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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】おじいちゃんおばあちゃんと孫、子どもたちの心の交流を描いた絵本

もうすぐ「敬老の日」ですね。おじいちゃん、おばあちゃんと、孫や子どもたちが接する姿を見ていると、なにか不思議と通じ合っているものがあるような気がします。絵本や読み物でも、年が離れている者同士の優しい関係を描く作品が次々に登場しています。

そこで今週は、おじいちゃんおばあちゃんと子どもたちがお互いに助け合いながら過ごす時間や空間の温かみが伝わる作品を集めてみました。

2023年9月11日から9月17日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

9月11日 言葉にたよらないおばあちゃんとぼくの交流

月曜日は『おばあちゃんのにわ』

おばあちゃんのにわ

数々の賞を受賞した名作『ぼくは川のように話す』のコンビによる心温まる絵本。著者であるカナダの詩人、ジョーダン・スコットの祖母との思い出がもとになっています。ポーランドからの移民で、あまり英語がうまくしゃべれないおばあちゃんと「ぼく」は、身ぶりや手ぶりで、そして、さわったり、笑ったりして、いいたいことを伝えあいます。言葉にたよらない二人の親密さを描くシドニー・スミスの情感あふれる絵が、懐かしい記憶を呼びさまして胸を打ちます。

ぼくのおばあちゃんは、もとはニワトリ小屋だった家にすんでいる。毎朝、お父さんの車でおばあちゃんの家にいくと、おばあちゃんは庭でとれた野菜をつかって、朝ごはんをつくってくれる。長いあいだ食べものがなくてこまったことがあるおばあちゃんは、ぼくが食べこぼしたオートミールをひろいあげると、それにキスして、ぼくのおわんにもどす。
雨の日には、おばあちゃんはゆっくり道を歩く。それはミミズをつかまえるため。ぼくたちは、つかまえたミミズをおばあちゃんが野菜を育てている庭にはなつ。いつも、二人でそうしていた。おばあちゃんがあの家を出るまでは……。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=211962
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9月12日 引っ越し先で出会ったのは…

火曜日は『アグネスさんとわたし』

アグネスさんとわたし

海べの町から引っ越して、野原をみわたす丘の上の家で、かあさんと犬のオーホーと一緒に暮らし始めた女の子、キャセレナ。新しい家の外には木が2本、あたり一面にはスノードロップの花が咲き、野原の向こうにある家には、アグネスさんというおばあさんが住んでいる。

「おかあさんから、きいてるわ。
 絵をかくのが、だいすきなんでしょう?」

アグネスさんは、庭づくりや物づくりが大好き。自然やアートを愛するふたりはあっという間に仲良くなり、キャセレナは庭のお手伝いをしたり、アグネスさんがつぼを作る様子を眺めたり。アグネスさんが月の満ちかけについて教えてくれると、キャセレナは自分たちクリー族の季節の話をして。そうやって一緒におしゃべりをしながら、ふたりの友情は、季節の移ろいとともに育まれていった。

冬が終わり、やがて再び春が訪れた頃、アグネスさんの体はすっかり弱ってしまっていた。咲きはじめたスノードロップを一緒に見ようと、キャサレナはある方法を思いつき……。

自然に囲まれた、広く静かな風景の中で、感性を響き合わせる女の子と隣の家のおばあさん。心を通わせながら過ごしていくふたりの時間の尊さが、読む人の心の奥底に染みわたってきます。作者は、カナダの先住民クリー族の文化をテーマに数多くの作品を発表している、作家で画家のジュリー・フレット。最後の場面で控えめな光を放つ、クリー語で「カエルの月」と呼ばれる4月の満月の美しさが、いつまでも心に残るのです。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=178402
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みんなの声より

カナダの先住民クリーの血統を受け継ぐ作家さんによる作品。
クリー語の保存活動をされているということで、物語にクリー語が織り込まれています。
クリー族の少女、キャサレナが主人公。
お母さんと一緒に引っ越した先の隣人、アグネスさんとの交流が四季の情景とともに静かに描かれます。
春、海辺の町から、山の丘の上へ。
夏、絵の好きなキャサレナと、土から物作りするアグネスさん。どうやら共通点を見つけたようで、キャサレナの絵心が影響を受けたようですね。
秋、だんだんと、深くかかわるようになって。
冬、アグネスさんが弱ってきて、キャサリンは行動を起こします。
わたしの心にむけた詩。
ゆっくりと、ともだちとして分かり合える喜びが愛おしいです。
(レイラさん 50代・ママ)

