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【話題】世界で注目の映画!原作の児童書『ワンダー』が小学校の道徳の授業に活用!

クラス全員が同じ本を読み「いじめ」「偏見」への理解を深めた授業

「普通って何?」内面を見ることの難しさ、大切さをテーマに真っ向から立ち向かった児童書『ワンダー』(ほるぷ出版)。

生まれつき顔に障害がある少年オーガストを中心に、彼を取り巻く友人や兄弟の目線で描かれた物語は、発売当初から話題となり、いじめっ子ジュリアンの視点で描かれた続編『もうひとつのワンダー』も発売、その旋風はとどまることを知らず、2018年6月15日には映画となってスクリーンに登場します。

 

子どもから大人まで読んだ人にたくさんの感動と問いかけを投げかけた『ワンダー』。

その児童書を道徳の授業に使用したという、ユニークな取り組みが東京都中野区江原小学校で行われました。参加したクラス全員が、同じ本を読んで道徳の授業にのぞむというかつてない取り組みは、多くのメディアにも取り上げられました。子どもたちにとって、記憶に残る授業となったであろう特別な時間を少しだけご紹介します!

「相手の気持ちになって考える」共通の読書体験が紡ぐ新しい授業とは?

江原小学校5年2組の34名の生徒たちが参加した道徳の授業とは、一体どんなものだったのでしょう?

クラス全員が、『ワンダー』(400ページ以上もある読み物)を読むことが第一条件だったこの取り組み。教諭の山本先生の心配をよそに生徒たちは驚く成長を見せます。

「最初は読み切れるか心配でしたが、5日で全部読んだという生徒も。

何より驚いたのは、全く本を読まない生徒が、友だちに後押しされて読み切ったことです。」

Wonder ワンダー

オーガスト・プルマンはふつうの男の子。ただし、顔以外は。生まれつき顔に障害があるオーガストは、はじめて学校に通うことになった。だが生徒たちはオーガストの顔を見て悲鳴をあげ、じろじろながめ、やがて「病気がうつる」と避けるようになる。一方で、オーガストの話をおもしろいと感じる同級生は少しずつ増えていた。そんなとき、夏のキャンプで事件が起こる……。全ての人に読んで欲しい、心ふるえる感動作。

江原小学校5年2組で実施された特別授業の様子。

授業の内容は、「相手の気持ちになって考える」がテーマ。

子どもたちに考えてほしい事は何なのか、伝えたいことは何なのか、山本先生が、『ワンダー』の出版社と何度も話し合いを重ね、3か月をかけてようやく完成した学習指導案です。

 

45分の授業では、オーガストと友人ジャックが仲違いをするシーンを中心に、相手の立場に立って行動することについて考えて、意見を交換するというもの。共通の読書体験となった『ワンダー』は、34名の生徒に深く浸透し、たくさんの意見が飛び交いました。

『ワンダー』の登場人物を解説する山本先生

『ワンダー』から子どもたちが学んだもの。自分だけの格言を見つけて発表!

道徳の授業の後に、『ワンダー』のブラウン先生の格言にちなんで、クラスの生徒ひとりひとりが、自分の格言を発表する国語の授業が行われました。

「なんでも嫌いとは言わない」

「できることが増えるより、楽しめることが増えるのがいい人生」

「なんどでもあきらめずに探すことが、ぼくらの挑戦」

有名な格言以外にも、自分で考えた格言を発表した生徒も。

授業を行った山本先生は、「共通の読書体験を通じて、相手への理解をふかめ、いじめをなくすための行動についてみんなで考えることができました。この経験を通じてもっといいクラスにしていきたい。」と意気込みを語ってくれました。

特別授業で格言を発表している生徒

教科書とは異なる、児童書の読書を通して学ぶ、クラスメイトとの共通の体験は、実際に「いじめ」や「偏見」を経験したことのない子どもたちが、他人事を自分事として考えるための貴重な教材にもなりえるということなんですね!

 

一人で読むことが難しくても、みんなで一緒に読むことで今回はじめて読み物を読破した子どもたちは、今回の授業で読書の楽しみを知り、人と分かち合う体験に喜びをおぼえたはず。

 

児童書を通じていろいろな可能性が広がる、素晴らしい試み!どんどんと広がってほしいです。

富田直美(絵本ナビ編集部)
 

掲載されている情報は公開当時のものです。
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