【今週の今日の一冊】“この一行に逢いにきた” 10/27~11/9は「読書週間」!
毎年、11/3の文化の日をはさむ2週間、10/27から11/9は、「読書週間」です。「読書週間」の今年の標語は、“この一行に逢いにきた”。そこで今回、絵本ナビスタッフに、これまで読んだ本の中から心に残る一行を募集してみました。今週は、その一行と作品をスタッフのコメントとあわせてご紹介します。
読書週間とは……
終戦の2年後の1947(昭和22)年、まだ戦争の傷あとが日本中のあちこちに残っているとき、「読書の力によって、平和な文化国家を創ろう」と、出版社・取次会社・書店と図書館が力をあわせ、そして新聞や放送のマスコミも一緒になり、第1回「読書週間」が開かれました。
第1回「読書週間」は11月17日から23日でした。これはアメリカの「チルドレンズ・ブック・ウィーク」が11月16日から1週間であるのにならったものです。各地で講演会や本に関する展示会が開かれたり、読書運動を紹介する番組が作られました。いまの10月27日から11月9日(文化の日をはさんで2週間)になったのは、第2回からです。
それから約80年、「読書週間」は日本中に広がり、日本は世界のなかでも特に「本を読む国民」の国となりました。「公益社団法人 読書推進運動協議会HP」より引用
2024年10月28日から11月3日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
10月28日 だれだってもっているのです。じぶんだけの……
月曜日は『ミリーのすてきなぼうし』
お気に入りのぼうしを買おうとお店に入ったミリーですが、お金がありません。代わりにお店の人がくれたのは想像のぼうしでした。
ミリーは次から次へといろんな想像のぼうしをかぶって街を歩きます。
そして、ミリーの目にうつる人々の頭にも……。
子どもたちの想像力を刺激する、楽しい絵本。
スタッフFの、心に残るこの一行は……
「そうです。だれだって もっているのです。じぶんだけの すてきな ぼうしを。」
10月29日 いちばん…手をにぎって…もらいたい…ひとって…
火曜日は『ともだちは海のにおい』
お茶がすきないるかとビールがすきなくじらが友達になった。ふたりは散歩したり、読書したり、手紙を書いたり…。ユーモアに満ちた友情の日々を詩と掌編でつづるオムニバス。
スタッフIの、心に残るこの一行は……
「いちばん……手をにぎって……もらいたい……ひとって……いちばんすきな……ひと……の……こと……なんだな」
<コメント>
くじらが遠方のパリにいるとき、高熱の中、友達のいるかのことを想っているシーンです。この本で書かれているいるかとくじらは、本当に素敵な友達。似ているところも違うところもあって、お互いにそれら全てを尊重しながら、大好きだと伝えあっています。そんな友達がひとりでもいたら、人生はどれだけ豊かになることでしょうか。うらやましいくらいです。同時に、今自分の周りにいてくれる人たちを大切にしたいという温かい気持ちが、読むたびに自然に湧き出てきます。
10月30日 「ダレカ、つかまえた!」
スタッフKの、心に残るこの一行は……
「ダレカ、つかまえた!」
他、「四十七あるうちの、はじめのふたつにすぎないが、数えきれないものがある。それはなんだ。」というなぞなぞも好きでずっと覚えています。
10月31日 きょうの天気ははじめははれていましたが……
スタッフIの、心に残るこの一行は……
「きょうの天気ははじめははれていましたが、ごごからぶたがふりました」
<コメント>
これだけ目にしても、「いったいどういうこと!?」と全然わからない、でも猛烈に内容が気になる……これほど読者の心を掴むインパクトのある一文もなかなか無いのではないでしょうか。
則ちゃんが書いたでたらめな「あしたの日記」がどんどん本当になってしまうこの作品は、最初から最後まで奇想天外でハラハラしっぱなし。何が起こるか全然予想がつきません。その展開もさながら、面白いのは、主人公の則ちゃん1人がいたって冷静で、おかしな出来事に飲み込まれずに「変だ」と思いつづけていること。事象の作者?なのだから当然のようですが、周囲が「当たり前」というムードを作り出している中で、自分の常識を曲げずにいることは、かなり難しいことだと思うのです。もしかしたら、子どもは素直にできるけれど、大人になるにつれどんどん難しくなることのひとつかもしれません。
11月1日 曲がり角を曲がった先に……
金曜日は『赤毛のアン』
緑の切妻屋根の家、グリン・ゲイブルスを舞台に、
アンが大まじめで引き起こす大騒動が、みんなをしあわせに!