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=1660 引っ越し先で出会ったのは…『アグネスさんとわたし』 【NEXTプラチナブック】

9月13日 おじいちゃんと孫は大事なお友だち

水曜日は『ぼくのおじいちゃん』

ぼくのおじいちゃん

ぼくのおじいちゃんは、だんだんとしをとってきた。
ときどき、ひとりでいるとさみしくなったり、ぼくのことがわからなくなっちゃうこともある。
でも。そんなときがぼくの出番!
ぎゅうってすれば、ほら大丈夫。
ぼくがおじいちゃんに教えてあげたり、おじいちゃんがぼくに教えてくれたり。
おじいちゃんがいれば、ふたりで冒険だってできる。
おじいちゃんは、ほんと子どもみたいな時もあるし、へんなことしちゃうこともある。
でも、それがぼくのおじいちゃん。だいすきだよ・・・。

クマのおじいちゃんと孫のぼく。ふたりの日常を描きながら、その特別な関係を優しく描き出します。
年をとれば誰もが「老い」てきます。今まで出来ていたことが出来なくなったり、がんこになったり、耳が遠くなったり。家族との関係性も少し変わってきたりします。どういう対応をしていいか、わからなくなったりすることだってあるかもしれません。自分の親だって同じです。
だけど、ふと見ると誰よりも自然に接しているのが息子だったりします。
息子にとっては、年をとった今のおじいちゃんが大好きなんですね。
おじいちゃんにとっても、孫は大事なお友だち。頼ったりすることだってあります。
そうやってお互いを必要としているからこそ、一緒の時間を豊かにしていけるのでしょうか。

とっても愛らしい絵で、一緒に手をつないで歩いたり、遊んだり、ぎゅうっとしているふたりの様子を見ていると、こちらにまで優しさが伝わってくるようで、幸せな気持ちになってきます。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

みんなの声より

シンプルな表紙に惹かれて手に取りました。杖をつくくまのおじいちゃんと、そっと手を引くちいさなくまの姿を見るだけで、なんだか優しい気持ちになります。年を取ったおじいちゃんのことを、孫の「ぼく」が静かに語ります。おじいちゃんのありのままの姿を受け入れ、見守る「ぼく」の姿に感動しました。
大人が読むとちょっと切ないのですが、こんな風に素敵な関係でいられるおじいちゃんと孫がとてもうらやましくなりました。
(クッチーナママさん 40第・ママ 女の子11歳、女の子8歳、男の子5歳)

みんなの声より

「孫命」と思う私は、「ぼくのおじいちゃん」を読んでいるだけで、幸せになれました。老いを感じるこの頃ですが、やっぱりいつまでも孫にあいたいと思います。ゆっくり、ゆっくりの孫は、もう10歳になりますが、このぼくみたいでいつまでもあどけなくて可愛いです!この絵本で、癒されました。私は、この絵本を手元に置いていつでも寂しくなったら読みたいと思いました。とても幸せになれる絵本に感謝です!

(押し寿司さん 60代 じいじ・ばあば)

9月14日 エツコさんと5人の小学生の出会いと関わりの物語

木曜日は『エツコさん』

エツコさん

友達の家に向かうとちゅう迷子になって、前を歩くおばあさんに声をかけた、樹(たつき)。
あれ、このおばあさん、エツコ先生とよばれていた、認知症のおばあさんだ…。
エツコさんと5人の小学生の、少し不思議で幸せに満ちた「記憶」をめぐる連作短編集。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=179648

9月15日 少女と、隣に暮らすおばあさんとの結びつきの物語

金曜日は『おしえてくれる? わたしのなまえ』

おしえてくれる? わたしのなまえ

「おとなりのフィリスさんに 、ひときれもっていってあげて」

グレースは、お母さんが焼いたケーキを持って、隣の家のフィリスさんを訪ねます。

「おやまあ、あなた、どなた?」

フィリスさんは、グレースを台所に招き、一緒にお話をします。ある日はシチュー、またある日はグレースが自分で焼いたクッキーを持ってフィリスさんを訪ねます。その度にフィリスさんはグレースに聞きます。

「あなた、なんて子?」

ある日、フィリスさんはコートを着込み、スーツケースを用意し、息子のデニスが迎えにくるのを待っていました。長い旅行に行くと言うのです……。

少女と、隣に暮らすおばあさんとの、さりげない、でも確かな友情を描くこの絵本。グレースが訪れるたびにフィリスさんの老いは進んでいきます。ふたりは記憶を積みかさねていくことはできません。それでも、グレースはフィリスさんのもとを訪れます。それはきっと、グレースさんのことをが好きだから。フィリスさんもグレースが来ると嬉しそうに微笑みます。

ふたりで過ごす時間を、そして交わしていく会話を丁寧に描くことにより、認知症について子どもたちが理解することを助けてくれるだけでなく、「人の魅力は、歳をとっても、記憶をなくしかけていても、失われることはない」ということを伝えてくれます。そしてそのことは、様々な立場の読者をしっかりと励ましてくれるのです。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

9月16日 おばあちゃん、ぼくのこと すき?

