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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】月の美しさと温かさを感じる絵本。9月10日の十五夜に向けて

夜空に明るく輝く月は、昔も今も、また住んでいる場所に関係なく、私たちを照らしてくれる存在ですね。今週は、いつも空の高いところから見守ってくれる温かな月の視点が感じられる絵本や、幻想的な月の美しさが感じられる絵本をご紹介します。9月10日の十五夜に向けて、絵本でも月をじっくり眺めてみませんか。
 

2022年9月5日から9月11日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

9月5日 おつきさまの光のなか、だんだん暗く静かになって…

月曜日は『おやすみなさい おつきさま』

おやすみなさい おつきさま

絵本を開けば、そこに広がるのは大きな「みどりのおへや」。
よく見れば、ベッドに寝ているのはうさぎのぼうや。
もう、寝る時間かな。

おへやには、絵の額がふたつ、赤いふうせんに、黒いでんわ。
こねこが二匹いて、素敵なお人形の家もあります。

おばあさんが編み物をしながら、見守ってくれています。
おつきさまもおやすみの時間。
ぼうやは、お部屋の中のひとつひとつに声をかけていきます。

「おやすみ あかりさん」
「おやすみ あかいふうせん」

こねこさんに、てぶくろも、とけいさんもねずみさんも。
ほらほら、だんだん静かになって……
この絵本を読んでいるおともだち、みんなも。

おやすみなさい、いい夢を見てね。

1947年アメリカで初版が発売されて以来、世界中で読みつがれているこの絵本。小さな子どもたちは、この月の光に照らされた、ちょっぴり不思議な雰囲気の「みどりのおへや」が大好きなのです。ぼうやを中心に、まだあかりのついた部屋の場面から始まり、視点は壁にかかった絵の中へ、さらにお部屋の反対側の方へと移り、椅子の上にはいつの間にかおばあさん。ぼうやは一人じゃ寝れなかったのかな……時計の針の経過を見て想像をしながら夜のひとときを過ごします。

そして、ぼうやと「おやすみの儀式」をしながら、だんだんと暗くなる「おへや」と一緒に気持ちのよい眠りへと誘われていくのです。

淡々と、でも耳心地のいい繰り返しの言葉を聞きながら、一方で眺めているお部屋の世界はどんどん広がっていき。暗くて怖いと思っていた夜の世界も、ちょっとだけ素敵に思えてくる……そんな風に、絵本を通して世界中の子どもたちが「おやすみの時間」と仲良くなっていったのかもしれませんね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

9月6日 月夜の森を舞台にしたふたりのドキドキの冒険

火曜日は『チリとチリリ よるのおはなし』

チリとチリリ よるのおはなし

チリチリリ、チリチリリ。おはやしの音に誘われて、自転車に乗ったチリとチリリがたどり着いたのは森の入り口。あたりはすっかり真っ暗です。

「おいでよ」

そこにあったのは、くろねこのドリンクスタンド。見たことのない材料を混ぜ合わせ、ふたりのために作ってくれたのは「おつきみドリンク」。美味しくて何杯もおかわりをしているうちにふたりの姿に変化がおきて……!?

さあ、ここからが楽しい夜の世界のはじまりです。くろねこたちに案内されて森の奥に進むと、屋台がずらり。おめんやヨーヨー、かたぬきどうぶつビスケット。ふたりが楽しんでいると、おはやし隊がどこかに向かって歩いていきます。

チリとチリリが自転車に乗って、様々な冒険や体験をする「チリとチリリ」シリーズの8作目。どのお話でも、うっとりするような景色に魅了されてしまうのですが、今度の舞台は「月夜の森」。最初から最後までずっと暗闇の世界。だけど、なんだかドキドキ不思議な気持ちになってくるのは、満月の夜だからでしょうか。いつもとちょっぴり違うふたりの冒険、その表現の違いも含めて楽しんでくださいね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

9月7日 幻想的な月夜の庭で、歌い、踊り、遊ぶ子どもたち

水曜日は『ムーン・ジャンパー』

ムーン・ジャンパー

くたびれたおひさまが、空から丘へ降りてくる。
すると……月がのぼった!

