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絵本ナビニュース2023

おかあさんが輝いている絵本をつくりたい『おかあさんがおかあさんになった日』刊行30周年記念インタビュー公開!

絵本作家・長野ヒデ子さんのインタビュー公開

 (写真・中山章太郎/渡辺裕子)

童心社から1993年に刊行されている『おかあさんがおかあさんになった日』が、刊行から30周年を迎えます。そこで、著者・長野ヒデ子さんの刊行30周年記念インタビューが公開されています!

 

『おかあさんがおかあさんになった日』は、おかあさんの視点から、期待と不安でむかえるはじめての出産の1日を描いた絵本。
「あかちゃんがうまれる絵本」ではなく、おかあさんになる幸せ、生きるよろこびが描かれた「おかあさんがうまれる絵本」として多くの共感を集め、版を重ねるロングセラー絵本となっています。

インタビュー動画 https://www.youtube.com/watch?v=4iSA2z8n3K0

おかあさんがおかあさんになった日

おかあさんがおかあさんになった日

おかあさんは期待と不安の中、はじめて赤ちゃんを生んだ日、おかあさんに。

あらすじ

予定日をとっくにすぎたのに、あかちゃんがなかなかうまれないので、おかあさんは病院に入院することになりました。

『おかあさんがおかあさんになった日』本文より

あかちゃんは元気なので心配しないですこし運動するよう、お医者さんに言われて、おかあさんは病院の中を散歩します。
 
 「元気に育ってほしいなあ」
 「病気やけがにも気をつけなければ……」
 病院の中を歩きながら、おかあさんは、うまれてくるあかちゃんのことを考えます。
 
 お昼寝のあと、シャワーをあびると、あかちゃんも気持ちがいいのか
 「ピクピク、トントン」大きなおなかの中で動きます。
 病院の中には、母親・父親学級もあって、あかちゃんを育てる勉強もします。
 
 病院で歩いているうち、ギューッとおなかがいたくなってきました。
 緊張と不安の中、赤ちゃんをうむための部屋に入ります。
 おとうさんも病院にかけつけ、おかあさんをはげまします。
 そして、いよいよあかちゃんがうまれる時がきて……。

『おかあさんがおかあさんになった日』本文より

おかあさん自身の言葉で、命の輝きをつたえたい

初めてこのタイトルを読んだとき、「あかちゃんがうまれることで『おかあさん』になるのか」とその発想にはっとさせられた方も少なくないかもしれません。当時、おかあさんの立場から子どもの誕生を描いた絵本は少なく、おかあさんが輝いている絵本をつくりたい、そんな思いからこの絵本はうまれました。
おかあさんがおかあさんとしてうまれる、その言葉の意味について、長野さんは次のように語っています。

最近、子どもの性教育の本が多く出ていますが、どれもおかあさんが「子どもを産む」絵本なんですね。
でもこれでは何かたりない、おかあさんの気持ちも伝わっていない。自分の力じゃない、もっと大きな力が働いて命が生まれてくる。そして命の輝きの中で、おかあさんもおかあさんとして生まれる。この最も感動的な部分が表現されるような絵本が作れないかしらとずっと温めていました。
昔は家でお産しましたから、家族でお湯沸かしたり産声が聞こえてきたり、家の中に感動が満ち満ちていたわけでしょ。今は赤ちゃんは病院で生まれて、すーっとやってくるから、子どもたちにとっては日常の向こう側のできごとなんですね。でもその日は、お母さんにもお父さんにもこんなに素晴らしい日だったのよ。お医者さんや看護婦さんにも、病気で苦しんでいる患者さんにも、赤ちゃんはいろいろなしあわせをくれたのよ。
そう思っているうちに絵が一枚一枚生まれていったんです。
(ブックポート80号 1994年5月1日 より)

「どんなにのぞまれ、うまれてきたのか」を知ることが、子どもの生きる力になる ーーインタビューから

刊行後の反響が大きく、著者長野さんのもとにも、たくさんの愛読書はがきやお手紙が届いたという本作。
そこには、自分の体験と重ね合わせて、いろいろな想いが書かれていたそうで、生命の誕生にはひとりひとりのドラマがあることを、あらためて感じたそうです。その中で、長野さんは字も読めない小さな子どもたちが、くりかえしこの本を読んでくれていることを知ったといいます。以下、インタビューからの抜粋をご紹介します。