土曜日は『わすれないでね ずっと だいすき』

わすれないでね ずっと だいすき

おばあちゃんと孫のかけがえのない愛の物語

「わたしったら、どうして じぶんの まごが わからなくなったり するのかしら。」

「ぼくが だれでも べつにいいよ。
おばあちゃん、ぼくのこと すき?」

「ええ、ことばでなんて いえないほど。それを わすれないでね。」

5歳の少年と、5分前のことを忘れてしまうおばあちゃん。
少年は、おばあちゃんのそんな様子をまったく気にしません。

年齢とともに、あらゆる能力が失われはじめたとき、人間の心に最後に残るものは?

実話に基づき生まれた本書は、人間にとって、一番大切なことを教えてくれます。
前向きな気持ちになり、勇気をくれる一冊です。

9月17日 おじいちゃんのやさしくて心強いおまじない

日曜日は『だいじょうぶだいじょうぶ』

だいじょうぶだいじょうぶ

ぼくが今よりずっと小さかった頃、ぼくとおじいちゃんは、毎日のようにお散歩を楽しんでいました。それは、家の近くをのんびり歩くだけだけれど、冒険するような楽しさにあふれていたのです。おじいちゃんと手をつないで歩いていると、ぼくのまわりは魔法にでもかかったみたいに、どんどん広がっていくみたいで。

でも困ったことに、出会いや発見が増えるたびに、怖いことや不安も多くなっていきます。そんな時、いつもおじいちゃんはぼくの手をにぎり、おまじないのようにつぶやくのでした。

「だいじょうぶ だいじょうぶ」

この世界で生きていくのって、結構たいへん。だけど、おじいちゃんの「だいじょうぶ」は本当にすごい。その言葉には、全ての不安を包み込んでくれている様な不思議な強さがあるのです。心が落ち着いてくるのです。子どもに読んであげているうちに、その言葉の響きにいつの間にか励まされていた、という大人の方もいるのでしょうね。そして、思うのです。

「この世の中、そんなに悪いことばかりじゃないな」

作者のいとうひろしさんの言う通り、大人も子どもも、少し行き詰まったなと感じたら、こんな風にゆっくり、のんびり、歩いてみるのがいいのかもしれませんね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=2013

みんなの声より

10年前、初めてこの本に出会った時、なんて優しいんだろうと思いました。今、読み返してもその気持ちは変わらず、そして読めば読むほど、奥が深いなあと感じます。おじいちゃんと孫のふれあいが淡々と描かれてる内容ですが、この関係がとても大切なことだと思うのです。子供は毎日なにげない生活から、たくさんのことを学んで成長します。こんなおじいちゃんに見守られて優しい時間をすごせたら、子供はきっとやさしい子に成長するでしょう。そして「だいじょうぶだいじょうぶ」という言葉を心に刻みながら一つ一つ乗り越えていく勇気をもらい、子供が成長したら、またその「だいじょうぶ」をおじいちゃんに返していく。親子でも同じですね。作者のいとうさんも、きっとこんな子育てをしていったのではないでしょうか。いとうさんの優しさがにじみでている本です。
「だいじょうぶだいじょうぶ」、これからもみんなにこの本を伝えていきたいと思います。
(みわっこさん 50代・せんせい)

※こちらは、A5変型サイズの通常版になります。

判型が少し大きい大型版はこちら(A4変型)

いかがでしたか。

老いや認知症のテーマが含まれる作品も近年増えており、今回、何冊か紹介させていただきました。どの絵本も読んだ後に心の中が優しい気持ちで満たされるように感じられるのは、登場する子どもたちの素直さと優しさからでしょうか。

他にも、年齢によってできることできないことを自然に受け止め、思いやりの気持ちを考えるきっかけとなる絵本がたくさんあります。良かったらテーマものぞいてみてくださいね。

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

 

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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