クリスマスの夜に読みたい、小さな可愛い物語。「2020年 新刊クリスマス絵本」(1)
クリスマスの夜、子どもたち一緒に読みたくなるのは、可愛らしくて心あたたまる物語。2020年の新刊クリスマス絵本の中から、こんな素敵な3冊をピックアップします!
クリスマスの夜に読みたい、小さな可愛い物語。最新クリスマス絵本3冊
一目見たら忘れられない景色…
サンタさんのおとしもの
お話の舞台は、寒い寒いクリスマス・イブの夜の町。
おつかいに出ていた女の子が、大きな赤いてぶくろを拾います。
女の子はすぐに思います。
「これは、サンタさんのてぶくろにちがいない」
寒くて困っているだろうから、届けてあげなきゃ。だけど、この広い夜の町。どうやってサンタさんを見つけたらよいのでしょう。サンタさんは今頃きっと、空飛ぶそりにのって煙突から煙突へ……。
だけど、教会の前まで来た時に、彼女は思いつきます。そうだ、この高い塔に登れば!女の子は無事にサンタさんに会えたのでしょうか。てぶくろは渡せたのでしょうか。
真っ黒な背景に浮かびあがる町の灯りや、空から降ってくる白い雪。高い塔から見渡す遠い港や色とりどりの屋根。その全ての美しいことといったら! 三浦太郎さんの描くクリスマスは洗練された、だけどとっても可愛らしく。一目見たら忘れられない景色がたくさん閉じ込められていて。毎年この時期になると開きたくなる、小さな優しい物語です。
クリスマス絵本の新しい定番の1冊になりそうですね。
(磯崎園子 本ナビ編集長)
繊細で愛らしい刺繍に目が釘付けに……
サンタさん
思い立ったのは、春の終わり。
羊の毛を刈りながら、サンタさんは思うのです。
「このフワフワの毛で、はなちゃんのマフラーを作ろう」
毛を紡いで、色を染めて、毛糸玉を作り。春、夏、秋、冬をまたいでじっくり丁寧にマフラーを編み上げます。クリスマスの夜、それを綺麗に包み、袋に入れて、長靴をはいて、外へ出て……「さあ行こう」。
絵本の中で、はなちゃんへプレゼントを渡すために、森を抜け、山をのぼり、街の中をひとりで歩き続けるサンタさんのその姿の小さなこと。だけど、思わず目を凝らして見入ってしまうのは、なんと全てが「刺繍」で描かれているから! サンタさんの赤い帽子も白いおひげも、森の木々も、静かな夜に並ぶたくさんの家も、全てが丁寧に繊細に、そして色鮮やかに縫い込まれているのです。
『クリスマス・イブのおはなし 3冊セット』、『サンタさんありがとう』などで人気の刺繍絵本作家長尾玲子さんの最新作は、ひたむきな姿が心を打つサンタさんが主人公。その一つ一つの画面の密度の濃さと相まって、ぎゅっと詰まった愛情を感じることのできる、素敵なクリスマス絵本です。
じっくりと、読む時間を大切にしながら味わってみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
愛らしく心優しいぼうしくんの物語
ぼうしくんのクリスマスプレゼント
クリスマスの夜、真っ白な雪の上にぽつんと置かれた「ぼうしくん」。一体どうしたのでしょう。どうやら、あわてんぼうの誰かさんが、落として行っちゃったみたいで……。
すると、そこへやってきたのは、うさぎさん。
「えーんえーん、今日はクリスマスなのにひとりぼっち。
誰もプレゼントをくれないよ。」
泣いているうさぎさんに、ぼうしくんは自分のボンボン飾りをプレゼントします。うさぎさんが喜んで泣きやむと、今度はくまさん、きつねさん、トナカイさんまで次々にやってきては、みんなひとりぼっちだと泣いているのです。心優しいぼうしくんは……。
人気作家・新井洋行さんが描く新しいクリスマス絵本の主人公は、ぱっちりおめめがチャームポイントのぼうしくん。この鮮やかな赤い色、フワフワの飾り、なんとなく持ち主は想像できますよね。だけど、全てがなくなってしまったぼうしくんの姿と言ったら。もう、早く迎えにいってあげてよね! みんながそう願う中、大丈夫、最後はみんなが嬉しい場面が待っています。
子どもたちと過ごすクリスマスの夜には、こんな可愛らしくて心あたたまる絵本がぴったり。何度でも読んであげてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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