【編集長の新宿絵本日記】浮き沈み、だけじゃ忙しすぎる。 2018年10月30日
息子が夢中になっている文庫シリーズの醍醐味を説明してくれる。
主人公たちの状況の浮き沈みがジェットコースターのように激しく上下するのだとか。
絶対的にピンチだ!と思っていると、次の瞬間には全てが解決されている。
かと思っていると、それは長く続かない。
あっという間にどん底に落ちる。
…そんな人生、忙しすぎる。
本の中の出来事でよかった。息子もそう思いながら楽しむのだと言う。
次の日の朝、フラフラしながら食卓につく息子。
どうしたのかと聞くと、最新刊を読み終えたらどん底で終わったらしい。
下の下の下。最悪。
ちょっとちょっとちょっと。
あなたまで気持が上下に振り回されてどうするんですか。
これから大事なテストやテストやテストが目白押しなのですが。
先が思いやられるのです…。
だけど息子よ、母の人生はもっとすごい!
だってこんな感じなのだから。
ゴムあたまポンたろう
遠くの方から飛んできて、山にポン!とぶつかるとボールのように飛んでいく。
頭がゴムで出来ている男の子、その名も「ゴムあたまポンたろう」。
ポンたろうの弾む力は結構すごいので、グングン飛んでいき、とんでもない場所に落ちていく。だけど、ゴムの頭はどんなものにあたっても痛くないのです。
大男の巨大なツノに当たればホームランのように飛んでいき、オバケの頭にぶつかれば「こわいよ、こわいよ」と震えながら跳ね返される。ジャングルでは木がいっぱい伸びてきて、バレーボールのようにぶっ飛ばされ、今度はハリネズミの大群の上に飛んでいき…!?
なんだかよくわからない設定に、理解を超えたところで次々に展開されていく出来事。
「なに…なんなの?」
整理しようとする頭を、体の中からわきおこる気持ちよさが追い越していく。ふと見れば、子どもたちだって大笑い。これは、やっぱり面白いらしい。つられて笑う。ゲラゲラ笑う。
あー、疲れた。ポンたろうと一緒にひとやすみ。
「絵本に身をまかせる」っていうのはこういうことかな。
ポンたろうの不思議な世界一周旅行は、なかなか味わい深いので、子どもにも大人にもおすすめしたいのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
いきあたり、ばったり。
「風まかせな人生」、ともいう。
上下もそれなりにある。迫りくるピンチに対策も取れない。
だけどフワフワしていて、なんだか気持ちいい。
いつの間にか誰かが何とかしてくれる。
うん、君もそういう人生を送ればいいよ。
そんな気がする。
…ところで、そのシリーズの新刊はテストの前にちゃんと発売されるんでしょうね?
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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