1952年、村岡花子によってはじめて日本に紹介された『赤毛のアン』。
親子3代で人気のある村岡花子の美しい訳が、邦訳70周年の2022年、これから読み継ぎたい改訂版となりました。
気鋭のイラストレーター北澤平祐と人気の装丁家・中嶋香織とによる、
クラシカルかつ可愛い装丁で、名作がよみがえります。
プレゼントにも、自分で持っているにも、ぴったりの一冊です。
スタッフAの、心に残るこの一行は……
「曲がり角を曲がった先になにがあるのかは、わからないの。でも、きっと、いちばんよいものにちがいないと思うの。」
<コメント>
元気が出ない時や落ち込んだ時に、どんなつらい状況にあっても前を向いて進むアンのこの言葉に会いたくなります。
11月2日 テレレッテ トロロット プップルプルプルタター
スタッフKの、心に残るこの一行は……
「テレレッテ トロロット プップルプルプルタター」
<コメント>
このラッパの音を聞くと、「あ、王さまの話だ!」とワクワクしてきます。
11月3日 とっても小さいものが大きいものをうごかす……
日曜日は『いつかきっと』
ジョー・バイデン大統領の就任式で自作の詩「わたしたちの登る丘」を朗読した詩人アマンダ・ゴーマンと、コルデコット賞を受賞したイラストレーターのクリスチャン・ロビンソンが、時代を超えた希望のメッセージを生み出しました。
男の子の信念と友だちの助けが、周りを少しずつ変える力となっていく。孤独、嘆き、あきらめ…それでも希望を捨てずに夢をもつこと。子どもだけでなく大人にも通じるテーマを描いた絵本です。
スタッフAの、心に残るこの一行は……
「でも、とっても小さいものが 大きいものをうごかすことだって、あるんだよ。」
その他、いろいろなひと言と作品が挙がりましたので、一気にご紹介します。
<コメント>
確か雨の降っているシーンだったと思うのですが、出身が雷雨の多い栃木県だったこともあって、雨の日にこの場面を読むとなんだかちさとシンクロしたような、さみしいような切ないような気持になったのを覚えています。ストーリーはほとんど覚えていない本なのですが、このフレーズだけすごく印象に残っています。
「さあいこう、仲間たちよ」(スタッフKの心に残る一行)
「正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときには、親切を選べ」(スタッフTの心に残る一行)
「月のしずく日のしずくまじりけなきまざりもの」(スタッフKの心に残る一行)
絵本ナビスタッフの心に残る一行は、いかがでしたか。
いろいろな人の一行を聞いてみて感じたのは、その一行のことばにしっかり意味があって、そのことばを聞くだけでぐっとくるものもあれば、『ぼくは王さま』のラッパの音のようにそれを聞くとすぐに作品が想起されるようなことばだったり、また何か物語がはじまっていくワクワク感を高めてくれるフレーズだったり、あるいは、『ちさとじいたん』のように作品全体の中でなんともいえないいい役割を果たしていることばがあったりと、心に残る一行というのは、さまざまな形でバリエーション豊かに存在しているのだなという発見でした。そして誰かの心に残る一行を知るというのは、その人の読書の楽しみ方に触れることでもあるように感じました。
さて、あなたの心に残っている一行はどんなことばですか? また「読書週間」にあらたな一行を見つけてみませんか。
構成・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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