この本を出したいって編集者に言ったとき、編集者が「小学校なんかで、性教育の導入部分に使えると思うので、ぜひ出版しましょう」と言ってくれたんです。でも私は、これはもっと小さな子が読んでくれるんじゃないかと思っていたんです。

 

絵本が出たら、愛読者カードから、字が読めないような小さな子がなんどもなんどもくり返し読んでくれていること、図書館でも、小さなお子さんを持つ家庭で、なんどもこの本を借りてくれていることを、図書館の方からも教えていただきました。

でも、それはなぜなんだろうと不思議に思うようになりました。

 

それで、産婦人科の先生や、心理学の先生など、いろんな先生方に聞いてみたんです。

そしたら、「子どもは生まれる話が好きなんだ」とおっしゃるんです。

「どうしてですか」と聞いたら、「自分がいかに望まれて生まれてきたのか」子どもはこころのどこかで確認したいと思っているらしいのです。

この絵本は、そのことがわかるように描かれている。自分が望まれて生まれてきたことを確認することが、子どもにとって生きる力になる、そう言われたんです。

『おかあさんがおかあさんになった日』の愛読者はがき

赤ちゃんが生まれる絵本はいろいろあるけれど、おかあさんがおかあさんとしてあるがままに輝いている絵本を創りたい、自分のためにも、子どもためにも、あるがままのおかあさんでいてくれることが、子どもは嬉しいのですもの。

私はよく失敗もして、子ども達に迷惑かけてばかりのおかあさんだけど、やっぱりおかあさんです。
おかあさんになったのではなく、おかあさんをさせてもらっている。子どもに育ててもらっているのだ。私もおかあさんとして、あかちゃんと共に生まれたんだ! こんなおかあさんの気持ちを絵本にしたのがこの絵本です。
難しいことはわからなくてもこの気持ちが子どもにもちゃーんと伝わりわかるのですよ、不思議ですね。
だからくりかえし何度も何度も読んでくれた、あかちゃんにもありがとうといいたいです。


今、おかあさんが元気に輝いて、おかあさんであることを楽しんでほしい。そのことで子どもも元気が出るのです。
 
(以上、長野ヒデ子さんインタビューより抜粋)
インタビュー全文はこちら

https://www.doshinsha.co.jp/news/detail.php?id=2956

著者プロフィール

作:長野ヒデ子

1941年愛媛県生まれ。『とうさんかあさん』で日本の絵本賞文部大臣奨励賞、『おかあさんがおかあさんになった日』でサンケイ児童出版文化賞、『せとうちたいこさん デパートいきタイ』で日本絵本賞受賞。『おつきさまひとつずつ』『まんまん ぱっ!』など絵本作品多数。『ころころ じゃっぽーん』『くわず女房』など紙芝居作品も数多く手がける。紙芝居文化推進協議会会長。

書籍紹介

『おかあさんがおかあさんになった日』
さく:長野ヒデ子

初版:1993年7月15日
定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
ISBNコード:978-4-494-00859-9

姉妹作の2作品をご紹介

おとうさんがおとうさんになった日

おとうさんがおとうさんになった日

3人目の子どもを自宅出産で迎えた家族。「お父さんはいつお父さんになったの?」と聞かれて。

『おとうさんがおとうさんになった日』
さく:長野ヒデ子

初版:2002年5月10日
定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
ISBNコード:978-4-494-00897-1

おばあちゃんがおばあちゃんになった日

おばあちゃんがおばあちゃんになった日

かわいい赤ちゃんがうまれて、おかあさんは大忙し。お姉ちゃんになったあこちゃんのおむかえには、おばあちゃんがきてくれます。あこちゃんのおばあちゃんは、いつから「おばあちゃん」になったのかな?あこちゃんとおばあちゃんの心の交流、そして赤ちゃんをむかえた家庭のあたたかさを描いた物語です。

『おばあちゃんがおばあちゃんになった日』
さく:長野ヒデ子

初版:2015年2月20日
定価:1,430円 (本体1,300円+税10%)
ISBNコード:978-4-494-02563-3

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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