静かな暗やみの世界に満月が浮かぶと、
ひんやりとした庭に月明かりが差し込んでくる。
池ではきんぎょがぎんぎょと遊び、年寄りカエルが鳴きはじめる。

月の光に誘われてやってきたのは、はだしの子どもたち!
風に吹かれて髪がボサボサになるのもかまわず、みんな踊りだす。
夜の木に登り、歌をつくり、こわーい話をする。
草のうえでとんぼがえりだってする。

どんどんふくらむつきふうせん。
ジャンプすればさわれるかな。
ぼくたちはムーン・ジャンパーだ!

子どもたちは、満月に照らされた幻想的な夜の庭で、歌い、踊り、遊びます。
その夜の情景の美しさといったら……。
見ているだけで、冷たい空気、足の裏にささる芝生、ほほをなでる心地よい風を感じます。

『木はいいなあ』の作者ジャニス・メイ・ユードリーの詩的な文章に、他の作品とは少し趣の違う、繊細でうっとりするような色彩で絵を描いているのは『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダック。
生き生きとした子どもたちの言葉、躍動する身体から、彼らの喜びが伝わってきます。
子どもたちはきっと、読むたびにこの特別な夜の時間を体験していくのでしょう。
1960年コルデコット・オナー賞受賞作品です。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

9月8日 こねことおつきさま

木曜日は『こねことおつきさま』

こねことおつきさま

満月の晩、こねこがさんぽにでかけました。
「ねえ、おつきさま。どうしてついてくるの? これから農場にミルクをのみにいくんだよ。いっしょにくる?」
子ねこは、塀をつたい、木にとびうつって、屋根にジャンプ! やっぱり月はついてきます。農家に着き、つぼのミルクを飲んでいたこねこは、床に落ちて、大きな音をたててしまい…? 
元気な子ねこを描く、原書1954年のフランスの名作絵本。
 

9月9日 おつきさまは世界中の国にひとつずつあるの?

金曜日は『おつきさまひとつずつ』

おつきさま ひとつずつ

月がでています。あこちゃんは、おかあさんと一緒にかえります。「おかあさん、アフリカにもおつきさまある?」「あるわよ」あこちゃんはほっとしました。「おつきさまがみーんなにひとつずつあって、よかったね」

『おつきさまひとつずつ』のちいさいあこちゃん(母のひろば665号より)
 「おかあさん、おつきさまってアメリカにもある?」「うん」「じゃあ、イギリスには?」「あるよ」―私が4、5歳くらいの時、母とこんな会話を交わした。『おつきさまひとつずつ』の「ちいさいあこちゃん」は私のことだ。月がひとつしか存在しないことを知らず、ましてや広い地球のどこから見ても同一の月であることなど想像すらできなかった幼児の私は、暗い夜空から自分を包み込むように照らしてくれる月に愛着を抱き、素朴な疑問を口にした。ところが母にはそれがよほど印象的だったらしく、私が成人した今でもこの会話が掘り起こされる。そして40年余りの時を経て、絵本になって驚いた。

 『おつきさまひとつずつ』の中で、母は何を描こうとしたのだろう? 月夜の下を歩くと、おつきさまが一緒についてくるのがうれしいあこちゃん。世界中の国におつきさまがひとつずつあるのかと不思議に思い、おかあさんに尋ねるあこちゃん。無邪気で突拍子もないあこちゃんの言葉におかあさんは共感し、「あるわよ」「そうね」「ほんとね」とありのままに受け止め、肯定してくれる。そして、あこちゃんと世界のあちこちの夜空に月がたたずんでいる様子を思いめぐらす。

