絵本の中で吹いているのは、どんな風? 子どもたちが体で感じる「風の絵本」
目には見えないけれど、からだでは確かに感じる「風」。ふわっ、ひゅー、ゴーゴー、ビューン…あらわす言葉も色々です。子どもたちは、大人が思っている以上に「風」に敏感で、その違いをしっかりと感じ取っているのかもしれませんよね。そんな事が伝わってくる「風の絵本」をご紹介します!
読めばもっと風とお友だちになりたくなるはず。さあ、開いた絵本の中で吹いてくるのは、どんな風?
絵本の中で吹いているのは、どんな風? 「風の絵本」特集
まずは絵本の中を強くて魅力的な風がふきぬけていく絵本3冊。子どもたちは、風と遊ぶのが本当に上手!
「きょうだ!」 家を飛び出し、一目散に駆けていくその先は…
はるいちばん
窓をあけ、ひゅーっと入ってくるのはぬるい風。
「きょうだ」
女の子は家を飛び出し、一目散にどこかに向かって駆けていく。追い風に背中を押されながら漁港を抜け、大きな川も飛び越えて、山道やトンネルだって駆け抜ける。やがてその視線の先に見えてきたのは大きな灯台。その脇道をまわりこみ、女の子は手を広げる。そして……?
なんて気持ちのいい絵本なのでしょう。主人公の女の子の目的はただひとつ。春一番を自分の身で受けとめ、つかまえること。
「さあ、こいっ!」
海の町に住む彼女にとって、おそらく風から季節や天気を読むことはお手のもの。その表情はずっと凛々しく頼もしく、かっこいい。読者はただ女の子のうしろをついていき、ページをめくってその緊張の瞬間を迎えるだけ。そして、不思議な開放感に包まれながら絵本をとじ、満足するのです。
春を迎える季節だけでなく。少し立ち止まった時には、この絵本を手に取って、駆け抜ける風をあびてみる。そんな一冊になってくれそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「かぜさんが、いっしょに遊ぼうとないてるみたい」
おおきなかぜのよる
ひゅーひゅるー、外はすごい風。
「かぜさん、だれか いっしょに あそぼうよって ないてるみたい」
気になって仕方がないけれど、もう寝る時間。りくくん、ベッドに入らなきゃね。風はどんどん強くなる。ひゅーひゅるるー、びゅううううっ。
「あっ」
庭にあったりくくんのくるまがとんだ! それを見て、おもちゃたちも一斉にかけだした!まって、まって。大変、みんな外に飛び出し、あっという間に月の下。いったいどこまで飛んでくの? 目指すは遠くのあの森だ。ひゅーひゅー ひゅるるるー……。
こんなに強い風の日は、寝るのが怖くなっちゃうかな。いえいえ、りくくんは思いっきり風と一緒に遊んできたみたい。躍動感たっぷり、幻想的な夜の空、真っ暗な森、どんな場所だって、彼にとっては素敵な遊び場所。阿部結さんの描く子どもは、どうしてこんなにも魅力的なのでしょう。背伸びして窓の外をのぞく後ろ姿、風の思うままにされる小さな体、顔だけ出して隠れる姿。だけどやっぱり一番愛おしいのは、お母さんの顔を見つけたとき!
夜がちょっぴり長く感じそうな日は。この絵本をそっと開いてみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
葉っぱといっしょに空を飛んで、どこへいっちゃうの!?
かぜがふくふく
日曜の朝。
ネノくんとキフちゃんがお布団で目を覚ましたら、誰かが呼んでいるのがきこえます。
「ハタケニオイデ ハタケニオイデ」
お父さんはとっくに畑でお仕事。
お母さんに「朝ごはんの前にがんばっておいで!」と送り出された、ネノくんとキフちゃんのきょうだいは、手押し車を押しながら畑に向かいます。
ふたりの背中を風も押してくれます。
風が吹く中、父さんは野菜の苗を植え、きょうだいは芋掘り。
落ち葉が風と遊んでる……と思ったら、
ネノくんとキフちゃんの顔に落ち葉がペタン!
なんと……大きな落ち葉にいつのまにか乗ったふたりは、「ふあり」と空へ。
ふたりだけではありません。
カエルも、キャベツの苗も、カブトムシも、カマキリも、お芋も!?
葉っぱといっしょに空を飛んで、どこへいっちゃうの!?
ふららん ふあん
ふろろん ふおん
ブオーン! ぴゅーん! ゴー!
いろんな風の音のオノマトペと共に、子どもと生き物が一緒になって吹き荒れます……。
どんどん風にのって、一緒に飛んで、おやおや、キフちゃんがすごいものにつかまっちゃったけど……!?
風の力強さと浮遊感、スピード感が痛快。
なおかつ、大空と大地が、風ごと生き物すべてを受け入れてくれているような、突き抜けた軽やかさがつたわってくる、傑作絵本。
『とべバッタ』や『はたけうた』など、自然をたっぷり見つめて絵本にしてきた田島征三さんならではの世界が描かれた絵本です。
最後は、こんなふうに風に身をまかせて、からくも大自然の力から逃げ切って、どっさり収穫したい!とうきうきしちゃうくらい、しあわせな自然の恵みが描かれます。
ちなみに、収穫物とキフちゃんをつかまえたとんでもないものは、本を読んでのお楽しみ。
ネノくんとキフちゃん兄妹のおはなしをもっと読みたくなった方は、ふたりの雨の日のお留守番を描いた『あめがふるふる』もオススメです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
「かぜって、なあに?」
小さな子どもたちが出会う風は、こんなに可愛らしくて、いたずらっ子!
かぜビューン
たんぽぽやソフトクリーム、風がビューンとふいたらどうなる…? どうなるかは風がふいてからのお楽しみ! あてっこ遊びも楽しいしかけ絵本。しかけをめくるとキャラクターのイメージに合ったものや、意外なものもあって、子どもたちが大喜び。
風との遊び方は世界共通? それともちょっと違う?
世界で活躍する絵本作家が描く「風の絵本」にも興味津々!
ジルベルトとかぜ
ジルベルトは風と友だちです。ふうせんや凧やおもちゃの船や、風車やシャボン玉を使って
風と遊びます。でも、時には風のせいで困ったこともおこります。子どもたちの心にしみ通る、
味わいの深い絵本です。
かぜ
「かぜが どこからふいてくるか みにいこうよ」
俵万智さんおすすめ!
「風を追いかけて、心に翼が生えてくる。
一つのことを追いかけて、世界のことが見えてくる。
軽やかで深い絵本です。」
――かぜのこえに みみをすまそう
おねえちゃんのマチルデとおとうとのマーチンは、かぜをおいかけてのはらをずんずんかけていきます。ふたりがおしゃべりすると、かぜもピューピューうたいだし、すてきなせかいがあらわれます。
「国際アンデルセン賞」の絵本作家、
「つきのぼうや」の作者・オルセンの名作を、みずみずしい新訳で。
他にもおすすめ!「風の絵本」
今日はどの風をあびようかな……。そんな楽しみ方ができるのも、絵本だからこそ。色々な風に出会ってみてくださいね。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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