【ふわはね絵本のある時間】2022年3月におすすめの本
絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本の読み聞かせ会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに季節にあった絵本と読み聞かせ会の流れについて語ってもらいました。
二十四節気(にじゅうしせっき)を感じる
二十四節気とは… 1年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。
3月では…
啓蟄けいちつ(3月5日)土の中で冬ごもりしていた虫や蛙が、春の気配を感じて外に這い出る頃。
季節の移り変わりを虫達が教えてくれる。
春分しゅんぶん(3月21日)「自然をたたえ生物をいつくしむ日」とされる国民の休日。
昼と夜の長さが同じになる日。この日を境に昼の時間が少しずつ長くなるという季節の節目の日。
3月。三寒四温を繰り返しながらも季節は確実に春へと近づいています。今月は春の訪れを楽しみ待つ絵本を集めてみました。
草木は芽吹き、虫や蛙が顔をだす。「もういいかい」「もういいよ」と暗く寒い日々から動き出す。
新しい季節が楽しみになるそんな絵本をさぁご一緒に。
【季節の絵本】
国語の教科書にも載る詩『くまさん』
私には「春待ち絵本」という分類をしている絵本があります。「早く春が来ないかな」と、春の到来を願い、その小さな兆しや訪れを喜び祝う絵本。
そんな一冊から始めましょう。
まどみちおさんの詩「くまさん」。
小学校一年生の教科書にも載っているのでご存知の方も多いかもしれません。
まだ冬が残る山の中。目覚めたまだ寝ぼけ眼のこぐま。
たんぽぽやつくし、すみれの花にちょうちょ、わらびにぜんまい。春の訪れを感じながらこぐまは考えます。
さいているのは たんぽぽだが
ええと ぼくは だれだっけ?
まどみちおさんの詩に、ましませつこさんの優しい絵。春の訪れの喜びとともにほっこりと癒されます。
最後は川面に映るいい顔を見て…
そうだぼくは くまだったな
よかったな。
と続きます。
新しい季節の始まり。
自分を知って初めて他人を知るともいいます。「ぼくがぼくでよかった」そう思える日々はこんな絵本の言葉から届けることができるかもしれませんね。
2018年にはEテレのテレビ番組『いないいないばあっ!』でメロディもついたお歌にもなったそう。
歌い読みするのもいいですね。
<読み聞かせ時間目安 1分5秒>
子ども達と一緒に春を見つける『もういいかい』
さぁ、春待ち絵本を続けます。
いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち…。
神社で女の子達がかくれんぼ。
くーう、じゅう!
もう、いいかい!
絵本の中では小さな春もまた「もういいよ」の準備を始めます。
「もういいかい」「まあだだよ」「もういいかい」「もういいよ」の親しみ深いわらべうたのメロディ。
絵本には小さな春たちが「もういいよ!」の声を待っているようにその花を開いていきます。
子ども達は大人よりも目線が低い分、野に咲く花や虫が身近なのかもしれない、とこの絵本を読んで思いました。
「もういいかい」「まあだだよ」と子ども達とかけ合いをしながら楽しむのもおすすめの一冊です。
<読み聞かせ時間目安 1分20秒>
【絵本からの発展体験のお供に図鑑を】
『じぶんでよめるしょくぶつずかん』
絵本からの発展体験こそ、絵本のもつ力の一つであると思っています。
絵本の中にある花や虫、季節の移り変わりをぜひ実際に外に出て親子で確かめてください。
そんな時にはこんな図鑑がオススメ。
子ども達が自分で手に取って調べられるような植物図鑑がないかなぁと探していた時に本屋さんで出会った一冊。
春夏秋冬季節に沿った花壇の花、道端の花、街や公園の木などが掲載され、その他、いろいろな野菜や果物の収穫前の写真もあります。
ただ花の写真があって、名前が載っているだけでなく、春の七草や母の日のカーネーションのお話、からすのえんどうでつくる笛の作り方や、竹と笹の違いだったり、「あさがお」のページでは花が咲いて実がなるまでが描かれていたり。
大人の私が見ても知らないことがたくさん。楽しい!
植物の花や葉、実の説明は花の名前の由来なども含めて全部ひらがなで書かれ、カタカナにもルビがふってあります。
自分で読めると書いてありますが、どうぞ家族で一緒に開き、楽しんでください。
一家に一冊。知らないを知るために本を開くという習慣。ぜひご家庭でも教室でも大切にしてほしいと思っています。
【質問にお答えします】
Q.春からの入園に備えて読んでおくといい絵本はありますか?
