【編集長の新宿絵本日記】圧倒的に勝つ!!……夢を見たい。 2018年10月22日
結構「勝ち負け」にこだわる性質の私としては、遊んでいようが、仕事をしていようが、ぼーっと休んでいようが、普段からなんだか感情が忙しい。
今日だってランチに行けば「誰が一番美味しそうなメニューをお得に頼めたか」が気になって仕方がないし、意外と面白かったというテレビ番組を見逃した時には心から悔しい。やたらに固有名詞を忘れる同年代の人達と話している時は一番に名詞を思い出したいし、1本でも早い電車に乗り込みたい。
もちろん、もうちょっと真剣な勝負の瞬間だってある。
同じ様な内容の仕事をしている人を見れば何としてでも差をつけたいと思うし、口喧嘩や議論が始まったならもう絶対に勝ちたい。趣味でフットサルに参加する時は本当は一人でずばぬけて目立ちたい。
つまり、なんだって「圧倒的に勝ちたい」のです。
だけどそんなことは無理です。わかっています。わかっているから、あがいたり、悔しがったり、反省をしたり、後ろ向きになったり。現実と向き合いながら自分なりに成長していくのでしょう。だけどやっぱり「圧倒的に勝つ」…という夢を見たい。だからこそ、こんなヒーローが登場すると最高にワクワクするのです。
どっせい!ねこまたずもう
本日は、100年に一度の大相撲大会。最強妖怪決定戦!
満員御礼、会場は大盛り上がり。
腕に覚えのあるやつら、誰もが思うことはただひとつ。
「きょうこそ、にゃんこのやまの1人勝ちにはさせんぞう」
さあ、負け知らず、無敗無敵、最恐力士横綱にゃんこのやま土俵入り。
勝った方が取りつづける「百年大相撲」のはじまり、はじまり。
“みあってみあって~
はっけよーい のこった”
がまのぬま、たこつぼまる、規格外に身体の大きいくじらのうみ…
次々とにゃんこのやまを倒そうと向かってくる。
だけど横綱にゃんこのやま、とにかく強い!!
どんな攻め手もひらりと交わし、見事な技で「どっせい!」と決めていく。
つきにゃし、うっにゃり、猫又だまし…
もう「みんなまとめてかかってこいやー!」。
画面狭しと描かれる個性的な妖怪力士たち、ひたすらかっこいい「猫」力士、それらを眺めているだけでも作者石黒亜矢子さんの魅力をたっぷり堪能できるのですが、今回のみどころは何といっても大迫力の相撲の取り組み場面。巻末に書かれた「好きな力士は千代の富士」という石黒さんの言葉に、昭和世代はニンマリ嬉しくなってしまうのです。
クセになりそうなかけ声「どっせい!」をはじめ、凝った表紙に愛嬌のある見返し、一番の盛り上がり場面での両観音しかけ。どこを切りとっても豪華な出来上がり。これは一冊手元に持っておくべき絵本、と言えますよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
今日もまた勝たなきゃいけない、いやどうしても勝ちたい瞬間がやってくる。
そういう時は、心の中でかけ声をいっぱつかけることにしよう。
「どっせい!」
…今日こそ勝てるかもしれない。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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