クラッセンさまは、カナダ出身の人気絵本作家さまでコルデコット大賞(2013年)も受賞。日本でも数々の絵本が翻訳出版されております。
この『どこいったん』の画風はポップでクール、さらに内容はかなりシュールでございます。あるクマが、なくした帽子を探し歩く話なのですが、オチが「えっ?」と思うほどシュール(残酷)なのでございます。
しかし、長谷川義史さまのテキスト(関西弁)を読むと、そのシュールさの伝わり方が全然違うのでございます。そのシュールさを上手く中和してくれるというか、また違うシュールさを感じさせてくれるのでございます。
是非、標準語で訳して読み比べてみてくださいませ。感想が全く違ってくること間違いナッシングでございます。方言(関西弁)が持つ力(魅力)を体感頂ける一冊でございます。
ちなみに、ジョン・クラッセンさまがコルデコット賞を受賞した『ちがうねん』、さらに、韓国の超人気絵本作家、ペク・ヒナさまの『天女銭湯』(ブロンズ新社)や『あめだま』(ブロンズ新社)なども、長谷川義史さまが翻訳を担当されております。どれも、関西弁、方言翻訳の魅力を存分にご体験いただけるかと存じます。
今年は方言絵本の当たり年?!
前述のとおり、関西弁の絵本はたくさんございますが、それ以外の方言絵本は、そんなに多くはございません。
ですが、な、な、ぬあんと!
今年は、1月と2月に2冊も強烈な方言絵本が出版されております。2冊ともに、方言だけでなく、内容もゴイスーに面白く、大人からの人気も高く、まさに親子で楽しんで頂けること間違いナッシングでございます。
まずは、こちら。山形弁でございます。
ダニエル・カールさまが翻訳を担当されたことでも話題になった絵本でございます。ちなみに、ダニエルさまは山形弁をしゃべる外国人タレントとして90年代に大ブレイク、最近では俳優や山形弁研究家として活躍されております。
そんなダニエルさまが翻訳を担当した絵本、一体どんな内容かと申しますと、オオカミがほら穴のなかに住む生き物(獲物)をおびき出そうと試行錯誤する物語でございます。ありがちだなと思うことなかれ!でございます。最後の「えっ、そうくる!?」というオチ(大人好みの構成)が秀逸でございます。さらに、大人好みの画風もあって、大人からの人気も高い絵本でございます。
こちらも、標準語に翻訳して読むと、感想が全然違ってまいります。ちなみに、山形弁で翻訳されることになった経緯ですが、最初、出版社からのオファーは、英語の絵本の翻訳で、特に山形弁のオファーではなかったそうでございます。しかし、ダニエルさまは、「普通に標準語でも良かったんだけど、なんかおもしろぐないがなぁ」と思い、山形弁にしたそうでございます。
さすが方言・日本語を研究されているダニエルさまでございます。この絵本の山形弁はとても読みやすくなっております。読み聞かせの際も、山形弁になじみのない親御さまも安心して読んでいただけるかと。
そして、もう一冊。こちらは、名古屋弁でございます。
こちらは前回、「おじさん絵本」としてご紹介させていただいた絵本でございます。ユーモア絵本作家として大人気の丸山誠司さまが今年2月に出された絵本でございます。
外国からやってきた外国人たちに、信長さまが日本語(尾張弁)を教えるお話でございます。丸山さまお得意の言葉遊び(駄洒落)絵本でございます。そのため、こちらは名古屋弁でしか成立しない絵本になっております。
この絵本を読むと、愛知県に行ってお子様に生の名古屋弁を聞かせてあげたくなること間違いナッシングでございます。名古屋方面にご旅行に行く際には是非、事前にお子様とお楽しみ頂きたい一冊でございます。
そして最後に、おススメしたいのが、 “おじいちゃん・おばあちゃん方言絵本作戦”でございます。
最初にご紹介した『給食番長』シリーズですが、全国各地から作者のよしながこうたくさまのところに、“他方言バーション”のテキストが送られてきているそうでございます。
(こうたくさまのHPで公開になっております。必見でございます。)
そこで、みなさまも、お子様と一緒に田舎に帰省する際に、お気に入りの絵本(標準語)も一緒に持って帰って、実家のおじいちゃん、おばあちゃんに、地元の方言に翻訳して読んでもらおうという作戦でございます。
魅力たっぷりな方言絵本、旅のお供に、そして旅行前のモチベーションアップに是非、ご活用頂ければと存じます。
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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