この季節は親も子も新しい生活が始まる不安がありますね。ましてやこのコロナ禍で新しい生活様式での入園。
何か準備できることがあるならしてあげたいですよね。
「入園前に読んでおいたらいい絵本は何かありますか?」という質問をいただきました。
もちろん、心の準備として幼稚園での生活が描かれているものや、幼稚園に行き渋る子の気持ちが描かれているものなどもあるのですが、こちらはどうでしょう。
好評の童謡絵本〈うたのすきなねこ ララとルル〉シリーズ
ララとルルと、いっしょにうたお!
2ひきのねこといっしょに季節をめぐって
童謡、唱歌を歌ってすごす1年間!
おだやかな親子の時間に、保育・福祉にもぴったり。
要望多数の楽譜も見返しに掲載。
「『あ、この歌知ってる』メロディが聴こえたらついつい口ずさんじゃう歌。誰でも一曲はあるのでは。上手下手なんて気にしない気にしない。楽しいのが、いちばんです。ララとルルと一緒に歌いましょ。歌えば心も身体もぽっかぽか。歌詞の美しい言葉と心地よいリズムは読むだけでも味わい深いですね。みなさんの毎日がお歌で彩られますように」(松田奈那子)
【収録曲】
はるがきた
うれしいひなまつり
ちょうちょう
こいのぼり
てるてるぼうず
たなばたさま
とんぼのめがね
おおきなくりのきのしたで
ジングルベル
おしょうがつ
ゆき
(*CDは付いておりません)
大人気『うたのすきなねこ』のシリーズより『うたのすきなねこ ララとルル すてきないちねん』。
春から始まる一年の歌がお馴染みララとルルのお話とともに描かれます。
まずは春の訪れとともに「はるがきた」、季節の行事の歌も「うれしいひなまつり」などが載っています。
そして「ちょうちょう」に「こいのぼり」。歌とともに季節は進みます。
これから園でたくさんの歌を歌うことになる子ども達、
知っている!は力になります。
おうちでお母さんやお父さんと一緒にいっぱい歌った歌は、園で頑張る子ども達に大好きなお父さんやお母さんを身近に感じさせてくれることでしょう。
【季節のお話絵本】
新装版としてうまれかわった『はるがきた』
最後に大好きな春待ち絵本が〈新装版〉として生まれ変わったのでご紹介させてください。
『どろんこハリー』の作者、ジーンジオン・マーガレット・ブロイ・グレアム夫妻が描く春のお話。
アメリカでは1956年に出版され日本未刊行だったのですが、2011年に こみやゆう さんの訳で子どもたちの手に届けられました。
もうすぐ春だというのに、街は灰色で街路樹は枯れ枝。もう芽生えの季節だというのに春はまだどこにも見当たりません。
そんな時、通りを歩いていた男の子が言いました。「ねえ!どうしてはるをまってなきゃいけないの?まってなんかいないでさ、ぼくたちでまちをはるにしよう!」
男の子の提案で、みんなの手で町はどんどん春になっていきます。
少ない色数ながら春を迎えるワクワク感、高揚感、芽吹く生まれる力強さ。
訳されるこみやゆうさんの言葉はさりげなさの中にも、子どもたちを絵本の世界へしっかりと導き、優しくリードしてくれています。
少し版が小さくなり色鮮やかに生まれ変わったようです。
私も出会いを楽しみにしている一冊です。
<読み聞かせ時間目安 4分45秒>
名作『どろんこハリー』シリーズの著者コンビによる絵本。長いあいだ未訳だったものがようやく刊行されます。今年の春は、なかなか町にやってきません。もう暦のうえでは春なのに、木々もめぶくようすはなく、空もどんよりしています。どうしたんだろうとしびれを切らしていた町の人々に、ある少年が提案しました。「ぼくたちで春をつくっちゃおうよ!」 町の人々はさっそく市長にかけあい、パレードをして、町じゅうを春にぬりかえていきました。まるで本当に春がきたようになったのですが、その晩、ひどい雨が降って、町の中の春はきれいに洗い流されてしまいます……ところが――。春の訪れの嬉しさと、気持ちよさ、暖かさや、力がぐんぐんわいてくるさまを、懐かしくあたたかなイラストともに描きます。春にもってこいのほんわか絵本。
【その他 3月の読み聞かせにおすすめの絵本】
絵本の読み聞かせについて思っていること
絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。
ふわはねプロフィール
ふわはね(内田 祐子)
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、
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