 あこちゃんの月への思いは子どもらしく、偽りがない。実際、地球から一番近い距離の天体である月は、地球にはかりしれない影響を与え、あらゆる生き物の生活や存在に作用する。ちいさいあこちゃんは、もちろんそんなことなど分からないが、そのような思いに至るのは、月がそれほどにもあこちゃんの心を動かし、大きく作用しているからなのだろう。自然の力はすごい。子どもの心を一瞬にして捉える。だからこそ、おかあさんもそういう時、「月はひと一つしかないのよ」と言わず、「ひとつずつ」というあこちゃんの言葉に特別な意味を見出し、「そうね」と言ってくれたのかもしれない。

 今や二人の娘を子育て中の私は、幼児期の子どもの言葉がいかに衝撃的で印象深いものであるかを目の当たりにする。この間、レストランで使用禁止のトイレに遭遇した4歳の次女は、「なんで?あけたら、へびがいっぱいでてくる?」と真顔で私に尋ねた。吹き出しそうになるのをこらえて、「じゃあ、あけてみようか?」と提案したら、彼女はよりいっそう真顔になり、拒絶した。子どもの想像力たるやとてつもない。娘たちの月への興味や疑問も尽きない。空に月が見えただけで興奮し、月に何か呼びかけている。そして、十五夜のお月見を何より楽しみにしている。幼い娘たちのそんな姿を見て、ちいさいあこちゃんのおかあさんの気持ちが分かる。そして、おつきさまがみんなにひとつずつあってよかったと心から思うのだ。

長野麻子(東京成徳大学子ども学部子ども学科教授)

9月10日 みんなのよるに それぞれのよるに ごほうびのような おつきさま

土曜日は『きょうはそらにまるいつき』

きょうはそらにまるいつき

暮れの迫る広い公園で、ベビーカーの中からあかちゃんが、空を見ています。
「きょうは そらに まるいつき」
バレエの練習がおわって、バスで帰る女の子が、窓の外の空を見上げています。
「きょうは そらに まるいつき」

遠い山のくまの親子。
新しい運動靴を買って、バスで帰る男の子。
店じまいのカーテンを閉める母娘。
どのひとたちの上にも、空にはまるい月があって……。
月からは、しずかな光がふりそそいでいます。

「きょうは そらに まるいつき」
このくりかえしの合間に描かれる風景は、べつべつのようでいて、つながっています。
近くと、遠く。時間と空間をつないで、月はかがやいています。
まるい月は、あかちゃんから、おじいさんやおばあさんまで……
森のどうぶつや海のくじらまで……
みんなのもの。

荒井良二さんはそれをそのまま言葉にはしませんが、たったひとことで、この幸せを表現します。
そのひとことは……?

最後まで読み終えて、涙がにじむのはなぜでしょうか。

『あさになったのでまどをあけますよ』と対をなすような美しい絵本。
窓のむこうの風景や、空の月が描かれていながら、これらの本は窓のこちら側にある日々のくらしを愛しみます。
窓をあける。
空の月を見上げる。
そのなにげない時間の中に、明日へのたしかな希望や、今日を生きるしずかなよろこびがひたひたと浸されています。

どんな幼い子も、体のどこかで感じ取って知っている、「おつきさまだ」と思って夜空を見上げる瞬間。
その美しい瞬間を、とじこめたくなる絵本です。

夕闇の公園に広がっていく、お祭りのテントの灯りが幻想的です。
ぜひ最後まで、荒井良二さんが描く夜空の月をごらんください。

(大和田佳世  絵本ナビライター)

9月11日 月が絵かきに語る、美しく切ない地上の人びとの物語

日曜日は『愛蔵版 絵のない絵本』

愛蔵版 絵のない絵本

「この世界の生活は、月にとっては一つのおとぎ話にすぎません」 ひとりぼっちの若い絵かきのもとへ、夜ごと友だちの月が訪れて、空から見たことを聞かせます。月のまなざしが照らしだすのは、悲哀に満ちた地上の人びとの風景。旅を愛したアンデルセンの詩情あふれる名作を、絵本作家・松村真依子の柔らかな水彩絵で贈ります。

  

いかがでしたか。

今年もそれぞれの場所で、大切な人たちと美しい十五夜のお月さまが見られますように。

 

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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