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【編集長の新宿絵本日記】父との思い出。 2020年6月14日 『やっぱりおおかみ』

 

記憶は幼稚園時代にまでさかのぼり、思い浮かぶのは教室の真ん中でクラスの子たちに囲まれて何かを作っている大人の姿。何の騒ぎかと近づいてみると、輪の中心で幼稚園児たちから感嘆の声を浴びながら得意気な顔をして粘土でリアルな「ワニ」を作り上げている。それが父。

 

私がはじめてもらったお遊戯会の配役が「うさぎ」であったため、頼まれてもいないのに厚紙やカップ麺容器、紙皿や紙袋まであらゆる素材を使って何種類ものお面を作り上げ、私に持っていけと嬉しそうに持たせ、先生を困惑させていたのは父。

 

小学校の授業参観で、机の間の通路を堂々とゆっくり歩き周りながら子どもたちのノートをのぞきまわっている。他の保護者はそれが先生だと思い込んで疑わなかったのだけれど、それは父である。

 

中学の社会科見学で訪れた会社で作業着を着込み、全生徒の前で嬉しそうに細かく解説をしていたのも父である。

 

父はちょっと面白くて優しい普通のサラリーマンであった。だけど記憶を並べてみると、そのマイペースな姿勢が見えてくる。小さい頃は何も思わなかったのだけれど、そういえば思春期が近付くにつれ段々とそういう父を恥ずかしくも思ったりして、記憶が曖昧にもなってくる。だけど今、母親の口からから改めてきく父の話は、やっぱりどれも少し突拍子もないエピソードばかり。どうやら父は変わり者だったのは確かのようだ。

 


一緒に読んだ覚えはないのに、この絵本を読むと必ず思い出すのは、なぜか父の姿。

やっぱりおおかみ

やっぱりおおかみ

おおかみなんて、もうどこにもいないと思ってませんか?
でも、本当はいっぴきだけ生き残っていたのです。

ひとりぽっちの子どものおおかみは、仲間を探してさまよいます。
うさぎの町、やぎの町、ぶたの町。
だけど、みんなが逃げていきます。
そんな時、おおかみの子は決まって言うのです。

「け」。

おれに似た子はいないかな、そしたら一緒に楽しく遊ぶのに。
……いないんだな。でも、やっぱり……。

誰もいない町に、一人堂々とたたずむおおかみの子。
真っ黒で表情も見えません。
怖い?それともかわいそう?
私は子どもながらに何だかとってもかっこよく見えたのです。
そして、今でもそれは変わりません。

1977年に発売された佐々木マキさんの代表作のひとつ『やっぱりおおかみ』は、年齢を問わず多くの人たちの心をひきつけます。
子どもたちの目にはおおかみはどううつるのでしょう。
「絵本って面白い!」改めてそんな風に思わせてくれた、きっかけの1冊です。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/2251/%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%82%8A%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8B%E3%81%BF/

どうして思い浮かぶのだろう。
だけど、繰り返し読んでいるうちに何となくわかってくる。

 

父はかっこよかったのである。

 

おどけていたり、空気を読まなかったり、突拍子もない行動をするのが恥ずかしかったりして、当時は気が付かなかったのだけれど、どの場面でもしっかりと腰に手をあてぐっと立ち尽くすおおかみの姿はまさに父なのである。

 

そして、私は今でもそんな父に憧れているのかもしれない。そう思うと、なんだか不思議と私までゆかいな気持ちになってくるのです。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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