【編集長の新宿絵本日記】目的が道をつくってくれる。 2018年12月27日
クリスマスの日。
ふいに手に入ったケーキを会社のチームでいただくことに。
強欲な私が真っ先に思うのはこんなこと。
「1番大きいケーキが食べたい」
そして、思ったことをすぐに口に出してしまうくらいの図々しさも身につけてしまったので、それを堂々宣言する。ずるい大人です。
だけど、事態はちゃんと正しく進む。
いつも率先して動いてくれる人がさっとナイフを手に取りケーキを切り分ける。切るのは苦手と言いながら、公平さへのこだわりが強い人がきちんとクリームに印をつけていく。その横で、このケーキがいかに美味しいかというお店の情報を調べあげる人がいて、「あーあ、均等になっちゃった!」とブツクサ言っている私の発言を笑って冗談にしてくれる人がいる。
そして、あっという間にきちんと等分されたケーキ(だけどそこそこ大きい)が配られて、「おいしい、おいしい」と幸せな時間を存分に味わい、目的は達成されていく。こんなくだらない私の決心に対しても、それなりの道が出来上がっていくのが楽しいのです。
ペロの場合。
いつも手厚くお世話され、寝てばかりいた犬のペロ。
そんな彼にだって、大きな決心の日がやってきます。
それはそれは立派で健気な目的のために、みずから動き出すのです。
ペロのおしごと
ついに決心したペロは…、
二本の足ですっくと立ち、腰に赤いベルトをキュッとしめて、青い首輪をぱっとはずし。青いバッグにティッシュとハンカチとメモ帳を入れて、出発です。
さて。
ペロというのは、一緒に暮らしている飼い主の「おかあさん」が好きで好きでたまらない犬です。いつも優しくお世話をしてくれるおかあさんに、いつかネックレスをプレゼントするのが夢なのです。でも、どうやったらネックレスをプレゼントできるのでしょう。
ペロが考えた末に出した答えというのは、ネックレスを買うためにお仕事を探すこと。そこで冒頭の決心につながるというわけです。はたして、こんなにおかあさんに可愛がられている犬ペロに出来るお仕事は見つかるのでしょうか?
不器用なペロは、やっぱりどこのお仕事でも苦労している様子です。だけど、失敗しても、ちょっぴり怖くて泣いちゃっても、食い気にどうしても負けてしまったとしても。まわりの大人たちに優しくしてもらいながら、ペロは次から次へと挑戦します。
…その姿の愛らしいこと! 健気なこと! 読み返すたび、その魅力に私たち読者はノックアウト。きっと作者の樋勝朋巳さんは、犬が好きで好きでたまらないのでしょうね。愛情が伝わってきます。どこかとぼけてて、どこか力が抜けていて。でも不思議と優しい気持ちでいっぱいになる樋勝さんの作品。クセになっちゃいますね。
ところで、結局ペロの夢はかなったのかな?
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ペロの決心が揺るがないからこそ、思いもよらない道が見えてくる。あるいはまわりの人が道を作ろうとする。たとえ他人の目的だって叶えば嬉しいものですものね。
ところでペロの場合、大事な目的より一瞬だけ(いや、何度も?)勝ってしまうのが食い気(ペロ)、そして眠気(こっくりこっくり)です。結局、私が愛してやまないのは、そういう子どもらしい愛嬌の部分なんですけどね。
その他、樋勝朋巳さんの絵本作品
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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